ついでに能力の名前と二人の仲も判明するようです
「ささ、上がってどうぞ~」
ユウさんに促されて家の中に上がらせてもらう。
薄桃色の落ち着いた見た目からして清楚で可愛らしい家でどこか安心できる雰囲気に包まれていた。
玄関のドアを開けた瞬間ふわっと花のいい香りが漂う。
こう、蕩けそうな空気、突然の来客者を優しく受け入れてくれる空間。
人を歓迎するには申し分ない、もしくはそれ以上の空気が家の中に入った瞬間、俺を迎えてくれた。
彩月はまるで自分の家かのようにただいまーと言って先に奥へと行ってしまった。
先ほどの恐怖の戦闘をしたこの人ととは打って変わった家の雰囲気。
一瞬でクセになりそうだった。
「だあああお風呂入りたい~~~~」
そう騒いで彩月が部屋の中へと入っていった。
お前は丸焦げがお似合いだわ。
「お邪魔します」
「くつろいでいってね」
ニコっと、幼く可愛らしい笑顔を振りまくユウさん。
やっぱり美人だなこの人。服装が白黒で微妙なセンスしてるなって一瞬思ったが、こうも女子力が高いとは。
ちょっと顔が熱いがそれを隠しながら彩月のいる部屋へと歩いて入る。
「光輝早く」
「何が」
彩月が部屋にあったユウさんのベッド?に座り、、その隣をパンパンと叩いて俺に座るように促しているように見える。
「座れてか」
「座っていいよ」
「はい」
ユウさんに優しく言われたので素直に座ることにする。
「つーかお前焦げくせえな」
「はぁ?だーれが焦げ臭くしてくれたんだか」
まあ俺がノヴァったからなんだけどね。
俺と彩月は元の世界からでもこうやっていがみ合って過ごしてきた。
小さい頃からと一緒で、所謂腐れ縁ってやつだ。
「火とか微妙な能力使いやがって」
「植物とか燃やすぞオイ」
「水も使えるから無駄」
「蒸発させますね」
「は?やってみなさいよ」
「上等だボケあとで表出ろよ」
「良いわよ、できなかったら土下座」
「それはありえないそもそもさっき丸焼きにされたじゃねぇk」
お互いの能力をディスり合っているがこれも一応コミュニケーションなのである。
「ほぉー…お二人仲良いんだね~」
「「あ?」」
お互いの頬をつまみながらユウさんの言葉に反応する俺と彩月。
喧嘩じゃないよ。コミュニケーションだよ。
「やっぱり仲良いのね」
「!?」
『この部屋に居る奴以外の人の声』が聞こえて驚く。
ユウさんの後ろからひょっこり姿を現す魔理沙に続く金髪二号の住人。
二つの意味でどっから出てんだこの人。
「混乱させないために先に名を名乗るわね。私は八雲紫」
八雲紫?
そういえば魔理沙や霊夢さんが紫がどうとかと…
「あなたが紫…さんですか」
「なにその信じられないような目」
「いや…」
だって妖怪って聞いてキメラのような何かを想像してたから。
どうみてもただの人の子じゃないか。
これが妖怪?ふーん、随分この世界はファンタジーなんだなー。
「さっさと説明済ませたいから直球で言うわね。私があなたら二人をここに連れてきた」
「知ってます!」
彩月がパッと返事すると同時に左手をぶん回して上げる。
彩月の左に座っていた俺はそのぶん上げられた手を頬に受けて仰け反る。
「魔理沙さんや霊夢さんに聞きました」
仰け反った反動で右に座っている彩月の脇腹にエルボをかます。
思いのほかミゾに入ったのか痛がる彩月。ざまぁ。
そう返事すると、紫さんはニヤっと笑い、
「なんであなたらをここに連れてきたのか、貴方たちは事故のショックでその間の記憶を忘れてしまっているから今から説明するわ」
事故のショック?連れてきた?
魔理沙さ、間違って連れてきたって言ってたけど、本人の顔見ると故意に連れてきたようにしか聞こえない。
紫さんが目を閉じる。
ユウさんが紫さんの額に手を当てる。
しばらく当てていると、紫さんの額から手を離し、次に俺と彩月の額に手を当てる。
すると、何か頭の中に記憶が流れ込んでくる。
「私の能力は幻を操る程度の能力。脳に強く干渉する能力でもあるから、記憶の受け渡しもできるんだ」
いつの間にか夢の中?
