ポケットモンスター~orange~   作:天城黒猫

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昨日は投稿できなくて申し訳ありません。
ゲームのイベントをやるのに忙しかったのですよ……


vsサワムラー

 

 

 

 

タマムシシティ
タマムシ にじいろ ゆめの いろ

 

 

 

 マサキはバトルフィールドの観客席から、目の前で繰り広げられているバトルを見ていた。

 それはシバとイエローとの戦いだった。シバのサワムラーとエビワラーと、イエローとピカとの戦いは非常に激しいものだった。

 

 エビワラーのパンチの一つ一つは、必殺の威力を秘めており、ピカがそれを受けまいと回避する。こうして空中を打った拳から放たれる衝撃波は、バトルフィールドの壁や床、天井を容赦なく叩き付け、破壊した。

 サワムラーの伸縮自在の四肢がひとたび振るわれれば、やはりバトルフィールドを破壊した。

 

 マサキから見れば、この戦いは災害そのものであった。

 そして──そんな災害の中心地で立っているイエローが無事で済むかどうか、と言えばもちろん無傷というわけにはいかなかった。

 サワムラーとエビワラーが破壊したバトルフィールドの、破片が時折イエローの方へと飛んで、その体を傷つけていた。タケシは破片からイエローを庇っているが、それでも限りがあった。

 

「タケシさん!」

 

 イエローは思わず叫んだ。タケシの体は、すでにボロボロだった。

 

「オレのことは気にするな! バトルに集中しろ、オレのことを気にしながら勝てる相手じゃない!」

 

「でも……」

 

「オレの手持ちはもう全滅したんだ。残る戦力はイエロー、キミしか居ないんだ。だから──バトルに集中してくれ」

 

 この二人の会話は、遠い場所にいるマサキには聞こえなかった。しかし、それでもマサキはイエローとタケシが己の体が傷つくのも構わずに、シバと戦っているということを理解していた。

 

「なんでや……」

 

 マサキは手すりを力一杯握り、体を震わせて叫んだ。

 

「なんで、アンタ等は戦うんや!? もうええやろ!? イエロー! タケシの手持ちは皆“ひんし”になったんやろ? ジムリーダーが負けたんや! 実力差は分かっているやろ!? イエロー、ソイツは強い! 負けるのがオチやろーが!」

 

 マサキには、イエローたちがボロボロになってまで、シバと戦う理由が理解できなかった。己の身が危なくなったのならば、逃げればいいのだ。ましてや相手は、四天王という強力なトレーナーであり、ジムリーダーであるタケシでも敵わなかった恐ろしい相手なのだ。

 なぜ逃げないのか──なぜ戦い続けるのか──マサキには理解出来なかった。

 

 マサキの声を聞いたイエローは、マサキの方を見て叫んだ。

 

「……ボクを助けてくれた、レッドさんを見つけなきゃいけないから! ボク達を逃がしてくれた、オレンジさんの無事を確認したいから! ──そして、四天王達のやろうとしていることを見過ごせないから! ……だから、ボクはこの相手と戦わなきゃならないんです!」

 

「──ッ!」

 

 マサキは息を呑んだ。

 イエローの力強い意思と使命感を感じ取ったが故である。イエローは、確固たる意思を持って、この場に立っており、シバと戦っている。しかし──マサキは、たまたまトキワの森でイエロー達と出会い、その戦いに巻き込まれたため、ここにいるのだ。

 

 もちろん、マサキからすれば理不尽な話でしかない。しかし、知り合いであるレッドが行方不明となり、己の後輩であるオレンジの安否が不明となれば、話が変わってくる。赤の他人の話ではなく、身内が襲われ、犠牲となっているのだ。

 

 しかし、それでもマサキは四天王と戦おうとは思えなかった。このカントー地方ポケモンチャンピオンであるレッドが敗れたのだから、自分が戦っても敗北して酷い目に遭うのが()()でしかない。

 

「なんでや……いくら誰かの為とはいえど、そこまでボロボロになってまで戦えるんや!」

 

 マサキは口の中で叫んだ。

 再びイエローの方を見てみれば、イエローは先ほどよりも傷ついていた。しかし、それでも尚諦めようとはせず、戦いを続けていた。

 タケシは、飛来する瓦礫から、イエローを庇い続け、とうとう限界が来たのか気絶した。

 

「ああ──もう!」

 

 マサキは思わず観客席から飛び出していた。なぜ飛び出したのか、それはマサキにもよく分からなかった。

 

