ポケットモンスター~orange~   作:天城黒猫

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平成最後の投稿となります。

あと、今更ですが注意点をもう一つ。
ポケモンのわざもまた、初代よりも先の世代のものが出てきたりします。




VSプテラ

 タマムシシティでは、イエロー、エリカ、カスミ、タケシの前にカンナとシバが立ちはだかり、クチバシティではマチス、キョウ、ナツメの前にキクコが立ちはだかり──オツキミやまではサカキとワタルとが戦っていた。

 

 四天王達は殆ど同時に、それぞれの標的に襲撃を仕掛けていた。というのも、四天王達からすれば己の目的を一刻も早く達成するには、同時に()()を進めるのが最善だと考えていたからだ。タマムシシティとクチバシティとの戦いにおいて、人数という面で見れば四天王達は不利ではあるが、彼らの実力からすればジムリーダー達が何人居ようが敵ではなかった。

 

 実際──ジムリーダー達は皆窮地に立たされていた。

 

 

 

 

クチバシティ
クチバは オレンジ ゆうやけのいろ

 

 

 

 

 その極端な例はクチバシティで行われている、キクコとマチス、キョウ、ナツメとの戦いであろうか。

 キクコはゴーストタイプのポケモン使いであり、己の手下であるゴースを大量に操り、サントアンヌ号に乗っていた数十人、あるいは百人近くの人々を操り、人数差における不利をあっさりと覆していたし、マチスたちは倒せども倒せども次々と襲いかかってくるトレーナー達にじわじわと体力を削られ、数匹の手持ちしか居なくなる程に追い詰められていた。

 

Sit(くそったれ)! キリがねえ!」

 

 と、マチスはレアコイルが作りだした救助ポッドの中で、地面に群がるサントアンヌ号に乗っていた人々を見下ろしながら、悪態をついた。

 無理も無いだろう、いくら元ジムリーダーで、ロケット団の幹部という実力者達であろうと、次々と連続してバトルすれば、ポケモンも、トレーナーも体力は削られるし、ましてや終わりが見えないほどの連戦を強いられれば、徐々に追い詰められてしまうのだ。

 

 この連戦が終わるのはいつだろうか──それは恐らく、マチスたちが倒れる時なのだろうか? あるいは、マチスたちがキクコのゴーストポケモンに操られた人々を全員倒した時なのだろうか? 

 ……状況を考えれば、前者のほうが確率は高かった。

 

「落ち着け。マチス」

 

 とナツメはマチスをたしなめながら、己の下に広がる光景を見下ろした。

 隙間が無いほどの人々やポケモン達で港はぎゅうぎゅう詰めになっており、それでもなお港に入りきらなかった人やポケモン達は、サントアンヌ号の上で大量に己の出番がくるまで虚ろな目で立っていた。その人の数をいちいち数えるのも億劫だった。

 しかし、ナツメは冷静だった。

 

「見ろ。あれらは操られているだけ……エスパー使いである私には分かるぞ。トレーナーやポケモンに、ゴーストポケモンが取り付いている」

 

「ナツメ、お前の超能力で何とかできないのか?」

 

 マチスは切実な思いで問いかけたが、ナツメは首を横に振った。

 

「……いや。一人二人ほどならどうにでもなるが、あれほどの量となると全員の洗脳を解くのは不可能だな」

 

Sit(くそったれ)!」

 

「落ち着け。ゴーストポケモンは、一人に付き一匹取り付いているようだ。つまり、ここにいる人とポケモンの数と同じゴーストポケモンがいる」

 

「それがどうした?」

 

「気づかないのか? マチス。これほどの数のポケモンを一斉に操るのはまず不可能だ。普通の手段ではね」

 

「ほう──」

 

 キョウは、ナツメの言わんとしていることを理解した。

 

「ナツメ、つまりお前はこう言いたいのだな? 大量のポケモンを操る()()()()があると」

 

「ああ、そうだ。その仕掛けをどうにかすれば、ここに居る人々は正気に戻るだろう……攻撃も単調だし、恐らく『私たちに攻撃しなさい』というような、簡単な命令しかできないようだ。それならば、付けいる隙はある」

 

 マチスたちは、レアコイルが作りだした救助ポッドの中で身を寄せ合い、少しの間作戦会議を行った。

 それを見たキクコは、おちょくるような声で言った。

 

「ふぇふぇ……作戦会議かい? 無駄なことだよ! 逃げ出すことも許さない。お前達にウロチョロされても面倒だからね、ここで潰させてもらうよ!」

 

