噛ませ転生者のかまさない日々   作:変わり身

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めが年目

――発端。そう呼べる程度の意味を持ったやり取りは、実に些細な物だった。

 

とある休日、とあるデパート。友人達と共に訪れたスターバックスで何気なく問われた一言が、少女の心に僅かな焦りを齎したのだ。

すなわち――――「あのいやらしマンとはどんな感じなの?」という下世話な疑問。

 

おそらく、言葉を発した友人には悪意や嫌味などこれっぽっちも無かったのだろう。しかし、それはこれまでの日々に満足していた少女に楔を打ち込むには十分な物だった。

そうして言われるままに「彼」との関係性を振り返った少女は、その変化の無さに何となく不安になり、ちょっとだけ勇気を出した方が良いのかな、なんてぼんやり思ってしまった訳で。

 

特に山も谷も無い日常の一幕ではあるのだが――――「彼ら」の間では、この程度の起伏でもちょっとした刺激になり得てしまったと。まぁ、導入としてはそんな感じである。

 

 

********************************

 

 

駅に近く、街の中心部にも便の良い海鳴市で一番の高級マンション。その高層フロアの一室に「彼」は居を構えていた。

 

一見すれば他の部屋と同じく清潔感のある部屋の外観なのだが、ドアを開けて一歩進めばそこは魔境。

壁一面に一般・成人向け問わず美少女ゲームのポスターが張り巡らされ、棚やタンスの上には所狭しとフィギュアが並んでいるという超ヲタク特化居住区である。

おそらく相当なこだわりがあるのだろう、その全ては「彼」の手により常に埃が被らないよう清掃され、新品と同じ輝きを放っていた。それに加え部屋自体が綺麗に掃除されているためもあり、至る所を埋め尽くしている物の種類の割には「特有の空気」は少なく感じられる事だろう。

 

――そんな美少女に囲まれた場所の中に、重ねて美少女ゲームをヘッドフォンを装着してプレイする「彼」が居た。

 

軽くワックスで整えられた銀髪に、左右色違いの切れ長の瞳。高い鼻と薄い唇もバランスよく配置され、均整のとれた体つきと合わせてまるで美術品のような美しさを漂わせている。

「何故だ! 何故ちびミシェルの乳吸い小窓が無いッ……!」やっている事で全てを台無しにしていたが、それでもまぁ、美し……うん、格好い……うん、うん。

 

ともあれ。

 

そうして楽しそうに自らの趣味に興じる「彼」の声を聞きつつ、その背後に設置されている机に座る少女はいつものように絵を描いていた。

小学生の頃にこの関係が始まって以来、彼の声やアニメの音声を聞きつつイラストを描く事が彼女の日課となっているのである。

 

春も、夏も、秋も、冬も。一年間通してほぼ入り浸り。コーヒーメーカー(愛称めーこちゃん、単純だね)から漂う珈琲の香りや畳の感触も心地よく、受験勉強を始めとした切迫した時期にも良く訪れていた程だ。

今や彼女にとって、彼の部屋は常に穏やかな気持ちで過ごせるベストプレイスと化していた――のだ、が。

 

 

「…………」

 

 

そわそわと、じりじりと。今この時に関しては、何時もの穏やかな空気は鳴りを潜めていた。

 

タブレットの上を走るペンは精彩を欠き、履いているニーハイソックスの端をクイクイと弄り。落ち着き無く何かを気にするような仕草を浮かべている。

そうして見つめているのは、視線の先で頬杖を付いている「彼」の背中だ。こちらに意識を向けず、彼は自分が見つめられている事には気づいていないようだった。

 

 

「……スクイーズもなぁ、唯子先生以外にももーちょい増えねぇかなぁ……」

 

 

良く分からないが、多分エッチな事なのだろう。彼は物欲しげにそう呟きつつ、片手でキーボードを打ち鳴らす。

机に深くもたれ掛かり、限界まで背筋を歪ませ姿勢を崩し。そのだらけた姿たるや整った容姿が霞む程にだらしがなく、常ながら格好良さを無駄遣いしているなぁと思わざるを得ない。

