ポケットモンスター~orange~   作:天城黒猫

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【悲報】作者、ポケスペ3巻をどっかに無くしてしまう。しかし、プロットがあるからなんとかなる。更新が遅くなったのはゲームとかやってたから。

【朗報】ゴールデンウィーク中、毎日更新にチャレンジすることに決定。ただし、2日は仕事だから更新は難しい。そしてあくまでもチャレンジなので、毎日更新できないかもしれない。

それはそうと、SV○○というタイトル縛りだと、戦闘が無い時どうしようか悩む。そのうちサブタイ変更するかもしれません。


VSピカチュウ

「戻るんや! アンタの主人が危ないんやぞ!?」

 

 

 ずばととはマサキとイエロー、そしてピカをその背中に乗せて、目的地へと向かってまっすぐに空を飛んでいた。

 時刻はすでに夜中となり、太陽は沈みきり、光となるようなものは星と月のぼんやりとしたものしか無かったが、元より超音波で周囲を探索することが可能なズバトト(クロバット)にとっては、昼間と全く変わらない鮮明さで周囲の状況を把握していた。

 

 そのため、夜になろうと常に変わらない速度で空を飛行し続けていた。もちろん、背中に乗っている者達が耐えきれずに落下したりしないように、それなりにゆっくりの速度で──

 

 しかし、それでもずばととの背中に乗っているマサキやイエローからすれば、ずばととの飛行速度は速く感じられた。イエローとマサキとピカは、ずばととから落ちないようにその背中にしがみついていた。

 特にイエローは麦わら帽子が風で飛ばされないように、片手で帽子を押さえながら、もう片方で背中から落ちないようにしがみつかなければならなかったから、大変なものであった。

 

「戻るんや! なあ、クロバット! アンタのご主人のところに戻るんや! あの四天王ちゅー、えらい強い連中とオレンジが一人で戦っても、勝てるはずがあらへん! あのレッドが負けんやぞ!? ご主人が心配やあらへんのか!?」

 

 特に、オレンジと親交があり、彼を研究者の後輩として可愛がっているマサキとしては、オレンジから離れれば離れるほど、オレンジを一人四天王三人という、恐ろしい強敵に置いていったことによる心配と、焦りとが大きくなり、何度もずばととの背を叩いては、オレンジの元に引き返すように叫んでいた。

 

 しかし、ずばととはマサキがどのようなことを言っても、苦渋の表情を浮かべたり、歯を食いしばったりはするものの、一向に首を振り続けるばかりであり、引き返そうとする素振りは一切見せなかった。

 とうとうマサキは疲れ果て、同時にずばととの頑固さに呆れ、ため息を吐いた。

 

「ハァ……あかんわ! 飛び降りようにも、この高度から飛び降りればあっという間に地面とぶつかってペシャンコや! なあ、少年。イエローとか言ったか。あんた、空を飛べるポケモンとか持っとらんのか?」

 

 イエローは頭を横に振った。

 

「いえ、持ってません。でも、今ボク達が戻っても無駄だと思います。だからこそ、オレンジさんはボク達を逃がして、正義のジムリーダー達と合流させるために、一人で四天王達を足止めしているんです。

 ……だったら、ボクはその思いを無駄にはできない!」

 

 イエローが放った言葉は、正論でありマサキをタジタジとさせた。それに、イエローの言葉と目には、確かな意思と覚悟が宿っていた。

 

「それに……このずばととの意思も、ボクと同じようです」

 

 イエローはずばととにしがみついている片手で、その能力を使い、ずばととの心を読み取った。

 

「『オレンジのことは心配でたまらない』『けれども、オレンジだって馬鹿ではない。しぶといし、逃げるタイミングも見計らっているはず』『オレンジのことを信じている』

 ……ずばととだって、マサキさんと同じ気持ちなんです。もちろん、ボクだって、オレンジさんのことが心配です。でも、引き返すことはできません」

 

 マサキは悔しそうな顔を浮かべ、歯噛みした。

 

「……クソ! ワイは大人やのに、オレンジを危険な場所に放っておくことしかできないなんて、情けないで」

 

 ──ずばととは、夜空を飛び続けた。

 

 ずばととと、マサキ、イエロー、ピカ達が目的地に到着したのは、太陽が完全に沈み星々と月が空の天辺に昇り、夜の主役となる時間、すなわち深夜直前の時間であった。

 その目的地というのはタマムシシティのことであった。ずばととは街の真ん中に降り立つと、背中の乗員達を下ろした。

 

