ポケットモンスター~orange~   作:天城黒猫

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投稿遅れた……申し訳ありません。深夜だからまだ5日!(謎理論)

とうとうポケモンと完全に戦わなかった。VSのタイトルがつけられなくなりましたorz
サブタイは、他のも何か思いついたら変えていこう……




戦闘の爪痕

 オレンジはブルーの隠れ家で、一日ほど休み、体力を十分に取り戻すと、家の前で体の調子を確かめていた。

 

「てぇい!」

 

 ──オレンジは、長い鎖につながれた手錠のようなものを振り回し、それを置かれた空き缶目掛けて投げつけた。見事投げつけられた手錠は、空き缶を掴んでオレンジの手元へと戻ってきた。

 その手錠のようなものは、ホウエンのチャンピオンであるダイゴが、石を採取するときに使用するものと同じだった。

 

 このオレンジの運動を見ていたブルーは、感心したような声で言った。

 

「あら、凄いわね。その道具」

 

「ありがとうございます。体の調子は──」

 

 オレンジは眉をひそめながら続けた。

 

「万全とは言い難いですけどね。体力は戻りましたけど、あの氷が特殊なものだったのか──どうにも、時々手足が痺れるときがあるんですよね……

ま、普通に動く分は全く問題ありませんし、凍傷とかによく効くいい場所を知っていますから、あとで治しますよ」

 

「そう──じゃあ、今からタマムシシティに行くわよ。イエローは、四天王に襲われたみたいだけど、撃退できたみたいだから合流しましょう!」

 

 ブルーの言葉を聞いたオレンジは、驚きのあまりブルーの方へと振り向いた。

 

「えっ!? ちょ、待って!? 四天王に襲われたって──初耳なんだけど!? 皆無事なの──」

 

 ──二人は、ブルーのプリン(ぷりり)を使って、タマムシシティへと向かった。

 

 

 四天王カンナによってタマムシシティの実に半分が氷漬けになり、タマムシジムのバトルフィールドは、殆ど半壊した。

 ジムリーダーであるエリカ、カスミ、タケシたちは皆重症を負い、カンナの攻撃を受けた、タマムシ精鋭軍のメンバーたちは皆病院に運び込まれた。

 

 四天王の残した爪痕は大きく、タマムシシティ全体が通常通りの動きを見せるのには、かなりの時間が掛かった。少なくとも、一日そこらでは元通りとはいかなかった。

 しかし、それでも復興作業は四天王カンナが立ち去った後、すぐさま行われた。

 

 例えば、氷漬けになった街はカツラの炎ポケモンや、グリーンのリザードンやウェンディの炎技によって溶かされた。それでも、街中すべての氷を溶かすのには、半日以上の時間が掛かった。

 シバとの戦いにより、バトルフィールドは半壊し、修復を行うのは不可能と判断され、一度取り壊し、再び新たに立て直すこととなった。そのため、現在は瓦礫をどかしたり、建物を取り壊すための準備が進められていた。

 

 そして──タマムシシティの人々が最も心配しているのは、氷漬けになった街とか、バトルフィールドとかではないし、己の生活に関する事でもなかった。すなわち、四天王と戦い重傷を負ったジムリーダー、とりわけエリカは、このタマムシシティのジムリーダーであるため、最も心配の声を上げる人々が多かった。

 

 傷ついたジムリーダーたちた、タマムシ精鋭軍のメンバー、そしてイエローやシバは皆タマムシシティの病院に運び込まれた。

 病院は幸いカンナの氷から逃れていたため、無事に機能していた。

 

 ──ジムリーダーたちが皆意識を取り戻すのには、半日以上の時間、つまり一夜が経ち、朝になるまで時間が掛かった。

 イエローもまた、シバとの戦いで傷を負ったため、病院に運び込まれたが、こちらは包帯やガーゼなどによる簡単な手当で済ますことができた。傷は数週間もすれば完全に塞がり、傷跡も残らないぐらいの塩梅であった。

 

 最後に、最大の問題が一つあった。

 ──それは、四天王カンナは立ち去ったが、イエロー達に敗れた四天王シバは、気を失ったままタマムシシティに残ったのだ。

 

 シバの処置をどうすればよいのか、タマムシシティの人々は悩み、モンスターボールを取り上げ、動けるタマムシ精鋭軍たちによって、ジムリーダーたちの目が覚めるまで監視を行うことにした。

 

 イエローは、病院の休憩所で街の氷を溶かし終えたグリーンとカツラとの三人で話し合いをしていた。

 時間はすでに夜になっていた。

 

「──さて、イエロー君だったね? キミのことは、カスミから電話で聞いとるよ」

 

