恋姫†袁紹♂伝   作:masa兄

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~前回までのあらすじ~

村人A「なんだあれは、たまげたなぁ……」

村人B「あのさぁ……」

迷族「全速前進DA!」




軍師×2「「お! 両膝開いてんじゃーん(歓喜)」

名族「止めてくれよ(絶望)」


 
金髪覇王「もう来たの、はやくなぁ~い?(歓喜)」

良心&軍師「あっ…(察し)」


大体あってる


第29話

「貴方達は荷を降ろして頂戴。そこの人たちは各隊の天幕の準備を、それから――」

 

「程昱隊はごはんの準備です~。はやくしないとお腹を空かせた野獣(呂布・文醜)に食べられるですよー」

 

「麗覇様、他にご入用な物はありますか?」

 

「うむ、我が天幕とは別に大き目の物を用意して欲しい」

 

「大き目の天幕……畏まりました」

 

連合の陣地に到着した袁紹は、逸る気持ちを抑えつつ桂花達と共に指示を飛ばしていた。本来ならすぐにでも妹の顔を見に行きたいところだが、彼には総大将としての仕事がある。

 

「失礼します。曹操様とその家臣達が来ておりますが、いかが致しましょう?」

 

「真か!? あ、いや……此処に案内を」

 

「ハッ!」

 

 華琳の到着を知らされ、数瞬顔を輝かせ――引き締める。

 家臣の目の前では、名族として威厳をもった当主でありたいと願っている。最も、ほとんどの家臣達は彼の二面性を知っているので、今更肩に力を入れたところで余り意味は無かった。

 

 

 

 

 

「お久しぶりで御座います袁本初様、多忙の中私達のために時間を割いて頂き――」

 

「や、止めよ華琳! お主のその言葉使い、何処か恐怖を感じるぞ!!」

 

 袖口を引きながら「見よ、鳥肌が立っておる!」と訴えかけてくる袁紹を見て、華琳は満足そうに微笑む。

 

 奇襲は成功である。

 

「あら、『親しき仲にも礼儀あり』でしょう?」

 

「それは社交界の場だけでよい。此処には我とお主、その家臣しか居らんのだぞ……」

 

「ふふふ、冗談よ」

 

「華琳の冗談は心の臓に悪いものばかりだ……とは言え」

 

 袁紹は両腕を大きく広げる。

 

「良く来た華琳! 我はお主を歓迎する!!」

 

「ありがとう……それで? その格好には何か意味があるのかしら?」

 

 両腕を広げたまま静止している袁紹に華琳は訝しげに尋ねた。始めは大げさに歓迎を表現するためかと思っていたが、何か意図があるようだ。

 

「歓迎の抱擁である! 我が友華琳なら、これを受けるに値するぞ!!」

 

「…………」

 

 案山子のような格好の理由がわかった華琳は、一瞬目を丸くし、素の表情に戻る。

 

「結構よ、私はそこまで安くないの。それに――」

 

 袁紹の背後に視線を移し、口を開く。

 

「……命が惜しいもの」

 

「む?」

 

 その言葉に袁紹は、今まで華琳に向けていた意識を自身の背後に向けた。背後、袁家自慢の将達である。

 

 ――後ろを振り向けん!

 

 彼の背後から漂ってくるのは、殺気に近い怒気であった。誰が発しているかなど考えている余裕も無い。袁紹は冷や汗を垂らしながら、事態を収束させようと口を開いた。

 

「ふ、フハハ! 我が名族冗談を見切るとは、流石華琳であるな!!」

 

「冗談……なのね」

 

「!?」

 

 両手を胸の前で合わせ俯く華琳。『乙女心を傷つけた名族の図』完成である。

 ここまでくると冷や汗を通り越し、脂汗が流れ始める。先程とは違い、今は前方からも怒気が溢れている。

 前方――春蘭、秋蘭を始めとした華琳の家臣達だ。

 

「お、おい華琳……早く誤解を解かねば我が身が――!?」

 

 ついに自分の手に負えなくなったこの状況を打開するため、それが出来るであろう華琳に袁紹は話しかけ――気が付いた。

 

 彼女の肩が小刻みに震えている。笑いを堪えているのだ!