 

 

 

タマムシシティ
タマムシ にじいろ ゆめの いろ

 

 

 

 目的地に到着したとはいえ共、イエロー達の気が休まることはなかった。

 なぜならば、彼らがタマムシシティに降り立つと、ビルや木、路地裏など様々な場所から、沢山の人々が現れ、イエロー達を取り囲んだからだ。

 

「──こんばんは、ご機嫌よう」

 

「エ、エリカはん!?」

 

 イエロー達の周りに居る人物のうちの一人が、スカートの両端をつまみ、優雅に一礼した。その人物こそは、このタマムシシティのジムリーダーであり、正義のジムリーダー達の一員であるエリカであった。彼女と面識のあるマサキは、その登場に驚きの声を上げた。

 しかし、イエローはエリカのことを知らないため、戸惑うのみであった。

 

「え、ええっと……あなたは?」

 

「あら」

 

 とイエローの戸惑いを察したエリカは、失敗したように両手で口元を隠すと、微笑みながら名乗った。

 

「私はエリカ。タマムシシティジムリーダーですわ。レッドの親友の一人です。オーキド博士に伺いましたわ。オレンジとピカと一緒に、レッドを探しに旅だった麦わら帽子を被ったあなたのことを」

 

「──ええ。名前は聞いていないけれど……私たちはそのために集まったのよ」

 

 と新たなる登場人物が現れた。彼女はイエローと握手をしながら名乗った。

 

「私はカスミよ。ハナダシティジムリーダー。よろしくね!」

 

「オレ達はレッドを見つけ出し、四天王と戦うためにここに集まったんだ」

 

 と──最後にがっしりとした体つきの男性が登場した。

 

「オレはタケシ。ニビジムリーダーだ」

 

「ジ、ジムリーダーが三人も勢揃いやって!?」

 

 驚くマサキをよそに、イエローは、この三人の前で圧倒された様子だった。緊張を隠せないオレンジを前に、カスミは笑顔を浮かべた。

 

「私たちは、皆レッドの友達よ。彼を助けるためにここにいるわ」

 

「は、はぁ……」

 

 カスミはピカを抱き上げ、その頭を撫でながら辺りをキョロキョロ見回し、首をかしげた。

 

「ところで、オレンジは? 彼も一緒にいるって、オーキド博士から聞いていたのだけれど……」

 

「……ッ」

 

 息をのむイエローをよそに、マサキはまくし立てた。

 

「そうや! オレンジが大変なんや! アイツ、自分らを逃がすために四天王と一人で戦っとるんや!」

 

「何ですって!?」

 

 マサキの言葉に、ジムリーダー達は大変驚いた様子だった。真っ先に冷静さを取り戻したエリカが、首を振りながら言った。

 

「そうですか……ですが、今動くわけにはいきません」

 

「何でや!?」

 

「四天王の力は相当なものでしょう。ポケモンリーグ優勝者……つまり、現在カントー地方において、最強のトレーナーの称号を持つレッドが敗れたのです。四天王と戦うにしても、何の準備もせずに突撃してはミイラ取りがミイラになってしまいます。それ相応の準備が必要ですのよ」

 

「ぐっ……!」

 

 エリカの言葉は正論であり、マサキは歯を食いしばるしかできなかった。

 ジムリーダー達の実力もかなりのものではあるのだが、最強という文字には届かないのである。レッドよりも劣るであろう彼らが何の準備もなしに四天王と戦えば、返り討ちに遭うのは目に見えているのだ。

 

「それに──私は、研究者としてオレンジと顔を合わせたこともあります。彼の実力も知っていますわ。トレーナーとしての実力は、平均レベル、あるいはそれよりも少し上といったところでしょうか。ですが、ポケモンの知識と、フィールドワークで身につけた逃げ足の速さは天下一ですわ。今頃は、どうにか逃げているハズでしょう」

 

 エリカの言葉に、ずばととは静かに頷いた。

 実際のところ、エリカの言葉はマサキとイエローを慰めるためのものであり、彼女自身オレンジの実力で四天王を相手にして、無事で済まないということは理解していた。

 しかし、これまでにオレンジと共に何度も修羅場をくぐり抜けてきたずばととは、オレンジが生きているということだけは確信していた。それは、長年の付き合いによる信頼から来るものであった。

