しょうがないね
俺は自立するべく、ユウさんの家を出た。
実は、なんと幻想郷らしいコスチューム?をユウさんに召喚系幻術で仕立てて?もらったのだ。
少しシャレた忍族衣装。軽いけどオシャレ。
一度召喚したものは消えないらしいから助かる。
薄いネックウォーマーとよく似た顔を半分隠すアイテムももらって少し忍者っぽくなった。
家を出る前に一度鏡で見てみたが我ながらかっこよかったのだ。
一発で気に入った。
ユウさんに家も召喚しようか?って訊かれたが俺は断った。
俺は忍者だ。一応忍者なのだ。忍者がいちいち贅沢に家なんてもつわけには行かないと思ったのだ。
ならばあるのはサバイバル。サバイバル生活をしようと決めた。
そうしてユウさんの家を出たのだ。
しかし流石に寝床だけでも決めたい。
ここは魔法の森の入口。俺が初めて目覚めた森の入口だ。
近くには湖が見え、その向こうには紅くでかいお屋敷?城?かなんかが伺えた。
「しかし寝床…食料…どっちを先に取るべきか」
紫さんが持ってきてくれた自分の腕時計を見つめる。時刻はまだ昼頃。
まだ腹は減っていない。ならば寝床だな。
「そうだな…忍者らしく、できれば人にバレないところがいいな…」
そもそも、寝床なんてどこでも良いのではないか。
こっそり木の上で寝てるのもいいな。
そして、俺のこの火遁を弱く扱えば寝るときも寒くないハズだ。
色々考えついたあげく、俺は食料を探すべく森の中へと足を踏み入れたのだった。
数時間後
なんかキノコばっかり生えててまともに食えそうなのが見当たらない訳だが。
食えるのか食えないのかわからないキノコばっかりだ。
一応見かけたキノコ一種類づつ拾って見たが…匂いで判別つかない。
サツキならわかるのかな。まだ腹は減ってはいないがこんな調子じゃちょっとマズい気がしてきた。
自立するとか言っておいて飢え死には嫌だ。
悩みながら歩いているうちにまた魔理沙の家の前にたどり着く。
「あれ、ここに繋がってたんだ」
初めて魔理沙と出会って初めて弾幕ごっこというものを知った場所だ。
そうだ。
「魔理沙ならわかるだろうか」
こんなキノコだらけの森に住んでいるからには食えるキノコか毒キノコの種類くらいはわかるだろう。
この家に人が居そうな気配は無いが。外から見ればそんなものか。
また霊夢さんのところとかに遊びに行ってるのだろう。
ならばこの家の中に侵入して中にキノコ図鑑があるかどうか探してみよう。
万が一見つかっても、まぁなんとかなるだろう。忍者らしくないが顔見せればすぐ納得してくれるはず。
ということで、
「おじゃまします」
小声でゆっくり玄関の扉を開ける。
中を見渡すが誰もいないようだ。
そのまま部屋の中に侵入し、見つけた本棚の中に並んでいる本たちを眺める。
キノコ図鑑たる本はないものか。
一つ一つ確認していると、1冊、気になる本を見つけた。
キノコマークがついている本だった。
これに採取したキノコについて書いてあるか。
確認すべく本に手を出そうとした。
キンッ
金属同士が擦れぶつかり合う音が無音だった部屋の中に響く。
俺の片手にはクナイ。
後ろを振り向き、何者かの刃物の攻撃をガードした。
俺のことを攻撃してきた奴を目視で確認すると、そこには初めて会った妖精より更に小さい少女のような生き物?が自分の背丈より大きい剣を持って俺に斬りかかってきていた。
魔理沙と同じ金髪。だけどあまり生気を感じない。操られているような。まるで人形のように。
「なんだお前は」
家主からしてみれば、俺が言われる側なんだろうけど、相変わらず意味不明にテンパって意味不明なことを口走る。
それにこのちっこいの、一匹じゃない。
周りに、ナイフ、槍、カマ、ほか様々な武器を持ったちっこい奴らが俺のことを囲って生気のない瞳で俺のことを睨みつけていた。
