彼女は外道ではありませんが、悪魔ですから♪
そんな感じの話。
トコナっちゃんと、あたしの腹心シードルのお見合いを成功させよう大作戦。
ここらで真面目に恋愛ストーリーやっとかないとね。
なんか以前この作品のタイトルで検索してみたら、「これでも恋愛作品?」ってカテゴリに分類されてたし。
確かに恋愛要素は皆無だけど、恋愛話=ゴールだから、下手に恋愛要素を出したら、それこそこの作品の最終話になっちゃうのよ。
だから、今回はシードルという脇役の話で勘弁してね♪
「くっくっくっ……、それはいいがシュナムクル様。
オレはチビどもの世話と魔界運営の仕事で忙しいのだがな」
「魔王命令としてあんたに休暇をあげるわ、シードル。
あたしの友達のトコナっちゃんとお見合いしてきなさい」
「……まぁいいだろう。
それはさておき、シュナムクル様。
そのトコナっちゃんという女性はオレの好み的にどうなのだ?」
「勿論、あたしと違って物凄い大きいわよ♪(全体的に)」
「うぉぉぉぉぉぉぉ! みなぎってきたぜぇぇぇぇぇぇぇー!」
現金な奴ね、ホント。
でもトコナっちゃんとシードルが結婚したら、あたしの魔界の魔神の後任を探す必要も出てくるのよね。
流石に仕事とはいえ、友達とはいえ、別の女のところに旦那が住んでたんじゃトコナっちゃんも内心ではいい気がしないでしょうし。
となると誰にするべきか……。
「シュナムクル様! 人生というのは長く生きていると色々と楽しいことがあるものだな♪」
「はいはい、それはいいから今日のおやつもお願いね」
「くっくっくっ……、了解だ!」
この時のあたしは、あたしらを遠くから見ていた視線に気づいていないのだった……。
……というのは嘘で、こういうセリフを一人称小説で書く時点で視線の正体に気付いてるんだけどね。
どうなることやら♪
◆ ◆ ◆
高級料亭を貸し切りで使わせてもらい、料理人もジョシュア一押しの人を特別に招いてのお見合いは始まったのだった。
まずは両者の共通の知り合いであるあたしが始めるべきかな。
「本日はお日柄もよく……って挨拶は堅苦しいから置いといて、こっちがトコナっちゃんの言ってたシードルよ」
最初は、着いてすぐに二人を放置してジョシュアと一緒にゲームでもしながら待ってようと思ったんだけどね。
なんかシードルが緊張しちゃって、「頼むから一緒にいてくれ」って泣きつくもんだからこうして司会進行役みたいなことをやってるわけよ。
ったく、意気地がないんだから。
「は、はははははじめましって!
オ、オオオオレはシュナムクル様の魔界で魔神をししている、シシ、シードルと言いましゅ!」
「わ、わわわわわたしは管理人をししています、トトト、トコナツと申しまひゅ」
でもこれ、やっぱり側にいてよかったかも。
この時点で二人とも噛み噛みだし、あたしらがいなくなったら何も話せなくなりそうだしね。
向かいの席に座ってるジョシュアも呆れてるし。
「それじゃ、二人とも緊張してるみたいだからあたしが仕切らせてもらうわね。
簡単に言うと、あたしの友人トコナツはシードルに一目惚れしました。
シードルも悪い印象は持っていないみたいです。
だから二人は結婚する、ということでいいのね?」
「シ、シュナムクル様! それは流石に話を急ぎ過ぎでは!?」
「そ、そうよシューちゃん! わたし達、面と向って会うのはこれが初めてなんだから!」
「え~、でもどう見ても二人とも愛し合ってるしさ~。
いいじゃん、すぐに結婚でも。
あたしは二人を祝福するわよ♪」
流石に急過ぎる流れだと思ったのか、とりあえずジョシュアが料理を勧めたことで一旦話は終わり。
四人で黙々と食べるわけだけど……、空気がピンク色なのに重いわね……。
お互いに好きあっているのに言葉に出来ないってな感じかしら?
「と、ところでトコナツさん。ご趣味は?
(おぉ、まともなお見合いっぽいことが言えたオレぐっじょぶ!)」
「はひっ!? え、えっと人の幸せを眺めること……でしょうか。
シードルさんは?
(やった♪ 特に詰まることなく言えたわたし凄いわ!)」
「オ、オレは魔神という仕事こそが趣味のようなものだからな……プリニー隊に仕事を割り振ったり、料理を作ったりといったことが趣味だな。
(これは高感度アップか? 料理が出来る男はモテるらしいし)」
「是非とも、シードルさんの手料理を食べてみたいですわ♪
(だいぶ落ちつて来たわ。好感度を徐々に上げててシードルさんに嫌われないようにしなきゃ!)」
内心が顔に現れているのにお互いには気づいていない様子のシードルとトコナっちゃん。
「(うわ~、心の声が丸分かりな二人ねぇ~)」
「(それよりもシューちゃん、そこの醤油取ってくれない?)」
「(ほれ。……ジョシュアって目玉焼きには醤油なんだ)」
「(あんたも目玉焼きには醤油派だろ? ソース派はトコナっちゃんだよ)」
「(あ、そっか)」
あまりにも千日手な会話しかしないから二人をよそに、あたしとジョシュアはその後はゲームの話題で盛り上がっていたの。
流石に子どもじゃないんだから、放置しても問題ないわよね?