「フ、それはどうかな?」

 

 とナツメは口の端を釣り上げながら答えた。彼女の声もまた、キクコをおちょくるようなものであり、また同時に見下すような様子だった。

 

「四天王キクコ……キサマの姿は見えないけれど、その声から老人だと分かる。姿を見せず、戦いは他力本願……キサマ本人は弱いと言っているようなものだ」

 

「ふん! 挑発しているつもりかい? 小娘が。その程度じゃあ、アタシはどうにもできないよ」

 

「いいえ、挑発しているつもりは無い……ただ、事実を言っただけだ。キサマは、私達に負けるのだから」

 

「ハ、だったらこの軍団をどうにかしてみな!」

 

 キクコの声を合図に、マチスのレアコイルは救助ポッドを解除した。

 それは当然、壁がある空中という安全地帯から、四方から無数の敵が襲いかかる戦場へと降り立つこととなる。マチスは数匹のレアコイルを、ナツメはモルフォンを、そしてキョウはアーボックを繰り出した。

 マチスたちは皆背中を合わせて、背後からの死角をなくす形で戦い始めた。

 

 レアコイル達は電撃やソニックブームで敵を吹き飛ばし、モルフォンは粉による状態異常を引き起こして敵の動きを止め、アーボックはその長い尻尾を振り回して敵を吹き飛ばしていた。

 ──一見、抵抗出来ているように見えたがやはり状況は全く変わっていなかった。敵は倒せども倒せども次々と雪崩のように襲いかかり、手持ち達の体力を徐々に削っていった。

 

「何かを企んでいたようだけれど、この数を相手にどうにかできるわけないだろう!? ふぇふぇふぇ! ここで朽ち果てな!」

 

「クソ──! やっぱりキリが無い! キョウ、ナツメ! まだか!?」

 

「もう少しだ……! ()()()()!」

 

「こっちもだ! フフフフ……! 敵の術、見破ったり!」

 

 ナツメは、モルフォンに“サイケこうせん”を命じた。

 モルフォンが放った“サイケこうせん”は、目の前のポケモンやトレーナー達には向かっておらず、てんで見当違いの方向へと飛んでいった。

 

「ヤケでもお越したかい?」

 

「いいえ……」

 

 キクコの声にナツメは首を振った。

 

「何──ッ!?」

 

 続いて、キクコは驚きの声を発した。

 その原因は、ナツメのモルフォンが放った“サイケこうせん”は、空中で姿を隠し、浮遊していたゲンガーに命中したからだ。一撃でHPを削られ、“ひんし”状態となったゲンガーは地面にボトリと落下した。

 それと同時に、マチス達を攻撃していたサントアンヌ号に乗っていた人々に取り付いていたゴーストポケモンたちは、皆取り付くのを止めてどこかへと逃げていった。操られていた人々は、一斉に意識を失い地面に崩れ落ちた。

 

 ナツメは不敵な笑みを浮かべ、してやったりと言わんばかりに笑った。

 

「フフフ……思った通りだ! いくら四天王という実力者とはいえども、これほどの数のゴーストポケモンを使い、人やポケモンを操るのは、不可能。

 だから、私は何かしらの仕掛けがあると考えたの。例えば……司令塔のポケモンを用意して、その司令塔を通じて配下のポケモンに命令させるとかな……となれば、後は簡単。私の超能力を使って、その司令塔を探すだけ……!」

 

「馬鹿な!」

 

 驚くキクコをよそに、キョウもナツメと同じような笑みを浮かべて見せた。彼の腕には、ゴルバットが止まっていた。

 

「フフフ……そしてこちらも見つけたぞ! 四天王キクコ、その居場所見破ったり!」

 

 ゴルバットの口には、特殊な膜が張られており、そこにはキクコの姿がありありと映し出されていた。──キョウのゴルバットは、超音波で周囲の様子を探り、その映像を特殊な膜に映し出すことができるのだった。ゴルバットは、この能力を使って、キクコの居場所を探索していたのだった。

 

「な──! まさか、アタシの隠れている場所が……!?」

 

「さあ、マチス! やってしまいなさい!」

 

「──応!」

 

 ナツメの合図に、マチスは凶暴な笑みを浮かべた。

 そして、己のレアコイル達に指示をし、キクコが隠れている物陰めがけて電撃を放った。

 

「“でんきショック”!」

 

「ぎゃあッ!?」

 