 

 カスミはイエローの頭を帽子越しに撫でながら(イエローは突然の行為に、「うわっ」と驚きながら麦わら帽子を押さつけた)言った。

 

「いつまでもこんなところで立ち話をしていても意味が無いわ。あなたたち、疲れたでしょう。夜も遅いし……今は休んで体力を回復させなさい。明日から、私たちはもう一人のジムリーダーと合流して、本格的な捜査に乗り出すわ。そのときになったら、あなたも手伝ってね?」

 

「ハ、ハイ……」

 

 カスミの言葉によって、イエローとマサキはなすがままにタマムシジムに泊まることとなった。ずばととは空のモンスターボールに収められ、イエローが預かることとなった。

 マサキは中々寝付けずに、部屋の中をうろついていた。オレンジのことをポケモン研究者としての、後輩のように思っていたため、オレンジの安否を心配していたのだ。しかし、精神的な疲れと肉体的な疲れもあり、いつしか深い眠りについていた。

 

 一方、イエローは能力の使用によるエネルギーの消費、そしてマサキと同じように疲れが重なっていたこともあり、すぐに眠りに落ちた。

 ピカもまた同様に、イエローの元で眠っていた。

 

 ──ピカは夢を見ていた。

 場所はオツキミ山のどこか。少なくとも通常の登山ルートから大きく外れ、人気の無い岩場であることしか分からなかった。その場所こそが、レッドが四天王と戦い敗れた地であった。

 地面には、ニョロゾ、フシギバナ、ギャラドス、プテラ、カビゴン──レッドの手持ちが瀕死状態で倒れており、トレーナーであるレッドもまた、見ていられないほどにボロボロの状態であった。

 シバのサワムラーはとどめの一撃と言わんばかりに、レッドのみぞおちに“とびひざけり”をめり込ませた。

 

 レッドはうめき声を上げながら、底が見えないほど深い崖下へと落下していった。ピカは、レッドが暗闇へと吸い込まれていくのを見るしか出来なかった……──

 

 悪夢を見たピカは、思わず起き上がった。ピカの顔は真っ青であり、呼吸も落ち着かなかった。それから、先ほど見た光景が夢であると理解したピカは、ほっとしたようにため息を吐いた。

 夢のことを思い出し、ピカは歯を食いしばった。己のトレーナーが死亡する夢を見、今すぐにでもレッドを発見して安心感を得たくなってしまった。今、レッドはどうしているのだろうか? 果たして生きているのだろうか? 無事なのだろうか? ──そんなことを考え始めた。

 

 ピカはレッドの捜索に協力してくれているイエローから、このまま離れてレッドを探しに行きたい気持ちに駆られた。

 ピカはレッドの捜査に協力してくれているイエローをチラと見つめ、協力者であるイエローから離れて良いのか逡巡した。

 

 そしてイエローと共にレッドを探すよりも、今すぐここから飛び出てレッドと再会したいという気持ちのほうが上回り、一匹でレッドを探そうとして、布団に横になっているイエローを尻目にこの部屋から出ようとした。

 

「ピカ」

 

 イエローはそんなピカの気配を感じたのか、目を覚ましてピカを制止した。

 

「一人でレッドさんを探しにいくなんて無茶だ。外は真っ暗闇だ。もう寝よう」

 

「────!」

 

 自分の事を止めようとするイエローめがけて、ピカはほとんど反射的に電撃を放った。

 幸い、その電撃の威力は小さいものであり、少ししびれるという程度であった。電撃を浴び、悲鳴をあげるイエローを見たピカは自分のしでかしたことに気が付き、体を震わせた。それでもなおレッドを喪ったことによる喪失感と、今すぐレッドを探しに行きたいという気持ちが合わさり、非常に興奮していた。

 

 イエローは自分の能力を使うまでもなく、ピカの精神を読み取った。

 ピカの精神状態は非常に不安定なものであり、喪失感、興奮、悲しみ、恐怖、焦りといったあらゆる感情が浮かんでは沈んでいた。

 

 しかし、精神が不安定になっているのはピカだけではなかった。イエローもまた冷静とは言い難い精神状態であった。

 四天王と対峙したことにより、レッドは四天王に敗れたということが明らかになった。そして、四天王から己を逃がすために殿となったオレンジの安否を考えると、無事とは言えないのだろう。二人が出会ってから一週間にも満たない短い間ではあるが、オレンジはイエローにとって心を許せる人物となっていた。

