呪術師と預言者の悪魔的恋愛   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 チリパウダーの師匠は沢山います。
 彼女はシュナムクル似というよりは、脳筋に育っているので、師匠達もそれに類する人たちばかりですけど。
 そんな感じの話。



第6話:腹が減ったらとにかく走るでござる

「ねぇ、パピロンちゃん」

 

 

「なんじゃ、チリパウダーちゃん」

 

 

「道に迷ったでござる」

 

 

「そうなんだー(突っ込み待ち)」

 

 

 はい、現在絶賛迷子中のチリパウダーでござる。

 

 はてさて、ここはいったいどこなのやら……

 

 

「そうなんだー(待っている)」

 

 拙者とパピロンちゃんは二人揃ったところで適当に歩いていればどこぞの魔界でも見つかるかと思っていたのだが、誰もいない高大な空間を歩きまわるだけ、というのは正直疲れるのでござるよ。

 

「そうなんだー(笑顔)」

 

 そうしている内に食糧も尽きてきたし、パピロンちゃんの目が妖しい光を放っているのも不気味でござる。

 

「そうなんだー「『遭難』……しているでござるよ」流石はチリパウダーちゃんじゃ♪

 ナイスツッコミ♪」

 

 

 途中から拙者の耳をアグアグしてきたので仕方なく答えてあげるのが拙者の弱さなのだろうか……。

 

 パピロンちゃん、拙者は食べても美味しくないからかじらないでほしいでござるよ。

 

 

「はぁ~……旅の初めの頃は、適当に賞金稼ぎでもしながら、強そうな連中に片っ端から喧嘩売れば強くなれると思っていたのでござるがなぁ~」

 

 

「村や町といった集落が見つからないだけでなく、誰にも出会えないからのぅ。

 自然発生する魔物でさえ未だに発見出来ないというのもおかしいが……」

 

 

 うぅ~、腹が減ったでござる。

 

 こうなれば…………何処か集落が見つかるまで走り続ける!

 

 

「うぉぉぉぉぉー! 拙者の根性は師匠から直伝された『根性魔法』でござる!!!

 北か南か東か西へ走れば、何処かには着くはず!!!!!

 今こそ魔界一周マラソン上位入賞者の実力を発揮する時!

 根性ぉぉぉ!」

 

 

「あ、チリパウダーちゃん。

 妾はそんなに早くは走れんのじゃ~」

 

 

 とにかく走る! 腹が減っているからそう長くは続かないでござろうが、それでも走る!

 

 パピロンちゃんはは知るのが得意ではないと言っているが、声がずっと少し後ろから聞こえているあたり、飛んでいるのでござろうな。

 

 拙者も空を飛ぶことくらい造作もないが、やはり根性魔法というのは己の肉体を駆使してこそ!!

 

 このチリパウダー、空腹や迷子などに負けるはずがない!!!!

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「は、腹が減ったでござるぅ~(へろへろ)」

 

 

「ふぅ、やっと止まったか。

 勢いで走ったところで、どうにかなるものじゃないのじゃ」

 

 

「そ……それでも走っている間は空腹を紛らわせることが出来たでござる。

 いま動けなくなったのは、単純に拙者の根性が足りないだけでござる」

 

 

「かかっ、久し振りの再会から武士語に変わっていた時点で予想しておったが、チリパウダーちゃんってば脳筋になっちゃってたのじゃな。

 まぁ、そこが可愛らしくもあるが♪」

 

 

 しかし、根性魔法すら使えないようなこの状況はどうすればいいのか。

 

 走っているうちに何処ぞの魔界に紛れこんだらしく、辺りは鬱蒼と生い茂る森。

 

 そして太陽はちょうど真上に上っているでごさる。

 

 

「『食う物が 無ければ死のう 潔く』チリパウダー、心の俳句 (ばたんきゅ~)」

 

 

「ちょっ! 物語が始まったばかりでいきなり死んじゃ駄目なのじゃ!

 チリパウダーちゃんが死んだら妾のお腹におる子どもはどうなるというのじゃ!?」

 

 

「う……、そうだった。

 拙者が死んではパピロンちゃんとの間に生まれる予定の赤子が……って何でやねん!!(ズビシ)」

 

 会心の一撃がパピロンちゃんに命中した。

「はうっ」

 

 

「でもまっ、人に出会うという目的は達せられたし、良しとするでござる」

 

 

 なんでこんな森の中にいるのかは分からないでござるが、拙者の少し先、向こうは気づいていないようでござるが知った人を発見したのでござる。

 

 

「ん~……あら♪ あれは昔チリパウダーちゃんのお母さん――シュナムクルさんが厄介事を押し付けて遊んだ魔王、“破壊神”アレクサンダーのようじゃな」

 

 

「そのようでござる。

 それにしても何をしているのでござろうか?」

 

 

 何故かウロウロとあてもなく歩いている様子のアレク殿。

 

 普段のあの人なら拙者たちの気配に気づくはずなのに何故か気付かない。

 

 

「えぇい、まだるっこしい。

 妾は男のくせにウジウジしとる輩は好かん!