 とカツラは笑顔で言った。一方、イエローは少しばかり人見知りをしていた。

 

「私はカツラというものだ。グレンタウンでジムリーダーをやっている。そして、こっちが──」

 

 カツラはグリーンをちらりと見た。グリーンは、鼻を鳴らした。

 

「先だって行われたポケモンリーグで、準優勝したグリーン君だ。オーキド博士の孫でもある。さて、キミに話を聞きたい。色々とね。まずは──」

 

 カツラはイエローに次々と質問を投げかけた。

 例えば四天王の目的を知っているのか、キミは何者なのか、レッドの居場所を知っているのか……その他あらゆる質問に、イエローは自分が答えられるものだけ答え、答えられない内容のものは口を噤んだり、誤魔化したりした。

 カツラの質問がすべて終わると、イエローは欠伸した。

 

「ふぁぁ……もう終わりですか?」

 

「ああ、そうだね。疲れているのに色々と聞いてすまなかった。今日はもう眠って、明日また細かいことを話そう」

 

「ハイ……」

 

 イエローは眠たげな様子で、ピカを連れて与えられた病室へと戻った。

 残ったカツラは、グリーンに問いかけた。

 

「グリーン君、キミは一度も話さなかったが、何か気になることでもあるのかい?」

 

「──アイツは戦力にはならない」

 

 グリーンは呟くように言った。それは、彼がイエローを観察して、出した結論だった。

 

「トレーナーとしての実力は未熟。ひよっこもいいところだ。四天王との戦いでは、戦力にはならないだろう」

 

「だが、彼はシバを相手に勝ったようだ」

 

「それはタケシと共闘し、マサキが戦い、オレンジだったか。ソイツのクロバットと、レッドのピカが居たからだ。オレは昔、キクコと戦ったことがある。

……だから、四天王の事を知っている。見ての通りだ。奴らは手加減というモノを知らない。目的の為ならば、どのような犠牲もいとわないだろう」

 

 カツラは頷いた。

 グリーンは言いたいことはすべて言い終わったと言わんばかりに、この場から立ち去った。

 

 

 

 ──一晩が過ぎ、朝日がタマムシシティを照らした。

 

 朝になると、ジムリーダーたちが目を覚ましたとの知らせが、イエロー達の元に届き、イエロー、グリーン、マサキ、カツラの四人は病室に集まった。

 

「──申し訳ありません」

 

 皆が集まり、最初に言葉を発したのはエリカだった。彼女はベッドに横たわったまま、皆を見つめながら話した。

 

「不甲斐ないことに、タマムシを──皆を守れませんでした」

 

「気にすることはない」

 

 エリカの言葉に応えたのは、グリーンだった。

 

「一般の死傷者はいなかった。けが人も、お前たちとタマムシ精鋭軍のみだ。凍り付いた街も、今は元通りになっている」

 

「そう──ですか」

 

 エリカはほっと一息吐いた。

 それから、次に口を開いたのはカツラだった。彼は頭を引っ掻き、気まずそうに言った。

 

「済んだことは仕方があるまい──とは言えないか。まずはカスミ君。こんな時に何だが、一つ謝らせて欲しい。二年前、私がロケット団に所属していた時、キミのギャラドスを酷い目に合わせてしまった……」

 

 カスミもまた、エリカと同じようにベッドに寝そべりながら、首を横に振った。

 

「もう……いいわ。これからは一緒に戦ってくれるんでしょ?」

 

「……ああ!」

 

 カツラは頷いた。それから、彼が司会となってあらゆることを話し始めた。

 

「まずは、我々の行うべきことを話そう。第一に、四天王と戦い、行方不明となったレッドの捜索。そして、四天王の計画の阻止。最後にオレンジ君……だったかね? 彼の捜索といったところだろう」

 

「──最後のはもうやる必要はないわよ」

 

「────ブルー!?」

 

 この病室に突如現れたブルーに、皆振り向いて驚いてみせた。彼らの中の誰かが、ブルーの名前を叫んだ。その叫びに応えるように、ブルーは言葉をつづけた。

 

「何故なら、オレンジは無事だからよ。ほら、ここにいるわ」

 

 と、ブルーの言葉が終わるとともに、オレンジは病室の出入り口から顔を出した。彼の登場に、イエローとマサキは目を見開いて、その名前を叫んだ。

 

「オレンジさん!?」

 

「オレンジ!?」

 

「ええと──初めましての人もいますね。俺はオレンジっていいます。ブルーさんに助けられたので、無事です」

 

「──ぶ、無事だったんですね……」

 

