るろうに使い魔‐ハルケギニア剣客浪漫譚‐   作:お団子

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第八十四幕『追憶② -Encounter-』

 

「あれ、ここは―――」

 ルイズが目を見開いた時に見た光景。それはまた、剣心の夢の世界だった。

 仄かに差す日光。畳と襖が織りなす木の匂いが今は身を包んでいる。夢なのに、まるで自分もここにいるかのような感覚だ。

『解除』を撃った後、疲れて剣心に身を預けたところまでは覚えている。どうやらそのまま、使い魔の記憶の続きに来てしまったようだった。

(最近、ケンシンの記憶をよく見るようになったわね)

 ルイズ自身、純粋にあの後どうなったのか、続きが見たかったのかもしれない。

 

 あの女性は、どうなってしまったのか……と。

 

 ルイズは周囲を見わたした。ここは剣心たち維新志士が利用している拠点。『小萩屋』という旅館の二階だった。

 いつも剣心はここで寝泊まりしている。といっても、布団は敷かず、いつも自分の部屋でやるように、刀を肩にかけて座るような姿勢でだが。

 彼が『人斬り抜刀斎』である以上、奇襲などに対応するために自然とこうなったようであった。

 その隣では、丁度今剣心が目を開けたところだった。そして、目の前で畳まれている布団を見て、驚いたように立ち上がった。

「ど、どうしたのケンシン!?」

 慌ててルイズも立ち上がる。その時、微かだが布団から白梅香の匂いが薫った。

(もしかして、ここにあの人寝かせてたのかしら?)

 前回の夢の最後、女性は糸が切れたように倒れていった。もしかしたらあの後、剣心はあの女性をここまで運び込んで、様子を看ていたのかもしれない。

 まあ、あの状況を放置する剣心じゃないだろうけど……、なんかこう、ちょっと嫌な気分になる。

 モヤモヤを抱え始めるルイズをよそに、剣心はスタスタと二階の階段を下りて行った。ルイズもまた、慌ててそれに続いた。

 

 

 

 

 

第八十四幕『追憶② -Encounter-』

 

 

 

 

 

「待ってよケンシンったら!!」

 ルイズは叫んだ。しかし剣心はその声に反応することなく一階の台所の前の廊下までやってきた。

 どたばたと慌ただしい。どうやら朝食の膳を運んでいるようだった。

 そしてその中には……、何故かあの女性もいた。

「え? なんであの人働いてるの?」

 さも当然なような感じで、この旅館で忙しなく動いている。今は重ねた食膳を持って廊下を歩いていた。

 剣心もまた、彼女を見ると其方へ足と運ぶ。

 途中、髪が白んだ老婆が、嗜める様に剣心に言った。

「緋村はん。うちは『出会茶屋(ラブホテル)』じゃないんどす。よう働いて助からええねんけど……」

「はぁ!?」

 ルイズは思わず叫んだ。どうやら剣心が女性をたらしこんできたと思っているようだ。

「違うわよ! ケンシンはそんなんじゃないって……、てかあんたも否定しなさいよ!!」

 思わずルイズは叫んだ。なんか、積極的に否定せず、仏頂面続けるこの馬鹿をぶん殴りたい。そんな衝動にすっごく襲われた。

 しかし、剣心はそんなルイズの切なる思いを無視して、そのまま女性の元へ近づいていく。

「おい、もういいのか?」

 ぶっきらぼうながらも案じるような声。それに反応した女性は足を止め振り向く。

「すみません昨日は……。なんだか、お世話になったようで」

「名は?」

「巴です。雪代巴」

 巴。

 その名を聞いた瞬間、ルイズは首をひねった。

(トモエ? あれ、どっかで聞いたような気が……? どこだっけ??)

