ポケットモンスター~orange~   作:天城黒猫

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今更ですが、読者の皆様に認識しておいて貰いたいこの小説の設定。

・ポケスペの3巻まではポケモンの種類は全部で151種類とされていたが、主人公の影響もありそれ以上のポケモンがいるとされ、現在未確認のポケモンを研究中。そのため、カントーとかジョウトとか関係なく、先のシリーズのポケモンが普通に認識されている。
なので、今後シリーズだの地方だの関わらずに、トレーナーがカロスとかシンオウとか、舞台にならない地方のポケモンを出す可能性アリ。
(というか、この151種類云々の設定を細かく決めるのは面倒なので、ふわっといきます。ふわっと。アレです。映画版キミに決めた!の世界観に似た感じでいきます。そう重要な設定ではないので)

・主人公は図鑑所有者ではない。ポケモンを観察し、どのような習性、タイプを持つのかなどを解析し、図鑑のデータを編集する研究者である。

・原作には居なかった主人公がいることで、基本的に原作(ポケスペ)の世界とは別世界。よって原作とは少し違ったところがある。
どこが違うかはこの先の展開でよく分る。

この三つ(主に三つ目)を認識していただけると有り難いです。

あと、感想でご指摘をいただいて、このまま進めても主人公の過去とか想いとか、ポケモンとの関係性とか、全く分らねえ! という状態になってしまう(ホウエン編の前半でまとめてやる予定だった)ので、この先のネタバレにならない範囲で過去編も同時に進行していきます。
主に手持ちとの出会いを中心にやっていきます。

長々とした前書き申し訳ありません。完結まで、どうかお付き合いいただけると有り難いです。







VSルージュラ

 オレンジが出したポケモンたちは、ボーマンダ、ザングース(ざんぐぐ)ハガネール(はがるる)の三体である。

 この三体は、どれもがこのカントー地方では未発見かつ生息していないポケモンではあったが、四天王たちはトレーナーとしての本能とでもいうのだろうか。あるいは長年の経験か、はたまた純粋な実力か──

 

 ともかく四天王達は、オレンジの繰り出したポケモンたちが苦手とするタイプを即座に予想し、それぞれカンナ()ボーマンダ()の相手を。キクコ()ザングース(ノーマル)。そしてシバ()ハガネール()の相手をすることを即座に決定した。

 

 この状況にオレンジは歯噛した。オレンジとしては、ボーマンダはシバの相手をし、ざんぐぐはカンナ、そしてはがるるをキクコにぶつけたかった。最初は強引にでも相手を切り替えさせようとしたものの、四天王たちはそれを許さなかった。

 

(不味い! タイプの相性が不利だ……! この状況から切り替えることは不可能だ──仕方が無い、このまま乗り切る! もとより、麦わらちゃんとマサキさんが逃げ切れる時間を稼ぐことが目的なんだ。勝とうなんて思ってない。ある程度戦ったら、隙を見て逃げられるようにしないと……!)

 

 オレンジは一人で三体のポケモンを同時に指示して、四天王という格上のトレーナー達と戦わなければならず、純粋なレベル差も、ボーマンダを除く二体は相手よりも劣るという状況であり、タイプの相性も不利という状況だった。

 

 しかし、オレンジとそのポケモンたちは不利な状況にもかかわらず、激しい戦いを行っていた。その様子を一体ずつ見ていくとしよう。

 

 まずはシバ対はがるる──

 シバの繰り出したポケモンは、四つの腕をもつ格闘ポケモン、カイリキーであった。

 オレンジはそのカイリキーがボールの中から現れた瞬間、一瞬違和感を覚えた。その違和感というのは、なんとも言えないような不気味さであった。

 しかし、オレンジはシバと同時にカンナとキクコの相手をしており、そうした小さな違和感の正体を掴もうとするほどの余裕はなかった。

 

「はがるる! そっちの方が大きいんだ、“とっしん”で押しつぶすんだ!」

 

「────!」

 

 はがるるは咆哮し、カイリキーめがけて突っ込んだ。その巨体は鋼の名の通り硬く、さらにそのとっしんの速度は自動車よりも速かった。凄まじい巨体と硬度を持ったはがるるがこれまた凄まじい速度で何かにぶつかるとするのならば、たとえどのような巨岩やビルであろうともひとたまりも無くたちまちのうちに崩壊するであろう。