まるで月読を食らっているような夢の感覚に陥る。
すると、目の前にだんだん映像が映ってくる。
いつも通学で使う駅のホーム。帰りの時間の映像のようだ。
俺は偶然同じ学校で違うクラスの幼馴染の彩月を発見する。
「うわ、彩月じゃん」
「…ぁ、光輝…」
「どうした?具合が悪いのか?」
ちょっと顔が赤く、目がトロっとして弱っている雰囲気を出している彩月。
熱でもあるのではないか?
「ごめん光輝、今はちょっとじゃれあえないや」
「じゃれあうってw大丈夫か?家まで送ってやろうか?」
「大丈夫…」
風邪かな?風邪をひいた様子の彩月を心配するように傍にいる。
『まもなく、1番線に通過電車です。危ないですので、黄色い線の内側まで、お下がりください』
電車がくるアナウンスが流れる。
止まる電車が来るまで、スマホを取り出し、TwitterでTLを見始める俺。
通過するであろう電車がやってくる。
「…っ」
なんと彩月が、フラっと電車が来るホームの線路側に倒れてしまいそうになる。
「…!!!危ない!!」
彩月を助けようと足を出そうとした瞬間、足元の黄色い凸凹のアレに足を引っ掛けて、俺もホームの線路側に倒れてしまう。
二人して線路に落ちる。消えていく視界の中、聞こえてきたのは女性たちの悲鳴と彩月の身体の感触。
一緒に落ちる瞬間、彩月の手を握り、目の前にまで接近している電車の姿を見て、死を覚悟した瞬間、俺は気を失っていた。
電車に撥ねられる瞬間、紫色の謎の空間の裂け目?が俺と彩月を飲み込んだ。
……
…
「あ…思い出した」
「そっか。私あの時急にフラっとして、気を失って…」
「そうよ、私は暇だったから貴方たちのいる世界を覗いていたの。事故現場に遭遇して、思わず助けてしまったわ」
「…そうだったんですか。ありがとうございます」(俺)
「ありがとう。紫さん」(彩月)
俺と彩月は手を握り合い、紫さんにお礼をいう。
次の瞬間俺らは手を腫れ物に触るような感じで振り払う。足元で行われる踏み合い。
部屋の中にこだまする太鼓の達人。
「なんだかつっこみたさそうだから、先に言うけど、あなたたちを助けたあの空間の裂け目、あれは私が出したモノよ。私は境界を操る程度の能力を持っている。だから空間の境界を操ってあなたたちをこっちの世界に連れてきたの」
「なるほど、能力で助けてくれたと」
この世界の住人はどうやら個人様々な能力を持っているようだ。
そう推測すると、話を聞いてもなんの疑問も浮かんでこない。
そういうもんだと思えばいいのだ。
「助けたはいいんだけど、スキマの空間の中で二人が離れ離れになっちゃって」
「俺らは別々のところで目を覚ましたと」
「そういうこと」
俺はあの時紫さんに助けられたんだ、彩月と一緒に。
でもよかった、生きてて。
「だけど、貴方たちはあの世界へは帰れないわよ?」
「え、なんで?」
彩月が問う。と同時についに踏み合いに負けて足を踏まれた。
「グフォッ」
痛みで思わず下を向くと彩月が自分の太ももの上で薬指を立てて俺を煽っていた。
「貴方たちはあっちの世界では人身事故で亡くなっていることになってるの。死体も私が助けたから無いし、肉片すら見つかんない奇妙な事故って向こうではニュースになってるわ」
「死んでることになってるから、迂闊に帰れないと」
「そう」
推測を話すと紫さんは否定しなかった。
そっか、死人とされている人物が無傷で歩いてたら騒がれる?もんな。
できれば戻りたいけど、しょうがない。
「死亡届も全て受理されているらしいわね。遺体はないけど葬式も終わっているって」
紫さんの追撃?で確実に帰れないことを悟った俺と彩月。
「だから、貴方たちはこの『幻想郷』で第二の人生を歩んで欲しいの」
紫さんが背を向ける。
「大丈夫、私が助けたからにはしっかり世話はしてあげるわ?」
再びこちらを向く紫さん。
「あなたたちは既に気づいているけど、この世界には個人に特殊な能力があるのよ」
「あぁ、おかげで忍者のようになれました」
「私も魔法使えるようになったよ」
彩月も言う。
「まだあなたたちの能力の名や説明をしていなかったわね。今からするわ?」
そうして再び口を開く紫さん。
「光輝、あなたの能力は『忍術を使う程度の能力』」
「あっ、そのままだったか!」
想像、憧れていたNA〇UTOの世界の設定を手に入れた感じか!?