もっとちゃんとした――容姿に合った紳士的な振る舞いを心がければ、彼が何時も提言しているハーレムなど簡単に出来てしまうだろうに。まぁ彼の性癖的に望む形にはならないのだろうけれど。

 

よく分からないもったいなさを感じた彼女は、もしそうなった場合を妄想し――「…………」結構凹んだ。自爆した。ただでさえ低かった集中力が更に散らされ、気力が大きく低下する。思いの外ダメージが大きかった事に自分でもびっくりだ。

 

……ああ、何か、もう。今日はもうイラストはいいかなぁ。手に持っていたペンをスタンドに置き戻し、彼と同じように机に伸び、くってり。ひんやりとした天板の感触が少女のやわらかな頬を押し返し、少しづつ体温を奪っていく。

 

その心地よい感覚に心のささくれが癒やされていく中で――ふと、目の前に迫った天板の一部にインクの欠片がこびりついている事に気がついた。

おそらく、イラストを書く際に用いた油性ペンが紙を透過してしまったのだろう。よくよく見れば、赤、青、黄色と様々な色が薄く何十にも重ねられ、単色では言い表せない複雑な色合いとなっている。これまでに少女が積み重ねてきた時間、その痕跡だ。

 

……後でこっそり掃除しておこう。人の家具を汚してしまっていた事に申し訳ない気持ちを抱きつつ、インクをいじいじ。指先に付いたそれを擦り合わせる。

 

 

「…………」

 

 

肌の上に引き伸ばされ、指紋の溝に入り込んでいくインクを見ている内に、過去の記憶が脳裏へと流れ始めた。

それは小さな事から大きな事まで、無作為に。次々と少女の心を過ぎ去って行く。

 

……思えば、自分がイラストを描くようになったきっかけは「彼」だった気がする。彼に貸して貰った漫画に触発され、自分もラクガキを描いてみた事が発端だったのだ。

あれからおおよそ十年以上。よくもまぁこんなに長く続いているものだ――――何となくおかしくなり、ほんの少しだけ吹き出した。そうして喉元に詰まっていた息が飛び出して、部屋を漂う珈琲の香りに紛れて消えていく。

 

――少女は自分でも気付かぬままに穏やかな笑みを浮かべ。流れる大量の過去の記憶に棹ささず、ゆったりと浸かる事にした。

 

 

○ × △

 

 

――最初に「彼」と会った時、その第一印象は「よく分からない変な子」であった気がする。

 

 

小学校に入学した初日。何もかもが初めてだらけの中で、話をする教師の隙を突き漫画を読み込む隣席の美少年。一見すれば少女漫画にありがちな「不良系幼なじみ属性持ちヒーロー」との出会いのシーンなのだが――相手がとても悪かった。

彼の動きは幼児に似つかわしくない程洗練されており、教師が後ろを向いている間に漫画本を取り出すのはまだ可愛い方。彼は教師が前を向いている最中にも常にその死角に漫画本を置き続け、決して読書を途切れさせないという頭に邪が付く種類の神業を行っていたのである。

 

……当然ながら、当時はまだ比較的健常な感覚を持っていた彼女にとってもその動きはとても奇妙に映っていた。正直に言えば、あまり関わりたくないと思う程に。

 

しかし元来の真面目な性格が災いしたのか、ホームルームでの自己紹介の順番が回って来た場面においても読書を止めようとしない彼に(やめときゃよかったのに)おせっかい心が湧いてしまったのだ。

ぐねぐねと身を捩り常軌を逸した動きを見せる彼の姿に気後れしつつも、少女はその腕をつんつんと突付き――後から思えば、その瞬間から彼との長い付き合いを決定づけられたのだろう。直後に行われた長ったらしい名前に受けたインパクトの事も合わせ、妙にはっきりと記憶の底に刻まれていた。

 

……そういえば、彼の性格と行動はあの頃から全く変わっていない気がする。

それは彼が子供の頃から成長していないという事なのか、それとも当時から成長しきっていたと言う事なのか。少女は今でも時々考えるが、答えは未だ出ていない。

 