 イエローは、心配事が一つ無くなり、胸をなでおろした。マサキも同じようで、彼は涙を流していた。

 オレンジはイエロー、そしてベッドの上で横たわるジムリーダーたちの様子を見て、息をのんだ。彼らは皆傷ついていた。

 

「……麦わらちゃん──いや、イエロー。その怪我は……」

 

「あ、えっと。これは四天王と戦って……でも、大丈夫です。ほとんど打撲ですし、傷も残らないってお医者さんが言ってましたから」

 

「大丈夫なわけないでしょう!」

 

「うわっ!?」

 

 とブルーはいきり立ち、イエローへと詰め寄った。それにイエローはタジタジとなった。

 

「もう、こんなに傷だらけになって! 無茶をする必要なんてなかったのよ!?」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 ブルーはイエローを叱りつけた。しばらく続きそうだったので、カツラは彼らは放置して話し合いを続けることにした。

 始めに、カツラはオレンジと握手をして自己紹介した。

 

「そうか、キミがオレンジ君か。私はカツラ──グレンタウンのジムリーダーだ」

 

 それをきっかけとして、エリカ、タケシ、グリーンの三人もそれぞれ自己紹介をした。オレンジもそれに返答し、改めてオレンジを加えて話を再開した。

 

「──さて、何はともあれ、オレンジ君が無事だということが分かり、目的は一つ達成された。では、残り二つの目的、つまりレッドと四天王の目的の阻止だが……

レッドの居場所については、オーキド博士の手元にある挑戦状を見るにオツキミやまの奥地が、四天王との戦いの場となったということが分かっている。しかし、今オツキミやまは混乱状態に陥っている」

 

「どういうことだ!?」

 

 とタケシは問いかけた。彼がジムリーダーを務めるニビシティから、オツキミやまが近いが故にタケシは心配したのだ。

 カツラは言葉をつづけた。

 

「オツキミやまに限定し、なんども地震が発生し、挙句の果てにはオツキミやまにいくつもの隕石が降り注いだそうだ」

 

「は──!?」

 

 カツラの言葉にタケシは驚きのあまり、思わず絶句した。

 

「オツキミやまの地形は大きく変化し、あちこちでがけ崩れや地割れが発生している。野生のポケモンたちも酷く混乱し、狂暴化していると聞く。それゆえに現在は、オツキミやまには人が立ち入ることができないようになっている。

 レッドがまだオツキミやまにいるかどうかは不明だが、居たとしてもオツキミやまに入山できるのはまだまだ先──野生のポケモンたちが落ち着いてからになるだろう」

 

「カツラさん、その地震とか、隕石の正体はまだ分かっていないんですか?」

 

「いいや、不明だよ。オレンジ君。ポケモンのわざによるものなのか──人為的、あるいは自然現象によるものなのかは、不明だ」

 

「そうですか」

 

 オレンジはカツラの言葉を聞き、一つの結論にたどり着いた。

 

(地震の正体については分からないけど……隕石が何個も降り注いだ、というのならば一つだけ心当たりがある。“りゅうせいぐん”──ドラゴンタイプの奥義。もしも“りゅうせいぐん”が使われたなら、おそらくは四天王ワタルの仕業かな? このカントーで”りゅうせいぐん”を使えるほどの実力を持つトレーナーは、ワタルぐらいだから。

 つまり、ワタルはオツキミやまで何者かと戦い、“りゅうせいぐん”を放った──)

 

「──レッドがどこにいるのかは分からない。しかし、捜索は続けよう。次に四天王の目的だが、やつらは人間を追い出し、ポケモンの楽園を創ろうとしているようだ。ポケモンの楽園を創る、というだけ聞けば言葉はいいが、実際はなんの罪もない人間を傷つけ、排除しようとしている。これは何としても阻止しなければならないだろう」

 

「──ちょっといいかしら?」

 

「カスミ君、どうしたのかね?」

 

 カツラの言葉を遮り、カスミは話し出した。

 

「多分、あいつ等ジムバッジを集めているわ。アタシも、エリカのバッジも奪われたもの……」

 

 カスミの言葉にエリカは同意するようにうなずいた。

 

「ええ、私も同意見ですわ。カンナは、我々を倒した後、バッジを奪い取っていきました。──ですが、何のために?」

 

 エリカの疑問に答えたのは、今までイエローを説教していたブルーだった。イエローはくたくたになっていた。

 

「──それは、きっと鳥ポケモンを操るためね。ワタルは、巨大な鳥ポケモンを操ろうとしているという噂があるわ。そのためにバッジのエネルギーを欲しているのかも。

 ……二年前、ロケット団がバッジのエネルギーを、増幅器で増やしてサンダー、フリーザー、ファイヤーを操ったように!」

 