 見事、マチスのレアコイルが放った“でんきショック”はキクコに命中し、キクコは悲鳴をあげて倒れた。

 それからしばらくして、息を整えたマチスたちは次々に思いのままの言葉を放った。

 

「やったな……」

 

「ええ、四天王キクコ、手強い相手だった。だが、四天王は他にもいるわ」

 

「その通り。──仕方があるまい。予定は狂ってしまったが、四天王の一人を倒せただけ上出来としよう。あとは、四天王の本拠地に潜入するとしよう」

 

「ああ、あの忌々しいガキ共も動いているみてえだしな」

 

「……協力しろ、ということか?」

 

「フフフ……それは面白い!」

 

 ──カタリ、という物音がした。

 それは小石が転がる些細な音だったが、マチスたちはそれを聞き逃さなかった。

 キクコが倒れている方向をみると、そこにキクコは居なかった。つまり、気絶したと思っていたハズのキクコは、何かしらの手段を用いて移動したのだ。そのため、小石が転がったのだろう。

 

 マチスたちはキクコが消えたことに驚き、周囲を警戒しながらキクコを探した。しかし、これといった成果は得られなかった。

 

 ──そして、マチス、ナツメ、キョウの三人は何者かの、得たいの知れない攻撃を受けて地面に倒れ伏した。

 

 ……それからどのくらいの時間が経っただろうか。真っ先に目を覚ましたのは、キョウだった。

 彼は懐からモンスターボールを取り出した。そのモンスターボールは、キョウが愛用する手裏剣付きのモンスターボールであり、そのボールは砕けていた。つまり、キョウが真っ先に目を覚ましたのは、このボールがキョウを守ったからであった。

 

「…………」

 

 キョウは、マチスとナツメの様子を観察した。

 二人の意識は完全に気絶していた。

 

「これでは、目を覚ますのは数日後となるだろうな……」

 

 キョウはしばらくの間立ち尽くし、考え事をしていた。

 それから、思考がまとまるとマチスとナツメ、そしてサントアンヌ号を乗っ取ろうとしていたロケット団たちを回収し、この港から消え去った。

 

 

 

 

オツキミやまの奥地

 

 

 

 続いて──サカキとワタルとの戦いを見るとしよう。

 サカキの切り札の一つである、ドサイドンの攻撃によってワタルと、そのドラゴンポケモンたちは、崖崩れとともに崖の下に消えていった。

 

 しかし──サカキは警戒を解くことは無かった。

 それはワタルがこの程度でくたばるような、軟弱な敵ではなかったからだ。ワタルは、四天王達の中でも最強といっても良いほどの、強力な(ドラゴン)ポケモンの使い手である。その火力は町一つを容易に吹き飛ばすし、放たれる“はかいこうせん”はその軌道を自在に変化させることが可能なのだ。

 

 それだけでも恐るべき能力なのだが、ワタルにとってはこの程度は当然のごとく、手持ち全てが持っている能力なのだ。

 ワタルの真価は、ポケモンを回復し、心を読み取る能力であり──また、ドラゴンポケモンたちもさらなる能力を秘めている。

 

「──ドサイドン、構えろ」

 

 とサカキはドサイドンに警戒をするように命令した。

 崖の下は深いようで、底が見えずに暗闇が広がっていた。しかし、その崖下の闇から一筋の光が空へと向かって立ち上った。

 

 それはまるで神が舞い降りたかと錯覚するほどに、輝かしく、美しい光だった。

 しかし、その実態は触れるものありとあらゆるものを破壊し、分解するエネルギーを持つ禍々しい破壊の光である。──その光は、空中で軌道を変化させ、サカキとドサイドンの頭上に舞い落ちた。

 

 その光が止むと、サカキとドサイドンが立っていた場所には、巨大な穴が開いており、その穴の底は見えない程に深かった。

 ──その穴を、サカキとドサイドンは岩山の天辺から見下ろしていた。サカキは、攻撃が命中する直前に、ドサイドンの“あなをほる”によって、岩山の天辺まで移動し、その攻撃を回避していたのだ。

 

「とんでもねえことをしやがる!」

 

 サカキは思わず毒づいた。

 彼の漆黒のスーツはボロボロであり、あちこちが汚れていた。火山の噴火にも耐えることのできる、ドサイドンのプロテクターにもヒビが入っており、少なくないダメージを受けていた。

 

「…………」

 

