紅茶のおかわりはいかがですか?(GJ部二次創作に移行しました) 作:橘田 露草
いまさらですが、夏終わりましたね~。
今年も何もなかったなぁ……(遠い目
まあ、大学生なので後1か月近くあるんですけどね~(笑)
まだぼくの夏は終わらない!!!
橘田先生の次回作……じゃなくて次回夏にご期待ください!!
では、どうぞ!(^◇^)
今回は少し長めです。
8月も後半のある日の朝。
仔犬は自宅から離れた駅にいた。
改札を出て、すでに着いているらしい相手を探す。
「あっ、ワンちゃんここです~!」
その声を聞いて振り向くと、改札を出てすぐのところに待ち合わせの相手がいた。
風羽だ。
「ごめんね、待たせたかな?」
「待ってないですよ……って言いたいところですけど、実は3回ぐらい迷子と間違われちゃいました。」
困ったように笑う風羽。
やはり小学生が1人でいたら目立つのだろう。
「ならもう少し早く来ればよかったね。」
待たせないように約束の時間より早く来たつもりだったが、大分待たせてしまったようだ。
今回は心配して声を掛けてくれた人だったみたいだが、もしかしたら誘拐されてしまうかもしれない。
次は気をつけようと心に誓った。
「あっ、いえ!わたしが楽しみで早く来ちゃっただけなので!気にしないでください。」
「あ、うん。でも次は気を付けるよ。」
「あっ……。」
「うん?」
仔犬は無意識で言ったのだろう。
でも、「次は」ということは。
それは、次の機会があるということで。
「……えへへっ!じゃあ、次は気を付けてくださいね♪」
「え?あ、うん。」
急に笑顔になった風羽を訝しむも、手を握られそれを忘れてしまう。
「じゃあ、行きましょう!」
「うん、そうだね。」
中のいい兄妹のような2人は歩き出した。
「うわぁ、こんなところに遊園地があったんですね~!わたし遊園地初めてなんです!」
「あんまり大きいところじゃないんだけどねー。小さい頃はよく来てたんだ。」
駅から少し歩くと、目的の遊園地に着いた。
遊園地と言っても大きいものではなく、田舎によくあるような小さな遊園地だが。
夏休みだから少し並んでいる。
「じゃあ、行こうか。」
少し並び、受付に着くと受付のおじさんが驚いた顔をした。
小さい頃から顔なじみの人だ。
「久しぶりだな坊主!」
「お久しぶりです。大人1枚、子供1枚お願いします。」
「おっ、可愛い子だな。なんだ今日は妹ちゃんじゃないのか?」
「あはは、デート……なんですかね?」
冗談っぽく仔犬がいうと、ガハハとおじさんが笑った。
そして、おじさんは風羽に顔を向ける。
「こんにちは、お嬢ちゃん。」
「こんにちは~!ワンちゃんの彼女の風羽です!」
「そうかそうか!イケメンの彼氏できてよかったなお嬢ちゃん。」
「はい!」
ニコニコと笑う風羽の頭を撫でるおじさん。
しばらく来ていなかったのに変わらないその姿に仔犬はクスっと笑ってしまう。
「ほら、大人1枚に子供1枚!」
「あ、お願いします。」
おじさんにお金を渡すと、とたんに風羽が慌てだした。
「あっ、ワンちゃん!わたしが払いますよ~!」
そう言えば、これは風羽がお礼したいと誘ったデートだった。
すっかり忘れていたが、もちろん払わせる気は全くない仔犬は何とか誤魔化そうとする。
「えっと、混んできたし取り敢えずは僕が払っておくよ。」
「そうだぞ、嬢ちゃん。それにここでおごられておくのもいい女の特徴だぞ。」
「いい女の……。じゃ、じゃあ、ワンちゃんお願いします。」
「ん、了解。じゃあ、お願いします。」
「おう、楽しんで来いよ。」
おじさんの言葉を背中に受け、歩く2人。
風羽はまださっきのおじさんの言葉が離れないのか、ぼぉーとした顔をしている。