「──!」

 

 オレンジは息を飲んだ。

 

「なるほど、それならば納得がいくな」

 

 グリーンは頷いた。

 

「……二年前、オレたちはマチスの操るサンダー、キョウの操るフリーザー、そしてナツメの操るファイヤーと戦った。その時、グレーバッジ、ブルーバッジ、レインボーバッジの三つのバッジを、ナツメが持つエネルギー増幅器から奪った。他のバッジは、バッジ増幅器に収まったままだ。

 ……あの戦いの後、四天王がバッジ増幅器を回収しているとすれば、残るバッジは──」

 

 この病室にいる皆は、タケシを一斉に見つめた。それが答えだった。タケシは懐からグレーバッジを取り出した。

 

「……ああ。このグレーバッジのみだろう」

 

「そ、そうか! だったら、このバッジさえ守れば、四天王の目的は達成されへんというわけやな!?」

 

 マサキは叫んだ。

 それにタケシは頷いた。

 

「だろうな。だが──オレはこの有様だ。四天王が再びバッジを奪おうと、襲い掛かってきても戦える体ではない……不甲斐ないことにな。だから、オレはこのバッジを誰かに守ってもらおうと思っている」

 

 そのタケシの提案に立候補したのは、オレンンジだった。

 

「──それなら、俺がグレーバッジを持ちます」

 

「な、なにを言うとるんや、オレンジ!? わかっとるのか? ソレを持っていたら、また四天王が襲い掛かってくるんやぞ!? 今回は助かったけど、次はどうなるか──」

 

「わかってます。……でも、タマムシシティに四天王がやってきたのは、俺が原因です。四天王キクコは、俺の持っているエネルギー探知機を奪い去っていきました。

 本来なら、地下に眠る石や、進化のエネルギーを観測するのに使いますけど、バッジのエネルギーを探知することもできます。……キクコは、エネルギー探知機で、バッジのエネルギーからこのタマムシシティに、ジムリーダーの皆さんが集まっていることを察知したんだと思います……だから──俺に守らせてください」

 

「──いいや、却下だ」

 

 オレンジの言葉は、グリーンによってにべもなく却下された。

 

「グレーバッジはオレが持つとしよう。オレンジと言ったか? おじいちゃんから何度か話は聞いている。研究者としては優秀なようだが、トレーナーとしての実力を考えると、四天王と戦うには実力不足だ。責任感を持つのは良いがな」

 

「──ッ」

 

 グリーンの言葉は、なるほどその通りだった。一度四天王に敗北しているオレンジの実力よりも、レッドに次ぐ実力者であるグリーンがバッジを守った方が、より確実となる。それをオレンジは理解しているからこそ、反論は出来なかった。

 続いて、グリーンはイエローに言葉を投げかけた。

 

「そこのイエローもそうだ。四天王と戦うには、レベルが低い……見るに、ピカとも本当に心の奥底から信じ合うことができていないようだしな。四天王に対抗したいのなら、少しでも鍛えておくことだ」

 

「グリーン、その言い方は無いんじゃないかしら?」

 

「事実だろう」

 

 ブルーの言葉に応えたグリーンは、話は終わりだと言わんばかりに、その場から立ち去った。

 しかし、イエローはグリーンを呼び止めた。

 

「待ってください! ──だったら、ボクを連れて行ってください」

 

「イ、イエロー!? 何を言い出すの!」

 

 驚きのあまり、ブルーは叫んだが、イエローは構わずに続けた。

 

「ボクは……レッドさんを助けたいです! だから、そのためにはもっと強くなりたいんです!」

 

「それなら──俺もお願いします」

 

 オレンジがイエローに続いた。

 そして、マサキが叫んだ。

 

「オレンジ!? 何を言っとるんや!?」

 

「実力不足だというのなら、鍛えればいい──それに、四天王のやろうとしていることを、俺は止めたいです。……見過ごせないですから」

 

 イエローとオレンジ、この二人に詰め寄られたグリーンはため息を吐き、あきれたように答えた。

 

「……好きにしろ」

 

「やった!」

 

 その言葉を聞いたイエローとオレンジは、嬉しさにあまり笑顔を浮かべてハイタッチした。

 タケシとカスミは、立ち去ろうとするイエローを引き留め、それぞれゴローンとオムナイトをイエローに手渡した。

 

「手持ちの数が少ないようだから、こいつらを連れて行ってくれ。何か役に立つはずだ」

 

「……ありがとうございます! タケシさん、カスミさん!」

 