 

 そして、傍から見れば主が涙を流しているようなその構図に、彼女を最も敬愛していると自負していた春蘭が――弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何はともあれ久しぶりだな華琳。元気そうでなによりだ」

 

「ええ貴方も……とは言えないわね」

 

 ボロッという擬音が聞こえてきそうな袁紹の姿を見て、華琳は楽しそうに笑う。

 

 先程は大変だった。臨界点を突破した春蘭が掴みかかることに始まり、それを止めようと、彼女と掴み合いを始める猪々子。二人をみかねて参戦した斗詩と秋蘭。

 その騒ぎの渦中にいた袁紹は、豪華な服や自慢の髪に埃をつけ。見た目のギャップもあり、間抜けな格好になっていた。

 

「フム、何のことかな?」

 

「……え?」

 

 そんな袁紹の『らしくない』姿を笑っていた華琳は。次の瞬間、目を見開いた。

 

 何と袁紹の姿が元通りになっていたのだ。先程まで埃を被っていた迷族の姿は無く、そこにいるのは紛れも無い袁家の現当主。威風堂々とした名族であった。

 

「貴方、いつのまに妖術を使えるようになったの?」

 

「フハハハハ! 名族の威光があれば、埃のほうから離れるのだ!!」

 

 ――答えになってない。そう華琳は胸中でツッコミを入れる。

 

「おそろしく速い動作、アタイでなきゃ見逃しちゃうね」

 

 大刀を背負っている娘がしたり顔で呟いているが。袁紹軍の面々は、覇王の娘が首を傾げている答えを知っていた。

 

 その答えの前に一旦話しは逸れるが、袁紹の能力が高いことはもはや語るまでも無い。

 その袁紹がさらに能力を飛躍的に上げる事象があった。彼の『こだわり』である。

 顕著な例を挙げるとするならば、彼の理想。『満たされる世』実現の為にこれまで行ってきた政策の数々や、黄巾の乱における、人命を優先した大計略などである。

 その他にも人材勧誘、南皮の拡張、魚醤とそれにまつわる商売など、彼が『こだわり』を持って行うことは、ことごとく成功させてきた。

 

 上記だけを見れば万能な能力だが、実は無駄に発揮される事のほうが多かった。

 その代表的な例は『御輿』だろう。なんの変哲も無い御輿とその担ぎ手達も、袁紹が上に乗ると一変。ありえない速度や俊敏な動きを可能にし、その力たるや、かの王佐の才を苦戦させるほどである。

 

 このように袁紹が『こだわり』を持って行うことは、常人には真似できないものになるのだが、その中の一つに『身嗜み』も含まれていた。

 名族として内も外もそうあろうとする彼は、見格好を整えることに余念がない。

 特に髪にはこだわりがあるようで、手入れは一日も欠かさず。少しの乱れも許さない。

 

 ※止むを得ない場合を除く(意味深)

 

 そして話は戻り、何故瞬時に見格好が整えられたかだが―――なんてことはない。ただ埃を叩き落としただけである。ただし『恐ろしく速い速度』で。

 

「はぁ……まあいいわ。貴方の規格外は、今に始まったことではないもの」

 

 溜息を洩らしながら『麗覇ならしょうがない』と、華琳は無理やり自分を納得させる。

 思考停止しているかのような安直な考え方は、彼女の苦手とするところだが。奇想天外な名族を友とし、私塾を過ごしていく上で身に付けていた。

 袁紹のやる事なすこと全てに驚いていては、身体がもたないのだ。

 

「む、良く見ると新顔が多いではないか?」

 

「自慢の娘達よ、皆、挨拶なさい」

 

「華琳様の親衛隊隊長の一人で、秋蘭様の補佐を務めてます。典韋です! よろしくお願いします!!」

 

 元気良く口火を切ったのは、短髪で淡い青髪の少女、典韋だ。

 音々音より年上といった感じだが。その瞳は理知的で、将来が楽しみな娘である。

 

「……華琳。いくら同性とは言え、限度というものが――グフッ!?」

 

 ※無言の腹パン

 

「彼女は閨要員ではないわ」

 

「っ~~……とか言いながら、十分育ったら美味しく頂こうとか――おい華琳、何故目を逸らす」

 

 やはり何か後ろめたい企みがあるのか、袁紹の言及に華琳は答えなかった。

 

 (まだ……まだよ、あの娘達はまだ青すぎるわ。穢れを知らない少女もまた一興だけど、どうせ頂くなら期を見てから――つまり、あの娘達が性に興味を持ち始めた頃あたりで――)

 

 そして何かを呟きながら自分の世界に入ってしまう。こうなるといくら聞いても反応は無いだろう。袁紹は渋々追求を諦める。

 

「流琉、自己紹介の時に真名では駄目だぞ?」

 

「あ!? そうでした!!」

 

「フフ……だが、聞き取りやすく丁寧な良い自己紹介だった」

 

「秋蘭様……ありがとうございます!」

 

