ですが、そんな看板に偽りありの状況をそのまま放置するほどプラムも怠けてはいないと思うのですよ。
そんな感じの話。
ちょっとバトル描写も書いてみました。
さて、懐かしき母上の治める<シュナムクル魔界>に帰ってきた拙者は、まだ帰って来たばかりで何も話は進んでいなかったりするのであった。
本当にこんなペースで良いのでござろうか?
たぶん良いのだろう。なにせ時間の概念にとらわれない悪魔でござるからな。
「あら、チリパウダーじゃない。もう帰って来ていたのね」
と、そんなどうでもいい事を考えていた拙者の前に現れたのは、拙者のもう一人の母、プラム様であった。
「お久しぶりですプラム様。
相変わらず母上とは良き関係のようで何よりです。
ところで、拙者が三姉妹から一人娘へとなったのはご存じだったでござるか?」
「私はこれでも預言者よ。
私にとってもあなたは娘なんだから、遠く離れても何があったかくらいは分かるものよ」
「そうでござったか。
旅の道中、見守っていただき感謝いたします」
流石はもう一人の母上でござる。
口に出すことはそれほど無いでござるが、それでも母上とは別方向からの愛情を注いでくれるこのプラム様も拙者にとって大切な母上でござる。
「それにしても……ふ~ん、随分と強くなったみたいね?」
「ええ、元々三姉妹は個別に母上やシードルおじさんに鍛えられておりましたので、三人が融合したことで、拳と刀と槍と呪術のすべてが極まったのでござる」
母上の知り合いでもああった、チャンプル師匠には強火流混沌派厨房拳まで習うことが出来たでござるからな。
うぬぼれるつもりはないが、すでに魔王クラスの実力は有しているはずでござる。
「……まぁ、いいわ。
とりあえずこれからあなたの歓迎会を開くから、それが終わったら私と手合せしない?
どれだけ強くなったか試してあげるわ」
「分かりました。
プラム様相手にどれだけ戦えるかは分かりませんが、このチリパウダー、全身全霊にてお応えします」
この時の拙者は、正直プラム様のことを甘く見ていたのかも知れぬ。
母上と同等の実力を持ち、さらに千年の時を修錬に費やしてきたであろう天才の実力に、自分如きが匹敵していると思っていたのかもしれない。
だが、そんな幻想はこのあと儚く散ることとなるのだった。
……
…………
………………
「ひぃぃぃ~~~!」
「逃げちゃだめよ、チリパウダー♪
あなたもシュナムクルを越えるつもりならこれ位、受け流して見せなさいよ」
「い、いや、これは流石に無理でござるぅぅぅ~!」
説明しよう!
現在拙者は第ピンチなのでござる!!
千年の修行によって拙者は強くなった。が、しかし、それはプラム様も同じであった。
プラム様の能力は預言者としての能力でござるが、明らかに進化しているでござる!
予知能力――プラム様はそれを「エピタフ」と呼んでおり、能力の一端に過ぎないと言う。
最初こそ腕試しということで、能力無しによる拙者の筋肉の動きから行動を先読みしての魔力弾攻撃のみでござったが、段々と「エピタフ」を交え、そして現在に至るということでござる。
「ふふっ、どうかしらチリパウダー?
私の能力はまさに世界を支配する能力。
唯一の弱点はシュナムクルが持っているけど、彼女の娘であるあなたなら、これを破れるかもしれないわね。
この『キングクリムゾン』を」
いってしまえばプラム様の能力は「過程を消し飛ばす能力」。
先読みは数秒先しか出来ぬようでござるが、「過程」を消し飛ばす能力の方は気が付くと目の前に魔力弾が千や万の単位で張られ、気付けば背後から鈍い輝きを放つ重いメイスによる一撃が急所を的確に狙ってくる。
これは避け続けるのも至難の業。
しかしこれに勝つことが出来れば母上と同格ということになるのではないだろうか?
「ほらほら、ボヤボヤしてると死んじゃうわよ」
絶対零度の低温が込められた魔力。
プラム様の攻撃は管理人クラスに匹敵する威力と精度を持って拙者を襲い続けているが、それを凌げているのもこれまでの修行の成果。
瞬間的に四肢を凍らせるプラム様の魔力も拙者の炎が一瞬で溶かす。
ありがとうでござるチャンプル師匠!