ともあれそんなこんなで彼と言葉を交わすようになった彼女だったが、その突飛な行動には驚かされてばかりだった。

毎日窓から登下校を行ったり、屋上から校庭まで飛び降りたり。卓越した身体能力から来る常識外の行動には慣れる事は無く、最初に見た時には死んでしまったと思い悲鳴を上げてしまった程だ。

 

当然、それらの行為には他のクラスメイトや教師から注意が届けられたのだが――何を言われても「ハハハ、チート持ってねぇからって僻むなよ(笑)」とよく意味のわからない事を嘯き、マトモに取り合う事は無く。

結果として、その容姿と名前、そしてディープ且つオープンすぎるオタク趣味により、元々引かれ気味だった彼の周囲から人が消えて行くのにあまり時間はかからなかった。

 

少女だけは隣席という事もあり何だかんだと交流を続けていたものの、メガネ、もしくはモブ娘とこちらを決して名前で呼んでくれない彼の態度もあり、そのやり取りは当たり障りの無い浅いものに終始していた。

挨拶をすれば返すし、問いかけられたら答える。しかしそれ以上には踏み込まない。そんな薄い関係が続いていくかとも思われた二者間であったが――――ある日、唐突に投げ込まれた小石により変化を見せる事となる。

 

 

「え、エッチな事はやめなさい!」

 

 

――照れと勇気を綯い交ぜにしつつ現れたそれは、後の少女にとってかけがえの無い親友となる存在。アリサ・バニングスを始めとした、「彼」が原作メンバーと呼ぶクラスメイトの女子三人組と、当時まだ名前もよく覚えていなかった男の子の姿だ。

彼女達は何となーく世間話をしていた彼と少女の間に突然割って入り、彼に対して文句を付け始めたのである。どうやら三人は彼に少女がセクハラされていると思っていたらしく、正義の味方のような使命感が放たれていた。

 

……が、しかし。彼と少女はただ世間話をしていただけである訳で。確かに脇腹を突かれたりはしたが、それはただの軽いツッコミ的なアレである訳で。何というか、少女的にとても困る訳で。

 

何やらアリサ達には彼がとてもいやらしい人間に見えているらしく、キャンキャンと噛み付く彼女達とそれを無視する彼との間を右往左往。最終的には男の子の一声で誤解は解けたのだが、これまで喧嘩らしい喧嘩をした事が無かった少女は大きく疲弊した。

………そうして机に突っ伏しぐったりしていた所に、当事者たる彼が漫画本を少女の頭にそっと置き。その失礼且つ空気を読まない行動に彼女は思わずぷんすか怒り――それを契機として、ほんの少しだけ彼と親しくなったのだ。

 

加えてその時に貸して貰った漫画本の存在も重要な鍵となった。それまで絵本と教科書くらいしか読んだ事の無かった少女にとって、少女漫画は新鮮に過ぎたのである。

何が新しいって、コマ割りという手法が新しかった。複雑なお話があるのが新しかった。可愛い女の子や格好いい男の子が沢山描かれているのが新しかった。そりゃもう夢中になって読み耽るという物で。

 

それらに感化された少女が、自分も絵を描いてみたいと思い立ち、鉛筆を握るようになるまで時間はかからなかった。両親に買ってもらった自由帳に漫画を参考にしたイラストを描くようになったのだ。

幸か不幸か絵の才能はあったようでスラスラと筆は進み。絵を描くきっかけをくれた彼に自分のイラストを見て貰いたいと思い、タイミングを見計らい話を切り出して――――この時初めて友人と呼べるだけの関係に至った。ついでに初めて硬貨以外の貨幣を手にして狼狽える事となったのだが、まぁそれはおいておく。

 

――本当に、様々な意味でのきっかけだったのだろう。

 

イラストを褒めてくれた事もあるが、何より自分に誇れる物を与えてくれた事が嬉しく、彼の喜ぶ顔が見たくて絵を見せ続けている内に気づけばカルガモのように後を付いて回るようになっていた。

