ポケットモンスター~orange~   作:天城黒猫

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今日、三月三日はイエローの誕生日だそうな。
やったね! おめでとう! イエロー!


前半原作通り。後半ほぼオリジナル。二次創作なんだから、原作通りなんてつまらない。





VSシードラ

 

トキワの森 近くの川

 

 

 オーキド博士の研究所を出発してから、数時間が経った。

 空のてっぺんでさんさんと輝いていた太陽はいつの間にか山の上まで移動しており、夕暮れ時となっていた。オレンジと麦わら帽子の人物は、それぞれクロバット(ずばとと)ドードー(ドドすけ)に乗って移動していたが、夜中になっても移動する訳にもいかないし、ポケモンたちを休ませなければならないため、トキワの森の近くにある川のほとりにキャンプを作ることにした。

 

 オレンジはテントを二つ組み立てながら、川に釣り糸を垂らしている麦わら帽子の人物に問いかけた。

 

「そういえば、とりあえず君の行く先をついてきたけど、目的地はどこなの?」

 

「え、それは……」

 

 麦わら帽子の人物は、気まずそうに目をそらしながら、頬を指先でポリポリと引っ掻いた。額には、一筋の冷や汗があった。

 オレンジはそんな挙動不審な様子を見て、一つの考えに至ると、ジーっとした目で麦わら帽子の人物を見つめて続けた。

 

「……まさか、何も考えていなかったとか?」

 

「ハ、ハイ……」

 

 麦わら帽子の人物の、これまた気まずそうな様子で帰ってきた答えを聞くなり、オレンジはズルッとずっこけた。起き上がると、呆れたようにため息をついた。

 

「ハァ……あんなに勇んでいたっていうのに、まさかのノープラン!?」

 

「ふあぁ……し、仕方がないじゃないですか。レッドさんがどこにいるかなんて分らないんですから」

 

 麦わら帽子の人物はあくびをし、顔をそらしながら言った。

 

「始めはピカにレッドさんが最後に戦った場所を教えてもらおうとしたんだけど……どうにもはっきりしないんだよなあ」

 

 麦わら帽子の人物は、故郷であるトキワの森が近いということもあってか、機嫌よくあちこちをウロウロするピカをチラッと見た。ピカはオレンジたちから離れ、茂みの方へと向かっていった。

 

「ピカ、おさんぽかい? あんまり遠くに行かないようにね!」

 

「ピカに聞いたって分るわけがないだろうに。ポケモンと会話ができるわけないんだから」

 

「うっ……」ビクリと型を震わせた。しかし、オレンジは気が付かずに、言葉を続けた。

 

「レッドさんに届けられた挑戦状には、オツキミ山で戦うということが書かれていた。地図はレッドさんが持って行ったから、詳しい場所までは分らないけれど……」

 

「じゃあ、オツキミ山を探せばいいんですね」

 

「いや、その前に──」

 

 オレンジの言葉は最後まで続くことはなかった。というのも、ピカが慌てた様子で、オレンジ達の元へとやってきたからだ。

 

 ピカは麦わら帽子の人物に、「ピーッ! ピィ、ピカピカピ!」と身振り手振りを交えながら、何かを説明しようとしていた。しかし、ポケモンの言葉が人間に通じることはなく、人間からしたらポケモンの言葉はただの鳴き声としか認識できない。

 それはオレンジも同じであったが、ピカの慌てた様子を見れば何かがあったと察するのは容易かった。

 

「何かがあったみたいだ──」

 

 ──ピカ、案内してくれ。と言おうとしたが、再び彼の言葉は最後まで続くことはなかった。

 しかし、今回は誰かに発言を遮られたのではなく、自らその口をつぐむしかなかったのだ。見てみれば、麦わら帽子の人物は、ピカの額に手をかざして目を閉じて集中していた。

 

「分った──ピカ、行こう!」

 

 ぽう、とオーキド博士の研究所で見たときと同じ、優しい光が麦わら帽子の人物とピカの周りを漂うと、()()を理解した麦わら帽子の人物は立ち上がり、ロープを持ってピカと一緒に森の中に入っていった。