 妙なやり取りをしている袁紹達を他所に、秋蘭と典韋の二人は微笑ましい光景を作り上げていた。彼女達の様子を見るに、姉妹のような仲なのだろう。

 面倒見が良く、褒めて伸ばす秋蘭。そんな彼女を尊敬し、多才に慢心せず己を磨き続ける典韋。

 春蘭が聞けば嫉妬するだろうが、似合いの姉妹である。

 

「はいはーい、次はボク! 同じく曹操様の親衛隊隊長の一人で、春……夏侯惇様の補佐。許緒と言います!」

 

 次に前に出たのは、典韋よりも長めな桃色の髪を頭上で束ねた。二つのお団子が特徴的な許緒だ。

 典韋と変わらぬ年齢で、二人は幼馴染だとのこと。

 元気良く自己紹介する姿は愛らしく、こちらも成長が楽しみである。

 

「へへーん、流琉より上手に挨拶出来たもんね」

 

 余程嬉しかったのか、許緒は典韋に絡むような言葉を発した。

 それを聞いた典韋は、頬を僅かに膨らませ反論する。

 

「む、季衣も春蘭様の真名を言いかけたじゃない!」

 

「でもボクは言わなかったよーん」

 

「私の言葉を真似て自己紹介したくせに」

 

「なにおー!」

 

「何よ!」

 

 売り言葉に買い言葉。そんな調子で口論していた二人は、気がつくとポカポカと可愛らしく殴り合いを始めていた。

 同い年で幼馴染、同じ陣営で同じ役割。互いに思うところがあるのかもしれない。

 きっとこの二人は良き友であると同時に、高みを目指しあう好敵手(ライバル)でもあるんだろう。

 

 見かねた夏侯姉妹が止めに入り、華琳が袁紹に謝罪を口にしたが。

 彼は特に不快感を抱かず、むしろこの空気を好んだ。

 

 

 

 

 袁紹が普段良く口にする名族の名は伊達ではない。彼と対面するほとんどの者は袁の名に萎縮し、何を話そうにも世辞や建前が前提になる。

 内を晒しながら彼と会話できる者は少ない。名族に生まれ落ちた定めと、当の昔に受け入れてはいるが、寂しくもある。

 

 故に、斗詩や猪々子を始めとした彼の家臣達。華琳や白蓮などの、萎縮することなく同じ目線で会話出来る者は貴重である。

 そして二人の少女は、袁紹に萎縮することなく自己を表現した。彼はそれが嬉しいのだ。

 

 最も、華琳と袁紹のやり取りで緊張が薄れただけなのだが――……。

 

 

 

 少しして、二人の少女がお互いの姉貴分に取り押さえられると。まだ紹介を済ませていない三人が袁紹の前に出る。

 ふと、先程まで騒いでいた少女達が気になり耳を澄ますと、離れた所で説教をする声が聞こえてきた。

 

『駄目だぞ流琉。売り言葉に買い言葉になることは、流琉なら予想出来たはずだ』

 

『はい……、ごめんなさい秋蘭様』

 

『駄目だぞ季衣、徒手空拳の場合は相手の動きを良く見てこう。ダー! ズバッ!って感じだ』

 

『はい春蘭様!』

 

 軽く諌める秋蘭の言葉に紛れ、妙なモノが聞こえた気がするが――きっと気のせいだろう。

 

「三羽烏が一人、楽進。曹操様に見出され、末席に据えて頂きました。お見知りおきを」

 

 袁紹が軽く現実逃避していると、残った三人の内一人、楽進が名乗りを上げた。

 銀髪で前髪が短く、長い後ろ髪を編みこんでいる。鎧も最低限なもので、動きやすさを重視したものだ。

 そして注目すべきは彼女の身体、そこに刻み込まれている無数の傷である。

 それは女の命とも呼べる顔にまで達しており、彼女がこれまでどれほどの鍛練を積み、実戦で鍛えてきたかが窺える。

 

 通常、身体の傷は奇異の目で見られるものだが、袁紹とその家臣達にそんな様子は無く。どこか不安に思っていたのだろう、楽進は後ろに下がりながら小さく息を吐いていた。

 

「同じく三羽烏の一人、于禁! 阿蘇阿蘇(あそあそ)でも有名な袁紹様に会えて光栄なのー!」

 

 次に前に出たのは于禁。彼女も栗色の髪を編みこんでいるが、楽進が後ろに流しているのに対し、于禁は横に結びつけてある。

 服装も、周りの者達の中で袁紹の次に派手であり、眼鏡の縁に至るまで彼女のこだわりが見える。

 阿蘇阿蘇の愛読者ということもあり、お洒落さんだ。

 