 何だろう。思い出せない。記憶の棚の奥底にしまい込んだようなもどかしさを覚える。

 その記憶の棚を必死になって漁ったが……、駄目だ、出てこない。結局何処で聞いたかを思い出せず、ルイズは諦めた。

 その間にも、剣心は巴と会話を続けていた。

「ここで何をしている?」

「見ての通り、台所でお手伝いを」

 それだけ告げて、巴は歩き出す。

「な、何よアイツ……? なんでこんな?」

 彼女の後ろ姿を見やりながら、理解ができないとばかりにルイズは呟いた。

 

 

 松の間と呼ばれる広い所で、長州志士たちの朝食は開かれていた。

 案の定というか、巴は皆の注目の的になった。

 美人というのもあるのだが、やはり「剣心が連れ込んだ女性」というのが一番目を引いたようだった。

「あれが緋村の女か?」

「なんじゃあなんじゃあ! 緋村の奴もすみにおけんのぉ!!」

「だが愛想がないのは緋村そっくりじゃなあ」

 周囲は当然茶化す。しかし依然剣心は憮然としたままだ。

 だが、ルイズの方は気が気でなかった。

「だ、か、ら、ちゃんと、否定しろっつってんのよ! このバカ犬!!」

 何度も記憶の中の剣心を蹴りながら、ルイズは叫ぶ。

 肝心の剣心がうんともすんとも言わないのだから、余計やきもきするのであった。

 そんな剣心の隣に、飯塚が座る。彼もまた、にやけたような口調でやいのやいの言ってくる。

 正直ルイズはコイツが好きじゃなかった。すっごく剣心に馴れ馴れしい。そしてさも相棒面しているのも腹立つ。まだデルフの方が良いとさえ思っていた。

「どこで拾った? 上玉じゃないか。ありゃあ訳アリだな」

「………」

 剣心は何も言わず、ただ黙々と飯を口に運んでいる。

「で、どうだった『味』は?」

「「え?」」

 剣心とルイズ、丁度声がハモった。しかし飯塚はニヤニヤ顔で梅干し(もちろんルイズは知らないが)を噛んで続ける。

「女将に聞いたぜ。泊めたんだろう、お前さんの部屋に」

 ここでルイズもようやく、この男が何を言っているのかが理解できた。

 コイツッ!? コイツマジでッ!! ルイズは口から火が出そうになった。

 今ならこんな旅亭など消し炭に出来そうな『爆発』を撃てるだろう。それぐらいルイズの心の中のマグマが煮えたぎっていた。

 しかし、剣心はどかっ! と脅すように鞘にしまった剣を杖にして立ち上がる。

 飯塚当人も一瞬固まっていた。それを無視して剣心は立ち上がり、食事の席を後にする。

「……脅かすなよ、種飲み込んだじゃねえか」

 焦った声でそう言う飯塚に、ルイズは思いっきりベーと舌を出して、同じようにその場を後にした。

 

 

「本当か、それは」

「ええ、幕府方の刺客による待ち伏せでした」

 その後、剣心は再び旅亭にやってきた桂と、庭で会話を始めていた。

 内容は、あの夜剣心を襲った刺客について――。

「そういえば、あいつなんだったのかしら?」

 巴も中々に疑問であったが、一番の懸念事項は確かにあの刺客。

 ルイズもまた、一緒になって考える。

「新選組か?」

「いえ、初めて見る邪剣でした。どちらかと言えば――――」

「……庭番集の類」

「ええ」

 よく分からないけど、そういう間諜が得意な集団をそう呼ぶのだという事は、何となくルイズも理解する。

 剣心と同じ影の人間というのは理解できたけど、どうして向こうは待ち伏せできたのだろう?