 サカキは、岩山の上から崖を見下ろした。

 その崖からは、カイリューに乗り、その周囲にドラゴンポケモンたちを従えたワタルが舞い上がってきた。

 ワタルの表情は静かな怒りに染まっており、サカキを見るなり明確な殺意を持って宣言した。

 

「四天王ワタルを追い詰めるとはな……いいだろう、オレの本気というものを見せてやる!」

 

「ほう、それは面白い」

 

 とサカキは笑みを浮かべて答えた。

 

「フン、その笑みがいつまで続くかな? ──我がドラゴンたちは、それぞれ能力を秘めている! ドラゴンは、古来より神として崇め称えられてきた。その力を見せてやろう!」

 

 ワタルは己のドラゴン達に命令を送った。

 まず、最初に行動を起こしたのは二体のハクリューだった。その二体のハクリューは、風と雷雲を操ることに秀でていた。

 ──今まで快晴だったオツキミやま上空は、漆黒の雷雲に覆われ、台風と同等の強さをもつ風が吹き荒れた。

 旋風と降り注ぐ雷は、オツキミやまに転がる岩を吹き飛ばし、削っていった。その気象の過酷さは、ドサイドンとサカキの体力を徐々に削っていった。

 

 続いて、その強風の中をプテラが飛び回った。その飛行速度は凄まじい程に早く、目で追うのがやっとだった。──プテラの“きりさく”攻撃による一撃が、ドサイドンへと放たれた。

 ワタルのプテラの翼は刃のごとき鋭さであり、ありとあらゆるものを切り裂く。それは、ドサイドンの肉体を守る強固なプロテクターも例外ではなかった。ドサイドンの頑丈な肉体は切り裂かれ、HPは一撃で“ひんし”状態直前まで吹き飛んだ。

 

 その次に動いたのは、ギャラドスだった。

 ギャラドスは太古より非常に凶暴なポケモンとされており、ひとたび暴れれば街一つ吹き飛ぶのは当たり前のことである、とまで言われるほどの攻撃性を秘めていた。

 そのギャラドスの凶暴性と攻撃性は最大限まで解放され、思いのままに暴れ回った。

 ギャラドスの一撃は、山を揺らし、大地を粉々に砕いた──その一撃を受けたドサイドンは吹き飛び、“ひんし”状態となった。

 

「ぐ……」

 

 切り札であるドサイドンがやられたサカキは、思わずうめき声を漏らした。

 

 ──最後に、カイリューが口を大きく開いた。

 カイリューが何をしようとしているのかは、至って明確であった。待ち一つをも容易に吹き飛ばす威力の“はかいこうせん”を、サカキめがけて発射しようとしているのだ。

 サカキは、その破壊光線から逃れようとしたが、無駄なことであった。無慈悲にも、“はかいこうせん”は放たれ、サカキの体を吹き飛ばした。

 

 ──“はかいこうせん”によって吹き飛ばされたサカキは、岩壁にその体を叩き付けられていた。

 その全身は見ていられないほどに傷ついており、サカキはうつむいてぐったりとしていた。ワタルはそんなサカキを冷酷な目で見下ろしていた。

 

「フン、四天王にたてつこうとするからこうなるのだ。──最強のジムリーダー、そしてロケット団首領(ボス)といえども、この程度か」

 

「クク……」

 

 サカキは、ワタルの言葉を聞き、笑みを浮かべた。それから、ワタルを見上げてみせた。その表情は、筆舌に尽くしがたいほどに、凶悪なものだった。

 

「思い上がるなよ。小僧。このカントーは、このオレが支配するのだ」

 

「口だけは達者なようだ。そのような状態で何ができるというのだ? 貴様の切り札であろうポケモンは、我がドラゴンの前に消し飛んだぞ」

 

「ククク……ハハハハ!」

 

 サカキは、おかしくてたまらないと言わんばかりに笑った。

 

「フン、まさか切り札がアレだけだとでも?」

 

「──何!?」

 

 突如、オツキミやま全体が振動した。

 その揺れは非常に大きく、オツキミやまは今にもはち切れんばかりの悲鳴を挙げていた。これまでの戦い、そしてこの揺れによって、オツキミやまに生息する野生のポケモン達は、皆震え上がり、災害、あるいは天変地異、はたまた世界の終わりを錯覚するほどの恐怖に駆られた。

 

「ワタルよ、貴様がドラゴンを操るというのならば、このサカキは大地を操ろう。──我が専門は大地! 大地は遙か古代よりこの星に存在し、その上で生きる悉くは大地にとっては虫けらのようなものだ!」