だとすると超嬉しいんですけど!
「あなたの最適属性はどうやら、火、熱、光に関するもののようね。身体能力は、あなた、速いものに憧れていたわね、スピード重視よ」
「お、おぉ!」
嬉しい、超嬉しい、こんなに嬉しいことがあったか。
もういいや元の世界には戻れないしこの世界で暮らそう、忍術いっぱい使いたいぞ!
よよよよし、推測を始めよう。
火、熱ってことは、俺が火遁を使えるのも、爆発系忍術を使えるのも、俺のチャクラ(霊力)の性質だったからなのか。
ほかの属性は使えないのかな?うーん、水遁とかも使いたいなー、雷遁もいいなー。
「彩月の能力は『水を変化させる程度の能力、植物の成長を促す程度の能力』よ」
「え、二つ?!」
「は?二つ?」
驚く彩月と納得いかない俺が同時に反応する。
「植物が好きなようね?植物を育てやすい能力を揃えておいたわ」
「あ、ありがとう…ございます」
やべ、顔赤くして、すっげぇ嬉しそうコイツ。
だから、さっき戦った時、植物のツル飛ばしたり水弾幕とばしてきたりしたんだな。
普通に戦闘にも役に立つじゃねえか。
むしろ、この二つの能力がこいつの一つの能力だと思えばそんなに不平等な感じはしない。
俺の能力の方が使えそうだしな!
「さてと、話すことは終わったわ。もう帰るわよ?眠いから」
「あ、ハイ」(俺)
「おやすみなさい」(彩月)
「あ、それと」
あのさっきの空間の裂け目を出し、その中へと入ろうとした紫さんは何かを思い出したかのようにこちらを向く。
なるほど、その空間の裂け目で俺らを助けてくれたと。主にその空間の裂け目を出せるのがこの人の能力なんだっけ。
じゃあさっき変なところから出てきたのも、納得できる。
「あなたたちの住居、ちょーっと時間かかりそうだから、しばらくユウに預かってもらってて」
「うん、いいよ」
まるでわかってたかのようにニコっと笑顔で返事をするユウさん。
相変わらず笑顔が眩しい、この人すり抜けや月読とか奇妙な幻術を使う人だよな。すげー能力の恐ろしさとギャップがある。
「彩月ちゃんは二日目だね。光輝くんも一緒に寝る?」
「一緒に寝るて…」
「ごめん寝室ここしかなくて…」
「あ、あぁ…」
彩月と同じ部屋で寝泊りかよ。嫌な予感しかしねー。
「花の部屋に野郎が混じりやがった」
「うるせぇ…」
「すごく言いにくいんだけど、このベッド最大二人しか寝られないのよね…」
ユウさんが言う。
「俺床で寝ますね」
「イイネそれ」
彩月が俺の案に賛成する。
「キツイけど3人で寝る?」
「「なんでそうなるの」」
俺と彩月が同時にツッこむ。
おかしいわ色々と。
「いやいやキツイってことわかりきってるんだから俺床で寝ますよ。一応この部屋絨毯敷いてあるし、寝られないことはないっす」
必死でユウさんを説得する。
「だってなんか申し訳ないし」
「いやいいですって、床で寝ます」
「うー…」
いい人すぎるんだけど、辛い。
「あ!いいこと考えた!」
ユウさんが両手を突き出し、力を込める。
そして、幻のシングルベッドが部屋に出現する。
「反転!」
ポンっという可愛らしい音を立ててシングルベットが部屋に出現する。
おお、このベッドを俺が使えばいいのな!
いやぁ助かっt
「このベッド私が使うから!」
オイ。
「むしろそこは俺が使うべきなのでは?」
「いいのいいのお客さんだし、遠慮しないで?」
「私がこいつと寝るのかよ」
「同じく」
横目に嫌そうな顔で睨んでくる彩月。
「そんなに仲が良いんだからイイじゃない♪」
「…」
くそ、推し推しで退けを知らないお人好しめ。
この人には男女の壁なんて存在しないのか。
「はぁ…まあいいや。寝るときイタズラすんなよ」
「どうかな?♪」
うわー、怪しい顔してる彩月の野郎。
今夜平和に寝られますように。
文字じゃ伝わんないけどきっと痛い思いをしています