「緋村の存在は、極内々の者でしか知らん。それを待ち伏せするとは――」

 どうやら剣心も同じ考えらしく、こう続ける。

「情報が漏れています。恐らく藩内に裏切り者が――」

「そういうことになるな」

 裏切り者。

 それを聞いたルイズは、ごくりとつばを飲み込んだ。

 自分の国の軍にも、内通者がいるって話を思い出した。

「なによ。戦争って間諜を入れなきゃいけない決まりでもあるの……?」

 まだ戦についてよく分からないルイズは、内部のドロドロとした探り合いに胃が逆流しそうになる。

「思いあたるフシはある。祇園祭の密会に参加するはずだった古高さんが、先日新選組に捕まった件も含めて」

 桂も真剣な表情で剣心の会話を聞いていた。

(そういえば、何か密会やるって言ってたっけ……)

 ここでルイズはふと、アンリエッタを裏切ったリッシュモンの事を思い出す。姫さまがあんなに辛そうな顔を見たのは、長い付き合いの中でも初めてだった。

 あんな悲しみはもう生んではならない。ルイズは力強い目をもって剣心たちを見つめた。

 

(……って、これ全部ケンシンの過去の話なのよね)

 

 今度は一人でガクッと肩を落とす。

 そう、これはすべて過去の話。なので今の剣心に全部聞けば、それで済む話なのである。

 巴のことも、間諜の正体のことも。……ついでに十字傷のことも。

 でも、あまりそういったことはしたくはない。人斬り時代の話はあまり剣心の口から語らせたくない。という思いもあったからだ。

 つらい話を無理に聞き出すことは、トリステイン人として美徳に反する。気高くあろうとするからこそ、無理に剣心から聞きたくはなかった。

 

 

 ただこの時の、余計な気遣いが、後に大きな悲劇を生むことになるのだが、それはまだルイズ自身も知らない話。

 

 

 再び、場面は変わる。

 ルイズは今、剣心が寝泊まりしている二階の部屋に来ていた。

 そこで巴と、あの夜の件について話している所であった。

 暗殺者のこと、それを剣心が殺したこと、その現場を目撃したこと。それを忘れて立ち去ってほしいと。

「そうよっ。 ってか何あんたさも当然のように居着いてんのよ」

 小机の上には書記のようなものが置かれている。最初の夢の時はなかった、綺麗な本だ。恐らく巴の持ち物なのは容易に想像できた。

 それがあるってことは、彼女はここに住まうっていうことなの?

 何かまたムカムカが胸中に滾ってくる。しかしそんなルイズの心境をよそに、巴は変わらぬ表情で言った。

「ここにいては迷惑ですか?」

「家の者が心配するだろう」

「そーよそーよ。早く帰りなさいよ」

 ルイズが出口を指さし捲し立てる。しかし巴は動かず、少し寂しげな声でこう続けた。

「迷い猫」

「はい?」

「帰れる家があるなら、夜更けに女一人でお酒なんか……」

 ルイズはちょっとあんぐりとする。正直巴は上流階級の出だと疑ってなかったから、道楽や酔狂で剣心に近づいていたのではないかと、この時までそう思っていたからだ。

 ただ、家が無いと語る巴の目は、間違いなく嘘は言っていないのだろう。ルイズはチクリと心を痛ませる。

「ごめん。何か悪いこと言っちゃって……」

 でも、やっぱり釈然としない。これ以上剣心に近づいて欲しくなかった。

 剣心も今のルイズと同じ心境なのだろう。憮然としながらこう続ける。

「どんな事情かは知らんが、今我々はあなたに構っていられる状況じゃない」

「ちょっとケンシン、そんなつっけんどんにしなくても」

 今度は剣心の方につっこんでしまうルイズ。しかし、それを聞いた巴は何処までも真っすぐな目で――――。

 

「では私を始末しますか? 昨晩の黒いおサムライの様に」

 そう聞いてきた。

 

「……トモエ?」

 何か、急に巴を怖いと感じた。

 淡々と語っているのに、何故か変な圧を感じる。

 同じ女だからこそ、感じ取れる勘なのかも知れないけど……。

 一方の剣心は気付いているのかいないのか、同じように真っすぐな目をもって巴を見つめた。

「どう思おうとあなたの勝手だが、俺は皆が安心して暮らせる新時代のために人を斬っているのであって、誰かれ構わず斬っているのではない。刀を持つ幕府の者だけを敵としている。……市井の人は勿論刀を持たぬものは絶対に斬ったりはしない」

