愛しのプラムちゃんの治める<プラム魔界>の魔王城の最奥……そこに向かうまでの道中は驚くほどに静まり返り、城に辿りつくまでに襲ってきた沢山の悪魔の群れが嘘みたいだけど、それは警備が薄い訳でも、あたしの来訪を歓迎しているわけじゃないと思う。
だって城の奥から感じる魔力は、正直あたしよりも強大で強い敵意を持っているのだから……。
「良く来たわね。歓迎するわよ、“呪術王”シュナムクル」
「あたしのことを知ってるだなんて、流石はプラムちゃんね。
もしかしてあたしら相思相愛なのかな?」
軽い口調で言ってみるが反応は無し。
プラムちゃんも、部屋に入ってからは魔力を鎮めているから、その内心は計り知れないけど、はてさてどうなることやら。
「で、城に来るまでの手荒い歓迎と、城には家来を一人も置いておかないのは何か意図してのことなの?」
「ふふふ、まぁそれほど大したことじゃないんだけど。
ちょっと本気で殺したい相手が来るのに家来がいたら邪魔でしょ?」
その言葉と同時にプラムちゃんの全身から噴き出す魔力。否、殺意!
あっちゃ~、あたしってばいつもノリで行動してるけど、こりゃプラムちゃんを落とすための工作が裏目に出ちゃったみたいねぇ~。
「一応聞いておくけど、闘わないって選択肢はないの?」
「冗談。今更そんな事するはずないじゃないの。
私を惚れさせるって言うのなら、その実力で示せばいいわ。
私は殺す気で行くけど」
「分かったわ。
それじゃあたしはあたしの強さを以てプラムちゃんを惚れさせて見せるから覚悟しなさいよ。
これでも伊達や酔狂で魔王をやってるわけじゃないし、プラムちゃんに惚れたこの気持ちは『恋』ではなく『愛』だと言う事をその身体にたっぷりと教えてあげるわ♪」
つっても勝算があるわけじゃないんだけどね。
正直実力は五分五分――愛がある分あたしの方が粘りはあると思うけど、向こうは代わりに殺意があるからねぇ~。
愛を持って殺意を消すってのも難しいわ。
でもまっ、戦闘開始!
◆ ◆ ◆
プラムside
……何かおかしい。
最初にそう感じたのは彼女が私の魔界に来てから。
それも城に入ってからはより一層おかしな気がしてならないわ。
私は寿命の長い悪魔からしても長く感じる程の時間を魔術研究のために費やし、ここしばらくは城に籠って、ずっと外と隔絶していた。
だから久し振りに外に出て近隣魔界の情勢を知った時、勝手に私を恋人扱いする新参魔王がいることには腹が立ったわ。
だから怒りをぶつける気持ちが半分、もう半分はそれなりに強い魔王のようだから魔術の実験にでも利用すればいいと思って呼んでみた。
だけど、おかしい……。
実力で言えば、接近戦では彼女の方が上でしょうけど、距離を取ってからの私の魔法は詠唱速度、威力、範囲、それら全てが彼女を一撃で消滅させるだけの攻撃になっている。
なのに、当たらない。
いえ、当たらないことをおかしいと感じているのではないわ。
何故か心の中で「当たらない」状況を喜んでいる私がいるの。
魔力の最大量や運用に関しては私の方が上だけど他の全ては彼女が上。
それは強さだけじゃない。
私に決定的に足りない何かを彼女が持っていて、それが彼女の強さを支えている気さえするわ。
「……ちょこまかと、鬱陶しい事この上ないわね。シュナムクル」
「そりゃプラムちゃんの攻撃ってば、当たったら即死級の威力がありそうなんだもん」
言葉と同時に魔力を放ち、避けられるという動作を繰り返す。
ふふふ、私を「ちゃん」付けか……、二歳の時にはすでに父親を越えて魔王となった私にとって、そこまで気安く名を呼ぶ存在がいなかった私にとっては悪くない気さえするわね。
「ねぇ、プラムちゃん。
あなた内心ではあたしのこと嫌ってないんじゃないの?」
「……なぜ、そう思うの?」
「プラムちゃんが楽しそうだから♪」
飛びかかってきたシュナムクルの拳を払いのけてすぐさま距離を取る。
私が楽しい? ……私はこの状況を楽しんでいるというのかしら?
「だってプラムちゃん、自分よりも極端に弱い存在か極端に強い存在しかこれまで見てこなかったんじゃないの?
長い時間ずっと。
そんなプラムちゃんと互角って言ったらあたし以外ではいなさそうだしね」
「……確かに私と互角の魔王だなんてそうはいないわ。
ゼタなんかは私よりも圧倒的に強いし、アレクにだって、本気を出されたら勝てないかもしれない」
「でしょ? プラムちゃんは勝ちたいんじゃなくて全力を出し合いたい――全力を出せる相手を求めていたのよ。
今のあたしとの戦いを楽しんでいるのがいい証拠よ」
「かもね。……だけど、それで私が戦いを止めるとでもおもったの?
私の中で貴方を殺すってのはすでに決定事項なのよ?」
「だからね、プラムちゃん。
その決定事項を覆せるからあたしはプラムちゃんを楽しませることができるのよ」
今度は彼女の両手から炎が噴き上がり、部屋を覆い尽くすほどに燃え上がった。
「プラムちゃん、私があなたを初めて知った時――――あなた自身と直接面と向かい合うのはこれが初めてだけど、その時何か寂しそうに思ったのよ」
「私が寂しいですって?
冗談はよしなさい」
「冗談じゃないわ。
現にこうして向き合ってますますそう思うようになった。
確かにプラムちゃんは寂しそうに見えるのよ」
私が寂しいだなんて、そんなこと……。
「次で最後にしましょ、プラムちゃん。
あたしの全力の愛による攻撃と、プラムちゃんの全力の殺す攻撃、どっちが強いか試してみようじゃないの」
「……そうね、いつまでも終わらない戦いだなんていい加減うんざりしていたところだわ。
お望みどおり、私の全力で葬ってあげるわ」
そうよ、殺してしまえば終わりなんじゃないの。
見せてあげるわ。私の全力を!
「そんなプラムちゃんに、あたしは教えてあげるわ。
心の隙は、誰かを好きに思う気持ちを入れるためのスペースだってことをね」
彼女の言葉が、なぜか胸に届いた気がした。
バトル描写ってのは面倒くさいからあまり好きじゃないんですよね。
むしろこういうのは漫画だからこそ魅せれる描写ですし、小説では「カオスレギオン」以外はバトル要素に惹かれる小説なんて私は知りませんし。
とりあえずこれで、すべての下準備が終わったので、明日が最終話です。
ついにこの物語も完結することとなりました♪ 良かったら最後までお付き合いください^^
オマケ(本編に混ぜるほど文字数もなく、混ぜるのが難しいネタ)
シードル「くっくっくっ……、一発芸をやるぞ」
頭に皿を乗せてカップ麺にお湯を注ぐ。
シードル「かっぱシードルがカップヌードルを食べる!
って、うあっちゃぁぁぁー!」
勢いよく啜ったために口の中を火傷して辺りにラーメンをぶちまけるシードル。
シュナムクル「馬鹿じゃないの?」
チャンチャン♪