るろうに使い魔‐ハルケギニア剣客浪漫譚‐   作:お団子

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第百二十九幕『森林道中、二人の男女』

 

 サウスゴータが炎に包まれる。

 その一方で―――。

 

「えーっと、どこだろう? ここ」

 このハルケギニアに呼び出された青年、瀬田宗次郎はというと……、

 

「……ねぇ、ソウ」

「ああテファさん、どうしましたか?」

「あ、あのね。ずっと、言おうと思ってたんだけど……」

 

 宗次郎はいつもと変わらぬ笑みを浮かべたまま、マチルダから貰った地図を頼りに、道なき道を歩いていた。

 マチルダは「まっすぐ歩けば駅馬につく」と言っておきながら、かれこれ数時間近く森の中を彷徨っていたのである。

 そんな中、彼の後ろでは、しなやかな金髪と尖った耳、ふくよかを越えたふくよかな胸部を持つ少女、ティファニアが、おずおずと話しかけた。

 流石に疑問を感じ始めたティファニアは、ここで彼にこう言ったのだった。

 

「その地図、上下逆さまじゃないのかなーって……」

「……え?」

 

 文字の読めない宗次郎はここに来て、まじまじと地図を眺めながら、頓狂な声を思わず上げた。

 

 

 

 

 

第百二十九幕『森林道中、二人の男女』

 

 

 

 

 

「いやあ、全然気付きませんでした。ごめんなさい」

 あはは、と宗次郎は頭を掻いた。

 一応、マチルダから渡された通りの形で地図を開いてはいたのだが、それゆえにずっと勘違いしていたようだ。

 今は彼女が地図を持っているが、当然現在位置を把握できるはずもなく、引き続き絶賛迷子中であった。

 

「こっちこそごめんね。わたしが早く気付いていれば……」

「まあ仕方ありませんよ。とりあえず、先へ進みましょう」

 

 今はティファニアを先頭に、宗次郎がついていく形になっている。しかし生い茂る草木に阻まれ、歩みの速度は目に見えて落ちた。

 宗次郎が先頭の時は、手際よく進んでいただけに、ティファニアもちょっと汗をかく。

 

「うんしょ、こいしょ……」

「…………」

「きゃっ! へ、ヘビ……!!」

「あのー、テファさん」

「は、はい……」

「道に出るまでは、ぼくが先頭に立ちましょうか? そっちの方が早いし」

 

 ここで宗次郎が、そう申し出た。正直渡りに船と、ティファニアも頷いた。

「え、あ、うん。お願いしてもいい?」

 こうして、再び宗次郎が先頭に、ティファニアが地図を見ながら、指摘する形で進んでいった。

 

 

「ねえ、ソウ」

「はい?」

 道すがら、ティファニアは宗次郎に尋ねる。

 暗闇の森の中、ずっと黙っているのが怖かったのである。

「ソウって、どうしてその……流浪人? を、しているの?」

 とりあえず、彼の事をもっと知りたい。そんな感じでまずは話しかけた。

 対する宗次郎は、

 

「うーん、まあ、色々ありましたからって、答えるしかないですね」

「い、色々?」

「はい、色々」

 

 その『色々』について詳しく聞きたいのだが、まだ今の段階だと踏み入れないような雰囲気を、この時ティファニアは強く感じた。

 宗次郎もちょっと考え込んだ後、次いでこう答える。

 

「もっと言えば、『答え』を探しているんです」

「答え?」

 

 ティファニアの聞き返しに、宗次郎も「はい」と返す。相変わらずの柔和な笑みだが、声は真剣な色を滲ませていた。

 

 

「僕がやってきたことは本当に正しかったのか、間違っていたのか? そしてこれから何をすべきなのか…それを探すために流浪人をしているんです」

 

 

「やってきたこと……?」

「まあ、人には言えないことを、そうですね」

 そう言って一度宗次郎は言葉を切った。

『人には言えない事』、それを聞こうか聞くまいかして……ティファニアはやめた。

 彼は彼で、大切なものを探している。それだけ心に留めておこうと思ったのだ。それに自分だけこうして質問攻めしても可哀そうだとも感じていた。

 だから、今度は別の観点から話を始める。

 

「その答えを探す旅の中で……その、迷惑じゃないかな? わたしと一緒っていうのは……?」

 

 そう、どうしてもこれだけは聞きたかった。

 ティファニアの中では未だに、宗次郎に対する『負い目』が残っている。

 いきなり訳も分からぬ……それこそ文字すら満足に分からない国に呼び出されて、しかもマチルダから一方的に自分を守る仕事を押し付けられた。

 彼からすれば「ふざけるな」という思いしかないだろう。だから、駄目なら駄目と言ってくれれば、こちらもまだ、諦めがつく。

 