 そう語った。

 人のため、未来のためという理念。

 ルイズも、剣心は滅私のために汚れ役をしているのは、理解しているつもりだった。でも、どこかでそれは間違っている。そう叫ぶ声も心の中であった。

 しばらく沈黙が流れる。やがて、巴はポツリと告げた。

「刀のあるなしで、斬り殺していい人と悪い人、ですか……」

 そう話し始める巴の目は、どことなく寂し気で儚い感じを思わせる。剣心に対し複雑な心境を抱えているような、何かと重ね合わせているような、そんな表情。

 ルイズもそこまでは何となしに察したのだが、何が原因でそうさせるのかまでは全然分からない。

 だからかもしれない。次の言葉で、心の内がキュッとなってしまったのは。

 

 

「ではもし私がこの場で刀を手にすれば、あなたは私を――」

 

 

(な、何言い出すのよ。あんた?)

 再び沈黙が場を支配する。今度は剣心も押し黙ってしまった。

 止まった時は、巴によって再び動き出す。

「いずれ、答えが見つかりましたら是非聞かせてくださいませ」

 そう言って、スタスタと部屋を後にしていった。

 しばし呆然としていたルイズだったが……、先ほどの会話を整理して、はっとする。

「ちょ、ちょっと待って! ってことは何? あんたこのまま居座る気なの!?」

 やるせない叫びをルイズは上げた。しかもあの様子。今後もっと剣心に接近してくることだろう。女の勘で察したのだ。

 シエスタやキュルケ、タバサとは根本的に違う、異世界の強敵。しかも記憶の彼方で出てきた思わぬ伏兵に、ルイズは大いに頭を痛めるのであった。

「ってかあんたも! もうちょっとシャキッとしなさいよ! トモエに押されっぱなしじゃないのよ!」

 そう叫んで、とりあえず呆気に固まる剣心を、何度もルイズは蹴りつけるのであった。

 

 その後、本当に巴はこの旅亭『小萩屋』に居着いてしまった。

 朝は膳を運び、空いた時間で服を洗い乾かし、たまに剣心の部屋にやってきて掃除をする。

 端から見れば完全な押しかけ女房である。剣心ばかり世話しているわけでは無いが……それでも気づけば視界に彼女はいた。

 シエスタがこれ見たら何を言うのだろうか? そんな考えが端っこで浮かぶルイズであった。

(『トモエさんより、わたしの方がずっと家事も料理も出来ます!』。……うん、あいつなら言いかねないわね)

 一人でシエスタの真似事までし始めるルイズ。いっそのこと、この夢を彼女と共有したい。この光景を見たシエスタは何を思うのだろうか?

 ただ、そんな巴に対し、剣心は何処までも剣呑な対応であった。

 それに、刺客に狙われたからといって、巴に出会ったからといって、彼の今の立ち位置が変わったわけでは無い。

「今夜だ。頼むぞ」

 

 

 飯塚より渡される黒手紙。

 それを受け取った夜は、必ず血の雨が降った。

 天誅。ただひたすらに、その二文字の繰り返し。

「やだ、やめて……」

 そして天誅の夜が来るたび、ルイズは震えた。身を縮こませるも、髪に、顔に、服に、手に、赤い塗料で塗りたくられる。

「やめて、やめてよ!」

 死んでいく人々、無念を告げる顔、飛ぶ首や手足。惨劇を何度も見せられる。

 吐きそうになる。涙がこぼれる。でも止まない止まらない。

「もうやめてええええええええええええええええ!!」

 ひたすら殺しの場面を見せられて、ルイズの心が悲鳴を上げた時だった。

 

「このままずっと、人を殺め続けるおつもりですか?」

 