 

「オレンジさん、無事かなあ……」

 

 と──イエローはピカを抱えながら独りごちる。

 イエローはオーキド博士の研究所から、トキワの森までの道中のことを思い出していた。思えば、オレンジの知識には何度も関心させられることが多かった。

 

 道中ポケモンを見かけるたびに、オレンジは好奇心で目を輝かせながらそのポケモンの特性や生態を解説していた。ポケモンの解説をしているオレンジは生き生きしており、その様子を見るたびにイエローは、オレンジはポケモンが大好きなんだという感想を抱いた。

 他にもポケモンの知識だけではなく、木の実やキノコなどの種類にも詳しかった。人間が食べられる木の実やキノコを拾っては、それを材料に野宿にしては立派な料理を作っていたし、ポケモンが好む木の実を見極めるのが上手だった。

 テントの建て方や焚き火を作る方法も熟知しており、旅──というよりは、野営に慣れている人物だった。イエローとオレンジそれぞれのテントを素早く設置したり、体を清める方法を教えてくれたりもした。

 

「……ピカ、今は寝よう。体力を回復させるんだ。他の人達も協力してくれれば、レッドさんを見つけることができる」

 

「…………」

 

 ピカはコクリと頷いた。

 

 

 

 

 

2番どうろ

 

 

 

 キクコはオレンジから奪い取ったエネルギー探知機をいじり回していた。その老婆は邪悪な笑みを浮かべながら、エネルギー探知機の画面を見下ろしていた。

 

「フェフェ……コイツは思わぬ収穫だよ。本当にね……あのオレンジとかいうガキ、こんなものを作るとは中々に優秀じゃあないか」

 

 現在、四天王たちはそれぞれ別の場所へと向かっていた。というのも、四天王達の計画を実行するのには、ジムリーダー達が持つジムバッジのエネルギーが必要だったからだ。

 四天王達が手に入れているバッジは、オレンジバッジ、ピンクバッジ、ゴールドバッジ、そしてクリムゾンバッジの四つ──すなわち、元ロケット団であったジムリーダー達のバッジであった。

 

 そして、四天王達が手に入れていないバッジは、グレーバッジ、ブルーバッジ、レインボーバッジ、グリーンバッジの四つ。つまり、タケシ、カスミ、エリカ、サカキの持つバッジこそが四天王達の狙いなのだ。

 

 オレンジの持つエネルギー探知機は、ジムリーダー達が持つバッジのエネルギーを正確に捉えていた。スオウじまにある四天王達が手に入れたバッジのエネルギーもしっかりと探知していたため、キクコはこれを利用することにした。

 

 始めは、雑兵達にニビシティ、ハナダシティ、タマムシシティを襲わせ、ジムリーダー達からバッジを手に入れようとしていたのだが、バッジの場所が明らかになった今となっては確実に手に入れることの出来る方法をとることにした。

 

 すなわち、四天王達が直接ジムリーダーと戦いバッジを手に入れることにしたのだ。

 

 そのため、シバとカンナは三つのバッジの反応が集まっているタマムシシティに向かっている。

 

「さあて……アタシも動くとするかねえ。どうやら、コソコソとアタシ達の邪魔をしているやつらもいるようだしね!」

 

 キクコはクチバシティへと向かい始めた。

 なぜならば、ロケット団の残党たちが、四天王を倒すために暗躍していることを、キクコは驚異的な情報網と監視網を持って見抜いていたからだ。そして、ロケット団の残党は現在クチバシティへと集まっている様子を見せていたため、キクコは己の妨害をするロケット団の残党達を殲滅しようとしていた。

 

 ──そして、残るグリーンバッジの持ち主であるサカキは、ロケット団が解散した後は行方不明となっていたが、エネルギー探知機を手に入れたキクコの前ではその居場所はもちろん筒抜けであった。

 

 サカキの元には、残る四天王の一人──(ドラゴン)使いのワタルが向かっていた。






 VSりかけいのおとこは原作では、イエローは数日かけてトキワの森(カンナ戦後)からタマムシシティまでたどり着いていたため、キクコがりかけいのおとこを洗脳し、差し向ける時間があった。
 しかし、ずばととの頑張りによって、イエローは一日でタマムシシティまで移動したため、VSりかけいのおとこは自動的に消滅となりました。

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