「マチルダ姉さんはわたしを想ってああ言ったけど……その、今からでも『やっぱり嫌だ』って、ハッキリ言ってくれればわたしは――――」

「それについては大丈夫ですよ。あまり気にしてませんし」

 

 ティファニアの剣幕を遮るかのように、宗次郎は言った。本当に気にしてなさそうな感じなので、彼女も言葉を失っていく、

 

「こういうのも何かの縁でしょう。逆にあなたは良いんです?」

「ふぇ?」

「マチルダさんって人が言ってましたよね。『契約』がどうのこうのって」

 

 あっ! とティファニアはとっさに声を上げた。どうやら彼は自分とマチルダとの会話を覚えていたようだった。

 

「まだそれらしいことしてないですけど、あなたはそれでいいんですか?」

 

 ちなみに宗次郎はこの時、『使い魔』とはこの世界でいう護衛職のようなものだろうという認識を持っていた。剣心もしているというのだから余計にそう感じたのだろう。

 勿論契約についても、用紙かなんかに自分の名前を書いてするものだと思っていた。方治がよく「契約、契約」と書状を認めながらそんなことを呟いているのを見ていたからだ。

 

「い、いいの!! まだ心の準備ができてないし、その――――」

 ティファニアは真っ赤になって手と首を何度も振った。まさかその『契約』の方法がキスだなんて、とてもじゃないがまだ彼には言えない。

 ただ、たとえ方法がキスじゃなかったとしても、今のティファニアはまだ、彼と契約する気はなかった。

 勿論嫌いだとか、そういう意味ではない。むしろ窮地を助けてくれた彼に嫌悪なんて、抱く筈もない。彼をこれ以上自分の運命に縛りつけたくなかったのである。

 それと他にも、外を、世界を、世間体を知らないからこそ来る、小さな願望。

 

 

「あなたとは『使い魔』とかじゃなくって、『お友達』になりたいの」

 もっと、彼を知りたい。それからだった。

 

 

「『友達』?」

「うん、友達」

 友達。それを聞いた宗次郎はしばし、呆けていた。

 まるでその単語を、初めて聞いたかのような反応だった。

 宗次郎は思わず、足を止めて立ち止まる。それを受けて、それでもティファニアは、ここは勇気を振り絞って、聞く。

 

「その、ダメ?」

 うるんだ目で、ティファニアは尋ねた。長い耳はしゅんとしおれている。

 しばし向かい合ったまま、立ちすくんでいた二人だったが……、

 

「いえ、いいですよ。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 やがてそう言って、宗次郎はお辞儀した。その顔は再びにこやかなものへと戻っている、ティファニアもまた、慌てながらお辞儀し返した。

 

「う、うん。よろしくね。だから、その……」

「はい?」

「友達になったからほら、わたしに敬語とかいいから。さん付けもいらない。『テファ』で、いいよ」

「あぁ……」

 

 宗次郎は思うような表情をした。よくよく考えると、ずっと目上の人ばかり会ってきたから、敬語や尊称付けでやってたっけ。

 こういった同年代の少女と真っ向から話すことなんて、宗次郎の人生の中では一度もなかった。まだそれに慣れていないというのもあるのだろう。

 でも、彼女はそういった対応は嫌らしい。なので宗次郎も笑顔で頷いた。

 

「分かりました。テファさん。……あ」

「あ――ふふっ」

 

 それを聞いて、ティファニアは初めてクスリと笑った。金色の妖精の微笑みは、それだけで絵になるのである。他の貴族男子が見たら、さぞ嘆息することだろう。

 宗次郎もまた、しばし彼女の笑顔を正面から見つめていた。

 

「まあ、ソウが楽な方で呼んでくれればいいわ。無理強いはしないから」

「分かりましたよ、テファ。……あれ?」

 

 ここでぐぅ~っと、お腹が鳴った。宗次郎じゃない。ティファニアだった。

 ティファニアは笑顔のまま、段々顔を赤くしていく。しかしそれも仕方がない。夕食の準備をしている途中で誘拐され、その後何も食べていないのである。

 

「お腹が空いたんです?」

「あの……き、聞き違いじゃないかな~……」

 

 ティファニアはあわあわしてそう言うが、宗次郎はごそごそと服の中から小さな包みを取りだす。

 後で食べようと思っていた『はしかぷ餅』だった。

 

「これでよければ、ありますよ。僕の国の食べ物ですけど」

「そんな! 大丈夫よ、わたしは全然―――」

 

 今度はより一層大きな腹の音が鳴った。理性では否定しても、身体は正直なようだ。

 宗次郎がクスリと笑って、丁度座れそうな大きさの岩を指さした。

 

「あそこで座って食べますか?」

「……うん、ありとうね。ソウ」

 

 結局ティファニアは、欲求には勝てなかった。

 顔を真っ赤にしながらも、宗次郎の好意に預かることにした。

 