 オレンジも、その後を慌てて追いかけた。

 

「ちょ! 行こうってどこに行くんだ、ああもう!」

 

 少しばかり走ると、トキワの森の内部に移動し、先ほどまでいた川の上流にたどり着いた。川の上には、人が一人渡れそうな、丸太橋が掛かっており、その橋のすぐ下の水面には水疱がたっていた。

 

「おーい、しっかりー!」

 

 と麦わら帽子の人物は叫んだ。しかし、その声に応える者は誰も居なかったが、オレンジはその様子から、この川の中に溺れている人がいると察した。

 オレンジがポケモンを出そうと、モンスターボールに手をかけたとき、麦わら帽子の人物はロープを勢いよく川へと投擲した。

 投げられたロープの先端は、見事狙い通りに泡が出ていた場所へと着水し、水中に居る人物の腕に巻き付いた。それを確認すると、ロープが引っ張られ水中に居た人物が引っ張り出された。

 オレンジはこの麦わら帽子の人物の素早い救出劇と、溺れていた人物が顔見知りだったことに驚いた。

 

「マサキさん!?」

 

 マサキ──川に溺れていた彼は、ポケモンボックスの管理人であり、ポケモン預かりシステムやポケモン転送システムという、旅をするトレーナー達にとって有り難い発明をした科学者である。

 マサキは飲み込んだ水を吐きながら、ロープを伝って岸へと移動を始めた。

 

「ゴ、ゴホ……ハァ、た、助かったで……」

 

「マサキさん、大丈夫ですか!? ロープ持つよ!」

 

 とオレンジは麦わら帽子の人物に加勢し、麦わら帽子の人物とオレンジ、そしてピカの三人でロープを引っ張った。

 マサキは、オレンジの姿を認めると非常に驚いた様子だった

 

「オレンジ君!? なんでここにおるんや!?」

 

「説明は後でします! 今はこっちに」

 

 とオレンジは力の限りロープを引っ張った。

 しかし、その救出劇に水を差す存在が現れた。始めに異変に気が付いたのは、川の中に居るマサキであった。川の水の流れが突如変化し、渦潮を作り出した。この渦潮は自然に出来るようなものではなく、その原因となる存在が渦潮の中央にいた。

 シードラ──そのポケモンが作り出す渦潮は、時に船をも飲み込むと言われる水中においては、こと危険なポケモンと言えた。オレンジは驚いて叫んだ。

 

「シードラ!? 野生の? なんでこんなところに! ええ、トキワの森にシードラって生息してないよね!?」

 

「いけない! 伏せて……!」

 

 麦わら帽子の人物が叫ぶも、間に合わずシードラはその口から勢いよく大量の水を吐き出してマサキを攻撃した。

 その水量は川を波打たせ、流れを逆流させるほどであった。マサキは悲鳴をあげることしか出来ずに、ロープにつながりながらもその激しい水に蹂躙されるばかりだった。

 麦わら帽子の人物は咄嗟にピカにシードラを攻撃するように指示した。

 

「大変だ! ピカ! “でんじは”!」

 

 ピカによって放たれた“でんじは”は確かにシードラに命中した。しかし、岸からしか攻撃できないピカとシードラからの距離はかなり離れており、“でんじは”の効果も距離によって薄れてしまい、シードラにダメージを与えることはおろか、『まひ』状態にすることも叶わなかった。

 

「なら、ピカ!」

 

 そこで、ピカはオレンジ達が引っ張るロープの上に飛び乗ることによって、シードラに接近した。

 

「“でんきショック”!」

 

 そしてロープの上から放たれた電撃は、シードラに威力そのままの強さで命中した。シードラはダメージを受けたが、その痛みによって怒り、暴れ始めた。

 効果抜群の攻撃であったものの、シードラの体力を削りきることは叶わなかったのだ。それはピカのレベルによるせいか、あるいはそのトレーナーが違うせいか──

 水流と渦潮はより激しくなり、マサキを引っ張るロープがギシ、といういやな音を立てたかと思うと、ブチリとあっけなく千切れた。それによって、マサキとロープに乗っていたピカは川の激流に流されてしまった。

 

