紅茶のおかわりはいかがですか?(GJ部二次創作に移行しました) 作:橘田 露草
くーさんこと露草です。
さあ、今回はすっかり忘れていた母の日です。
当然くちなし寮のお母さんも祝われるわけで。
あ、時系列は今回は無視してください 笑
書くのを忘れていただけなので。
しかも、2600オーバーで「紅茶」史上最長です(^^)/
むしろこっちが特別回ではないかという感じですが(^^;)
では、どうぞ!
一応言っておくと、ワンコの呼び方はミスじゃないですよ 笑
5月の第2日曜日、今日は母の日だ。
生徒会の用事で学校に来ていた仔犬が帰り道を歩いていると、電話が鳴った。
「はい、仔犬です。……あ、届いた?……良かった……いえいえ……はいはーい。」
1分ほどで電話を切る。
相手は母親だった。
仕送りの残りと貯めてあったお小遣いで小さなブローチを贈ったのだが、喜んでくれたようだ。
直接渡すのは照れくさくて配送という方法を選んでしまい、帰ってくると思っていた妹を怒らせてしまったが。
「ただいまですー。」
仔犬が寮に入ると、廊下の先のリビングのドアが開いた。
「おい、仔犬!」
「え?はーい。」
ドアから顔を出した風鈴に呼ばれ、リビングに入る。
と、ソファーをポンポンと叩き、
「ここ座れよ。」
「は、はい。」
何かいつもと違う。
何か企んでいるのかと仔犬は警戒する。
「うひゃあ!?」
と、後ろから肩を揉まれた。
「あっ!おい動くなよ。」
後ろを見ると、風鈴が仔犬の肩に手を置いていた。
「な、何するんですか!?」
「なにって肩もみだよ。今日は母の日だろ。おまえはこの寮のお母さんなんだから。」
「お母さんって……。」
確かに寮の家事はほとんど仔犬がやっていて、最近は学校でもお母さんと呼ばれるようになってきた。
仔犬としては少し不本意だったりする。
「ほら、おまえは私たちのために色々やってくれてるじゃん。」
「そ、そんなの普通のことですよ。」
仔犬も男の子。
女の子が自分の肩を揉んでいるというのはさすがに緊張してくる。
いつもは気にならないはずの風鈴の髪のいい匂いですら気になり、どきどきしてしまう。
赤くなった顔を隠したくて思わず下を向いてしまう。
と、肩もみの手が止まった。
「あのさ、私さ……。」
「ふぁい!?」
不意に耳元で囁かれ、変な声を出してしまう。
慌てて顔を上げると、いつのまにか目の前に頬を仄かに赤くした風鈴が立っていた。
と思うと、手指を前に組んでみて、ぐーって伸ばしてみたり、あちこちきょろきょろしたりと落ち着かない。
なんだか、風鈴らしくない。
なんだが、女の子っぽい。
「前からさ、おまえがこの寮にやって来た時からさ、いいなって思ってたんだよ。」
「な、なんですか寮長。い、いきなり……。」
「いいから聞けって。……お願い聞いて、仔犬。」
「き、聞きますけど。」
風鈴の態度にどうしたらいいのかわからず、思わず姿勢を正してしまう。
「よくおまえのことからかったり、ぐりぐりしてるけどさ。別におまえのこと嫌ってるわけじゃないんだ。それどころかさ……」
「はい!もちろんわかってます。」
風鈴がまだ何か言いかけていたが、慌てて言葉をはさむ。
それ以上続きを言わせてはいけない気がして。
「そっか……。よかった……。」
そして風鈴は小さく笑った。
その姿にまた胸が高まってしまう。
「あれ?仔犬くん帰ってきていたんですか?お帰りなさい~。」
と、リビングのドアが開き風羽が入ってきた。
さっきまでの風鈴との会話を聞かれたのか焦り、仔犬が何か言おうとする。
だが、
「なあ、風羽。」
その前に風鈴が口を開いてしまう。
「はい、何ですか~?」
風羽はいつもの笑顔のままだ。
「おまえも仔犬のこと好きか?」
風鈴がそう聞くと、風羽は心なしかいつもよりも笑顔になった。
「はい。好きですよ。」