 

 はがるるは頭からカイリキーへと衝突し、鼓膜を破裂させるほどの轟音と、大地と空間を揺らす程の衝撃が発生し、土煙が巻き上げられた。

 ──土煙が晴れると、そこには果たしてはがるるの“とっしん”をその四つの腕で受け止め、二本の足を受け止めた時の衝撃で大地にめり込ませたカイリキーが立っていた。つまり、カイリキーは全くの無傷であった。

 

 己の“とっしん”をまさか受け止められ、その上その場から微動だにしないカイリキーに、はがるるはひどく狼狽え、唖然とした。

 その決定的な隙をシバとカイリキーは見逃さなかった。カイリキーはにやり、と笑った。そして──カイリキーのトレーナーであるシバはただ冷酷に指示をした。

 

「カイリキー、“じごくぐるま”!」

 

「馬鹿な!? ありえない!」

 

 オレンジは顔を青くして叫んだ。というのも、カイリキーがその四つの腕ではがるるの顔を掴み──その巨体を持ち上げ、振り回してみせたのだ。

 体格差や体重の差を一切考慮せずに行われる、非現実的な光景にオレンジはただただ狼狽えるしかできず、はがるるに対してカイリキーの拘束から脱出するための指示をすることはできなかった。

 それに、はがるる自身もオレンジの指示を受けておらずとも、このカイリキーの腕から逃れようとその巨体をくねらせたりしているが、まさしく怪力の名を冠するポケモンの腕力から逃れるのは到底不可能であった。

 

「はがるるの重さは400キロあるのに! 何で易々と持ち上げて、振り回せるの!?」

 

 そう言っている間にも、カイリキーははがるるの巨体をさながらハンマー投げをするかのように掴み、振り回す速度を徐々に上げていった。

 ごう、ごう、ごう! はがるるの長い体によって空気を切り裂く音が発生し、その回転速度が頂点に達すると、カイリキーははがるるを放り投げ、地面にたたき付けた。

 地面に叩き付けられたはがるるは、そのダメージによってぐったりとし、しばらくの間行動不能となっていた。──しかし、シバは冷酷にもカイリキーに追撃の指示を行った。

 カイリキーの鋭い手刀(チョップ)がはがるるの体に叩き付けられ、鋼で構成されたその肉体にヒビが生じた。

 

「はがるる!」

 

「よそ見をしていていいのかい?」

 

 とキクコは言った。

 次にキクコとの対戦の様子を見るとしよう。

 キクコが繰り出したポケモンは、ゴースであった。

 

「さあて、お手並み拝見といこうか。オーキドの弟子!」

 

「進化前のポケモン! 油断はしないで、ざんぐぐ!」

 

 ところで、このザングースは右目に傷跡があり、右目の視力は完全に失われているため、左目でしかものを見ることが出来ないのであった。しかし、片目でしかものを見れないからといって、戦闘で不利となると言われればそうではなかった。

 ざんぐぐは歴戦のザングースであり、片目のみで幾多ものハブネークを葬り去ってきたのである。──しかし、この場においては目の有無などは戦況には一切関係が無かった。

 

「ざんぐぐ、“れんぞくぎり”!」

 

 その鋼鉄をも容易く切り裂き、大樹をも容易くへし折ることが可能な豪腕から繰り出される“れんぞくぎり”はしかし、ゴースにダメージを与えることはなかった。

 その振り下ろされる爪のどれもが、ゴースの体をすり抜けてしまうのだ。それを見たキクコは笑いながら言った。

 

「フェフェ……無駄だよ。その程度じゃあ、アタシのゴースを捉えることは不可能さ! さあ、ゴース。片付けてしまいな! “ナイトヘッド”!」

 

 ゴースが光り輝き、禍々しい邪悪な光が放たれた。

 その光を浴びたざんぐぐはもんどり打ち、闘争による興奮ではなく、苦しみから来るうなり声をあげた。

 

「ざんぐぐ! ナイトヘッドはただの幻だ! 落ち着いて!」

 