「大変だ! 下流に……流される!」

 

「任せて! いけ、くちとと!」

 

 オレンジはモンスターボールを投擲し、クチートを出した。

 

「くちとと、“ソーラービーム”だ!」

 

 くちととは、オレンジの指示を受けるとその大きな顎をガバリと開き、そこから緑色の光線をシードラめがけて発射した。

 草タイプによる攻撃は、水タイプのシードラには効果抜群であり、さらにピカの攻撃を受けていたことも手伝って、一撃で『ひんし』状態となった。シードラがひんしとなったことにより、激しく波打ち渦を作っていた川の流れはたちまち元の、穏やかな状態へと戻った。

 マサキは浅いところへと流されており、ピカもマサキの頭に上ったことにより、事なきを得た。

 

「あ、ありがとよ! おかげで助かったで! きみ」

 

「お礼ならピカにも言ってよ、お兄ちゃん」

 

 と麦わら帽子の少年は、あくびをしながら川の中で尻餅をついたマサキに言った。

 マサキは、ピカという名前に反応を示した。というのも、マサキはピカという名前を持つピカチュウのことを知っていたからであった。

 

「へ、今なんて言ったんや!? ピカ、ピカやて!? このピカチュウ、どこかで見たかとがあると思うたら……ピカって、()()レッドのピカかい!?」

 

「マサキさん、大丈夫ですか!?」

 

 とオレンジはマサキの元へとかけより、その身を起こすのを手伝った。

 

「あ、ああ。オレンジ君もな。ありがとうな! なあ、どうなっとるんや? ピカといい……きみがここにいることといい……」

 

「ああ、それは──と。その前にシードラを捕獲しておきましょう。また暴れ出すと厄介ですから」

 

 とオレンジはモンスターボールを、ひんし状態となり水面に浮かぶシードラへと投げた。瀕死状態となったシードラに、抵抗するような気力はあるはずもなく、おとなしくボールへと納められた。

 

「いつまでも“ひんし”状態っていうのもアレだから……回復させておこう。ええと、回復の薬はどこにしまったっけな……」

 

 オレンジは自分のポーチの中をまさぐり、シードラを回復させるためのアイテムを探した。その最中、麦わら帽子の人物はオレンジの手元からシードラが収まったボールを取り上げ、手のひらで覆った。──やはり、一瞬だけ輝き、ボールの内部に居るシードラはひんし状態から脱し、体力を完全に回復させていた。

 麦わら帽子の人物はシードラの入ったボールをオレンジへと差し出した。ボールの内部にいるシードラは暴れており、ボールがガタガタと揺れていた。

 

「はい、どうぞ!」

 

「え、ええ!? 何でシードラ回復してるの!? 何もしてないよね!? 触っただけだよね?」

 

「あ……ええと……」

 

 とオレンジが麦わら帽子の人物の人物に詰め寄り、麦わら帽子の人物はそれにどう答えようか考えていた時──ピピピピ、という電子音が森の中に鳴り響いた。

 その音の発信源は、オレンジの持つポーチの中からであった。麦わら帽子の人物に詰め寄るのをやめたオレンジは、ポーチの中から一つの機械を取り出した。

 

「その機械はなんや?」とマサキは科学者としての()()なのだろうか、興味深そうにオレンジの持つ機械をのぞき込んだ。

 

「これはエネルギー探知機です。マサキさん。進化の石を探したり、ポケモンが持つ進化エネルギーを測定したりするんですが……なんだ、これ!? 大きな反応が近くに2つ!? 移動している! 何で今まで反応しなかったんだ!? ……まさか! 二人とも、今すぐここから逃げろ!」

 

 オレンジは非常に焦った様子で、二人に指示を送った。

 しかし、彼の言葉が終わるか終わらないかぐらいの時に──オレンジ、マサキ、麦わら帽子の人物の三人は異変に気が付いた。

 

 いくら夕暮れ時で、森の中とはいえどもあり得ないぐらいに──それこそ、深夜と同じぐらいに辺りは薄暗くなっており、黒色の不気味な霧が漂っていた。

 それだけではなく、その霧の隙間からは氷の塊が覘き、気温はマイナスへとさしかかろうとしていた。

 