 

 大岩は丁度、二人分が座れる大きさだった。ティファニアは包みを開けて、たれがかかった餅を一口。

 

「はむっ……」

「美味しいですか?」

「うん、美味しい……」

 

 ここで宗次郎は彼女に視線を移す。見れば、彼女の目にまた涙が溜まっていた。

「ごめんね。気が緩んじゃったのかな。美味しいのは本当よ、なんか、一息ついたら急に……」

 涙を拭きながら、それでも一口かじる度にティファニアは涙した。一旦落ち吸いたせいで、これまでのこと、これから何が起こるのか分からない不安が、一気に来たのだった。

 それでも、気丈に涙を拭いて、初めて食べる餅を噛み締めた。

 

「すごく、すごく美味しいよ。ソウ……」

「そうですか。良かったです」

 

 ゆっくり噛んで、最後まで味わう。小さいためこれで満腹にはなれなかったが、心は満たされた気持ちになった。

 

「本当にありがとう。……ねえソウ」

「何です?」

「ソウの世界って、エルフはいないの?」

 ティファニアは両耳を触って尋ねる。この世界でエルフは恐怖の象徴、誰もがこの長い耳を見て、一度は恐れおののく。

 だが宗次郎や剣心は不思議と自分を恐れるような感じは見られなかった。だから、心の底から安心できるのかもしれない。

 

「聞き返してすみません。『えるふ』って、そもそも何です?」

「……本当に知らないんだ。何か不思議な気持ち」

 

 そう言いながらも、ティファニアは説明を始めた。東方に棲む亜人で、『大いなる意思』を拠り所にする種族。自分の母もそうであったこと。あと、アリィーもそのエルフだと言うことも教えた。

 

「ああ彼もそうだったんですか。へぇー」

 そう言いながら、宗次郎は腰の剣を少し引き抜く。彼から貰った曲刀だ。

 こうやってティファニアから説明を受けても、結局宗次郎からすれば「ふぅーん」の一言で終わってしまった。

 何せ「強いから怖い」と言われても正直ピンとこないのだ。まあアリィーは確かにできそうだとは思うけど……、

 

「彼より強い人なんて、僕のいた国にも、たくさんいますしね」

 

 そこに行きつくのだった。かつて志々雄と共に様々な『異形の化け物』を見てきたのだ。

 爆弾を使って空を飛ぶ人も見た。身の丈ほどもある大鎌を操る人もいる。

 建物ほどの大きさを持つ武人だっている。全てを拳で砕く僧も、めくらなのに卓越した剣腕の人だって知っているのだ。

 それに比べれば正直、見劣りしかしないのである。外見の違いも、耳の長さくらいししかないし、余計にそう思うのだろう。

 

 

 ……ちなみに志々雄をして『一番の異形』と言わしめたのが今、少女の目の前にいるこの青年なのであるが、当然ながらティファニアはそんなこと知る由もない。

 

 

「そうなんだ、エルフより強い人が、ソウの世界にはいるんだ」

 一方のティファニアは、『エルフより強い人間がいる』と聞いて、ちょっと想像がつかないかのような声を漏らした。

「それじゃあ、エルフを恐れない筈よね」

 よかった。ティファニアは小さく、安どの色を含んだ声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

「ねえソウ? 良かったら教えてくれない?」

「何です?」

 二人は今、再び歩きながら会話をしていた。草木を掻き分け進む宗次郎に向かって、ティファニアは話し始める。

 

 

「ソウって、たまに消えるように動く時があるけど、あれって何か『魔道具』を使っているの?」

 

 

 剣心人形との闘いを思い出し、ふと疑問に思ったことを口にする。

 特に最後の攻撃。衝撃音が鳴り響く光景……あれは彼女から見ても「何かおかしい」としか思えなかった。

 流石に人力だとはまだ思ってなかったティファニアは、何か道具を使って惑わしたのだと、この時までそう考えていた。

 一方、それを聞いた宗次郎はというと……、

 

「あはは、違いますよ。僕はただ『疾った』だけです」

「えー、うそ。人があんなに速く動けるわけないわ。魔法だってきっとないわよ」

 

 はぐらかされていると思ったのだろう。ぷくーっと顔を膨らませるティファニア。

 うーん、としばし唸っていった宗次郎は、ティファニアの方を振り向いた。

 

「テファは『縮地』って、聞いたことない?」

「しゅく、ち?」

 

 勿論知らない。ティファニアは首をかしげた。

 

「そういう体技があるってことです」

「体技って……魔法ですらないの? それであんな消えるように動けるの?」

「まあそうですね。……って、あ」

 

 ここで宗次郎は立ち止まってしまった。

「どうしたの?」とついてきたティファニアも、目の前に広がる光景を見て立ちすくんだ。

 