「叫んだって無駄だよ。今、ソイツは恐ろしい幻を見ているんだ。恐怖っていうのは、どうすることもできないのさ。さあ、トドメだよゴース! “のろい”で体力、全部削ってあげな!」

 

 ゴースがケタケタと笑いながら技を発動する。

 ゴースによって放たれた“ナイトヘッド”による幻で、ざんぐぐの精神は恐怖に染まり、徐々に削られていった。そして、“のろい”による攻撃はざんぐぐの肉体がえぐり取られると錯覚するかのような、激しい痛みを与え続けた。

 ざんぐぐは恐怖と痛みによって絶叫し、もんどり打つしかできなかった。

 

「フェフェフェフェ! シバのほうも決着が付いたようだし、アタシも時間の問題だねえ。……おや、カンナの方はずいぶんと手こずっているようだ」

 

 とキクコは、ボーマンダと戦うカンナの方を見やった。

 カンナの繰り出したポケモンはジュゴンであり、そのジュゴンが繰り出す氷の攻撃は凄まじく、一度冷たい息を口から吐けば、辺り一面を凍りづけにする程の威力であった。

 

 しかし、ジュゴンはその凄まじい威力を誇る氷技を使用しなかった。──否、できないのである。なぜならば、ボーマンダの一撃一撃が必殺の威力を持ち、一度でもまともに受ければ、ジュゴンはたちまちひんし状態へと陥る程であった。

 それ故に、カンナはジュゴンを回避やけん制に専念させ続けることしか出来ず、ボーマンダの猛攻を防ぐのがやっとといった具合であった。

 

 カンナは非常にいらついた様子であったが、その原因はボーマンダを攻撃することができないというものだけではなかった。彼女はオレンジを睨み付け、叫んだ。

 

「く……! このポケモン、強い! いいや、それだけじゃない! 貴様、なぜさっきからこのポケモンに指示をしない!?」

 

「……ボーマンダは、強いんだ」

 

 とオレンジは言った。その表情は、どことなく陰りのあるものであり、しかし暴れているボーマンダを優しい視線で見守っていた。

 

「このボーマンダは最強を目指しているんだ。沢山の強敵に挑み続けて、時には勝ち、時には負け……無数の戦いを経験値にして、強くなっている。そこに俺の意思はほとんど介入することはないんだ。コイツは、一人で強くなりたいみたいだから」

 

「何を……!? 最強だと? 笑わせるな! 確かに、このポケモン。ボーマンダといったか。力は中々のようだが──我々四天王とて強者だ! この程度のポケモンに敗北する訳がない。ジュゴン! 相手の攻撃に構うな! “れいとうビーム”!」

 

 ジュゴンはカンナの指示によって、回避やけん制を取りやめて“れいとうビーム”をボーマンダに放った。しかし、攻撃の際に発生する隙をボーマンダは見逃さず、“れいとうビーム”をその身に受けるのも構わずに、“ドラゴンクロー”による鋭い一撃をジュゴンに与えた。

 “ドラゴンクロー”の一撃を受けたジュゴンは勢いよく吹き飛び、その身を森の木々に叩き付けられ、ひんし状態となった。一方、“れいとうビーム”を受けたボーマンダはその体の一部分を凍らせていたが、戦意は失っておらずカンナが次のポケモンを繰り出すのを待っていた。

 

「チィ! ジュゴン、戻れ!」

 

 とカンナはジュゴンをモンスターボールに戻し、次のポケモンを繰り出した。カンナが出した第二のポケモンはルージュラであった。

 

「ルージュラ、やってしまえ!」

 

 とカンナはルージュラに攻撃の指示を行った。

 ──しかし、その攻撃の対象はボーマンダではなく、そのトレーナーであるオレンジであった。

 ルージュラはオレンジの姿を模した氷人形を作り出し、カンナはその氷人形の右手首に口紅で印をつけた。すると、どうしたことか! その瞬間、オレンジの右手首には氷の手錠が嵌められていた。

 

「な……!? なんだ、これ!?」

 

「氷の手錠よ。おっと、そこのボーマンダ、注意することね」

 

 とカンナはルージュラに氷の人形を手渡し、ボーマンダを睨み付けた。

 