 

「お、おおおおおオオオオオッ!?」

 

 ワタルは思わず悲鳴を挙げた。それも無理は無いだろう、これまでに経験したことの無いエネルギーがオツキミやまの内部から発され、これまでに経験したことの無い程に強力な攻撃が行われるのを察したのだから。

 その攻撃の発生源は、最初にサカキがワタルの攻撃から逃れるために、ドサイドンの“あなをほる”によってできあがった地下のトンネルに潜んでいたサカキの手持ち──ダグトリオ、サイホーンの二体によるものだった。

 

 サカキは地下を移動するときに、この二体を解き放ち、今の今までこの攻撃のために潜ませていたのだ。

 

「サカキ、貴様──!」

 

 ワタルはドラゴンポケモンに指示をし、サカキに攻撃を加えようとしていたが、それよりも先にサカキのポケモンによる攻撃が行われた。

 ──それはさながら、噴火のようだった。大地に蓄積された膨大なエネルギーが、ワタル、そしてワタルのドラゴンポケモン達めがけて放たれたのだ。

 

「──“だいちのちから”」

 

 サカキはその攻撃の技名を呟いた。

 その名の通り、大地が秘めたる力を放出するその攻撃は、ワタルのドラゴンポケモン達を一撃で“ひんし”状態にした。そして、ワタルもボロボロになり地面に倒れ伏した。

 それを見たサカキは、膝をつき、呟いた。

 

「切り札は最後まで取っておくものだ」

 

「……なるほどな」

 

 ──ワタルは起き上がった。しかし、満身創痍であり立つのもやっとといった具合であった。しかし、それはサカキも同じであった。

 しかし、ワタルは笑みを浮かべた。その笑みは、勝利の笑みであった。

 

「切り札は最後まで取っておくもの──なるほど、参考になったよ。──カイリュー」

 

「──何!?」

 

 ワタルの手持ちは皆、サカキの攻撃によって“ひんし”状態であった。──カイリューを除いて。

 カイリューのHPはもはや残り僅かであり、満足に動けなかった。しかし、カイリューはワタルの指示によって最後の一撃を放った。

 

 ──ワタルがカイリューに指示をしたその直後、カイリューは何者かに最後の一撃を放たれ、“ひんし”状態となり、倒れ伏した。

 ワタルが、カイリューが地面に倒れ伏したのを認識した瞬間──その腹を、槍にも錯覚するほどの巨大な針に貫かれていた。その針の主は、スピアーであった。

 

 このスピアーは、もちろんサカキのスピアーであり、サカキは地面に倒れる前に最後の一匹を放っていたのだった。

 

「……言っただろう? 切り札は最後まで取っておくものだと」

 

「グ……だが、無駄だ! カイリューの役目はすでに終えた。もはやこの攻撃を防ぐことは不可能だ!」

 

 ──ワタルがそう宣言した瞬間、宙から無数の光がオツキミやまに舞い降りた。

 その光──無数の隕石はオツキミやまに落ちるたびに、凄まじいほどの衝撃と轟音を持ち、その地形を変化させていった。

 

 サカキのスピアーもまた、無数に降り注ぐ隕石が発するエネルギー、衝撃はによってそのHPをあっという間に削られていった。

 そして、ドサイドンが開けた地面の中にいるダグトリオとサイドンもまた、隕石による衝撃によって“ひんし”状態となった。

 

「グ、あああアアアァッ!?」

 

 サカキもまた無事では済まず、その隕石によってさらなるダメージを受けた。

 

 ──ワタルの攻撃が終了すると、そこはさながら地獄絵図のごとき光景が広がっていた。オツキミやまには無数のクレーターができあがっており、衝撃によって崖崩れや地割れを引き起こし、その地形を大きく変化させていた。

 

 サカキは、地面に倒れ伏し──ただ、ワタルのみが立っていた。

 

 ワタルはスピアーによって傷ついた腹部を押さえ、血を吐きながらもサカキの元まで歩み寄り、乱暴にスーツを引きちぎった。ワタルの手のひらには、グリーンバッジが握られていた。

 目的の物を手にしたワタルは、その場を立ち去った。

 

 

 





だいちのちからはそんなに強力な技ではないって? ポケスぺ補正です。ラッタがサントアンヌ号を真っ二つにするし、はかいこうせんは街を吹き飛ばすし、まあ、似たようなモンです。
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