 いつの間にか、惨劇の雨はやんでいた。

 代わりに目に入るのは……、手を洗い続ける剣心と、見咎める様に話す巴の姿。

「俺に構うな……」

 ルイズは、涙をぬぐいながら剣心を見る。彼の目は『人斬り』のままで固まっている。

 人斬り抜刀斎。

 ふと思う。浮遊船にて刃衛と戦っていた剣心のことを。

 あの時、もし『解除』が間に合わず刃衛を殺していたのなら、ずっとこんな表情でい続けるのかと思うと……肝が冷える思いだった。

 

 再び、天誅。

 

 天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅。

 

 天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天天。

 誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅。

 

 

 刃で斬る。人が倒れる。その繰り返し。

 だんだん、人の顔が、姿かたちが黒い影で見えなくなっていく。

 何を斬っているのかすらわからず、ただ刀を振りかざす。

 ルイズすらも、自分がどうなっているのかよく分からないぐらいに銘中していた刹那-―――。

「――ケンシン!?」

 ルイズはハッとして叫んだ。

 剣心は今、必死の形相で巴に刃を向けていた。

「な、なにやってるのよあんた!? 危うくトモエを斬るところだったじゃないの……っ!?」

 寸前で止まったから良いものの……、後数サントで巴の首を確実に斬っていた。

 普段無表情な巴も、これにはかなり驚いたのか、唖然として佇んでいる。

 剣心もまた、ハッとしてすぐ巴を突き飛ばす。寝込みを襲われたと勘違いしていたようだ。

 汗だくになりながら一言。

「……済まない」

 そして再び刀を鞘に納める。

「ケンシン……」

 ルイズはいたたまれなくなった。今の剣心は、人を斬りすぎて周りが見えなくなっているのだろう。

 つくづく、何で自分は今の剣心の隣にいれないのか、なんでここでは自分が干渉できないのか。もどかしさに唇をかんだ。

「なんでよ、なんでわたしは何もできないのよ……!」

 こんなに苦しんでいるのに、自分は何もしてやれない。

 主人として、それでいいのか……と。

 五感は間違いなくここ京都に、剣心達の隣にいるって伝えてくるのに、声や感情は彼らに届けられない。

 そんなもどかしさの裏で……剣心は肩から息をしながら巴に話す。

「市井の人は斬らないと大口叩いたところで、今の俺はこの有様…。もう出て行ってくれ。でないと俺は、いずれ本当に君を――……」

 しかし巴は部屋を去らず、紫の肩掛けを剣心に被せた。

 

「もうしばらくここにいさせて頂きます。今のあなたには、狂気を押さえる鞘が必要ですから」

 

(ずるい……)

 見ていたルイズは、無駄だと分かっていても、巴に嫉妬せずにはいられなかった。

 自分がしたいと思うこと、自分だったら間違いなくそうするであろうことを、全部巴に取られている。

(わたしだって、ケンシンが苦しんでたら同じことするわよ……!)

 ルイズは改めて、まじまじと巴の顔を見る。

 相変わらず微動だにしない表情。整った目鼻が人形のように固まっているにもかかわらず、どこか慈しみを覚えるような感じ。

 白梅香の匂いもあって、なぜかカトレアの顔が脳裏に浮かんだ。

 勿論、いつも慈愛の笑みを絶やさない次女と比べると似ても似つかないが、どちらかというと、彼女にはタバサよりカトレアの方が『近い』と、そう思ってしまう。

 というより、二人の顔を合わせるとこんな感じになるのかもしれない。

 だからかもしれない。嫉妬はするけど……嫌いになるほど憎めないのは。

 多分、この行為も純粋に気遣ってやっていることなんだろうな……というのも理解している。

 でもやっぱり、悔しい想いも覚えるのだった。

 そう考えているうちに、剣心は口を開く。

「ずっと前の問いの答え――君が刀を手にしたら斬るか否か。答えは『斬らない』」

 気のせいか、若干目元が柔らかくなっているような表情。そして、人斬りの使命とは別の熱を帯びた声。

 

「俺は斬らない。どんなコトがあろうと……君だけは絶対に斬ったりはしない」

 

 君だけは絶対に。

 その、決意の言葉を最後に、ルイズの意識もまた闇に包まれていった。

 

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