 草木を掻き分け進んだ二人に待ち受けていたのは、十メイル以上はあろうかという峡谷だった。

 

「あ、これは通れないわね……」

 せっかく進んできたのに……と、ちょっと気落ちする。

 ここで普通のメイジなら、『フライ』を使っていけるのだろうが、残念ながら今自分が使えるのは『忘却』だけだ。

「ごめんねソウ。一旦戻りましょう」

 そう言って引き返そうとするティファニアの背に、宗次郎の不思議そうな声が届く。

 

「え? 何で? 飛び越えればいいじゃないですか」

「え?」

 

 思わず、聞き返してしまった。

 しかしこちらを見る宗次郎の瞳は、一切の冗談が含まれていない。

 

「飛びこすって……、この崖を?」

「まあ、行けると思いますよ」

 

 あっけらかんと、宗次郎は言ってのける。ティファニアはぽかんと口を半開きにした。

 でたらめを言っていないことだけは、分かった。分かってしまった。

 

「ど、どうやって?」

「跳躍して」

「……わたしは、無理よ? あんな距離飛べないよ…?」

 

 すると宗次郎は、崖の距離をもう一度眺めて、再びティファニアの方へと振り返った。

「これぐらいだったら、抱えていけば問題ないですよ」

「……ほんと?」

 宗次郎はにこやかに頷いた。ティファニアはしばらく考えてしまう。

 ただ、地図を見るとこの崖を越えれば道に出る筈なのだ。ここで退き返してまた、迷ってしまうのも……と、色々考えが巡っていく。

 でも、今は一刻を争う。決意したかのように、ティファニアは言った。

 

「じゃ、じゃあソウ。お願いしてもいい?」

「いいですよー」

 

 宗次郎は背を向け少し屈んだ。背負ってくれるようだ。

 ティファニアは意を決して、彼の背に身体を密着させる。

 

 むにゅ。

 

 この時、ティファニアの豊満な果実が、宗次郎の背に確かに当たった。

 宗次郎はそのまま立ち上がる。ティファニアは彼の首筋に手を回す。すると更に胸が柔らかく形を変えていき、やがてしなやかに潰れていった。

 

「最初に会った時からずっと思ってたんですけど」

「な、なに……?」

「大きいですよね」

 

 はうぅ、ティファニアは顔を真っ赤にさせた。

 

「正直初めて見ましたよ。由美さん以上ある人なんて」

「うぅ……やっぱりソウから見てもこの胸、おかしいんだ……」

 

 見る者全てを魅了させる天然の果実も、他人と違うことを気にする彼女にとっては、悩みの種であった。

 異国の人間たる宗次郎から見ても「変」だと思われたティファニアは、小さく呻いてしまった。

 

「それより、良いんです?」

「え?」

「もっと、くっついてなくて」

 ビグン! とティファニアは撥ねた。それはもう、心臓も一緒にはねたんじゃないかって思うくらい。

 そんな、戸惑う彼女に構わず宗次郎は続ける。

 

 

「まあいいや。じゃあ、『振り落とされないように』、気を付けてくださいね」

「え?」

 

 

 トン、トン、トン――――

 

 宗次郎は足先で地面を蹴り始めた。剣心人形と闘い始めた時のように……。

 そして次の瞬間、

「あっ――――」

 ティファニアの視界は、一気に全てが霞みがかっていった。

 

 

『縮地』、その三歩手前。

 

 

 第三者がいれば瞬間移動を疑われるかのようなその動きは、崖の直前で大きな衝撃音を鳴らした。

 そしてそのまま、宗次郎は一気に向こう岸まで跳躍した。

 

「きゃ―――ぁ―――っ―――……」

 

 一方のティファニアは、悲鳴すらまともに上げられない。

 今まで体験したとことのない『圧力』が、一気に襲い掛かってきたのだ。

 そして絵も言えない独特の浮遊感が今度は身を包む。どうすることのできない不安と恐怖に、遂にティファニアは負けてしまった。

 隣の岸に着地すると同時に、首に回していた手を放してしまった。

 そのまま勢いと重力に引っ張られ、頭を思い切り打ち付けてしまった。

 

「うん、行けましたね。って、あれ?」

「きゅぅぅ……っ」

 

 そう言いながら振り返ると、そこには頭を打って目を回す妖精の姿があった。

 

「あー、だから言ったのになぁ」

 やれやれといった口調で、宗次郎。幸い地面は柔らかい土だったので、軽い脳震盪ぐらいで済んだと思いたいが……。

「もしもーし、テファ? テファさん? 大丈夫ですかー?」

 あまり動かすのも悪いと思った宗次郎は、彼女を横にして暫くの間、ここに留まることとなった。

 

 

 

 

「―――ぅん?」

「あ、やっと気が付きましたね」

 