彼に突っかかっていたアリサ達とも一年同じクラスで居る内にやがて友達となり、男の子ともそれなりに話すようにもなった。男の子以外は未だ彼の事を誤解したままだったが、その内にいつもの事と割り切れるようになり。

 

口論が絶えず、騒がしく。学校から遠足先まで彼を大元として色々な人達から怒られてしまうようにもなったけれど、少女はそれも楽しく感じて離れる事は終ぞ無く――――後々まで続く「何時もの面子」の土台は、この時から作られていたのである。

 

 

□ ◇

 

 

そんなこんなで時は過ぎ。彼とアリサ達の間に腐れかけた縁がうっすらと見え始めて暫く経ったある日、唐突に騒動が勃発した。

あれほど仲の良かったアリサ達のグループが、大きな仲違いを起こしていたのである。

 

これには少女もびっくりだ。極小さな言い合いはあれど何時もなら一日もあればどちらからともなく笑い合っていたのに、アリサはなのはと男の子に対して「彼」に対するかのような苛烈さを見せているではないか。

少しイラストを描くために集中していたスキに一体何があったというのだろう。気にはなるが、簡単に声をかけられる雰囲気でもない。

 

そうしてハラハラしながらも手を出し倦ねていること数日。教室のピリピリとした空気の中でアリサ達の姿を気まずく眺めていると、いつの間にやら近寄っていた彼が少女の耳元で何某かを呟いてきた。

 

どうやらアリサ達を仲直りさせる方法を聞かせてくれていたようだったが…………その時に何を言われたのか、少女は全く覚えていなかった。

何やら耳の中に彼の声が響いたかと思えば、ゾクゾクと背筋と頭の芯が震え訳が分からなくなり、気づけばアリサ達に向かって自らの描いたイラストを見せながら説得をしていたのだ。

 

……最初こそ唆されての行動だったが、発した言葉が本心だった事には変わりなし。結果としてはこれ以上ない程綺麗に仲直り出来たので、彼に感謝するべきなのだろう。

それ以降イヤホンを付けると背筋がゾワゾワするようになってしまったので、少女的には素直に感謝できるかというと微妙な所だが。

 

おそらくはここから歩み寄っていったのだ、と思う。今回の件で多少なりとも彼を認めてくれたのか、それからアリサ達が自分から彼に突っかかっていく事が少なくなったのだ。

流石に頭をかいぐり回されたりした時には駆け寄って来たものの、二者間の間を少女が取りなす回数が減ったのは事実であり。少女もそれを嬉しく思っていた。

 

……まぁ、「いやらしい視線に晒されたくない」との理由で温泉や海への旅行へ誘わなかった所を見る限り、好感度の上がり幅は微々たるものだったのだろうが。

余りに申し訳なく思い、海へ行った際には泣けなしのお小遣いでイルカのキーホルダーをこっそり買って帰る事にした。喜んでくれるか不安だったが、筆箱に付ける程には気に入ってくれたようで何よりである。

 

 

その後は暫く平穏な日々が続いていた。

バトル漫画の面白さに目覚めたり、彼や男の子とアニメの話で盛り上がるようになったりと楽しく毎日を過ごしていたのだが――――ある日、彼が体調を崩して学校を休む事になった。

 

……お馬鹿は風邪をひかない筈なのに……!? と思ったのは少女ではなくアリサだった訳だが、驚いたのは彼女も同じだった。

何時も自由気ままに飛び回り、こと病気などと言うものとは無縁そうに思えていた彼が体調を崩した姿など考えられなかったのだ。いや、遠回しに馬鹿と言っている訳では無く。真に真に。

 

ともかくとして、(無駄に)明るく(本当に意味もなく)元気な彼が居ない教室は味気ないものだった。あるべきものが隣に無い違和感というべきか。彼と仲の良い男の子は勿論、アリサやなのは、すずかも心なしか退屈そうである。

少し寂しく思いながらも、その時は珍しい事があるものだなぁと軽く済ませていた少女も二日目となると不安が鎌首をもたげ、三日目には心配になり。そうして四日目の朝に欠席の報を聞いた瞬間、お見舞いに行こうと決意した。