「…」
クナイの構えを強くする。
どうやらこの家のセキュリティシステムに触れてしまったのかもしれない。
迂闊に動いたら攻撃されそうな気がする。
パッと見全部で8体か。これは少しやっかいかも知れないぞ。
しかし、やらねばやられそうだ。
なら…。
「人んちだから、なるべく穏便に済ませないと魔理沙に怒られそうだ…」
クナイから手を離し落とし、二種類の印を結んだ後、合掌の形をした印を組む。
手を徐々に離すと、俺の両手の指先には5本の光り輝くワイヤーのような紐が繋がっていた。
印を結ぶと同時に動き出すちっこいやつら。
光遁『締絞の術』
瞬身の術でちっこいやつらの背後に回り込む。
俺の手から伸びていた光の紐はちっこいやつらを一瞬で一括りに拘束した。
拘束されたちっこい奴らは力を失ったかのように床に落ちた。
生気の無い瞳で見つめられる。
「意外と思いつきで出したものでも成功するもんなんだな」
忍者たるもの、仕事は静かにやらなくてはな。
あやとりをする感覚で結んだと思う。術が上手くいくように身体が無意識に動いている気がする。
属性さえあっていればほぼなんでも出来ると今のところ、そう仮定している。
光で糸も作れるのか。創造して、最後には爆発もできる。考えていなかったけどまるでデ〇ダラのようだ。
「さて…、続きを…」
拘束されて身動きが取れなくなったちっこい奴らはピクリとも動かなくなる。
少し不気味だ。
光の糸は俺が離すと爆発するかもしれないので掴んだまま本を読もうと思う。
意外と自分の出す術についてすべて理解をしていない。
意外なところに穴があるので自分の術でも油断できない。
魔理沙の家を爆破したらマスパられる可能性もある。
この家のセキュリティシステムが発動したとは言え勝手にこっちが排除するのもなんだし。
気にしていないふりをしていたがさっきから人の気配がするな。
キノコ図鑑を手にとって、中を読もうとすると…
【??】
ひっそりと光輝の背後に立っていた金髪の少女が自分の持っている本で光輝の首根っこを跳ねるようにスイングした。
しかしその攻撃は光輝をすり抜けた。
「なっ!?」
驚く金髪の少女。
すり抜けた光輝の姿が少女を睨むように立ち上がる。
【光輝視点】
背後に人の気配がしたので、自分の光遁でその場に自分の姿だけを残し、瞬身の術でその少女の背後に回ったのだ。
光を屈折させてモノをおかしく見せる、ちょっとした鏡のような術だ。
鏡なだけに、本体の場所がわからなくても本体と同じ動きをする。
本を読んだまま瞬身の術をしたっていうことさ。
魔理沙とは違うショートヘアーの金髪娘。魔道書のようなものを持っていた。
白黒魔理沙とは違って色とりどりの格好をしていてオシャレな衣装だった。
ただ、例の少女は鏡に映った俺の姿を見ていて俺はその少女の背後に立っていたため、顔がわからない。
「ここは魔理沙の家だったような気がするんだけど、キミは?」
「あなたこそ、初めて見る顔ね。魔理沙の家に勝手に忍び込んで何をしているのかしら?」
「いや、俺は魔理沙とは知人同士なんだ。許してくれないか」
「…そう。てっきり泥棒かと思って退治しようかと思っていたわ」
「あはは、悪い。ちょっとな、この辺のキノコに食えるやつがあるか気になってな、魔理沙の家にならキノコの本があると思って」
持っていたキノコの本を見せる。
「…。キノコ食べたいの?」
「いや、どちらかっつーとこの森にほかに良い食いもんがあるのならそっち食いたいんだが」
未だに術は解いていなくてまったく彼女の表情がわからない。
「えっとまぁ、それはいいや。なんとかする。ところでこのちっこい奴ら」
「私のよ」
「へ、へぇ、どういう関係で」