 ──マサキは昨日のことを思い出していた。

 それは、四天王三人を相手に何もできず、あろうこかオレンジを犠牲として逃げ出したときのことだった。あのとき、マサキはずばととの背で歯噛みしていた。オレンジが四天王という恐るべき相手と戦い、無事であるわけがないのだ。

 もしも、あのとき自分が変われたら、と何度も考えたことか。それほどに──マサキは、オレンジのことを気に入っていたのだ。

 

「ロコーン! いったれ!」

 

 マサキの繰り出したロコンは、今まさにピカに攻撃しようとしていたエビワラーへと向かって、炎を吹き出した。ロコンの攻撃によって、サワムラーは一瞬ひるんだ。

 

「マサキさん!?」

 

 イエローは、突然のマサキの参戦に驚き、叫んだ。

 一方、マサキは細かく呼吸し、額には冷や汗が流れていた。

 

「ふー……ああ、もう! ……ワイもやったるで。可愛い後輩(オレンジ)がやられて、その上、目の前で年下のガキんちょが傷ついとるんや。見逃す訳にはいかないやろーな! ワイだって、レッドもオレンジも心配やからな! 協力ぐらいしたるで!」

 

 こうして、マサキはシバとの戦いに加わった。

 

 ──これによって、戦況はイエロー達にとって少しばかりマシなものとなった。

 今までは、エビワラーとサワムラーが交互に繰り出す、途切れることのない猛攻から逃げ出すことが精一杯だったが、マサキのロコンが参戦したことによって、エビワラーとサワムラーは二匹の内のどちらかに意識を逸らせざるを得なかった。

 

 そのため、ピカには攻撃できる隙ができあがり始め、マサキのロコンが相手の攻撃を避けている間に、エビワラーかサワムラーのどちらかに攻撃しはじめた。

 また、マサキのロコンも、隙ができれば炎攻撃で相手のHPを少しずつ削っていった。

 

 しかし、それでも決定打といえる攻撃を与えることはできなかった。

 ピカとロコンがやっているのは、僅かにできあがった隙を利用して攻撃するという行為だが、その隙が生じる時間は、とても短いのだ。それこそ、ほんの一秒にも満たない時間だった。

 その僅かな時間で攻撃するとなれば、どうしても動作を最小にしなくてはならず、その分必然と攻撃の威力が小さくなっていた。

 

 ──ピカとロコンの二体は、相手の攻撃を回避し続けていた。

 HPこそは、時折攻撃に掠ることによって少しばかり削られては居るが、まだまだあった。しかし、それでもサワムラーとエビワラーのコンビネーションによって行われる、止むことの無い猛攻の前に精神がジワジワと削れていった。

 

 そして、とうとうマサキのロコンに限界が来た。

 ロコンは番犬用として育てられては居るが、それでも四天王という敵と戦うには厳しいレベルであり、ピカよりも早く限界が来たのだった。

 ロコンの集中力は途切れ、とうとうエビワラーの“かみなりパンチ”をマトモに受けてしまった。

 

 吹き飛ばされ、壁に叩き付けられたロコンは一撃で“ひんし”となった。

 

「ロコン!」

 

 ぐったりと横たわるロコンに気を取られたマサキに、サワムラーは攻撃を放った。

それを見たイエローは叫び、ピカに防御させようとしたが、ピカはエビワラーを相手取っており、マサキを助けることは不可能だった。

 イエローはその場から駆け出し、マサキを庇おうとしたが、これもマサキとの距離が遠いため到底間に合うとは思わなかった。

 

「駄目──! 間に合わない!」

 

「────え」

 

 サワムラーの足が、マサキの顔面を貫くその直前、イエローの腰に下げられたモンスターボールから、一匹のポケモンが飛び出した。

 そのポケモンは、オレンジのずばととだった。ずばととは、高速でマサキの前まで移動し、その翼でサワムラーの足の軌道を変化させた。

 

 ずばととは、サワムラーとエビワラーを睨みつけ、戦う意思を見せた。

 ──ずばととは、今まで戦おうとはしていなかった。それは、己のトレーナーであるオレンジが居なかったからである。ずばととはオレンジに信頼を寄せており、オレンジ以外のトレーナーの指示で戦う気は無かった。

 

 それに、マサキやイエローを助けるような理由も無かったのだ。イエロー達をこのタマムシシティに運んだのは、オレンジの指示に過ぎず、協力しようとは思っていなかった。

 しかし、マサキとイエローが四天王と戦い、安否が不明となっているオレンジのことを気遣っている様子を見せた今は違った。

 