 

よく家に遊びに行っているという男の子から住所を聞き、溜まっていたプリントを持参し放課後に彼の住んでいるマンションへと向かったのだが――それはもう、豪華なものだった。

見上げる程に高い階層に、防犯設備のしっかりした広いエントランス。何というか、一般市民が足を踏み入れていい場所ではないような、そんな気配がひしひしと。

 

お嬢様であるアリサやすずかの家によくお邪魔していた為軽く萎縮しただけで済んだものの、やはり場違い感は否めず。

丁度出かける所だったらしき住人のおばさんから不躾な視線を受け、手早く様子を見て退散しようと強く思ったのだが――彼に招かれ部屋に入った瞬間、そんな思いは吹き飛ぶ事になる。

 

――玄関を開けてすぐ。少女の目に飛び込んできたのは美少女の群れ。フィギュアにポスター、タペストリーと所狭しに並んだ二次元の女の子達だった。

 

……もし、これが普通の女の子であったのなら、部屋の光景に気持ちの悪いものを感じすぐに逃げ出そうとしていただろう。事実、後の時間軸にアリサ達が招かれた際は一目散に逃亡しようとしていたのだから。

しかし、この眼鏡の少女は反対に目を輝かせてしまった。常に彼の傍に居り、彼の戯言を聞き、彼の勧める漫画を読んでいた彼女は時既に遅く、少しばかりよろしくないものに汚染されきっていたのだ。かわいそうに。

 

ともあれ、存外に元気そうだった彼の様子を見て一安心。姿の見えない両親の事を聞いて少々気まずくもなったが、その空気もすぐに流され。学校の事を話したり色々とグッズの事を聞いたりアニメを見たり、楽しいひと時を過ごす事となった。

そうしてお互いのんびりしていると、突然立ち上がった彼が少女の前にダンボールを置く。中を覗いてみれば様々な画材道具が詰まっており、見舞いに来てくれた礼として少女に贈呈してくれるとの事らしい。

 

最初こそ悪いと思い遠慮していた少女であったが、好奇心は隠せなかったようだ。再び耳元で唆され訳が分からなくなり、気づいた時には幾つかの画材道具が鞄の中に入っていた。相変わらず恐ろしい唆しである、ビリ付く背筋に体を震わせ少女は戦慄。

他にも密かに憧れていたペイントソフトやら何やらをこの場所においてのみ貸し出してくれるとの事で――――そう、この時から彼の部屋に通うようになったのだ。

 

……え、アイツの家に? それ危なくない? 大丈夫?

 

その話をした時最初アリサ達からはそのような心配の言葉を頂いたが、すぐに彼の性癖を思い出したのかそれ以上の言葉は出なかった。果たしてこれは信頼と呼べるのか疑問ではあるものの、それなりに理解は得ていたようだ。ダメな方向に。

当時の少女はその心配の意味を正しく捉えられず、度々受けるダイナミックタクシーの誘いの事だと思っていたのだが…………これはアリサがマセていたのか、それとも少女が遅れていたのか。さて。

 

 

何はともあれ、アリサ達と遊ぶ他にも彼の部屋に行くという選択肢が増え。自作ゲームの絵を描いてみたり、一緒にゲームやアニメを見たりと過ごす毎日が続き。季節は冬へと巡る。

そうして新たにフェイトという友人も増え、すぐ傍まで迫ったクリスマスに備えアリサとすずかと共にパーティの相談をしていたその日――――彼女達は、「魔法」という常識外の世界に遭遇する事となった。

 

……と、言っても少女自身が何を成した訳でもない。ただ訳の分からぬままに巻き込まれ、その中心に居た友人から命を守られただけの話。言って見れば質の悪い事故のようなものだ。

 

しかし、それまで穏やかな日常を送っていた彼女にとってその出来事が「それだけの話」程度で済むはずも無い。魔法というものの存在を知った事は間違いなく彼女の裡での一大事であり――――同時に、価値観の転換期でもあったのだ。