「私の人形よ」
「人形…」
人形と言われるモノの顔を見ると確かに言われてみればそんな感じもする。
となると、コイツはあれか、傀儡師という人か。
幻想郷は、面白い人がたくさん住んでいるね。
「あなた、奇妙な能力を持っているのね」
何故か嬉しそうに言う少女。さっきの物理攻撃がすり抜けたことについてだろう。
「いえ、ちょっとした忍術でして」
「忍術?シノビなの?」
なんか段々テンションが上がってきている少女。
相変わらず顔はわからない。人の後頭部に向かって話しかけるなんてなんだか微妙だな。
「まぁ、そうですね、シノビです。この幻想郷の新入りで…」
「また外の世界とか魔界とかから迷い込んできたのね」
「いや…まぁそんなところです」
魔界とか出てきたよ。なにそのまた新しい辺境。
「私も魔界から来たのよ」
「そうなんですか」
ぶっちゃけ知らねーよです。
でも話は聞いてあげよう。
「ねぇねぇシノビってほかにどんな忍術を使うのかしら?忍術も魔法と同じ類って聞いたことがあるわ?」
「確かに魔法のようなものかな…」
まあ手からアイテムだしたり、口から火ィ吹いたりするのはある意味魔法なのだろう。
俺はその魔法を忍術と呼んでいたりするだけだし。
「あれやってよ、忍者の手でやるシャシャシャーってやつ!」
「シャシャシャ…?」
印の事かな?
「忍法!まるまるー!って!」
テンションたっけぇなどうしたんだこの女。
まあちょうどいい、適当な印を結んでこの鏡の術も解除するか。
「一回だけですよ。忍法、瞬身の術」
術を解く。
少女と対面していた俺の鏡の姿は消える。
「後ろにいますよ」
ぶんっと後ろを振り返る金髪の少女。
めちゃくちゃ目がキラキラしていた。
というか、
めっちゃくちゃ可愛いんだけど。
何この子嫁にしたい。
少し顔が熱くなってしまったので顔を隠すネックウォーマーを気持ち上へと上げた。
「おお…これが忍術…一度見てみたかったのよね」
「そうなんですか」
「他にも何かないの?」
「あるけど、ここじゃマズいです」
家が燃えます爆発します。
「あ!そういえばお腹すいてたんだっけ。ついてきて、もてなすわ」
「あ、ちょっと待ってください、キミも魔理沙に用があってここにきたんじゃ」
「魔理沙が居ないからいいわよ。それに、あなたに聞きたいこともあるし…」
「完璧に興味本位ですね」
「いいじゃないの♪」
まさかの新しい出会い。
こっちも人形のことについて色々聞きたかったけど逆に質問攻め食らったり一方的に話を進められてどうにもならなかった。
後でこっちも気になることを聞くまでよ。
魔法の森の中をさっき知り合った少女と進み、一軒の家にたどり着いた。
おそらくこの少女の自宅なのだろう。
「入っていいわよ」と促されたので言葉に甘えて入ることにする。
廊下からひとつの部屋の中に案内され中に入ると、たくさんの可愛らしい人形が部屋の至る所に並べられていた。
生気は感じないが寂しそうに感じない表情をしている。
「紅茶は好き?」
「ミルクティーのほうがいいっす」
「じゃあ淹れてくるわ♪」
…。
オウフ、「なにか飲む?」「いいえ、お構いなく」というやり取りをしようと思っていたのにまさかそう来るとは。
結果的に飲み物を貰ってしまうことになってしまった。
そうして飲み物を頂きながらこの少女と雑談タイム。
アリスというらしい。
なぜ俺を招き入れたのか聞いてみると、最近魔法の大図書館と呼ばれるところで忍者のことについて書かれた本を借り、忍者について関心を持ち、その中忍者と名乗る俺に遭遇して興奮してつい…という感じだ。
なんだかんだネックウォーマーは暑いので外してお茶を飲む。
ネックウォーマーを外した時の素顔を見てジッと顔を見つめてくるアリスさん。