「風羽ちゃん、まずはどこに行こうか?」
「あっ……はい!わたしはあのジェットコースターに乗りたいです。」
「うっ、あれか……。」
風羽が指差したのはジェットコースターだった。
だが、仔犬は小さい頃からあのジェットコースターが苦手だ。
以前妹と来た時には、妹に付き合わされて数十回乗らされたのがトラウマだ。
「いや……ですか?」
悲しそうに言う風羽。
さすがに、「嫌。乗りたくない。」とは言えない。
そもそも、自分は5つも年上なのだ。
「だ、大丈夫。僕も乗りたいと思っていたから。」
「じゃあ、行きましょう!」
「あ、走ると転んじゃうよ風羽ちゃん。」
「あっ!」
ジェットコースターに走りだそうとした風羽が何かを思い出したように足を止めた。
「忘れてました~。」
「ん?なんのこと?」
「罰ですよ!ワンちゃんの罰?」
「罰?」
何のことだろうと考え、思い出した。
そう言えば、林間学校の夜電話した時、電話を切る最後に「罰を与える」と言っていた。
「だから、罰として今日はわたしのこと風羽って呼び捨てにしてください!」
「えっ?ど、どうしても?」
「はい!」
突然のことに戸惑う仔犬。
女の子を呼び捨てにするのが苦手な仔犬には確かに罰だ。
風羽はそんなこと知らないだろうが、図らずもなかなか辛い罰になってしまった。
「あー、えっと……。」
期待してキラキラと仔犬を見つめる風羽。
またしても断れない。
「ふ、風羽。」
「はい!」
何とか言えると、風羽はとても嬉しそうに笑った。
「何か照れますね~!」
「……僕は風羽ちゃんより顔が真っ赤だと思うけど。」
「あっ、戻ってます!ダメですよ、デートが終わるまでです!」
「わ、わかったって……風羽。」
まだ、ぎこちなく風羽の名を呼ぶ仔犬。
慣れるのはまだ時間がかかりそうだ。
「じゃあ、ジェットコースター行きましょう~!」
「ちょ、ちょっと待ってまだ心の準備をさせてー!」
そして、1時間後。
「大丈夫ですかワンちゃん……?」
「だ、大丈夫……。」
通算7回乗った後、仔犬はベンチでぐったりとしていた。
心配そうに風羽が見てくる。
「ごめんなさい……。夢中になってワンちゃんのこと考えてませんでした……。」
「もう大丈夫だって。さ、次の行こうよ。」
そう言って仔犬は何でもないように立ち上がる。
休んで調子がよくなったものの、半分はやせ我慢だ。
だが、せっかく風羽が楽しんでくれているのにこんなところで時間をつぶすわけには行かない。
「……はい!」
風羽も仔犬が我慢しているのに気付いたようだが、仔犬の気持ちを汲んで何も言わなかった。
そして、昼食をはさんで2人は色々なアトラクションに乗った。
メリーゴーランド、コーヒーカップ、ゲームセンター……。
初めて遊園地に来た風羽も、久し振りに来た仔犬も存分に楽しんだ。
そして、閉館まであと、2時間となった頃。
「風羽ちゃ……じゃなくて風羽。次どこに行こうか?」
仔犬が園内の地図を読みながら風羽に声をかける。
だが、風羽の声が返ってこない。
「風羽?……ってあれ?」
いつの間にか隣を歩いていたはずの風羽の姿が見えない。
慌ててあたりを見回してみるが、どこにもいない。
仔犬はさっと青ざめた。
まさか、風羽は迷子になってしまったのか。
それならまだいい、もしかしたら誰かに誘拐されたかも。
「っ!?風羽!!」
慌てて走りまわる仔犬。
だが、どこにも姿が見えない。
「くそっ!僕がちゃんと見てないせいで!!」
名前を呼びながら園内を駆け回る仔犬。
だが、1時間探し回ったのに風羽には会えなかった。
「はあはあ……。どうしよう……!!」
「あっ!」
