恋姫†袁紹♂伝   作:masa兄

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今回は短いです


第6話

「私塾ですか?」

 

「そうだ」

 

あの事件の後日、父である袁逢に呼ばれ事件関連の話でもあるのかと考えながら部屋に出向くと、とある私塾に通うようにとの話だった。

 

「そこで三年学んで来るといい、その後帰ってきたお前に家督を譲りわしは隠居する。」

 

「なっ!?」

 

何故ですか!?と、問いかける前に手で制されたため口を閉じる。

 

「ここだけの話しになる、聡明なお前なら勘付いているかもしれぬが漢王朝の腐敗は大分進んでおる。

 このままではいずれ滅ぶだろう」

 

「……」

 

「わしは漢の忠臣として努力してきたつもりだ、だがもはや袁家の力だけでは腐敗を止めることは出来ぬ、いたずらに事を先延ばしにするだけでは、漢王朝に潜む獅子身中の虫が全員心変わりでもしないかぎりどうにもならぬ、そしてそれはありえぬ」

 

「……」

 

袁逢の話はこの時代に生きる人々にすれば妄言に近かったが、なまじ先の出来事を知っている袁紹は話を遮る事無く聞き続ける。

 

「その先には動乱が待ち受けているであろう、そんな時に家督騒動などしておれば野心の高い他国によって攻め滅ぼされるであろう。

 だからお前には早いうちに家督を譲り袁家にしっかりと根をはった状態で、これから起こるであろう動乱に対処してもらいたのだ」

 

「話しはわかりました。しかし我が私塾に通う必要性がわかりませぬが?」

 

この地に骨を埋める覚悟をした袁紹には、来たる黄巾の乱に備えやっておきたい事が山のようにあった。

 

「フッ、確かに今更私塾に行っても『私塾』から学べる事は少ないかも知れぬ」

 

「!?そ、それは私塾内で勉学の他に学べることがあるという事ですか?」

 

「うむ、お前にはそこで他地域の諸侯の者達と交流を持ってもらう。その交流で得た友あるいは諸侯の情報は袁家を取り仕切る時に大いに役立つであろう」

 

(確かに、我の世代である諸侯の子息達を知っておくのは重要なことだ。史実でもそこで曹操と対面する事になっている。曹操か―――我としても顔を拝んでおきたい)

 

史実で自分を破る事になっている曹操に関心があった袁紹はこの申し出を受けることにした。

 

「なに、家督を継いだらしばらくゆっくりは出来ぬのだ。休息だと思って楽しんで来い」

 

「はい父上、……つきましてはお願いがあるのですが」

 

「何だ?言ってみるがいい」

 

「申し訳ありませぬが、しばらくお待ちくだされ」

 

そう言うと袁紹は一旦自室に行き、紙の束を持って戻ってきた。

 

「?何だその束は」

 

「はい、これらには我がこの地でやりたいこととその方法が書かれています」

 

袁逢は紙を取り内容に目を通す

 

「こ、これは!?」

 

そこには―――

 

刈敷や草木灰を肥料として使用する方法と効果、千歯扱きの設計図、楽市楽座の概要と経済効果、揚浜式塩田や入浜式塩田など、多数の政策とその欠点などが書かれていた。

 

「私塾に行っている間、父上にはこの政策を推し進めてもらいたいのです」

 

「う、うむ全ては無理かも知れぬが重鎮達と相談してみよう――」

 

「それから」

 

「まだあるのか!?」

 

「今後袁家で商売を始め、売っていただきたい物がありまして――、こちらです」

 

そう言うと袁紹は黒い液体を差し出した。

 

「何だこれは、墨?」

 

「いえ、調味料です」

 

「なっ!?この液体がか!?」

 

「はい、どうぞひと舐めしてみて下さい」

 

その言葉に袁逢は恐る恐る指を黒い液体につけ舐めた。

 

「っ!?これは――、なんと濃く芳醇な味だ……」

 

「魚醤と申します」

 

実は袁紹は一時期日本食が恋しくなり、前世でたまたま魚醤の作り方を知っていたため、醤油の代用品として作っていた

 

「これの製法を袁家秘匿とし、利益を独占するようにして下さい」

 

「……」

 

袁逢は思わず息を呑んだ、袁紹が提案した政策の数々―――そしてこの魚醤、どれほど成し遂げられるかわからないが、それによって民のみならず袁家にも莫大な財が入ることは想像できた。

 

「お前は……、それほどに財を成してどうするつもりだ?」

 

この疑問は袁逢にとって至極当然なものでった。名族である袁家はすでにかなりの財を保有している。

 先の時代に待つ動乱に備えるためとはいえ、ここまで利益を追求する理由がわからなかった。

 

「この先に起きるであろう時代の転機において、我の策を成すためには莫大な費用が必要なのです」

 

「……」

 

袁逢には息子が何を見据えているかわからなかったが、彼が考えなしに言っているわけではないことは理解していた。

 

「……最後に一つ聞きたい、これは全てお前が考え付いたのか?」

 

「はい、我が幼少の頃より異国の書物を参考にして考案しました」

 

さすがに未来の知識によるものだとは言えず、袁紹は無理があるとわかりつつも自分が考案したことにした。

 

「……そうか」

 

これにはさすがに袁逢も嘘だと気がついたものの

 

(聡明な我が息子が無意味な嘘をつくとは思えぬ、又ここで嘘をついても利点は無い、ならば本当の事を言えない理由があるのだろう。……まぁよい、ワシは息子を信じこの政策を推し進めるとしよう……)

 

「わかった……、何分やることが多く革新的なため時間は掛かるが慎重に重鎮達と進めることにする。

 それでよいな?」

 

「はい!ありがとうございます父上!!」

 

「うむ、しばしの別れだが達者でな」

 

 

 

………

……




袁紹「ワイが青春しとる間しっかりNAISEIしとくんやで」

パッパ「ファッ!?」

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