 薪の弾ける音で、ティファニアは目を覚ました。

 上半身を起き上がらせて周囲を見渡す。そこには広々とした空間で焚火をしていた宗次郎の姿が最初に目に移った。

 

「もう目を覚まさないんじゃないかなって思いましたよ」

 

 ちょっと他人事のような笑みを浮かべて、そんなことを言ってくる。

 ティファニアはここで、自分が頭を打って気絶したことまで思い出した。たんこぶができた後頭部を擦りながら、慌てたように聞く。

 

「あ、わたし……どれくらい寝てたの!?」

「結構寝てましたよ。このまま朝になるんじゃないかなって思うぐらいには。僕も少し仮眠していました」

 

 思わず上を見上げる。

 しかし生い茂った森に阻まれ、周囲は未だに暗いままだ。

 

「ご、ごめんね。まさかあんなにギュン! って、来るとは思わなかったから……」

「あれでも結構抑えたんですけど、まあ、大事なくて良かったです」

 

 謝るティファニアに対し、笑いながらそう返す宗次郎。

 この時彼女が注目したのは、彼に対する申し訳なさよりも、「あれでも抑えた」という理解不能な単語を解することだった。

 

「抑えたって……、あれ以上が出せるの!? しゅくちって、そういうものなの?」

 

 俄かには信じられないような声で、思わず話しかけてしまう。

「あれは『縮地』じゃありませんよ。正確には、その三歩手前です」

「さ、三歩手前……あれで……?」

「緋村さんの偽者を倒した時と、大体同じ速度です」

 

 そう言われ、思わずあの時の記憶をティファニアは掘り返す。

 

「はぇー……」

 周囲に衝撃音だけが迸る光景―――あれが、そうなんだと言われ、ようやく納得してしまうと同時に―――、

 

「しゅくちって、すごい」

 呆けた声で、そう呟くのだった。

 

 

 

「……ねぇソウ」

「何です?」

 

 ある程度休んで回復したティファニアは、再び宗次郎と共に歩き出す。

 そんな中、先程十メイル以上ある崖を飛び越した彼の脚力を思い出し、尋ねる。

 

「その、しゅく……縮地? って、覚えればわたしもできるようになるのかな?」

 

 あれが体技というのであれば、鍛えれば覚えられるのかもしれない。忘却魔法しか使えないからこそ、そんなことを一瞬、考えてしまったのだ。

 しかし宗次郎からは、

 

「いやあ、多分無理でしょう」

 と、至極バッサリと切り捨ててきた。ティファニアはおもいっきしがっくりとくる。

 そこまではっきり言わなくていいのに……、一瞬そんなことを考えるが、宗次郎はきっぱりとした物言いで続ける。

 

「僕の知る、超一流の武芸の達人たちでさえ、この速度には至れませんでしたから。まあ、破ってくる人は、何人か知っているんですけど」

「あの速さに対応できる人が、ソウの国にはいるんだ……」

 

 三歩手前でもう、何をしているのかさっぱり分からないティファニアからすれば、この時点で驚きしかない。

 それだったら確かに「エルフより強い」と言われても納得しかないだろう。

 

「あの人形の本体……緋村さんなんかそうですよ。僕は本物の『天翔龍閃』を食らって、負けましたから」

「ヒムラさんっていうのね。…あの人って、やっぱり、相当強いの? マチルダ姉さんもそんなこと言っていたけど…」

「ええ。だから楽しみでもあるんです。緋村さんを召喚した人って、どんな人なんでしょうって」

 そんなことを話していた時だ。ようやく、人によって作られたであろう道に出た。

 よく見ると空も白んでいる。どうやらとっくに日が昇っていたようだ。

 

「やった、道に出たわ!!」

 ティファニアはぴょんぴょんと小躍りして宗次郎に近づいた。

 

「ええ、良かったです。……すっかり日が昇りましたけど」

「あ、そうか。これからサウスゴータに行くんだったっけ」

 

 と、ここで思い出したかのようにティファニアは言った。色々とさ迷い歩いたが、目的はサウスゴータへ行って剣心達と合流することである。

 

「マチルダ姉さんや子供たちとも、無事に会えると良いんだけど」

 

 マチルダやウエストウッドの子供たちの事を考えながら、二人は道を歩いていく。

 やがて視界の先に、出口が見えてきた。

 

「あ、ようやく外に出られそうですね」

「うん! 良かっ―――」

 

 そんなことを話しながら、遂に森を出た二人が最初に目に着いたのは……、

 

「なにあれ?」

「さあ?」

 

 疲労困憊の様相を呈した、人々が織りなす長蛇の列であった。

 

 

 

 