 秘伝体術を食らわしてくれる!!」

 

 

「あ、待つでござるよパピロンちゃん!」

 

 

 草を掻き分け近づいていくが、それでも気付かないアレク殿。

 

 パピロンちゃんはそれをいいことに両手で寅の印を結び、背後から一気に……

 

 

「秘伝体術奥儀:千年「ちょっ! それは流石にヤバいでござ、アッー!」……あ」

 

 

 拙者に会心の一撃。

 

 

「すまぬ。チリパウダーちゃんに刺してしまったのじゃ」

 

 

「ん? お前ら……シュナムクルとロザリンドの娘たちか?

 こんなとこで何してんだよ?」

 

 

 うぅぅ、まるで母上のようにノリで行動するパピロンちゃんを止めようとアレク殿を庇った結果、拙者のお尻に鋭いものをぶち込まれてしまったでござる。

 

 もうお嫁にいけない……。

 

 

「大丈夫じゃ、チリパウダーちゃん!

 嫁なら妾がもらってあげるから元気を出すのじゃ♪」

 

 

「拙者を貫いた本人がどの口で言うでござるか」

 

 

 まぁ、拙者は母上から成長しない胸と引き換えに、<免疫シュナブリン>を幼き頃に投与されたことで「千年殺し」と言えども、千年後に死ぬ事はないでござろうがな。

 痛みはすでに消えてきたでござる。

 

 

「おい、お前らさっきからオレ様を無視してんじゃねぇよ」

 

 

 あ、しまったアレク殿のことすっかり忘れていたでござる。

 

 

「いや、すまなかったアレク殿。

 拙者たちは偶然アレク殿を見かけて食糧を恵んでいただいた上で何処かの集落にでも案内してもらえればと思ったのでござる」

 

 

「妾はお主を気絶させた後、財布を含めた荷物全部を頂戴するつもりじゃったのじゃがな♪」

 

 

 見つかった以上はせんが、と付け加えるものの、パピロンちゃんの発言に警戒心を強めるアレク殿。

 

 それでも食糧を分けてくれるあたり親切でござるなぁ~。

 

 

「……ほら、喰い物とこの周辺の地図だ。

 これ持って何処にでも行きな」

 

 

「おぉ、なんじゃお主は親切じゃのう♪

 ひょっとして妾やチリパウダーちゃんに惚れたのか?

 妾に惚れたのなら奴隷にでもしてやるが、チリパウダーちゃんに惚れたとあらば、記憶が消えるまで殴り続けるのじゃが」

 

 

「ちょとちょと、恩人でもあるアレク殿に対して失礼でござるよパピロンちゃん」

 

 

 そんな拙者とパピロンちゃんの夫婦漫才のごとき茶番にも軽く笑って済ませてしまうアレク殿。

 

 うむ、確かこのお方は拙者の母上に厄介事を押し付けられ、時間の経過と共になんだかんだで許し合える中になったとは聞くが、ここまで穏やかな性格ではなかったはずなのだが。

 

 

「オレ様が優しすぎると思ってんのか?

 それならばその答えは否定するぜ。

 オレ様は用事があるから、お前らと一緒に居る訳には……いや、一緒の方がいいかもしれないな」

 

 

 一人でブツブツとつぶやくアレク殿。

 

 むむ、これは嫌な予感がするし、食糧と地図を貰った以上、早々に退散するべきか。

 

 

「よし決めた!

 てめぇら、しばらくオレ様と行動を共にしろ」

 

 

 あっちゃ~、面倒事になりそうな予感が的中しかけているでござる。

 

 

「はぁ? 何を言っとるんじゃお主は。

 妾やチリパウダーちゃんがお主如きに付き合って何の得だと言うのじゃ」

 

 

「食い物とかやっただろ。

 いいからオレ様に付いて来い!」

 

 

 やれやれこれは嵐の前の静けさなのか、それともこれが静けさだと言うのならば本番の嵐はどうなることやら。

 

 そんなこれからの旅の行く末に暗雲しか漂っていないと感じる拙者なのであった。




 久し振りのアレク登場ですが、この後の展開も私らしさがあるんですよね。

 私はアレクは好きですよ。一応w
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