その後に一時的に保護された次元戦艦アースラから見た景色や、リンディ達から受けた説明も合わせ、当時の記憶はそれから何年も経った現在でさえも色褪せてはいない。一言一句、一場面。全てはっきりと覚えている。

 

 

――――当然、命の危機に晒された時に誰を想い、誰に助けを求めて叫んだのかも、だ。

 

 

……この時の事を思い出す度、少女は頭を抱えてしゃがみ込む。

 

当時の恐怖が蘇って、では無く。その後自らの意識の外で進行していた事件が一段落し、八神はやてを始めとした新しい友人達を加えた後。長きに渡りその件をネタに色々言われ続ける事となったからだ。

流石色々と隠さない人達は違うというか、既に色々と狙いを付けている人達は凄いというか。まぁ、言ってみればやっぱりマセていたと。早めの思春期だったと。それに尽きた。

 

……ただ、その言われ続けた「色々」の多くはからかいでは無く、ド真面目に「やめとけ」と諌められていたというのが何ともはや。本当にダメな方に理解されている以下略。

 

 

● 

 

 

例え非日常に関わったとしても、少女が魔法を使えない以上は過ごす日々に変化は無い。

否、少女の内面には幾つか変化はあったものの、それは劇的に日常を変える程のものではなかったのだ。

 

保険の授業を受け真っ赤になったり、林間学校で皆と共に楽しく過ごしたり、いつの間にか作られていた新作自作ゲームの絵を描いてみたり。魔法のまの字も感じられない、普通(かぁ?)の小学生としての毎日。

別段それが不満だった訳では無いのだが、やはり少女も女の子。なのはや男の子がファンタジックな話をしているのを聞く度に、まるで漫画のような非日常に浸かれる事を羨ましいと思った時期もあった。

 

そうして焦がれるままに自分を主人公とした魔法少女モノの漫画を描いてみたりもしたのだが――まぁ、そんなものは黒歴史にしかならん訳で。

やはり自分は彼の部屋でまったりしているのが性に合っていると思い直し、原稿はシュレッダーにかけて焼き芋の燃料にして彼と並んでもぐもぐ食す。結構美味しかったので、まぁ無駄ではなかったんじゃないかな。

 

……そういえば、常軌を逸した身体能力を持つ彼であれば、なのは達の世界に加わる事が出来たのではなかろうか。

ひょっとしたら少女が知らないだけで、何らかの活躍を裏でしていたのではないか……? 密かにそんな疑問を持っているのだが、未だ尋ねた事は無い。何というか、聞かぬが花のような気がするとは少女談。

 

 

ともかくとして、この時期だったろうか。同じクラスになったはやてが、何やら悩んだ様子で彼にチラチラと視線を送る仕草をしているのが目立ち始めた。

 

…………よもや、まさか、ひょっとして?

ソワソワしつつどうしたのかと聞いてみれば、何やら謝りたい事があるのだが、その代償として何かいやらしい事を強要されるのではないかと不安なのだとか。何だそんな事かと誰かが溜息を付いた。

 

本人としてはかなり大きな心配事だったらしく、見ていて可哀想になるくらいの慌てようだったのだが――耳を傾けていたその全員からは苦笑いしか出てこない。はやては彼と接していた時間が学校内で一番短かったため、その性癖を未だ理解しきれていなかったのだ。

 

結果としては当然取り越し苦労に終わり、はやては周囲から生暖かい視線を向けられる事となった。まぁ仕方ないといえば仕方ないのだが、その勘違いは余りにも……という事で、彼女はしばらくその事で弄られるようになったそうな。

何時もは弄られる立場であった少女やなのはもそれに便乗し、普段からかわれている鬱憤を晴らし。仲間内では悪乗りが過ぎたはやてを諌めるためのカードの一枚として、今もなお語り継がれているという話である。

 

 

 

 

五年生。周囲に思春期へと突入した少年少女が増え始め、男子と女子が疎遠になっていく時期。

クラス内にも男女間を断絶する空気が漂い始めていたが、少女達の中ではそのような様子は全く伺う事が出来なかった。

 