 サウスゴータ消滅から、すっかり日が明けた。

 敗戦した連合軍は、すでに既に我先にと逃げ出した後であった。誰も、あんな悲惨な現場を見て戦意を保てるはずもなかった。

 馬や竜など、足を持っている将校や兵は既にロサイスへと向かい、輸送船へ乗り込みこの忌まわしき大陸からの脱出を始めていた。

 逆に、足を持たない木っ端兵や市民、慰問隊たちは、自分の足でロサイスまで向かうしかなかった。

 幸い、ロサイスからサウスゴータまでの距離はそこまで離れていない。なので真夜中から昼間まで歩いていた先頭の列は、何とか港まで辿り着いている。

 しかし、当然ながら人の持つ足の速さは十人十色。病気、怪我、年齢、諸々の事情で人並みの速度を出せない者たちは、今も這う這うの体で必死に歩いている。

 丁度、その列の中に宗次郎とティファニアは出くわしたのだった。

 

 

「何かあったんでしょうかね」

「うん、そうかもね」

 ティファニアは背中にかけてある帽子を取り出し、頭に被った。理由は勿論、耳を隠すためである。

「行ってみよっか。ソウ」「はい」

 二人はそのまま、列に向かって歩を進め、その中の人に話しかけた。

 

 

「何かあったんですか?」

 話しかけた相手は胸元を大きく開けた大男だった。あまりに目立つため、自然と彼に近づいたのだった。

 

「何かって……、あなたたちもサウスゴータから逃げてきたんじゃないの?」

「へえ? サウスゴータ?」

 

 奇妙な女言葉も気になるが、途中で出た「サウスゴータ」という単語に、思わず宗次郎とティファニアは反応する。

 

「僕達、そのサウスゴータに向かう途中なんですけど、何かあったんですか?」

「あ、あんた本当に知らないの? サウスゴータは今、とんでもないことになっているのよ!!」

 

 そう言って出てくるのは、ふくよかな胸をした黒髪の女性だ。よく見ればこの二人の周囲には、いかがわしい服を着た少女たちが何人もいる。

 そして、その後ろには……、

 

「あ、テファお姉ちゃん!!」

「無事だったのね! 良かったよおおお!!」

 

 台車に乗っている子供たちが、ティファニアを見るなり涙声でそう叫んできた。

「あ、ジム! エマ! みんなも無事だったのね! 良かったあ!!」

 

 ティファニアもまた、台車から降りてくる子供たちを見るなり、嬉し涙を流しながら駆け寄って抱きしめた。

 

「あら、じゃああなたがケンシンちゃんの伝言にあったティファニアちゃん!?」

「え、あなた今、緋村さんの名前を出しました?」

「そういうあんたは誰? なんか風格はケンシンと似ているけど…」

 

 そんなこんなな会話をしながら、ティファニアと宗次郎は、『魅惑の妖精』亭とウエストウッドの子供たちの面々と出会ったのであった。

 

 

 

「そうだったんですか、マチルダ姉さんのお人形とケンシン……? さんが、あなた達をここまで送ってくれたのね」

 ここまでに至る経緯を聞いて、ティファニアはそう頷いた。

 エルフ騒動の後、やってきた衛士たちにより、慰問隊は早々と強制退去させられていた。

 スカロンやジェシカは、攫われたシエスタを探そうとするものの、火事と怪物の群れで混乱は頂点に達し、結局街から逃げざるを得なかったのだ。

 その道中、スキルニル(マチルダ)が乗る馬と子供たちと合流したのである。子供たちの事情はそこで聞いたのだった。

 スキルニルは、『もし何かあればこの人形(わたし)をお使いください』と言い残し、人形へと戻った。今その人形は、スカロンが持っていた。

 

「ったく、あいつには一言言ってやりたいのよね。こっちも大変なのにさ。ウチは託児所じゃないっての」

 ジェシカはぷんすかと腹を立てながらそう言う。頼れる先が無いとはいえ、勝手に子供たちを押し付けられたらこうも言いたくなるだろう。

 

「あ、それについてはごめんなさい。怒るならわたしにして。ケンシンさんはわたしたちを助けに来てくれただけだから……」

「まあ、聞けばあなたも相当大変だったそうね」

 

 仕方ないか、と、ジェシカも怒りを抑える。

 その二人の隣では、

 

「へえ、あなたもケンシンちゃんと同じ国出身なの。確かに空気感は彼と似ているわね」

「まさか、ここで緋村さんの知り合いに会えるとは思いませんでした」

 スカロンと宗次郎が、そう話し合っていた。

 

 

「で、本当なんですか? サウスゴータ自体が吹っ飛んでしまったって」

 

 

 文字にするとかなり突飛な言葉だが、それを言う宗次郎の顔はいつも通りの表情だった。

 スカロンもまた、疲労が少し見えた顔で頷いた。

 

「本当にすごかったのよ。遠目でしか見れなかったんだけど、ピカって光ったと思ったら、次の瞬間には町並みがきれいさっぱり消えていて……」

 