そう言ってソファー越しに後ろから抱き付いてきた。
小学生のため、膨らみはないものの柔らかくて暖かい。
仔犬はプチパニックになるが、かすかに残った冷静な部分で考える。
風羽は誰にでも優しく、誰にでも天使。
だから、風羽の場合の『好き』は、人類全部大好きの『好き』だということはわかっている。
だがとてもじゃないが、そういう意味で言っているようには思えない。
というか、今、風鈴はおまえ『も』と言った。
ということは――――――
「あ、あのそれってどういう意味で……。」
言葉が続かない。
そんな仔犬の様子を見て、風鈴は小さく苦笑した後、仔犬の目を上目づかいで見た。
「……ばか。言わせんなよ。」
まさか。まさかまさかまさか。
突然起こった出来事に頭の方が追い付かない。
「ずいぶん、楽しそうなことをしているね。」
と、またドアの方から声が聞こえた。
御籤と、後ろには希もいる。
「み、御籤さん、希さん!?あの、これは、違くて。」
仔犬は慌てるも、御籤は小さく笑った。
「風鈴たちの気持ちは知ったようだね。だけど……。」
その言葉と同時に仔犬の右腕に抱き付く。
御籤の温かさと香りが仔犬の右腕を包み込む。
「ゲームに負けるのは性に合わないな。ましてやこのゲームならなおさらね。」
「み、御籤さん……。」
「覚悟するといい、仔犬くん。」
仔犬はもうパニックだ。
と、左腕にも暖かさを感じた。
こちらは御籤よりも小柄だが、御籤以上に暖かい。
「希さん!?」
「あ、あのね!私も、だから!」
落ち着いた香りの御籤とは違った甘い香りが仔犬の鼻孔をくすぐる。
「頑張るからね、仔犬くん!」
「の、希さん……。」
希の潤んだ顔に仔犬はもう目が回ってくる。
「あぁん、もう。抱きつけませんよ~。」
「ふふっ、風鈴はどうする?」
「決まってんだろ。」
「あ、寮長!?」
風鈴は正面から抱き着いてくる。
御籤と希に両側から抱き着かれ、後ろからは風羽。さらに正面からは風鈴。
うわ。うわぁ。うわぁぁ。
仔犬はほとんどパニックになっていた。
なんでいきなり自分がこんなにモテているかわからない。
でも悪い気はしない。
きっと自分の魅力がようやく評価されたに違いない。
これまで頑張ってきたことがようやく評価されたのだ。
これが伝説の『モテ期』っていうのか。
どうしよう。
誰を選べばいいんだろう。
いや、選ばなくてもいいかも。
このままみんなでいられればそれでいい。
「御籤撮れたか?」
「うん。ばっちりだね。風鈴がワンコくんをうまくソファーへ誘導してくれたおかげだよ。」
と、不意にそんな声が聞こえ我に返る。
いつのまにかみんなもうくっついていない。
「ごめんなさい~、ワンちゃん。」
「ご、ごめんね、雛森くん。」
申し訳なさそうな顔をした風羽と、罪悪感を感じているのがありありとわかる希は仔犬に謝ってくる。
「も、もしかしてこれって……。」
「母の日のドッキリだよ。」
「『もしもワンコくんが急にモテたらどうするか?』だね。企画が風鈴、脚本が私、役者は全員かな。」
仔犬はやっと理解した。
そう言えば、誰も決定的な一言は言っていない。
仔犬の勘違い、考え過ぎだと言われたらそれまでの言葉だ。
唯一、風羽だけは『好き』と言っていたが、他ならぬ仔犬自身が理解していた。
風羽の『好き』は、人類全部大好きの『好き』だと。
「男ってのは、いつでも誰でもどんな時でも自分がモテていると思っているというのはホントか。」
風鈴が呟く。
その目はひどく冷たい。
さっきまでの恋する乙女のような姿はどこにもなかった。
「ああ。ホントなんだな。」
仔犬がソファーから崩れると同時にそう呟いた。
次回!「母の日、その後」
お楽しみに!(^◇^)
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