見つめられると恥ずかしくてミルクティーが喉を通らないんですが。
「流石、忍者、顔はイケメンね」
「そんなことはないっす。アリスさんもとても美しゅうございます」
元の世界でも冷やかしでイケメンとはよく言われたが、今まで彼女とか出来たことないからその言葉は信じないことにしてる。
この世界でも冷やかされるとは俺は一体どんな中途半端なイケメン顔なのか。
しかし幻想郷にいる人たちも、美形で可愛い人が多い。
特に今まであった中ではアリスさんが一番可愛いと思う。
人同士を比べたらアレだけど、俺の素直な感想だ。
「それにしても、ここにある人形たち、全部アリスさんが?」
「呼び捨てでいいわ。さん付けなんて慣れないから」
「あぁ、はい」
しかし、ここでアリスと呼ぶのもなぜか照れくさくなり言わない俺。
「うん、私が作った人形よ」
「手先が器用なんですね。しかも動くんでしょう」
「あー…敬語も無し。落ち着かないわ」
「お、おう」
意外と積極的に距離を縮めてくるな。
まあ俺としては全く構わない。
俺自身比較的良いとこ育ちな身なので人に対する礼儀を忘れないだけなので、癖と言う奴が常時発動しているだけだ。
「さて、本題に入るけど、忍術、見せてくれない?」
「に、忍術って言っても魔法みたいなものですよ?」
敬語が抜けない。
癖とは曲者ですな。
「でも忍者って、変わり身の術とか、水遁の術とかできるんでしょ?私達魔法使いがやらないようなこととか」
「水遁…」
あぐらをかいた姿勢で顎に手を当てて考える。
変わり身はまだしも、水遁か。俺は火遁と光遁しかまだ使えないような。
「水の中に潜って隠れたり、遁術ってその物を使って隠れるのって聞いたことあるわ」
「あぁ、そっち系の遁術ですか」
「ん?なんか違うの?」
「俺の使う遁術は、隠れません。攻撃魔法のようなものです」
「そうなんだ」
腕を組んで何やら俺の顔を見て何かを考え始めた。
やたらマジマジと俺の顔を見てくるアリスさん。
「え、えと、俺の顔に何か?」
「光輝、顔立ちが整ってるわね…」
「は、はぁ…」
お世辞にまたイケメンと言われてるんですね。
嬉しくないですよ。彼女いませんもん。
「私、人形作りもあるけど、裁縫も得意でよく服とかも作ってるのよ」
「はい」
おもむろに立ち上がったアリスさんが部屋の隅にある衣類を入れているクローゼットを開けて女物の衣装、というかメイド服に近い衣装を取り出して俺に見せつけてくる。
「イケメンは女服がよく似合うと思うのよ」
「うん?」
嫌な予感しかしない。
次の瞬間、アリスさんの人形達が背後から俺の腕をガッチリ拘束する。
こんな小さい躰なのになんという強さ。
抵抗もできずに印も結べない。
片手で結ぶこともできなくはないが、うかつに抵抗して馬鹿力の人形に腕を折られかねない。
「な、何を…」
「決まってるでしょ…逃げられないわよ」
「待て…早まるな…」
「イケメンは女装させるに限るわ…」
そうして、俺はとある沼につま先を浸すことになってしまった。
「やっぱり可愛くなったわね♪」
「あぅ…このスカートスースーする…」
「女声なんか出してやっぱりノリノリじゃないの♪」
悔しいが、女装したあとの自分の姿を姿鏡でみたら思った以上に可愛くてテンションが上がってしまったのだ。
ミニスカートのメイド衣装。
おまけにアリスさんに化粧もしてもらった。
等身大人形さんみたいになってしまった俺氏。
ぶっちゃけ癖になりそうだ。というか、癖になってしまったようだ。
密かに練習していた女声発声練習がこんなところで生きたとは。
なぜそんな練習していたのかは訊かないで欲しいところだ。
「他にもあるんだけど着てみない?」
「ぜひぜひ」
初対面の少女に女装させられておまけに沼に落ちた忍者がここにいた。