 思い出したのだろう、女子の何人かはふるふると身震いした。

 ティファニアや宗次郎は想像つかなかったようであるが、彼らの表情から嘘は言ってないのだろうとは思っていた。

 

「本当にすごかったんだから。シエスタ、大丈夫かな……?」

「ケンシンちゃんたちを信じるしかないわね」

 思うようにそう話す妖精亭のスタッフを尻目に、宗次郎は人混みの列の向こう側を見やった。

 この列の最後尾を辿っていけば、サウスゴータに行けそうだ。

 

 

「ま、行ってみればわかるか」

 

 

「えっ!? 今から行くつもりなの?」

「はい。どのみち僕は緋村さんに会うつもりでしたので」

 まるで剣心が死んだなどとは微塵も思ってないかのような口調で、宗次郎は言った。彼が自分と闘った時と変わっていないのであれば、激戦の渦中に必ずいると思っていたからだ。

 その時だった。幻獣に乗ったヴァリエール家の斥候が、飛びながら市民たちに告げる。

 

「早く逃げろ! アルビオンとガリアからの連合軍が此方に向かっている! 捕まりたくなければ早く逃げるんだ!!」

 

 余裕のない声で、そう叫んでいる。

 ヴァリエール家の幻獣騎士はこうやって散発的に市民の護衛を当たっていたのだが、それももう、限界が来ているようだった。

 トリステイン、ゲルマニア連合の船は、全て避難船としてロサイスに移動させてしまっていた。皆ガリア空軍との闘いで中破以上に負いこまれてしまい、『ヴィセンタール』のように地上着地させることもできず、ロサイスに行くしかなかったのである。

 それを聞いて、市民たちからの悲鳴が巻き起こる。ある者は必死で走り出し、ある者は泣き崩れ、あるものはどうしてこうなったのかと諦める者もいた。

 自然、『魅惑の妖精』亭のみんなも騒然としていく。そんな中、宗次郎は走り出す人々とは逆方向に歩き始めた。

 

「ほ、本当に行くの!? ソウ!!」

 ティファニアが慌てたように宗次郎に駆け寄る。だが、彼の歩みは止まらない。

 

「まあ、どんな風になっているのか、軽く見てきます」

 朗らかな笑みのまま、そのまま一人歩き出す。ティファニアはどうしようか、一瞬迷った。

 

「行っちゃ駄目! テファお姉ちゃん!! ぼく達と一緒に来てよ!!」

 子供の一人、ジムが身を乗り出して彼女の手を掴む。「ジム……」と、ティファニアも少年の顔を見やる。

 そうする内に、宗次郎はどんどんと進んでいった。やがて……――、

 

 トン、トン、トン―――、

 

 足先を地面に叩き始める。ティファニアはハッとした。彼は『縮地』を使うつもりなのだ。

 

 行くの? 本当に……行っちゃうの…? わたしを置いて…?

 

 ティファニアの中で、様々な思いがぐるぐると駆け巡る。初めて会った事、自己紹介したこと、森の中であった、色々な事。

 まだ彼と会って一日も経ってない筈なのに、ここで彼と離れ離れになることがもう、ティファニアにとって「怖い」と、そう思うようになり始めていた。

 

「待ってソウ!! わたしも行くわ!!」

 

 気付けばティファニアは、宗次郎の背に抱き着いていた。

 そうしないと、『縮地』であっという間にいなくなるんじゃないかという恐怖にかられたからであった。

「えっ!?」

 いきなりの彼女の行動に、子供たちや妖精亭の皆も驚いたが、宗次郎自体も驚いたようだった

 

「ちょっと見てくるだけですよ。そんな今生の分かれてわけじゃないし―――」

「でも! あなたはまだこの国のこととかよく知らないんでしょう!? ちゃんと帰ってこれるの?! わたしも知らないけど…」

 

 それに……と、ティファニアの剣幕は止まらない。

 

「もう逃げるのをやめにしたいの! どうして向こうはわたしの力を狙うのとか、わたしの力って何なのか…それを知らないとまた、昨夜みたいなことになっちゃうから…、お願い!」

 ティファニアはそう言って、彼の背に顔を埋めた。本当は怖くて、声は震えているのに、服を掴む手は力強く離さない。

 

「………―――」

 しばし、宗次郎は不思議そうにティファニアを見つめていたが、やがて頷いた。

「分かりました。良いですよ」

「……良かった!!」

 

 心底ほっとしたような様子で、ティファニアは豊満な胸をなでおろした。

 

「ちょっと待っててね」宗次郎にそう言うと、最後にスカロンたちに話しかける。

「ごめんなさい。もう少しだけ、この子たちを預かってはくれないでしょうか……?」

「まあ、さっきのマチルダさんって人形から、お金はたくさん頂いたから大丈夫だけど……」

 