ありがとうでござる強火流混沌派厨房拳!
「くっ……、『内なる大力』」
身体強化の呪術効果が切れたので掛け直す。
母上と違って拙者の呪術は時間制限とデメリットが大きすぎるのでござる。
「ふふっ、そんな隙を私が見逃すとでも思ったの?」
呪術『内なる大力』とは、呪術によって作りだした炎を自らの体の中で顕現させ、その炎の力を用いて筋力を増大させる呪術でござる。
しかしその反面、自らの体を内側から焼かれ続けるという苦痛がデメリットとして存在する。
この呪術は三段階のレベルがあり、拙者は第一段階目「発動させる」の一つ上、第二段階までしか身につけておらぬ。
要するに「効果の増大とデメリットの増大」の段階。
第三段階まで行けば、さらに「効果のさらに増大とデメリットの削減」にまで落とせるが、第二段階までしか修めていない拙者の致命的な隙でござった。
「くっ、うぁぁぁぁ」
「ふふっ、面白くなってきたじゃないの。
ほら、本気を出さないと死んじゃうわよ」
意識が吹き飛びそうになるが、それをすれば確実に死んでしまう。
そんな死への恐怖から何とか意識を繋ぎ止めて避け続ける。
回避の隙はなく、満身創痍。これでこそ修行らしいのかもしれぬが、本当に死んでしまいそうでござる。
「はぁっ!」
「あら、やっぱりシュナムクルの娘だけあって、まだまだ良い一撃が出せるじゃないの。
だけど、拳を突きだす時は、絶対に一撃で当てて相手を沈めるだけの自信がなければ引く動作の方が肝心よ」
拙者の伸ばした拳を掴むとそのまま投げに入る。
しかしこれこそ拙者の待ち望んていたこと。
零距離からの炎を当てるための。
「『今こそ汝が右手にその呪わしき炎尽き果てるまで、高き銀河より降りたもう混沌の炎を宿す者也』。
……プラム様、拙者の本気を見せるでござる!」
プラム様の腕を掴んだ段階で『内なる大力』の効果を解除し、練り上げた炎を直接ぶつける。
拙者は未熟故、母上のように溜めも呪文詠唱もなく呪術を使うことはできないが、それでも時間さえかければ、練り上げた炎は太陽すら蒸発させるだけの膨大な熱を有する。
「これで決着でござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅー!!!!!」
勝った! 第三話完でござる!
「まぁ、これは流石に食らうとやばそうだから避けさせてもらうわ」
気が付くと拙者が掴んでいたプラム様は姿を消し、右手に集めた炎は母上の頭に命中していた。
まるでパイ投げ大会でも開かれたかのように鬱陶しそうにベチャッと。
そして頭に飛び散った炎を払う母上。
からからと、少し離れた場所で笑い続けるプラム様。
途中のプラム様の攻撃でズタボロになっていく拙者の姿に貧血を起こしたのであろうシードルおじさん。
「もういいわ、チリパウダー。
腕試しのつもりだったけど、あなたがやけに粘るから、私もちょっと本気を出し過ぎちゃったわね。
さっきの炎は食らっていたら流石にヤバかったわよ」
「だけど忘れちゃいけないわよ。
プラムちゃんは過程を消し去る無敵の能力『キングクリムゾン』を持ってるんだから。
そしてあたしは炎攻撃無効化体質だからどれだけ強かろうが関係なく効かないのよね。
だから自信喪失とかしちゃ駄目よ」
「……(気絶中)」
うむむ、拙者の勝ちかと思いきや、流石は母上とプラム様。
やはり拙者如きでは手も足も出ないでござるか。
しかし拙者は努力家! いつの日か母上に炎による攻撃でダメージを与えられる位にレベルを上げてみせるでござる!!!
……その決意はこれから丸三日。泥のように眠りつづけたあとに決めたのであった。
預言→予知→キングクリムゾン。
私はジョジョは第二部が至高で、第五部が次に好きですが、シリーズで一番カッコいい主人公は? と聞かれたら、第三部の承太郎だと答えます。
まぁ、今回のチリパウダーは努力家の燃える根性の持ち主って感じでやっていきます♪
好きな主人公は? と聞かれたらジョセフです。