 ※阿蘇阿蘇……この時代のファッション雑誌、良く袁紹が扉絵を飾る。

 

 実物の袁紹に会えたのが余程嬉しかったのか、于禁は黄色い声を上げながら握手を求めた。

 彼女の突飛な行動に袁紹は面を食らったものの、最終的には笑顔で応じた。

 

「最後は私やな! 三羽烏の一の出世株、李典といいます。以後よろしゅう!!」

 

 唐突に聞こえてきた関西弁、袁紹は特に驚きを見せない。理由は二つ。

 一つは、感覚が麻痺していること。斗詩や猪々子を始めとした英傑達が女性だったり、黄巾を率いた張角達がアイドルだったりと、時代錯誤かつ『知識』と違うそれは。袁紹の感覚を麻痺させるには十分で、今となっては大抵のことに驚かなかった。

 

 そして二つ目だが――それは袁紹の目線の先に理由がある。

 

 (たわわな果実が実っている!)

 

 何が、とは言うまい。李典の可愛らしい顔立ちや、髪留めでツインテールにしている薄紫の髪形など、彼女を客観的に評価する部分は他にもあるはずだが。彼女が持つ豊かなそれは、他の印象を鈍らせるほどに破壊力を――

 

 袁紹はかろうじて李典の顔から目を動かさなかった。少しでも油断すれば目線が下がるため、必要以上に目力が入り、李典が首を傾げている。

 

 (さすが麗覇。彼女の才を見抜いたようね)

 

 そんな袁紹を見て勘違いしている娘がいるが――触れないでおこう。

 

「ちょっと麗覇様」

 

 華琳達を目力で誤魔化した袁紹だが、流石に付き合いの長い家臣達は騙せず。頬を引き攣らせた桂花が顔を覗き込むように、語りかけてきたが――

 

「あら、貴方が荀彧ね。噂は色々聞いているわ」

 

「え!?」

 

 華琳に声を掛けられ動きを止める。ただ話しかけられたようだが、実は違う。

 

「な、何故私の名を?!」

 

 別に桂花は自分の名を低く見ているわけではない。やる事なすこと全てが派手で豪快な袁家の軍師なのだ、桂花の名は嫌でも大陸中に広がる。華琳がそれを知っているのも当然である。

 しかし二人は初対面だ。互いに面識が無く、名と活躍を知るだけなのに、他にも袁紹の家臣である娘達がいるなか、迷う事無く名を言い当てたのだ。

 

「……袁家の知、荀彧は有名だもの。知らないほうが可笑しいわ」

 

「そんな、光栄ですぅ」

 

 かつての憧れ、曹孟徳に賞賛の言葉を掛けられた桂花は、顔を蕩けさせ喜んだ。

 彼女の反応に華琳は満足そうに微笑む、荀彧と言い当てることなど簡単である。

 

 袁紹には有名な二つの知がある。一人は桂花、二人目が風だ。

 華琳と風はすでに面識がある。ならばもう一人、風と同等かそれ以上の知の空気を纏う者など、袁紹の周りには一人しか居ない。簡単な消去法である。

 

 当の桂花は感激しているので、タネをばらすまでもあるまい。

 

「……フフ」

 

「む!?」

 

 華琳が蠱惑的な笑みを浮かべると、袁紹が身体を強張らせた。

 

 あの表情には見覚えがある。私塾いた頃の話だ、袁紹に比べ優等生だった華琳だが、何か悪巧みするときには顔に出る。それがこの蠱惑的な笑みだ。彼女にとっては可愛い悪戯の心算らしいが、華琳の冗談や悪戯は心臓に悪いものばかりである。

 その被害に遭うのは白蓮が多かったが、袁紹も幾度が標的にされていた。

 今その笑顔を華琳が浮かべている。警戒するのも無理は無い。

 

「いい娘ね気に入ったわ、私の所に来ない?」

 

「……え?」

 

「勢力としては見劣りするかもしれないけど、優遇するわ。それに私達――相性が良いと思うの」

 

 呆ける桂花の頬を撫でながらとんでもない発言をする。なんと大勢力の軍師を勧誘しているのだ。

 しかも、その主の目の前で。

 

「……」

 

「どうかしら、悪くない条件だと思うけど?」

 

 顔を伏せた桂花の耳元で、何やら囁いた後言葉を続ける。『条件』と言う最後の言葉から、曹操軍での待遇でも言われたのだろう。

 

 桂花の表情は袁紹から見えない。

 

「お断り致します」

 

「……何故かしら?」

 

 少しの間をおいて断りの言葉を口にする桂花。ここまではっきりと断られるとは思わなかったのか、華琳は眉を僅かに吊り上げ不機嫌そうな顔をしている。

 

「私の主は後にも先にも袁本初ただ一人です。それに――」

 

「それに?」

 

「待遇で誓いを反故にする者など、曹操様が求める人材に値しない――と愚考致しました」

 

「…………フフフ、アハハハハ!」

 

「か、華琳様!?」

 

 桂花の言葉を聞いた華琳は笑い声を上げる。それも、今までに見たことが無いほど豪快な声だ。

 その証拠に、彼女の家臣達が目を丸くしている。

 

 (見事、ますます気に入ったわ荀文若!)

