そんな話。
「シードル~、ちょっとばかり出掛けて来るから、子ども達の面倒よろしくね」
「くっくっくっ……、オレが側にいる限り、チビどもの衣食住から外的危険は一切気にする必要はないぞ、シュナムクル様。
ところで何処に行くのだ?」
「あー、友達の相談に乗りに行ってくるわ。
なんか面倒くさいことになってるっぽいからねぇ~」
「……一つ聞くが、シュナムクル様は意外と友人が多いようだが、一体どうやって交友の場を広げているのだ?
自分の部屋からだけでなく、この魔王城から外に出ることすら皆無に等しいというのに」
「ゲームよ」
「……そうか。
(シュナムクル様でさえ友人が作れるのなら、俺もオンラインゲームでもしてみるかな……。
『†死医怒留(シードル)†』など、どうだろうか。素性を隠しながらもカッコ良さがあるぞ)」
はい、そう言う訳で、今回は友人の人生相談を受けようの巻ってな感じの話だわね。
こう見えて聞き上手(暴力的問題解決上手)のあたしにゃぁ、相談事が多くてね。
今回相談に乗るのは普段から親しくしている先代大天使のトコナツ――通称:トコナっちゃん。
回復魔法の管理人をやってるんだけど、何だか困った事態になっちゃったみたいでね。
氷の魔法の管理人ジョシュアが手伝ってほしいと泣きつくもんだから、あたしまで出張ることになっちゃったのよ。一体何が起きたんだろ?
まぁ、行ってみれば分かるか。
……
…………
………………
「シューちゃん聞いて聞いて♪
わたし、恋しちゃったの♪」
やってきて早々、いち早くあたしに気付いて開口一番に言ってきたのがトコナっちゃん。
これでも魔法の管理人とかやってるけど、天使なだけあって他の悪魔から管理人になった連中よりは真面目にやってる真面目っ子ちゃん。
だ~け~ど、この子(年はあたしより上だけど)がテンションあがってる時は、管理人としての仕事は完全放棄しているのよね。
だから問題解決と共に管理人としての仕事もさせろってのが今回の話の趣旨みたい。
「悪いねシューちゃん。
またトコナっちゃんの悪い癖さね」
氷魔法の管理人ジョシュアも遅れてやってくる。
彼女もあたしの友人の一人にしてトコナっちゃんとも仲のいい子(「子」と言わなきゃ怒るのよ)
「いーよいーよ、流石に前回ので慣れたからね。
それよりも……、相変わらずなのね、トコナっちゃんは」
「あぁ、いつも通りの恋の病さね」
恋の病……それはお医者様でも草津の湯でも治らないと言われるこの世で一番重い病。
対処法としては両想いになるのが一番なんだけど、このトコナっちゃんは恋愛運がまるでないのよね。
恋に破れること4183回。今度は一体誰に恋したのやら……。
ピンク色オーラを纏って意味不明な言葉ばかり一方的に言うトコナっちゃんは説明も上手くないしな~。
「てことで説明よろしくジョシュア。
いったいトコナっちゃんは誰に恋しちゃったの?」
「あー、それがさぁ~、なんか片目に眼帯をして刀を持ったサムライに惚れたっつーんだけど、それしか情報が分からないのよ。
シュナムクル、知らないかい?」
「眼帯と刀のサムライ……ねぇ。
まぁ、心辺りはあるわね」
「ホント!? シューちゃん!?
わたしの愛しの彼はシューちゃんの知り合いなの!?
あの華麗にスーパーの袋を両手いっぱいに持ちながら空を飛んでいたあの方を!!!」
むぎゅむぎゅと抱きしめてくるトコナッちゃん。
どうやら買い物帰りに見て惚れたらしい。
「だぁぁぁ、顔近いってトコナっちゃん。
あんたら管理人と違って、あたしゃ背だけでなく、全体的に小さいんだから、もうちょっと丁寧に扱いなさいよ!」
毎度のことなんで慣れたけど、トコナっちゃんは可愛いものが大好きなために、彼女ら管理人からすると手のひらサイズのあたしはハムスターみたいな感じなんでしょうね。
あたしが魔王でなければ体中の骨がバキバキに折られているくらい愛情表現きついわ。
「ってか、聞くまでもないけど、以前トコナっちゃんが惚れていたって言う回復魔法を極めようとしていたヒーラーの青年はいいの?