「な、なんや!? どうなっとるんや!?」

 

「敵です、マサキさん! どこだ……?」

 

「あそこ! あの崖の上に何かがいる!」

 

 と麦わら帽子の人物は、崖の上を指さした。

 そこには、二人の人物が立っていた。一人は杖をつき、腰を折り曲げた老婆──四天王が一人、キクコ。もう一人は、漆黒のスーツに眼鏡をかけた女性──四天王が一人、カンナ。

 

 すなわち、二人の四天王が崖の上からオレンジ達を見下ろしていたのだった。

 

「四天王……! キクコ、カンナ!?」

 

「フエッフエ……」

 

 ──キクコは不気味な笑い声を浮かべながら、値踏みするような目でオレンジ達を眺めた。

 

「オレンジ、かのう。知っているぞ。アタシだってポケモン研究者の端くれ……大量のポケモンの知識を持つ天才、じゃったな。フェフェ……そして、あの憎きオーキドの弟子!」

 

「あの小僧よりも、シバとの戦いから逃れたあのピカチュウを始末するほうが先決よ」

 

 とカンナは言った。

 

「我ら四天王の戦いは完璧でなければいけない……敵一匹も逃しはしない! けれども、あなた達には興味が無いわ。そこのピカチュウ、渡してくださらない?」

 

 とカンナは麦わら帽子の人物を睨み付けながら言った。その目は冷酷な攻撃機械のようであり、抵抗すればそれ相応の行動をするという意思が明確に込められていた。麦わら帽子の人物はそれを読み取り──ハッキリと答えた。

 

「お断りします……! ピカは渡しはしない!」

 

「ああ、もう! 最悪だ! 四天王が二人! しかも、さっきカンナが言っていたこと! これでレッドさんが破れたということが決定した! ──つまり、ポケモンチャンピオンよりも強い存在が二人……!」

 

「な、なんやて!? オレンジ君! レッドが破れたやと!?」

 

「ほう……」とキクコは目を細めた。

 

「アタシ達のことを知っているのかい。なら、話は早いねえ。どうやら、おとなしくする様子もないようだし……実力行使とさせてもらうよ!」

 

「くっ……」

 

 オレンジのくちととは、ただならぬ様子を感じてキクコとカンナを威嚇し、いつでも戦えるということをオレンジにアピールしてみせた。

 その直後、ピキリとくちととの足下にヒビが入った。

 

「ああ、そうそう──」

 

 キクコはニヤリと笑ってみせた。

 

「何も二人だけとは言ってないぞ?」

 

 その直後、凄まじい振動と轟音が鳴り響き、巨大な長い体を持つポケモン──イワークがくちととの足下から現れ、くちととを吹き飛ばした。

 

「くちとと!?」

 

 それによって、くちととの体力は9割がた削られ、まさしく『ひんし』一歩手前となった。

 オレンジはイワークを睨み付け、見上げた。彼の手にあるエネルギー探知機は3つの大きな反応を示していた。

 

 イワークの頭上には、筋骨隆々の鍛え上げられた体を持つ男──四天王が一人、シバが立っていた。

 

「三人……!」

 

「フッェフェ……そうさ、カンナ一人でも良かったんだがねぇ。獅子は兎を狩るのにも全力を出すっていうだろう!?」

 

「ええ、その通りよ。それに、計画の準備はほぼ終わったし、ゲン担ぎにシバとの戦いの生き残りのピカチュウを狩りに来たのよ」

 

「く……」

 

 とオレンジは歯がみをする。

 今、彼はこの状況からどうやって逃げ出すのか算段を立てていた。この三人と戦っても敵う可能性は万が一にも無く、逃げ出すことしか頭になかった。それほどに、この三人の力は凄まじく、それを証明するかのようにエネルギー探知機は、凄まじい数値をはじき出していた。

 

「逃げるよ!」

 

「ちょ、ちょお!?」

 

「ええっ!?」

 

 とオレンジはずばととを取り出し、マサキをずばととの頭に乗せ、オレンジは足に捕まりながらくちととをボールに納め、麦わら帽子の人物はオレンジがその手を掴んで──ピカは麦わら帽子の人物に咄嗟につかまった──空へと逃げ出した。

