新艦船これくしょん   作:たこ焼きうどん

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3泊4日 北陸、温泉の旅 

「長門秘書官!」

吹雪が長門の前に立つ。

「吹雪、あんころもちは…」

恐る恐る問う長門。

「申し訳ありません…!! …何の製菓も得られませんでしたあぁぁ!!」

泣きじゃくる吹雪。

「ま、まあ良い。よくやった吹雪。寒さに耐えてよくやった。感動した!」

「棲姫なき構造改革っぽい!」

夕立がすかさず突っ込みを入れる。

ぞろぞろと艦娘たちが集まってくる。

みんな疲れ果てている様子である。

ある者は目の下にあざを作り、ある者は松葉つえをつき、

ある者は鼻血を出しており、まさに凄惨な光景であった。

長門の目にきらりと涙が浮かぶ。

「よし、とりあえず任務完了だ。では、これから旅館で休憩を取る」

「ひゃっほーい!」

湧き上がる一同。

 

そんな訳で、とある金沢の旅館にやってきた訳だが…

「お待ちしておりました」

若い女性が深々と頭を下げる。

「女将の、白鷹と申します」

「いえいえ、あまりお気を使わず…」

会釈する長門。

「ところで、…母君はいかがなされた?」

長門が問う。

「先代・白鷹は、先日隠居する事になり、わたくしが跡を継ぐこととなりました」

白鷹が答える。

「そうか…」

遠い目をする長門。

中から若い仲居が出てくる。

振り返る白鷹。

「輝、剣、お客様をご案内して」

「はい」

2人の仲居が深々と頭を下げる。

 

「かがやき、つるぎ、ですか。良い名前ですね」

陸奥がにっこりする。

「綺麗な女性ね」

少しうっとりした目になる吹雪。

「吹雪ちゃん、浮気は良くないっぽい!」

むくれる夕立。

 

旅館の中、廊下をぞろぞろ歩くチンシュメン達。

空中庭園のような旅館である。

「ひゃあああ、豪華絢爛、なんか、宮殿みたい!」

目を白黒させる吹雪。

「なんか夢見てるみたい…」

ぼうっとした表情の睦月。

「確か、ノドグロって魚と、シロエビって小さいエビが食べ放題らしいわね」

嬉しそうな赤城。

「よく分からないんですが、ノドグロってどんな魚なんですか?」

吹雪にとって、聞いた事も見た事もないような魚である。教科書にはのってない。

赤城がよだれをたらしながら答える。

「深海魚よ。高級食材になってるわ」

「高級…ですか。ううーん。お寿司だといくらくらいするんですか?」

「そうね、1貫400円ってところかしらね」

「400円!」

目を丸くする吹雪。

「鎮守府の予算から出てるんだよね…」

ちょっと後ろめたそうな睦月。

続いて、夕立が納得いかないような顔をする。

「国民の血税っぽい!」

 

 

そろぞれの居間に着き、くつろぐ艦娘たち。

「あー、帰りたくなーい」

幸せそうな顔をして大の字になる吹雪。

 

その頃、長門と陸奥は、深刻そうな顔をしながら話し合いをしていた。

「まさか日本海側からとは…」

「ヲ級、それも強化したのが1隻。さらにイ級が無数に集結してるみたいね。

 どうする長門?」

「鎮守府からの報告が早かったのが不幸中の幸いだ。

最新鋭の通信機器も導入したからな」

「スマートフォンね。鎮守府の予算の3分の2を費やしたかいがあったわね」

 

う~~~

 

旅館内にサイレンの音が鳴り響く。

「え?なに?」

あたりを見回す吹雪。

 

「こちら長門。艦娘に告ぐ。緊急事態が発生した。日本海よりヲ級改が1隻、

 多数のイ級が出現、こちらに向かっている」

「ヲ級改って…倒したはずじゃ」

青ざめる睦月。

「やばいっぽい!」

ぶるぶる震える夕立。

「全力を持って上陸を阻止する!さもなくば金沢が火の海に…」

その時、大きな爆発音が聞こえる。

 

ドーン!

 

旅館の天井に大きな穴が開く。

「艦砲射撃…思ったより早かったわね」やや冷や汗を流す陸奥。

「ただちに出撃!」長門がフル装備になる。

「お待ちください!」

白鷹と輝、剣が駆け寄ってくる。

「女将…」

「お客様にそんな事をさせる訳にはいきません!ここは私達にお任せ下さい!」

「しかし白鷹」

「長門さん」

長門を制止する白鷹。

「…分かった」

吹雪たちの方を見る長門。

「本作戦の指揮権は、鎮守府から白鷹へと移行する。我々は待機だ」

「え、女将さんが…?」

状況をうまく呑み込めない吹雪達。

その時、白鷹たち3人の身体が光り輝く。

「…!」

まばゆい光におもわず目を細める艦娘達。

白鷹、輝、剣、3人の身体が着物に包まれる。

「加賀友禅、この私も初めてみた」

白鷹達の衣装、艤装をまじまじと見つめる長門。

陸奥も驚きの表情を見せる

「一航戦の加賀さんからは聞いていましたが、これが噂に名高い…」

「ああ。北陸を守護する3柱神、はくたか、かがやき、つるぎ、だ」

光が収まる。閉じていた目をゆっくり開く3人。

「行ってまいります」

3人の身体がきらりと青く光る。

「え…?」吹雪が言葉を発し終えるやいなや

次の瞬間には3人の姿が消えていた。

「消え…た?」

言葉を失う吹雪。

ふうっとため息をつく長門。

「念のために行っておくが、彼女たちは軍属ではない。

各都道府県には、大抵ああいう守護神がいて、その地域を守っている」

「私達も行かなくていいんですか?」不安そうに問う吹雪。

 

「おそらく戦いは今晩にも終わるでしょう。

 みなさんはお風呂にでも入って待っていてくださいな」

「そうそう。せっかくの北陸旅行、ゆっくり楽しんでいって下さい」

振り返り、驚く長門。目の前に初老の女性が立っていた。

「せ…先代殿!それに、雷鳥殿…!」

先代白鷹。この旅館を築きあげ、そして3人の後継者を育てあげた人物である。

そして白鷹と双璧をなすかつての守護神、雷鳥。

雷撃の神と呼ばれた伝説級の艦娘である。

先代白鷹がにっこりほほ笑む。

「つくづく隠居もつまらないものです。

しかし、これからは彼女たちの時代ですからね…」

 

日本海上空。

3つの光が姿を現す。白鷹、輝、そして剣。

「あれね。」

眼下には、ヲ級改を先頭に、数百はいるであろうイ級の大艦隊。

ヲ級たちが上空の3人に気付き、一斉に対空砲火を始める。

数千発の光の弾が上空に放たれる。

加賀友禅の衣で身を包む3人。

飛んでくる弾丸が3人の目の前10mほどで消えていく。

「トライアングル・トレイン」

3人を結ぶ光の線が現れ、その内側が白く光り始める。

「除雪」

三角形の光が真っ直ぐ海面へと降りる。その光は、まさに三角形の柱である。

イ級大艦隊の中央あたりがすっぽりと三角の形に消失する。

異常事態に気付き、撤退を始めるヲ級たち。

「敵艦隊、戦意喪失。ではこれより旅館に戻ります」

3人が再びきらりと光り、海上から姿を消す。

 

鎮守府では、長門のスマートフォン経由で逐次報告が送られてきていた。

「…との事です、加賀さん」

通信兵が報告する。

「そうですか、姉さんたちが…」

涙ぐむ加賀。

鎮守府の空、北陸の空。土地は違えど、見えるのは同じ空であった。

 

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