 己のトレーナーのことを心配し、心を寄せる相手なのだから、協力しようと思ったのだ。

 

「─────!」

 

 サワムラーは、突如現れた敵に同様することはなく、足を伸ばして攻撃した。

 ずばととは、超高速で飛行し、サワムラーの伸びた足の周りを回りながら、サワムラーへと接近し、“つばめがえし”による一撃を加えてみせた。

 

 足を縮めたサワムラーは、再び攻撃を行うとしたが、片足に力が入らずに体制を崩した。

 

「──!?」

 

 見れば、バネとなっているサワムラーの片足はあちこちが傷ついていた。

 この傷は、ずばととがサワムラーへと接近するときに、傷つけたことによってできあがったものだった。

 

「す、凄い!」

 

 イエローは思わず声をあげて関心した。その間に、ピカはエビワラーの拳による連打を回避し、“アイアンテール”でエビワラーを吹き飛ばした。

 これが反撃のきっかけとなった。

 

 ──エビワラーとサワムラーはこれまでコンビネーション攻撃を行っていた。

サワムラーが手足を伸ばして、遠距離から攻撃することによって相手の動きを止め、エビワラーが接近攻撃を行っていた。交互に攻撃することによって、常に攻撃が降り注ぐようになっていたのだ。

 

 このコンビネーションは単純なものだったが、それ故に対策することが難しかった。しかし、サワムラーは片足が傷ついたため、満足に足を伸ばすことが難しくなり、攻撃の密度が減っていった。

 そのため、ピカとずばととが反撃する機会は多くなりサワムラーとエビワラーの二体のHPを徐々に削っていった。

 

「──ピカ、10万ボルト!」

 

 そして──ついに決着の時が訪れた。

 一秒にも満たない油断が致命的となる戦いの中、ピカとイエローは強力な攻撃を放つことの出来る機会を伺い──その時が来た。

 ピカの“10万ボルト”はエビワラーに命中し、“ひんし”状態となった。

 

 また、ずばとともサワムラーめがけて“シャドーボール”を放った。──そして、サワムラーもまた“ひんし”となり、倒れた。

 

 ──手持ちを全て倒された瞬間、シバは意識を失い地面に倒れた。

 

「……やった?」

 

「ああ、やったんや! 凄いで! 四天王シバを倒しよった!」

 

 それを見たイエローとマサキは、それぞれ違った反応を見せた。イエローは疲労感と痛みに包まれ、思わず尻餅をついた。

 マサキは喜びの感情を見せた。それから、イエローとタケシを交互に見た。

 

「それにしても、随分ボロボロになってしまったなぁ……早く手当せんとな。立てるか?」

 

「ハ、ハイ……」

 

「タケシの方が重傷やなあ。ワイが抱えていくから、イエローは自分で歩けるかいな?」

 

「大丈夫です──」

 

 シバとの戦いが終わり、イエローとマサキは安堵していた。

 しかし、敵が全て居なくなったというわけではなかった。──四天王カンナは、カスミとエリカに勝利した。ならば、イエロー達を始末しようとするのは当然のことだった。

 

 カンナは、バトルフィールドの壁を突き破り、中の状況を理解した。

 シバとタケシは倒れ、イエローとマサキの二名が立っている──つまり、シバが敗北したということを理解したのだ。

 

「四天王カンナ……!」

 

 イエローは、ボロボロの体にムチを打ち、カンナの前に立ちはだかった。

 マサキもまた、タケシを抱えながらカンナを睨みつけた。

 

「──まさか、シバがやられるなんてね。まあ、良いわ。だったら、この私が始末するのみだ!」

 

「あ、アカン! 不味いで──流石に2連戦は無理やないか!?」

 

 マサキは叫んだ。

 シバとの戦いにおいて、ピカとずばととは勝利したが、それでも無傷とは行かなかったのだ。ある程度HPを削られていたし、イエローはボロボロになっていた。このままカンナと戦うには厳しい状況だった。

 

 このままカンナと戦えば、イエロー達が敗北するのは目に見えていた。

 しかし──そこに救世主が訪れた。

 

 バトルフィールドの天井に開いた穴から、一体のリザードンが登場したのだ。そして、その背中にはグリーンが乗っていた。

 

「グリーン!」

 

 マサキは彼の姿を見て、笑顔を浮かべて見せた。

 グリーンは、カンナを見下ろして言った。

 

「──お前が四天王か」

 