 

「バカめ! させるわけがないだろう。打ち落とせ、ジュゴン!」

 

 とカンナの取り出したジュゴンは、氷の粒をずばととへと放ち、ずばととはそれによって地面に落下した。

 

「くう……」

 

 オレンジは歯がみした。

 

「フン、アタシたちから逃げようなんて、そうはいかないよ! ……まあ、この状況で逃亡は最善策とも言えるだろうけど、それはさせるわけがないだろう!? やっておしまい、ゴース!」

 

 とキクコはゴースに攻撃を命じた。進化前のゴーストポケモンとは思えない程の強力な攻撃が、ピカへと襲いかかった。ピカは抵抗することも出来ずに、一瞬で吹き飛ばされあっという間にボロボロの状態となった。

 

「ピカーッ!」

 

 麦わら帽子の人物は叫んだ。しかし、どうにか出来るわけも無く、ピカはただ攻撃を受け続けた。

 

「く──ずばとと! “あやしいひかり”だ!」

 

 ずばととはその体から強烈で、それでいて色のぼやけた光を放った。それによってこの場に居た四天王達は目を眩まされ、ポケモンたちは『こんらん』状態となり、トレーナーの指示を実行できるような状況では無くなった。

 四天王達が視力を取り戻した頃には、オレンジ達の姿はすっかり消えていた。

 

 四天王たちから逃げ出したオレンジたちは、森の中にある茂みに身を隠していた。

 しかし、その茂みも心許ないものであり、先ほどの場所からそう離れてはいないため、いつ発見されるか分らない状態であった。

 マサキは混乱する頭を押さえながらも、オレンジに小声で問いかけた。

 

「な、なんや!? 一体どうなっとるんや!?」

 

「マサキさん、落ち着いてください。俺たちは今、四天王という強力なポケモントレーナーに狙われているんです。静かに……そして、その四天王に敗れたレッドを探しているんですよ」

 

「あ、ああ。さっきもそんなことを言うとったな。それは本当なんか?」

 

「ハイ」

 

 と麦わら帽子の人物が引き継いだ。その腕にはピカを抱えており、光を放ち──やはり先ほどまでぼろぼろだったピカの傷はすっかり直っていた。それにマサキは唖然とした。

 

「な……キミは……?」

 

「ボクは、このピカをつれて、オレンジさんと一緒に行方不明のレッドさんを探す役目を、オーキド博士から言いつかってきました」

 

「……ねえ、麦わらちゃん」

 

 とオレンジは麦わら帽子の人物に問いかけた。

 

「キミは、ポケモンを回復させる力を持っている? 研究所でピカを治し、さっきのシードラを治し、今も! ピカの傷は回復している。いいや、それだけじゃない。恐らく、マサキさんを助ける前、ピカに手をかざすなり、行動を開始した。アレは、マサキさんが溺れているのを目撃したピカが、助けを求めているのを理解した……つまり、治療と会話! この二つの能力を持っている?」

 

「……はい、そうです」

 

 と麦わら帽子の人物は頷いた。

 

「──フェッフェ……興味深いねえ。まさかワタルと同じ能力をもつトレーナーがいたとは」

 

「ッ!?」

 

 オレンジは突如背後から聞こえたキクコの声に、素早く振り返った。

 そこには、ゴースをそばに漂わせているキクコが立っていた。──否、キクコだけではなかった。キクコの左右には、それぞれシバとカンナが立っていた。

 

「その能力はどれくらいのものだい? 回復は一級品。しかし、意思を読み取るのはそううまく行かない、といったところかい?」

 

「──」

 

 麦わら帽子の人物は歯がみをした。己の能力が完全に見破られ、分析されているのだった。

 

「もし、完全にそのピカチュウの意思を読み取れるのならば、真っ先にシバと戦った場所に向かうだろうし、何よりもアタシ達を見たとき、始めは無反応だった……そこのオレンジとやらは別だがねえ。つまり、ピカチュウの記憶を完全に読み取れるわけではない。精々が、意思を汲み取るぐらいじゃろうな?」