「えっ!?」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと、風羽がいた。
ぷんぷんと怒っている。
「もうっ!探しましたよ……ってふぁ!?」
「風羽!!よかった!!」
風羽の姿が見えた途端、思わず抱きしめてしまった。
「大丈夫だった!?けがしてない?」
「へ?けがってなんのことですか?」
「ん?」
どうも話がかみ合わない。
そもそもなんで風羽が怒っているのだろう。
「わたしトイレに行ってきますってワンちゃんに言ったじゃないですか。」
「え?」
「出てきたらワンちゃんがどこにもいないから心配しましたよ~!」
話から察するに、風羽はトイレに行っていただけのようだ。
そう言えば、さっき風羽が迷子になったと思った場所はトイレの近くだった。
恐らく、地図に集中して聞いてなかったのだろう。
「なんだ、僕の勘違いだったのか……。」
そう思ったら力が抜けてきた。
思わずへたり込んでしまう。
と、仔犬の額の汗に気付いたのか風羽がおずおずと声を掛けた。
「すごい汗です……。もしかしてわたしが迷子になったと思って探し回ってくれたんですか?」
「あはは、勘違いだったけどね。」
「えっと、ごめんなさい。ちゃんとワンちゃんの返事を待ってから行かないとでした。」
「ううん、そんなことないよ!僕がちゃんと話聞いてなかっただけだから。」
もとはと言えば、仔犬がすべて元凶だ。
風羽には謝る必要はないし、謝られても困ってしまう。
「で、でも……。」
「じゃあ、この話は終わり。さあ、もう残り少ないけど遊ぼっか。」
なおも言いいかける風羽にそう言って話を終わらせる。
せっかくの楽しい日に謝ってばっかりもつまらない。
後40分ほどだが、まだ少しだけ遊べる。
「じゃあ……観覧車に乗りたいです。」
「ん、じゃあ行こう。」
そう言って自ら風羽の手をとる。
風羽は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに仔犬の手を握った。
そして観覧車の中。
風羽と仔犬は隣合わせになって座っていた。
「うわあ、きれいですね~!」
「うん、すごいね。」
夕日を見つめる2人。
夕焼け空と少し夜の色になった空との景色はまさに幻想的だった。
と、風羽が居住まいを正し、仔犬の方を向いた。
「ワンちゃん、今日はありがとうございました。」
「楽しかったかな?」
「はい、とっても!」
「なら、僕も嬉しいよ。」
夕焼けに仄かに赤く染められた風羽の笑顔を見て、今日連れて来てよかったなと仔犬は思った。
「ワンちゃん。」
「ん?」
「わたしは……」
風羽はとても真剣な顔をしていた。
まるで今から告白をするかのように。
「わたしは……すごく優しくて、笑顔が可愛くて、すごく温かい……。」
そこで言葉を切る風羽。
仔犬の目を見つめる。
いつもと変わらない暖かさに満ちた優しい目を。
「ワンちゃんのことが大好きです。」
「あ……うん。僕も風羽ちゃんのことが大好きだよ。」
(もう、また風羽ちゃんに戻ってますよ)と口の中だけで呟く。
さっき抱きしめてくれた時は名前で呼んでくれたのに。
まだ、子供扱いされているし、きっと勇気を出した言葉の真意にも気付いていないのだろう。
それは悔しいし、早く大人になりたいとも思う。
だけど、大人になった自分のことを受け入れてくれるかわからない。
だから、今はこのままで。
「ワンちゃん。」
「ん?何……ってえ!?な、なんでほっぺに……。」
軽くほっぺにキスをしただけでうろたえる仔犬。
それを見て思わず吹き出してしまう。
(いつかわたしを選んでくださいね。)
悪戯の成功した小悪魔のように風羽は笑った。