 マチルダのスキルニルから貰ったという、金貨の袋を取り出し、確認するジェシカ。

 これと昨日一昨日のエルフの二人組から貰った砂金を合わせれば、かなりの儲けに達することだろう。大変な目にこそ遭ったが、十分な稼ぎにはなっていたのだった。

 だから、子供たちの身の振り方についても、多少の融通は利かせられる。

 

「ええっ!? 行っちゃうの!! 嫌だよお姉ちゃん!!」

 そう言って抱き着いてくるのはジムだった。ティファニアは最後に、子供たちを屈んで抱きしめて言った。

 

「ごめんね。でももう、これ以上わたしと一緒にいたら、あなた達まで巻き込んじゃう。それはわたしもイヤなの。だからお姉ちゃん、行くね」

「でも! でもぉ……!」

「ジム、あなたが一番の年長者なんだから、みんなの面倒を見てあげて、ね」

 

 お願い。そう言って最後にジムをぎゅっと抱きしめる。その豊満な胸が、顔にふっくらかかった。

 しばしの沈黙の後、ジムは言った。

 

「分かった。その代わり、必ず帰ってきてね」

「うん。約束」

 

 そう言って約束を交わした後、ジムは宗次郎の前々来て、涙ながらに叫んだ。

 

「ティファニアお姉ちゃんを泣かせたら、ぼくが許さないからな!」

「ええ、分かりました」

 

 宗次郎も膝を折って、少年の顔を覗き込んだ。その顔はいつも通りにこやかなものだ。

 

「あ、もしケンシンに会えたらさ、シエスタのことについて、聞いてきてくれない!」

 最後にジェシカが、宗次郎にそう言ってくる。「良いですよ」と、宗次郎も二つ返事で頷いた。

「じゃあ、行きますか」「うん」

 ティファニアは再び、宗次郎の背に身体を預ける。

 再び、くにくにと胸が大きく形を変える。それを見た妖精亭の面々も、少し呆けた顔をした。

「…あなたたち、そんな恰好で行くの?」

 思わず、スカロンはそう尋ねてしまった。ジムに至っては「ずるい!」と思わず叫んでしまっていた。

「は、はい。…でもきっと、これが一番速いのよね? ソウ」

「ええ。でも今度は、三歩手前以上出しますよ。また気絶しないようにしてくださいね」

 

 トン、トン、トン―――、

 

 再び、リズムよく地を蹴る音がティファニアの耳に届く。

 崖を飛び越した時のことを思い出した彼女は、もっとギュッと、それこそ豊満な胸が横にはみ出るぐらい、思いっきりくっついた。

 自然、今度は宗次郎の顔と、ティファニアの顔が真横になるぐらい近くなっていく。彼女の吐息が、彼の耳に丁度入るぐらいの距離だ。

 

 これから何をするのかさっぱり分からない妖精亭の面々は、思わずそんな二人を見て赤面してしまった。

「おおぉ、大胆……」

 と、ジェシカに至っては感嘆の声すら漏らしてしまう。子供たちも同じだった。行き成りよくわからない青年に抱き着くティファニアを見た、彼らの胸中は計り知れない。

 

「じゃあ、行ってくるね。みんな、気をつけてね」

 振り返ったティファニアは最後に、子供たちに案じるように言った。

 

「いいよ、ソウ」

「じゃあ、縮地の三歩手前から、段階踏んでいきますね」

 

 ティファニアがついてこれるかどうかの気遣いのために、宗次郎はそう言った。

 そして次の瞬間、巨大な爆音と共に、二人の姿は消えた。

 

「―――――へ?」

 当然、それを見た妖精亭は、呆気にとられた。

 爆心地の後に残ったのは、ふわりと舞い上がる、ティファニアの帽子。

 耳を隠すためにと、少しつばが垂れ下がっている帽子だ。台車の上にいたエマは、自分に向かってゆっくり落ちてくるそれに手を伸ばそうとして―――。

 

「―――ぇ?」

 

 一瞬だけ、確かにこの少女の視界に移った光景。

 飛んでいった帽子を取るためだけに戻ってきた宗次郎が、しがみつくティファニアと共に跳躍して帽子をつかみ取り、そして人の列の向こうへと横切っていく光景だった。

 そしてその時の宗次郎は、確かに自分に向かって微笑んでいた。

 

 それに呆けていたエマは、次いでドゴン!! という爆音が列の向こう側で鳴り響いたのを、確かに聞いた。

 

(―――あの人、もしかしてすごい人なのかな)

 あの動きだけで、子供たち、とくにエマは、頼りがいがある人という認識を早くも持っていた。

 彼だったら、大切なティファニアを守り通してくれるかもしれない。思わずエマは、祈った。

「ぶりみるさま。どうか、ティファニアお姉ちゃんとあのひとが無事に帰ってきますように……」

 

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