……
…………
「シ、シードルさん! わたしと、結婚を前提にお付き合いしてくれませんか!?」
「あぁ! こんなオレで良ければ喜んで!!」
「うぉい! 展開はえぇな!!!」
少し目を離したらいきなり結婚の話か!?
「何を言っているシュナムクル様。
オレ達は話し合った結果、お互いに愛し合っていることに気づいたのだ。
これ以上だらだらした関係では面白くないだろう?」
「そうよ、シューちゃん!
シードルさんったら、わたしの人よりも大きい体を褒めてくれたのよ♪
こんな素敵な殿方とこれから先巡り合えるかどうかわからないじゃないの」
さっきはまだ早いとか言ってたのにさぁ~。
うーん……それはまぁ、いいんだけどね。
でも、このお見合いを陰からじっと見ている子がいるのよねぇ~。
「ほら、出てきなさい」
部屋の外。扉の影に良く知る気配を感じていたから最初から気付いていたんだけどね。
面白そうだからってのと、本人たちの成長のためにあえてスルーしてたのよ。
あたしの娘たち三姉妹の気配を。
「「「シードルおじちゃん……」」」
シードルを見据えるは無垢な瞳。
三人同じようにシードルを見つめてる……じゅるり。
食べちゃいたいくらい可愛いわね。
「おじちゃん、結婚したらオレ達置いて行っちゃうのか?」
「私、おじちゃんと離れたくない」
「シードルおじちゃんのおやつ、美味しい……」
「ぐはっ」
子ども達のあまりの可愛さはシードルに1京(けい)ダメージ。
「(考えろオレ
オレは魔神であると同時に一人の男。
子ども達のことは愛しているが、結婚という夢も叶えたい……)」
「見てごらん、ジョシュア。
シードルったら心の中で子ども達とトコナっちゃんを天秤にかけてるわ♪」
「ああ、面白くなってきたねぇ。
シューちゃんはあくどいと思ってたけど、私も人のこと言えないかな♪」
まさに修羅場。
シードルの選択やいかに!?
「シードルさん」
「トコナツさん……?」
「シードルさん。ではこうしましょう。
あなたにとって、シューちゃんの娘さん達への愛情が深いことは分かります。
でしたら、わたしもシューちゃんの城で働きます!」
「チョイ待ったトコナっちゃん!!」
「いいえ、わたし、もう待てないわ。
愛する人と離れ離れになるのはイヤ!
でも愛する人が愛する子どもたちとを別れさせるのも嫌なのよ」
「トコナツさん……」
おいおいシードル、あんた何シリアスな雰囲気出してんのよ。
せっかく面白くなってきたのに冷めちゃうじゃないの。
「シューちゃん、ここは二人の好きなようにさせてやんなよ。
他人の恋路を面白く見守るってのもいいけど、この二人はこれ以上手を掛け過ぎると悪くなるさね」
「うーむむむ、出来ればもう少し修羅場っぽい雰囲気を楽しみたかったんだけど……、トコナっちゃんが解決策をあっさり提示しちゃったしねぇ。
シードル、あたしゃ構わないからあんたの好きなようになさい」
「シュナムクル様……。
くっくっくっ……、いま初めてあんたが魔王らしく見えたぞ」
相変わらずあたしに対しての忠誠度が低いやっちゃなぁ~。
でもまっ、そこがシードルらしいんだけど♪
「チリ、パウ、ダー、オレはどこにも行かんぞ!
そしてトコナツさん。改めて結婚を申し込みます。
今はこの子たちの育児で忙しく、剣を振るしか能の無いオレで良ければ結婚してください!!」
「はい、喜んで♪」
こうして二人の仲はあたしの介入によって上手くいき(ツッコミ不可)、名目上は<シュナムクル魔界>における二人目の家来が誕生したのだった。
「それはそうとシュナムクル様。
チビどもが付いて来ているのを知って放置していたというのは感心出来んな。
部屋の外にずっと放置していたらチビどもが風邪を引いてしまうかもしれないではないか!!」
「えぇ~、そっち~?」
「くしゅん」
「「ああ! ダーがくしゃみした!!!」」
「うわぁ、ダー!
お母さんが中に誘わなかったばっかりに、ごめんよ~!!!」
「シードルさん……いえ、あなた。
ここは回復魔法の管理人であるわたしにお任せください♪」
こうして愉快な仲間トコナっちゃんのおかげで、あたしの魔界はより一層愉快な魔界へとなったのでした♪
シュナムクルにようやく家来が増えました♪
名目上だけなので実際にはただの友人ですし、シードルの嫁さんですけど。
さぁて、そろそろ最終話に向かいましょうか。脇役が結婚までしたのに、主人公がいつまでもだらだらしているのでは駄目ですし。
さて、どうなることやら♪