「この氷人形は、今おまえのトレーナーとリンクしている。私が口紅を塗った箇所が凍り付き、この人形を砕けば砕いた場所と同じ体の部位がちぎれるわよ。もしもうかつに攻撃して、氷人形が傷ついたらおまえのトレーナーは死ぬ!」

 

「──馬鹿な」とオレンジは呟いた。

 

「ルージュラにそんな能力は無いし、そんな技もない!」

 

「どうかしらね? 確かに普通のポケモンでは、こんなことはできないけれど、私は四天王よ。ポケモンの力を極限まで引き出し、普通ではありえない能力を使うことができる! それが四天王という実力者だと思い知れ!」

 

 ボーマンダは一切攻撃するそぶりも無く、しかし敵意の籠もった目でカンナとルージュラを睨み付けるしかできなかった。それはひとえに、ボーマンダはカンナの言っていることが真実だと本能的に悟っていたからである。

 また、オレンジも四天王という存在の強力さと規格外の強さに、ただただ歯噛みするしかできなかった。

 はがるるとざんぐぐはどちらも、ほんの数回の攻撃で倒され、ひんし状態となっていた。唯一体力のあるボーマンダも、攻撃することができない木偶の坊と化していた。つまり、オレンジは完全に追い詰められ、敗北したのであった。

 

「フン、まともなやり方では敵わないと思われるようで癪だが……元より始末するつもりだったし、とっととあのイエローと名乗ったガキとピカチュウを追わなければならない。それなりに足止めさせられたし、そろそろ終わらせるわ」

 

「ぐ……っ! 氷が!?」

 

 ピキピキという音とともに、オレンジの右手首にある氷の手錠を中心に、オレンジの体は徐々に氷に包まれていった。まず最初に右手が凍り付き、その次に右腕が凍り付き、いよいよ氷が胴体まで広がろうといったところで、キクコがカンナを呼び止めた。

 

「カンナ、少しお待ち」

 

 というキクコの言葉により、オレンジの体を徐々に蝕んでいった氷は、その浸食を停止させた。

 カンナは不満げな様子で、声を荒げさせた。

 

「なぜ止める!? キクコ!」

 

「まあ、お待ちよ。ふぇふぇふぇ。数年前に、突然現れた研究者の新星(ルーキー)。専門は確か、進化だったか。一つ提案がある」

 

「何……?」とオレンジは眉をひそめた。

 

「お前、エネルギー探知機とかいうモノを持っているだろう? アタシは聞き逃さなかったし、見逃さなかったよ。それをアタシに渡しな。そうすれば、命だけは助けてやろうじゃないか」

 

「何に使うつもり?」

 

 オレンジはキクコを睨み付けた。

 

「なあに。アタシ達の目的に使えそうだと思ってね。そのエネルギー探知機とやらは、進化の石やポケモンの進化エネルギーを探知するそうだが、他のエネルギーも探知することができる。違うかね!?」

 

「……できる。本当は進化の石とかの、エネルギーを秘めた物質を探すのが目的だから、少し設定を変えれば、他のエネルギーを持った物質も探すことができる」

 

「ふぇふぇふぇ! それはずいぶんと素晴らしい発明じゃないか。さあ、命が惜しいなら渡しな! 別に、殺してから奪い取ってもいいけれどね」

 

 笑うキクコを前に、オレンジは歯噛みをした。自分は完全に追い詰められているのだった。

 

「……一つだけ聞かせてほしい。なんで、お前たち四天王はこんなことをする? レッドさんと戦って、逃げたピカを始末するのはまだ分かる。けれども、行方不明になったレッドさんを探そうとしている麦わらちゃん……イエローや、関係の無いマサキさんにまで攻撃をする必要はないでしょう。何が目的?」

 

「それを話すとでも?」

 

 とキクコは言ったが、そこにカンナが割り込んだ。

 

「いいじゃない。冥土の土産に聞かせてあげるわ……このカントーで進む近代化は、人間にとっては良いことだけれど、ポケモン達にとってはそうではない。人間達の住む場所を広げるために、森は切り開かれ、次々と建てられる工場の排煙や排水によって空や水は汚れ……野生のポケモンたちは住処を失い、汚染された環境に苦しみ続けた。