 

 先程の桂花の言葉、あれはただ断りを入れただけではない。

 『待遇で誓いを反故にする者など、曹孟徳には値しない』この言葉によって、断られた華琳の面目は守られ、これ以上の勧誘を縛ったのだ。

 勧誘を続ければ華琳の名に傷が付くだろう。待遇で鞍替えする『程度』の者を望むのかと、それは彼女の誇りが許さない。

 

 桂花はあの短いやり取りで、自分の意思を伝え、華琳の顔を立て、次に来る勧誘の言葉を断ち切ってみせた。

 

「貴女の意思は良くわかったわ。確かに、その『程度』の者など私の軍には相応しくないわね」

 

 ここまで見事に切り返されたのだから、『今回』は諦めよう。しかし、やられてばかりなのも曹孟徳の名が許さない。

 

「それにしても冷たい主ね。家臣が勧誘されていると言うのに、何も口にしないなんて」

 

「……」

 

 それは桂花にも気がかりだった事だ。彼女が以前斗詩や猪々子に聞いた話しでは、二人を欲した華琳に食って掛かったという。

 

(でも、私には……)

 

 桂花は主に心酔している、もしやこの想いは一方通行なのだろうか。聡いだけに考え出すと思考が止まらず、桂花の表情は暗くなっていった。

 それを確認して華琳は口角を上げる。これで袁紹が慌てればそれで良し、その惨めな姿に免じて仲を取り持ってやろう。我ながらやり過ぎた気がするし……と、反省しているのか良くわからない事を考え――目を見開いた。

 

 袁紹が不敵な笑みを浮かべている。それは華琳の予想していた表情ではない。

 

「桂花の答えは始めからわかっていた。我が口を出すまでもあるまい」

 

「麗覇様……」

 

「……」

 

 その言葉に顔を蕩けさせる軍師、内心舌打ちする覇王。

 

 私塾にいた頃の袁紹なら慌てふためいたかもしれない。しかし彼も華琳と同じく多くを学び、育んできた。

 此処に居るのは華琳の良く知る袁本初(未熟者)に在らず。数多の奇跡を成し遂げてきた袁本初(袁家現当主)だ。

 

(まあいいわ、いずれ貴方も含めて私のモノに――)

 

 確かな信頼と絆で結ばれている、袁紹と桂花の姿に苛立ちが収まらない。

 華琳はそれを自分の悪戯を利用されたから――と自己分析したが、実は別の感情であることを、この時の彼女はまだ知らなかった――

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 




NEW!獣に大剣 夏侯惇 

好感度 10%

猫度 「フシャー!」

状態 警戒

備考 主に近づく悪い虫と認識している
   昔なら即座に斬りかかっただけに、成長している?


NEW!曹軍の精神安定剤 夏侯淵

好感度 20%

猫度 「私が懐く(鳴く)のはあの方だけだ」

状態 普通

備考 主の盟友と認識している
   斗詩の相談に良く乗っていた


NEW!将来有望 典韋

好感度 10%

猫度 「え? え?」

状態 普通

備考 袁紹の雰囲気に好感を抱く
   まだまだ未熟(意味深)


NEW!天真爛漫 許緒

好感度 10%

猫度 「ニャー!」

状態 普通

備考 名族は美味しい物食べているんだろうなぁ、程度の関心
   まだまだ未熟(意味深)


NEW!生真面目武人 楽進

好感度 10%

猫度 「ハッ! ニャー……っ~~」

状態 普通

備考 袁紹軍の規律が気になる
   傷に嫌悪感を出さなかった彼らを高く見る


NEW!今時の武人 于禁

好感度 40%

猫度 「ニャーなの!」

状態 尊敬

備考 阿蘇阿蘇の表紙を飾る袁紹に憧れを抱く
   単純に高収入イケメンってだけでポイントが高い

NEW!カラクリ娘 李典

好感度 10%

猫度 「出資してくれるなら鳴いたるで!」

状態 普通

備考 カラクリには目が無い
   袁紹の折りたたみ式御輿が気になる  

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