ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
絶好のお出かけ日和に恵まれた今日。
俺はいつものように弟子三人娘を引き連れてある場所に向かっていた。
「おいハターン。
昨日貸してもらった本すっげー面白かったぜ!
最初はガキくせーもんだと思ってたけど読んでみればハマるもんだな♪」
「確かにそうね。
僕様ちゃんは特にあの悪の組織が捕まえたヒーローを拷問するシーンにちょっとときめいちゃったわ♪
まさかあんなバカでかい獣のアレであ~んなことしちゃんなんてもう最高なのよん♪」
昨日の夜、俺がヒーローショーに出ることは隠したままイトラをショーに誘うことには成功した。
だがそれを聞いたサラとディオシキの二人が自分たちも一緒にお出かけがしたいと言い出したのだ。
それでショーの原作でもある本を貸してみたら……ものの見事にハマったというわけだ。
ちなみにイトラに俺がショーに参加することになったからチケットを手に入れることが出来たということは内緒にしている。
なぜなら、その方がカッコいいからだ!
「おでかけ、おでかけ♪
師匠とお出かけなんて久しぶりです♪
しかもそれが、あの『狩猟戦隊シュレンジャー』のショーだなんてもう最高です♪」
先ほどから俺の手を取り隣を歩くこの可愛らしい弟子は普段の三倍増しに可愛い笑顔で俺を見てくる。
その可愛さは通りすがりの人達が皆気絶してしまうほどのものだった……
ちなみに比喩表現ではなく本当に俺達以外の人は気を失っているので俺達の歩いたあとには屍のように倒れた人で埋め尽くされている。
だがどうにかギルドナイトが駆けつけるよりも先に目的地へと着いた。
「それじゃ俺はちょっとトイレに行ってくるから三人は先に中に入っていてくれ」
「分かりました師匠♪」
あぁもう可愛いな~。
イトラの今日の笑顔は百点どころか百二十点満点だ!
……だがふと、視線を変えてみれば物販コーナーでもう、お土産やらお菓子やらを買いあさっているもう二人の弟子の姿が映った。
うん、あいつらは俺のことをこれっぽっちも敬うつもりはないらしいからな。
あいつらもあれでいて可愛いところもあるんだが如何せん普段の態度に問題が多すぎるからな。
そんな二人を引率者のように引っ張っていくイトラの後姿を見ながら俺は関係者用の入り口から建物の中に入っていくのだった。
そして俺の名前が書かれた楽屋に入る。
「さってと、マルは監督に詳しい話を聞けば大体分かるって言ってたけど監督はどこにいるんだろうな」
部屋の中は古臭い机と椅子があるだけで何もない小さな部屋だった。
案外このショーの主催者はお金がないのかも知れん。
することもないので懐から折り紙を出して何か作ろうと思ったところで今回のショーの監督が入ってきた。
事前にマルから聞いていたが監督はこれでもかというほどにでっぷりと太った大男だった。
「おぉーう、君がこの街の第一位ハターン君だね。
マルから聞いてるよ。自分からこのショーに参加したいっていてくるなんて君もよっぽど『狩猟戦隊シュレンジャー』が大好きなんだね」
……ん? いま変なことを言われた気がするが。
「マルさんが是非ともこのショーに参加したい人がいるから入れてやってくれと言われた時は戸惑ったけどそれもハターン君くらいの完璧超人なら安心だよ♪」
「ちょ、ちょっと待った!
俺はマルからの依頼でここに来ただけで志願してきたわけじゃありませんよ!!」
「そうなのかい?
でもそんなのあまり関係ないし別にいいよ」
まぁ、確かにイトラがこのショーを楽しみにしているというだけで俺が頑張る理由にはなるわけだしな。
おまけでサラとディオシキの二人も。
「それじゃあ、はい。
このショーの衣装と台本。
ハターン君の役はセリフが多いからその台本の半分くらいになると思うけど上演はあと10分くらいだから急いで覚えてね」
「それこそ待ったー!!
この台本厚みが5㎝くらいあるじゃないか!」
そもそも台本をショーの上演当日に渡す奴がどこにいる!?
俺は昨日この話を受けたばかりで覚えることが少ないチョイ役だと思ってたぞ!
「でもまぁ、ほら、もうすぐ始まっちゃうし。
急いで覚えてよ」
監督はそう言うとそそくさと消えていき、俺一人楽屋に残されることとなった。
……上等だぜ。
こうなったらこの完璧超人ハターン・モンスータの天才性を拾うしてやろう!
……
…………
………………
~観客席~
「うわー、こんなにお客さんがいっぱいいるなんて♪
やっぱり『シュレンジャー』は大人気なんですねぇ♪」
珍しく年相応に目を輝かせるイトラ。
その様子に隣の席に座っているサラとディオシキの二人も思わず見蕩れてしまったのはイトラに『魅了』の能力が身についたりしたという裏設定が新しく構築されたからなのかもしれない。
なんか二人ともイトラに抱きついてるし。
ぬいぐるみ状態だな。
「それにしても客いっぱいだなー。
『シュレンジャー』ってのはやっぱり大人が読んでも楽しめる本だったしな」
「もうサラにゃんったら、それはさっきイトラちゃんが言ったでしょ♪」
「こりゃうっかりだ」
とまぁ、これ位に三人は浮かれていた。
これでさらにハターンがショーに参加すると知ったらどうなるのか想像も出来ないがもうすぐ現実となるのだから想像する必要はないだろう。
……と、舞台の端からこっそりと観客席を眺める俺は思ったのだった。
「おぉーいハターン君。
そろそろ開演だけど準備は大丈夫かい?」
「大丈夫さ監督。
俺は天才だから他の役者さんのセリフまで完璧にマスターしたからな」
俺が本気を出せば、39文字×16行を1ページとするなら一秒で100ページは軽く読めるのだ。
それを聞いて安心した監督は舞台の裾に下がっていく。
さぁ開演だ!
この話を書いていた時のタイムリーアニメで、「と魔禁」の五和のおしぼりを見て吉田戦車さんの「一生懸命機械」の、おしぼりあっため機を思い出した、と書いていたので再び読んでみました。
吉田戦車さんって、やっぱり面白いですよね♪