次回からはゆっくり更新に戻りますが、お付き合いくださいませ。
……ゴールデンウイーク中に四天王編終わらせたかった!!(無茶)
グリーンが修行の場として選んだのは、タマムシシティからはかなり離れた荒野だった。
そこは、草木といったようなものは僅かしか生えていないため、ポケモンや人が生活できるような環境ではないため、ここに住む人や野生のポケモンは見られなかった。
威力の高い技を放ったり、どれだけ騒いだりしても、周囲に迷惑がかかるような環境ではない、という点からするとこの荒野は修行するための場所としては非常に的していた。
グリーンは最初に、オレンジとイエローそれぞれの実力を見定め、それぞれに課題を出した。
「──まずはオレンジ。お前はポケモンの知識量に秀でているのは、言うまでもないか。手持ちも良く育てられている。だが、ポケモンバトルは少々
「──次にイエローだが、お前のポケモンは
──こうして、オレンジとイエローは、グリーンが出した課題を達成できるように、修行を始めた。
シバとオレンジの組手は、なかなかに激しいものだった。オレンジの
「ウー! ハー! 力に頼りすぎているな! テクニックが不足している……このように!」
ざんぐぐは何度も“メタルクロー”や“きりさく”など、爪による攻撃を行っており、エビワラーはざんぐぐの爪をその拳で受け止めたり、跳ね返したりしていた。
攻撃と防御を行うだけの関係性で、どちらもダメージを受けてはいない、とオレンジは思っていた。しかし、ざんぐぐは突然膝をついた。ざんぐぐのHPのみが一方的に削れていたのだ。
「何で!? エビワラーは、ざんぐぐの攻撃を防御していただけなのに!?」
「果たしてそうかな!? よく見てみろ。エビワラーは、左右の拳で“かみなりパンチ”と“ほのおパンチ”を交互に、目立たないように使っていたんだ。これによって、少しずつダメージを与えていた!」
「……凄い! そんな技の使い方もあるんですね」
──オレンジとシバの組手は何度も続けて行われた。ポケモンのHPが尽きれば、回復させて再び戦わせ、トレーナーであるオレンジの気力が尽きるまで、この組手は行われた。
そして、シバとの組手が終われば、オレンジはイエローに、ポケモンについての講義を行った。
「──それで、カビゴンは普段は怠けているけれど、凄い力を発揮するときもあるんだ。それには条件があるんだけど、最近見つかって……と、これはまだ未発表だったか」
「それって、オレンジさんが見つけたんですか?」
「うん、そうだよ。俺はポケモンの進化に関連する研究を専門に行っているんだけど、他にもいろいろと調べて、研究しているんだ」
「はー……凄いですね。レッドさんのポケモン図鑑よりも、詳しいんじゃないんですか? それに、とても分かりやすいです!」
「あはは、そうかな? 少し照れる……学会とかで、人に教えるのは慣れているからね」
昼間、オレンジはシバと、そしてイエローはグリーンと手合わせを行うことで、戦闘の経験を積み重ね、ポケモンのレベルを上げていた。そして、夕方ほどになると、オレンジが力尽きると、それが組手の終了の合図となった。それから少しの間休憩し、オレンジが回復すれば、イエローがポケモンの知識を覚える時間となった。
グリーンは、講義を行っている二人をよそに、シバに問いかけた。
「調子はどうだ?」
「そうだな。オレンジのポケモンはかなり強い。特に、あのボーマンダとザングースというポケモンは格別だ。だが、そのせいだろうな。攻撃力にかまけてゴリ押しの戦いに慣れてしまっている。テクニックを中心に教え込めば、それなりに強くはなるだろう」
「それなり、か……」
「そっちはどうなんだ?」
「イエローはまだまだだ。何より知識が足りなさ過ぎている。これは今後補っていくとして、明日からは俺も自主練に入る。シバ、お前が面倒を見てやれ」
「ああ、いいだろう」
初日はこのようにして終了した。二日目に入ると、グリーンはイエロー達から離れ、別の場所で自分のポケモンたちとともに、四天王と戦うための特訓を一人で始めた。
そのため、イエローとオレンジの相手をシバが務めた。──シバは、イエローとオレンジの二人を一人で相手にしたが、特に疲労した様子は一切見せず、イエローかオレンジのどちらかが疲労し始めると、その度に休憩を行うように呼び掛けるという余裕すら見せた。
シバに休憩を与えられたイエローとオレンジは、一気に崩れ落ちた。
「ハァ……! つ、疲れた……」
オレンジは乱れた息を整えながら、汗をぬぐった。イエローもまた疲労が大きく、地面にへたり込んだ。
「はい……ボクたちがこんなになっているのに、シバさんは全然疲れた様子見せていない……」
「うん──文字通り格が違うんじゃないかな。実力差が大きすぎる。っていうか、あの人ホウエンの四天王よりも強い……」
「ホウエン、確かカントーとは別の地方だったっけ? ホウエンにも四天王がいるんですか?」
「いるよ。でも、カントーとは違って、ちゃんとした人かな。ホウエンのポケモンリーグは、トーナメント形式で、優勝した人がチャンピオンだっけ?