 再び解散しようとした時だった。タマムシ精鋭軍の一人が、病室に入ってきた。彼はずいぶんと急いでいたようで、汗だくだった。彼は叫んだ──

 

「大変です! シバが……四天王シバが目を覚ましました!」

 

「──!」

 

 その知らせを聞いた皆は、グリーン、カツラ、そしてイエローとオレンジたちでシバの元へ向かった。

 タケシ、エリカ、カスミの三人はベッドの上から動けない状態だしマサキはブルーに調べごとをして欲しいと頼まれ、別の場所へと移動していた。

 

「──シバ」

 

 ベッドに座る、筋肉質な男を目にしたオレンジは呟いた。

 シバは、来客たちを見ても大人しかった。グリーンは、シバに問いかけた。

 

「目が覚めたか? ──四天王シバ」

 

「……ああ。ここはどこだ?」

 

「何?」

 

 グリーンたちは首を傾げた。シバには、昨日の記憶が全くなかったのだ。

 グリーンは昨日起こったこと、そしてオレンジが四天王に襲われたことを話した。それでもシバは身に覚えがないといった。

 

「……オレには覚えがない。ジムリーダーたちを襲ったことも、オレンジを襲ったことも……──レッドとの戦いもそうだ。記憶が途切れている。時折苦痛とともに、我を失うこともある──理由は不明だ……」

 

「──少し、いいですか?」

 

 とオレンジは、彼はシバの腕に嵌められている腕輪を指さし、頭を抱えるシバに言った。

 

「その腕輪、何かの機械みたいですけど──どういう役目を持っているんですか?」

 

「……分らない。これは昔から持っていたものだ」

 

「なるほど、少し調べさせてもらっていいですか? 機械には詳しい方で……ちょっと気になるんですよ」

 

「別に構わないが」

 

 シバの許可を取ったオレンジは、その腕輪を子細調べた。時折、科学者であるカツラも交えて、その腕輪の構造や持つ機能について話し合った。そして、調べ終えると、オレンジは一つの結論を導き出した。

 

「──この腕輪には、人やポケモンを洗脳するような役目がありました。……多分、これで操られていたのでしょう」

 

「何だと!?」

 

「ええっ!?」

 

 シバとイエローは驚きのあまり声を出した。

 

「……おそらくはキクコの仕業だろうな」

 

 グリーンはポツリとつぶやいた。

 

「前に、キクコと戦った時、ヤツはゴーストポケモンを集めて、己の兵力にしようとしていた。……それは、たとえ他人のトレーナーのポケモンであろうとも、構わずに集めていた。オレ自身も、昔ゴーストポケモンに操られた経験がある。

 ……四天王の中で、他人を操ることができる可能性が高いのは、キクコだ」

 

「なるほど……」

 

 シバは頷いた。

 それから、オレンジに頭を下げた。

 

「──礼を言おう。オレンジ、おかげでオレが長年気にしていたことが判明した。まさか、操られていたとは夢にも思わなかったが──イエローだったか? 随分と傷つけてしまったようだ。……オレにできることならば、協力しよう!

 元より、ワタルたちの計画などどうでもよかったのだ。オレ自身は、満足のいく戦いができればそれで良い。──その分、レッドとの戦いは心躍った。レッドを見つけるというのならば、オレも協力しよう」

 

「……ハイ! よろしくお願いします!」

 

 これにより、今後誰がどのように行動するか決定した。

 まず、ブルーとマサキ、そしてエリカ、カスミ、タケシたちはタマムシシティに残ることにした。

 

「私たちはタマムシシティに残るわ……四天王がまた襲い掛かってきたら、動けないジムリーダーたちの代わりに、アタシが街を守るわ。それに、マサキに調べてもらいたいこともあるしね。……ちょっと時間がかかりそう」

 

 次にグリーン、シバ、イエロー、オレンジの四人は修行を行うため、それにふさわしい場所へと移動することにした。

 

「ウー! ハー! 詫びとして、お前たちを鍛えるのに協力しよう!」

 

「修行の間、グレーバッジを狙って四天王たちが襲い掛かってきても、戦力的には十分戦えるだろう。オレがグレーバッジを持っている限り場所は筒抜けだが、問題は無い」

 

 最後に、カツラはグレンに戻ることにした。

 

「──一週間後だ。一週間後の深夜0時、四天王の本拠地を叩く。どのように集まるかは各自任せよう。その時は、私も切り札を持っていく。一週間後が、その切り札のコンディションがベストになるからな」

 

 ──こうして、決戦までの一週間の間、皆は四天王と戦うために各自準備を整えるべく、それぞれ別の場所へと散っていった。

 

 

 







今日の夕方か夜にもう一話投稿しますよー。

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