いつもはシュナムクルがノリノリなので他のキャラが薄味になっているかもしれませんが、普段シードルがどんなことを考えながらシュナムクル魔界で働いているのか、という日常の話ですね。
シードルside
オレの名は“冥王”シードル。
ここ<シュナムクル魔界>を治める魔王“呪術王”シュナムクル様に仕えている元・魔王にして、現・魔神だ。
これでも人間だった時は勇者としてそれなりに活躍し、悪魔となってからは、人間からすれば無限に近い寿命の大部分を剣のためだけに費やしてきたから剣の腕には自信がある。
だが、そんな自信すら打ち砕いたのがオレの主であるシュナムクル様だ。
戦いに敗れたオレは、『不死の魅了』だか何だか知らんが、呪いによってシュナムクル様に心を縛られ、今では家来として魔王城の仕事を一手に引き受けている。
……まぁ、そんな境遇も慣れてしまえば存外悪くないのだがな。
「シードル様はオレ達よりもずっとえらい魔神様なのにオレ達以上に働いてるッス。
オレら、シードル様のためなら何でもするッスよ!」
「ならばプリニーども。
お前らはいつも通りに一番隊は各部屋の掃除をやっていろ。
オレはこれからシュナムクル様達への三時のおやつを作るのでな。
二番隊は中庭、三番隊はプレネールさんグッズを磨いておくように」
「「「了解ッス!」」」
この城には千匹のプリニーがいるが、その全員がこんな風にオレには懐いてくれている。
やはりプリニー共も、サボり魔だとか、強者に媚を売るとか、それは特徴としてあるかもしれんが元は人間だ。
ごく普通に扱ってやれば普通は逆らわないもんだろう。
シュナムクル様も気分で給料カットや面倒な命令をすることはあっても、連中に渡す給料自体は普通に多いからな。
働く場所によっては給料はイワシ2匹で休みも一切無しという劣悪な環境で働かされることの多いプリニーだちだ。
だが、シュナムクル様は、金だけは豊富に持っている(余所からの強奪)し、実力さえあればきちんと個人を評価している。
まぁ、その采配を全てオレに任せるもんだから、プリニー共もシュナムクル様には懐かないんだがな。
それにシュナムクル様は普段は自室でゲームばかりしているから知らないだろうが、城下町ではそれなりに人望のある魔王だったりする。
余所の魔界の魔王は、最強の名を求めて他の魔界との争いが絶えなかったり、己の気分を害したというだけで自分の治める魔界の住民を殺したりというのが絶えないと聞く。
そんな中、ここ<シュナムクル魔界>の魔王は、何もしない、何も目指さない、何も要求しない、だが侵略者からは守るという、住むには実に都合の良い魔界であり、魔王様なのだ。
税の徴収なども、侵略者から奪い取った金があるものだから「面倒くさい」の一言で行わないくらいだからな。
公共事業や福利厚生など、個人の好きなようにさせる魔界において行われるはずもない。
税の徴収などは、その魔界の魔王の道楽にしか使われないのだから魔王自身がいらないというのなら何の問題もないのだろう。
呪いの影響からか知らんが、オレはそんな面倒くさがりなシュナムクル様に仕えている今がそう悪くないと思える。
オレがまだ魔王だった頃も、こんなありふれた日常――家事や魔界運営をやっていたが、傍に誰かがいると言うのが楽しいことにも気付かされた。
昔は一人きりだったからな。
そういえばシュナムクル様の家来になってからは、魔界侵略に来たバカな連中――それなりに腕に覚えのある敵以外に剣を抜いていなかったな。
昔は金や剣の稽古のために、雑魚を斬り捨てることもしょっちゅうだったと言うのに、俺も丸くなったんもんだ。
だが、それが悪くない。
プリニー達に慕われながらも、やりがいのある仕事と魔王城の財政管理まで任せられたことでプレネールさんグッズを買い放題というのも、以前のオレでは出来なかったことだからな。
オレが治めていた魔界は冥界――つまり生身の家来がいなかったのだ。
オレが通販やらコンビニやらで買い物をすると100%オレ自身のために買っていることがバレるから買えなかった物も、シュナムクル様名義で買い物をすれば大丈夫なのだ。
しかもシュナムクル様もゲーマーであった。
隠れゲーマーであるオレが唯一気兼ねなく誘える存在としても今の境遇には口では色々と言っても満足している。
それともう一つ。
最近の出来事なのだが、オレがこの魔界でシュナムクル様の家来をしている一番大きな理由がある。
それは……、
「シードルおじちゃん、おやつちょうだい♪」
「……ダーか。
おやつならもう少し待て。
今から作るところだ」
「うー、もう待てないよ~。
シードルおじちゃぁぁ~~ん」
ゴハッ! か、可愛すぎる……。
そう、これこそがオレをシュナムクル様の家来でいさせるもっとも大きな要因、シュナムクル様の娘たちだ。
中でもこの末っ子のダーは、とりわけオレによく懐く。
母親であるシュナムクル様に<拳>技を習ったことで、たまにオレに攻撃してきたりもするが、それすらも可愛く思える。
三姉妹の中では一番精神的に幼いが愛しているのだ!
もしやオレは…………ロリコンなのだろうか?
昔はサロメのようなボンキュボンな体型の大人の女が好みだと思ったが、ダーの側にいると心がときめくのだ。
勿論、ダーの姉である他の娘たち、チリやパウも可愛いと思う。
シュナムクル様にはときめかないというのにここまでときめいてしまうとはな……身長など、シュナムクル様よりも頭一つはさらに小さいというのに。
オレは……オレは……。
「よし、待っていろ、ダー。
今日のおやつはホットケーキだからお前の分は一番に焼いてやる。
なぁに、シュナムクル様もお前の姉たちも、お前には甘いから優先しても問題はないだろう!
しばし待ってろ!」
思考に耽っていると、おやつをねだりに来たダーが目に涙を浮かべてオレを見るので慌ててお菓子作りを始める。
本来なら材料の計量や焼き時間など、細かい計算をせねば美味しいお菓子など作れないが、オレは長い間、サロメが振り向いてくれたときを考えて料理の勉強を何千年にもわたって続けてきたので、目分量で何でもこなせるのだ。
火力はどんなに強くしても焦がすことの無いギリギリを見極め、素早く、そして繊細に焼きあげる。
ちなみに内心でこそ、こうしてデレデレしているが、決して表情には出さないのがオレがオレである所以だ。
「出来たぞ、ダー。
このシードル印のほっぺたが落っこちるくらい美味しいホットケーキだ♪」
「わぁい♪」
ダーがホットケーキにフォークを突き立て、口に運ぶ。
あぁ、ハチミツがぷるぷるの可愛らしい唇を濡らし、そして垂れる動作がまたエロチックで美しい……。
やはり、ダーと一緒にいるこの時こそが、オレはシュナムクル様の家来になってよかったと、思える時間だ。
「おいしぃ~♪
ありがとぉ~、シードルおじちゃん♪」
「ああ、たくさん食べて早く大きくなれよ」
それでもやはりオレは大人の女が好きだ。
いつかダーが大きくなったらオレが嫁にもらってもいいかもしれんな。
シュナムクル様も三姉妹を溺愛しているからどうなるかは分からないが、そんな想像くらい許されるだろう。
もしもその時が来たら遠慮なく殴られる覚悟位はある。
だからオレは、シュナムクル様の家来になってよかったと思っている。
シードルは三姉妹全員が大好きです。
でも一番懐いてくれる末っ子のダーが特に大好きです。
20話を境にプラムとの絡みを出す予定でしたが……スマン、ありゃウソだった。しばらく先になりそうです。