「へぇー。オレンジさんはホウエンのポケモンリーグに参加したことが?」
「いや、ないない。ジムバッジを8つ集めなきゃならないから。俺にそこまでの実力は無いよ。一応、力試しとして何度かジムに挑戦したことはあるけれど、4つ集めるので精一杯だね」
イエローはオレンジがジムバッジを4つも持っていることに驚いた。オレンジは、自分の服の裏側に留めてある、ストーンバッジ、ダイナモバッジ、ヒートバッジ、マインドバッジをイエローに見せた。
「ほかのジムにも挑戦したんだけど、負けちゃってね……」
「それでも十分だと思うけれど。……あれ? そのリボンは何ですか?」
「ああ──これ?」
とオレンジは、ジムバッジとは別に、服の裏に縫い付けられたリボンを指しながら言った。
「これはポケモンコンテストのリボンだよ。ポケモンコンテストっていうのはね──」
オレンジはポケモンコンテストについて説明を始めた。
ポケモンコンテスト──それは、ホウエンにて行われている、ポケモンの技を使い、たくましさ、うつくしさ、かしこさ、かっこよさの4つを誘いあう競技である。このコンテストが行われている様子をオレンジが語ると、イエローはそのポケモンコンテストという、異文化に興味を寄せた。
「そんなのがあるんだ。ポケモンの技を使って、パフォーマンスをする……見てみたいねぇ。ね、ピカ!」
「だったら、いつかホウエンに来るといいよ。その時は案内するから」
「その時はお願いしますね──」
イエローは微笑んだ。
休憩時間が終了したことを、シバが知らせると、イエローとオレンジは立ち上がって再びシバとの手合わせを再開した。
その時だった、「ピギィー!」というような、甲高い悲鳴のような声がどこともない場所から聞こえてきた。その声に真っ先に気が付いたのは、オレンジだった。
「今のは、キャタピーが出す悲鳴! 何かに襲われている!?」
「ええっ!? 大変だ!」
オレンジの言葉を聞いたイエローは、キャタピーの声が聞こえた方向へと駆けだした。
「ちょ、待って──!」
オレンジもそのあとに続き、シバもオレンジの後を追いかけた。
キャタピーはすぐに見つかった。柱のように高さのある岩の上に、キャタピーがおり、その周囲をピジョットが旋回していた。よく見ると、岩の上には、キャタピーがとりわけ好む花があった。
つまり、キャタピーは己の好物である花が、岩の上にあるのを見つけると、それを食べようとして岩に登ったはいいが、降りられなくなった。そのキャタピーを、ピジョットが発見し、今にも襲い掛かろうとしているのだ。
「まずはピジョットを追い払わないと──!」
イエローは釣り竿の先にモンスターボールを結びつけ、振りかぶった。釣り糸に縛られたモンスターボールは、見事イエローの伸長よりも倍以上ある岩の上空へと投げられ、開かれた。
「ラッちゃん!」
そのモンスターボールからは、
そして、ピジョットに上空で攻撃を加えたラッちゃんは、飛行できるはずもなくそのまま重力に従い、地面に落下していった。
「ドドすけ!」
イエローは
「マズイ、キャタピーが!」
オレンジの声で、イエローは岩の上を見上げた。ピジョットから逃れようとしたキャタピーは、今まさに岩から落下しようとしていた。この高さから落ちれば、キャタピーはやはり無事ではすまなかった。
しかし、これもまたドドすけが受け止めたことによって事なきを得た。
「ふう、無事でよかった!」
イエローは胸をなでおろした。
オレンジはキャタピーに外傷がないかを調べた。
「うん、全くだね。このキャタピー、傷はないけれどひどくおなかを空かしていた。この辺りでは生息してないから、多分ほかのところから迷い込んだんだと思う」
「そうか──」
シバは呟いた。
「おそらく、人間たちの開発の影響だろうな」
「────」
「森が切り開かれ、食べ物が少なくなり、縄張り争いに弱いキャタピーが敵うはずもなく、食べ物を探してここまで迷い込んできたのだろう」
「そんな……」
イエローは、俯いた。
人間たちの勝手な開発により、キャタピーはここまで追い込まれたのだ。四天王たちは、そのようなポケモンを救うために、人間たちを追い出そうとしている──イエローは、一瞬人間たちのことをよく思えなくなった。