確かゴダイ君だっけ?」
「……ふーんだ、彼は回復魔法を捨てて炎魔法を極める勇者になるって言うんだもん!
わたしの心を弄んでおいて別の魔法に移っちゃう彼なんてもう知らないわ!」
思い出し笑いってのはあるけど、思い出し怒りってのもあるものよね。
新しく惚れた愛しの王子様への愛と、過去の王子様への怒りが混ぜこぜになって忙しそうね~、トコナっちゃんは。
「な? 見ての通り、さっきから怒ったり悶えたりで忙しいんだよトコナっちゃんは。
シューちゃんは炎攻撃無効化体質の魔王だし、もしもゴダイのやつが勇者としてやって来たらブチっ殺しておいてくれよ」
「あいよ~」
スリーサイズ15.8,12.2,18.4の巨大な体のジョシュアはその胸にあたしを埋めながら言ってくる。
いや、一応説明しておくと、ジョシュアも小さくて可愛いあたしが大好きなのよ。
あたしも身体は丈夫だし、「気持ちいい」で済むから受け入れてるんだけどね。
勿論単位は「メートル」よ。
「さて、問題の解決策なら簡単よトコナッちゃん。
あんたが惚れた男ってのは、あたしの魔界の魔神をしている“冥王”シードルよ」
「シードル……さん?
それがわたしの想い人の名前なんですね♪」
「いや、それよりも冥王シードルっつったら今では元魔王でありながら魔神をやってるってことで、ここら一帯の魔神ランキングでトップクラスらしいじゃないか。
その主人がシューちゃんだってのは驚いたねぇ」
「今更あたしに驚くほど浅い付き合いしてないでしょうに。
シードルったら放っておいたらゼタっちとサロにゃんの仲を割こうと色々悪さしちゃうから家来にしてるのよ。
でも過去はともかく、今でも難しいわよ? あいつを落とすのは」
「無理でも何でも、彼を振り向かせるためなら何でもします!
シューちゃん、彼との出会い演出お願い!!」
いや、お願されてもねぇ~。
正直、シードルとトコナっちゃんを合わせるってのは簡単だし、サロメを完全に諦めたっぽいシードルにそろそろ良い人が出来るのはいいと思うんだけど、今子育てで忙しいからなぁ~。
「まぁ、とりあえずシードルに聞いてみるわ。
問題は本人に任せるのが一番だし、ジョシュアも協力してよね」
「トコナっちゃんのためだもの。それじゃお見合いの場所でも予約しとけばいいのかねぇ?
適当に何処か当たってみるさね」
「ええ、ジョシュアは会場の準備をよろしく。
あたしはシードルを連れてくるから。
で、トコナっちゃんは会って襲っちゃえばいいわよ」
ここ最近で、すっかり気が抜けたシードルは、腰の刀もたまに布団叩きになってることがあるくらいだからね。
ただ問題があるとすれば、シードルが結婚すれば、あいつに懐いているあたしの娘たちが賛成するかどうかだけど……まぁ、なんとかなるかな?
こうして魔法の管理人トコナっちゃんはあたしの腹心とのお見合いを決意!
二人を待ち受ける危機とは!? 次回に続く!!!
~“炎勇者”ゴダイ~
大学受験に落ち、就職が内定した会社は就職前に倒産。
トコナツのヒモとして生活していたが、ある日突然無職から脱却するために、資格とかが必要ない職業として「勇者」を名乗る。
それも炎魔法を極めた「炎勇者」を目指すこととなり、トコナツを捨てて別魔界へと修行の旅に出る。
後に魔立邪悪学園の凶師、チャンプル先生に強火流混沌派厨房拳を習うが、その修行の最中に命を落とす。
魔界ではよくあることなので問題なく処理されたそうな。
が、しかし! 不死鳥のごとく炎の中から蘇り、名実ともに炎を極めたと自惚れて、後に<シュナムクル魔界>に勇者として訪れるが炎攻撃無効化体質のシュナムクルに為すすべもなくコテンパンに負けてしまう。
そんな設定を考えてみました。これはこれで一話欠けそうな話ですが本編(百合要素)に関係ないのでカットかなぁ~。