 ねえ、人間とポケモンが共存するのって、難しいみたい。だから、私たちはポケモンの理想郷を作るのよ。一握りの優秀なトレーナー一握りを残して、他の人間はこの大地から追い出す。そうすれば、ポケモン達の理想郷が完成する。それが私たちの目的よ」

 

「……フン! 全く、カンナめ。ベラベラと喋りおって。まあいい、このぐらいなら聞かれても問題はないしね。そういうことだ。さっさとエネルギー探知機を渡しな! お前は優秀なトレーナーとは言えないが、知識だけはずいぶんとあるようだから、命だけは助けてやろう」

 

 オレンジはキクコを見つめた。彼は人を見る目には長けている方であり、キクコが自分の言ったことを素直に守るようなたぐいの人間では無いということは明らかであった。恐らく、エネルギー探知機を渡しても、渡さなくてもオレンジの命の末路は変わらないだろう。

 ギリ、とオレンジはまだ凍っていない左手を握りしめ、決意を固めた。

 

「お断りだ! そんなことはさせない! ボーマンダ、俺に構うな! 全員吹き飛ばせ! “はかいこうせん”!」

 

「────ッ!」

 

 オレンジの命令を受けたボーマンダは、一切迷うこと無く“はかいこうせん”を四天王達めがけて放った。

 キクコは愉快そうに口の端を釣りあげ、残虐な笑みを浮かべた。

 

「フェフェフェフェ! 残念だよ、オーキドの弟子! ふふ、オーキドにお前が死んだと言ったらアイツはどんな愉快な顔をするかね!? 自分の吐き出した言葉に後悔しな!」

 

 とキクコはゴースに指示を送った。それと同時にカンナとシバもそれぞれルージュラと、カイリキーに指示を送った。

 

 ──三つの違った属性(タイプ)の攻撃エネルギーは、一つに収束し凄まじいエネルギー、すなわち攻撃力を発生させた。

 この四天王必殺の合体技、その名を氷・闘・霊の陣──レッドのポケモン達を一瞬で殲滅した強力な攻撃は、ボーマンダの放った“はかいこうせん”をいとも容易く吹き飛ばし、“はかいこうせん”を放ったボーマンダもまた、一瞬でひんし状態へと陥れた。

 

 四天王達による攻撃の光が収まると、オレンジは呆然とするしかできなかった。

 戦闘においてはオレンジが全幅の信頼を寄せ、四天王とでも互角以上に戦うことができると確信していたボーマンダは一撃で屠られ、全ポケモン随一の防御を誇るはがるるの肉体はひび割れ、歴戦のざんぐぐは為す術も無く倒れ伏したのだ。

 オレンジの残りの手持ちはまだいるものの、他のポケモンを出しても勝利することは不可能だと悟った。

 

(危険だけど……せめてアイツが居れば……!)

 

「コイツは貰っておくよ」

 

 とキクコはオレンジの懐からエネルギー探知機を奪い取り、カンナに言った。

 

「さあ、カンナ。やっておしまい」

 

「ええ。言われずとも。……フフ、こんな少年を殺すというのは心苦しいわね」

 

「……嘘つけ」

 

 とオレンジは毒づいた。しかし、それも空元気であり、為す術も無く凍り付く運命を受け入れることしか出来なかった。実際、オレンジの肉体は徐々に凍り付き──少しばかり時間が経てば、オレンジは完全に凍り付き、一体の氷像ができあがっていた。

 

 キクコは凍り付いたオレンジを一瞥すると、エネルギー探知機を操作した。

 すると、エネルギー探知機の画面にはいくつかの光点が出現した。その光の数はすべてで8つあり、そのうちのいくつかは一カ所に集まっていた。とりわけ、タマムシシティには三つのバッヂの反応があった。──そして、

 

「…………なるほど、サカキの居場所が分ったよ。中々に優秀な機械だ。バッジのエネルギーをこうも正確に捉えている! フェフェ、さあお前達。他のバッジを手に入れるよ!」

 

「ええ。了解したわ」

 

「…………」

 

 ──と、四天王たちはその言葉を残すとその場から完全に姿を消した。

 

 

 

 

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