 

「くっ……」

 

「……」

 

 オレンジは、歯がみする麦わら帽子の人物を見、一つの決断をしようとしていた。

 

(ポケモンの回復に、意思を読み取る力……この麦わらちゃんはただのトレーナーじゃないということか。

 それに、四天王は、レッドさんよりも強い……レッドさんの実力がどのくらいかは分らないけれども、この状況。今俺たちは絶望的な状況にある。それだけは確か。

 ……この傷つくのを避ける戦いをし、ポケモンの意思を読み取って回復する麦わらちゃんは、レッドを探すのにかなり役に立つ、いや無くてはならない存在だろう! これからの戦いにも! ならば、腹は決まった!)

 

 ──そこからの行動は素早かった。

 

「ずばとと!」

 

「またかいな!?」

 

「わっ!」

 

 オレンジの指示を受けたずばととは、マサキと麦わら帽子の人物、そしてピカを背に抱えて空へと飛翔した。

 

「バカの二つ覚えか? 無駄なことを!」

 

 とカンナは再びずばととを打ち落とさんと、ジュゴンに攻撃の指示をした。しかし、その攻撃はずばととに命中刷る前に、別の攻撃によって遮られた。その攻撃とは、オレンジのポケモンによるものであった。

 

「麦わらちゃん! ずばととを頼んだ! ずばととには行き先を指示してある! そこにいる正義のジムリーダーに力を貸してもらうように頼むんだ! 俺たちだけじゃあ、四天王には敵わない!」

 

「そんな……!」

 

 と麦わら帽子の人物は悲痛な声で叫んだ。

 

「オレンジさんはどうするんですか!?」

 

「俺か、俺はここに残って四天王達を引き留める! でなければ、逃げることはできない! レッドさんを探し出すには、キミの力が必要不可欠と見た!」

 

「そんな! オレンジさん!?」

 

「アカン!? 危ないで!」

 

 と麦わら帽子の人物はずばととから降りようとした。しかし、ずばととはすでにかなりの高度を飛んでおり、いま降りたら怪我どころではすまないだろう。それ故に、マサキは慌てて引き留めた。

 

「待て──!」

 

 とカンナは空を見上げながら叫んだ。

 

「妙な力をもつトレーナー! 貴様は何者だ!?」

 

「……」

 

 麦わら帽子の人物は地面を見下ろした。

 そこには、覚悟を決めた目──力強く己達を見上げるオレンジが居た。

 

(オレンジさん……せっかくボクに協力してくれるっていうのに、名乗ってなかった)

 

「……イエロー!」

 

 と麦わら帽子の人物、否。イエローは力強く叫んだ。

 

「イエロー・デ・トキワグローブ!」

 

 その名乗りを合図に、ずばととは出せる限りの速度でこの場から離れた。

 地上に一人残ったオレンジは、四天王達を睨み付けながら、口の中で呟いた。

 

(……イエロー・デ・トキワグローブ。『トキワの森のイエロー』か。あの麦わらちゃん、イエローっていうんだな)

 

「……さて! 少しの間、付き合ってもらうぞ。四天王!」

 

 キクコは笑いながら言った。

 

「フェフェ……本気でアタシたちとやろうってのかい!? それは、ただの自殺行為でしかないよ!」

 

「どうだろうな。やってみなければ分らないだろう! さあ、行くぞ! ざんぐぐ! はがるる! ボーマンダ!」

 

 オレンジは三体のポケモンを取り出した。

 ザングース、ハガネール、ボーマンダたちは皆一斉に咆哮し、四天王たちのポケモンに襲いかかった。

 

 

 





まとめ:
四天王「暇だから三人で来ました」

二次創作なんだから、原作通りなんてつまらない。(要約:主人公もとい、オリ主は痛めつけるもの)



【オレンジの手持ち】

名前:ずばとと(クロバット)
レベル:31

名前:くちとと(クチート)
レベル:28

名前:ざんぐぐ(ザングース)
レベル:42

名前:はがるる(ハガネール)
レベル:44

名前:ボーマンダ(ボーマンダ)
レベル:75



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