オレンジは、イエローの肩を叩いた。
「……ポケモン達からすれば、四天王たちは救世主になると思う。けれども、それだと次は人間たちがひどい目に合う。……どっちもどっちだと思う。けれど、俺は四天王を止めるよ」
「…………」
イエローは頷いた。それは四天王の目的を止めようとする意志の表れだった。しかし、イエローの心の中には、少なくとも迷いがあった。
その後、イエロー達はキャタピーを開放し、再び修行を始めようとした。しかし、キャタピーはイエローから離れようとしなかった。それを見かねたオレンジは、提案した。
「イエロー、キャタピーを手持ちにしたらどう? 随分となついているみたいだし……」
シバもそれに賛同し、少しの間オレンジと一緒に手合わせを行うから、その間にキャタピーを捕まえるように言った。
──シバとオレンジは、自分達のポケモンを戦わせながら会話をしていた。
「ウー! ハー! 随分と動きが良くなってきたぞ!」
「ありがとうございます──そろそろ1時間ぐらい経ちましたね。イエローはまだキャタピーを捕まえてないのかな……? ちょっと様子を見てきます」
「ああ、いいだろう」
オレンジは一時間が経過しても、イエローが姿を現さないのを不審に思い、イエローの様子を見に行った。
すると、イエローは激しい戦いをしているときのように、呼吸を乱し、その服は汚れていた。イエローはキャタピーを睨んでいた。
その様子を見たオレンジは、イエローに声をかけた。
「い、イエロー?」
「あ、オレンジさん……ま、まだ捕まえられません……!」
イエローの返答に、オレンジは思わずずっこけそうになった。
「え、ええ。捕まえられないって……」
「苦手なんですよ。捕まえるのって……ホラ、捕まえるには傷つけなきゃいけないでしょう? それができなくて……今までもポケモンバトルをしないで捕獲する練習をしていたくらいで」
「シバさんの時は普通に戦っていたって聞いたけれど……」
「あのときとは別ですよぅ。キャタピーを傷つけるのがどうにもできなくて……」
「むう、だったら木の実とかをあげて、食べている隙に捕まえたら?」
とオレンジは木の実をイエローに手渡した。
イエローはキャタピーの前に木の実を投げつけると、キャタピーはその木の実を食べ始めた。イエローはそれを確認すると、モンスターボールを投げつけた。
すると、投げつけられたモンスターボールは、見事キャタピーをボールの中に収めた。──捕獲成功の証拠だった。
それを確認したイエローは笑顔を浮かべて跳ねまわった。
「……! やったー!」
「良かった、良かった。それじゃあ、シバさんのところに戻ろうか──」
それから、イエローとオレンジは、昼間はシバを相手に修行を行い、時折グリーンとも戦い、夜になるとオレンジが、イエローに自分の持っているポケモンの知識を講義した──
そして、6日が経過した。四天王たちが、グリーンの持つグレーバッジを奪おうと、襲撃に来ることはついぞなかった。グリーンは、7日目の朝になるとイエローとオレンジに知らせがあると言った。
「──最後の仕上げ、ですか?」
とオレンジは聞き返した。
「そうだ。お前たちには、今から実力を確認するために、あることをしてもらう。それは、オツキミやまに行くことだ。
……オツキミやまのポケモンたちの様子も、少し落ち着いたようだが、いまだに混乱し、暴れまわっている野生のポケモンは何体もいる。今から、お前たちにはその暴れまわっているポケモンたちを、ポケモンバトルで大人しくさせてもらう」
「ええっ!?」
イエローは驚いたような声をあげた。グリーンから知らされたことが突然だったこともあるし、レッドがシバと戦い行方不明となった地に行けるということに、驚いたこともあった。
「タイムリミットは夜までだ。夜までに、オツキミやまのポケモンたちを大人しくさせろ。でなければ、実力不足とみて、四天王の本拠地に向かう許可を与えない。──終わったら、ブルーに連絡しろ。ブルーから、四天王の本拠地を教えてもらい、各自乗り込め」
恋愛タグがアップを始めました。