 ──なぜグリーンがここにいるのか、それは偏にオーキド博士の指示によるものであった。

 

 彼は、ポケモンリーグ準優勝者──つまり、カントー地方ナンバーツーの実力を持つトレーナーなのだ。オレンジとイエローだけでは厳しい戦いになるだろうと思い、オーキド博士は己の孫であるグリーンに連絡し、四天王との戦いに加わるように依頼したのだ。

 そのため、グリーンはここに居る。──彼はカンナを見下ろし、続けた。

 

「この街に来たとき──外を見た。酷い有様だったぜ。街中が完全に凍り付いていた。アレはお前の仕業か?」

 

「ええ、そうよ」

 

 カンナは冷酷な笑みを浮かべてみせた。しかし、その内心は少しばかり焦っていた。

 彼女のポケモンはラプラスと、パルシェンしか残っておらず、他の手持ちであるジュゴンやルージュラは“ひんし”となっており、このまま戦うのは少しばかり分が悪かった。

 

 しかし、それでもカンナは引き下がろうとは考えていなかった。

 それは偏に四天王という実力者としてのプライドによるものであり、己が撤退するということは屈辱でしかなかった。

 

「私もいるぞ!」

 

 ──と、新たなる登場人物が現れた。その男はギャロップにまたがり、カンナを見下ろしていた。

 グレンタウンジムリーダーにして、元ロケット団の科学者であるカツラは、不敵な笑みを浮かべながらカンナに問いかけた。

 

「四天王よ、これ以上戦うというのなら、私たちが相手となろう。──最も、ポケモンリーグ第二位に、ジムリーダーの二人が相手。そして、見るにどうやらすでに何体か手持ちを倒され、手負いの四天王。勝敗は見るまでもないだろうがね」

 

「ぐ……!」

 

 カンナは歯噛みした。

 グリーン一人のみならば、何とか勝ち筋を見出すことはできたし、最低でも気絶しているタケシから、グレーバッジを取り上げて逃げることもできた。しかし、相手が増えるとなると、僅かな勝ち筋は消え去り、バッジを手に入れることができるようなチャンスもほとんどなくなってしまった。

 

 ──今、カンナは屈辱に染まっていた。

 

「……いいわ、ここは撤退しましょう」

 

 彼女は理性によって怒りを押しとどめ、撤退することを選んだ。

 それは己の任務を達成することができずに、敗北するよりも一度屈辱の撤退を行い、手持ちを十分回復させてから再び襲撃すればよい、と考えたからだ。

 

 カンナが去っていくのを見たグリーンは、肩透かしだと言わんばかりに鼻を鳴らした。

 

「見逃すとはな、お優しいことだ。グレンジムリーダーよ」

 

「仕方があるまい。──仮に戦ったとしても、タマムシの半分以上が氷漬けになっている。これ以上彼女が戦闘を行ったら、この街がさらに酷いことになる可能性は否定しきれんだろう。それに、皆の手当を早くしないとな」

 

 と、カツラはボロボロになったタケシやイエロー、そしてカンナによってやられたカスミ達を指し示した。

 

 ──この四天王カンナとシバの襲撃によって、タマムシシティは少なくない被害を被った。

 カンナによってタマムシシティの建物は半分以上が凍り付き、その機能を停止させた。幸い、住民たちは四天王が襲撃したという知らせを聞き、避難していたためけが人はいなかった。しかし、タマムシ精鋭軍は別だった。

 

 彼らはバトルフィールドに立ち入ろうとする四天王カンナを止めようとし、重症を負った。

そして、ジムリーダーであるエリカ、カスミ、タケシも皆四天王に敗れ、怪我を負った。

 

 ──ジムリーダーたちは皆負け、街と人はボロボロになったが、それでも何とかそれに見合うであろう対価を、イエロー達は手に入れた。それはすなわち、四天王シバである。

 シバはイエロー達に敗北し、気絶したあと、目を覚ますことは無かった。しかし、一晩が経過し、朝日が昇り始めたころの時刻になると、ベッドに寝かされていたシバは、うめき声と共にその体を起き上がらせた。

 

 






ちょっと解説します。
原作においてマサキはなんやかんやで巻き込まれて、自分の意思ではなく殆ど流れで四天王と戦うことになりました。
しかし、本作では自分の意思で四天王と戦おうとしました。

また、マサキのロコンですが、そんなに強くは無いと思います。原作でも、シバのポケモンにあっという間に吹っ飛ばされていたので……

次回は説明&修行パート入ります。

明日投稿しますよー!
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