……正確には少女だけは少しその空気に当てられかけていたものの、まっっったくそれを気にしようとしなかった他の面子に流され何時もの雰囲気に戻されていたのである。

そもそも既に近場でハーレム関係が形成されているというのに、今更普通振ろうとも手遅れに過ぎるというもの。少女達の関係は近づきはすれど離れる事は無かったという訳だ。

 

それどころか、新たにユーノという友人がその輪の中に加わる事となった。

今までは魔法関係の秘匿や「彼」がユーノと知りあいでないという前提があった為に、皆が皆妙な気を遣いすれ違っていたのだが――当の彼の家で少女とユーノが居合わせた事により全員共通の知人であった事が発覚。

特に「彼」とユーノの仲は思いの外良好であったらしく、これまでも少なくない頻度でゲーム合宿を開いていた事を聞いた時は相当に驚いた。それ以上にユーノとの仲を邪推された事に慌てたのだが。

 

ともあれ「面倒臭かった」という身も蓋もない理由から情報伝達を怠っていたとある下手人がアリサに蹴り飛ばされ、それ以降ちょくちょくと集まって遊ぶようになった。

流石に学校行事は別としても、時々のお茶会やクリスマス会などには皆で集まっていたものだ。

 

――そう、この時期に至りようやくアリサ達と「彼」の関係は完全に沈静化する事となる。彼の立ち位置が、アリサ達の中で「居て当たり前の奴」にまで昇華を見せたのだ。

 

彼らの互いに対する心情は大きな変化を見せず、片や90%の無関心、片や90%の嫌悪と到底仲良しとはいえない惨状であった。

しかし、何のフラグも立たないまま、嫌悪の感情を引きずっている内に、気づけばお互い残りの10%程度は共通して親愛の情を抱けるようになっていたのである。

 

特に何の和解も無く、いつの間にかなぁなぁになっていた彼らの関係は正しく腐れ縁と表現するに相応しかったのだが――それでも、少女にとってはとても嬉しい事だった。

学校でも本気の喧嘩をする事はなくなり、彼が自分達の側に居る事に違和感を抱かなくなって。なのはや男の子達六人が前を歩き、時たまアリサから文句が飛ぶ。

 

そうして、それに豊富な語彙でけなし返す彼が、少女と一緒に後ろを歩く。それはとても穏やかな構図で、少女はその何気ない時間が大好きだった。

 

 

――――そして、そんな空気の中で迎えた臨海学校は彼女にとって、とても大切な思い出となっている。

 

 

思い切って彼をホッカイロにしてみたり、友人達と一緒にお鍋を作ったり。女子グループで訪れた水族館も前に行った時より楽しく感じていた。

そして何より心に残ったのは――みんなと一緒に夜の海を眺めた事だ。

 

月が照らす寒空の下に広がる、色取り取りの光が揺蕩う穏やかな波。

今まで見たどんな景色よりも綺麗だと思えたそれを、8人で――そして、何時もの定位置で見つめ続けた。

 

……その際、ほんの少し。それこそ袖が触れ合う程度に彼女は重心を傾けた。それは小さく些細な行動だったが、少女にとっては大きな勇気であったのだ。

 

何も喋らず、互いを見つめず、ただ静かな時が過ぎ行くのみ。しかしその時間はかつて魔法に巻き込まれた時の事と同じかそれ以上に色褪せ無く、そして全く別の意味を持って少女の心へと収められていた。

おそらくは、これからどれだけの時間が過ぎようとも忘れる事は無い。何となく、少女にはその確信があった。

 

――その理由は、言葉にするだけ野暮というものである。

 

 

***************************************

 

 

「――んー。今日はこれにすっか、ガンプラビルダーズ。来週ビギニングさん出るっぽいし、もっかい観直しとこうぜ」

 

「!」

 

 

――突然そう声をかけられ、ふと我に返る。

 

机につけていた頭を上げれば、いつの間にかゲームを止めていた彼が嬉々としてテレビを操作している所だった。

大量のDVDラックからお目当てのパッケージを取り出し、ディスクをプレイヤーにセットして。最後に画面の向きを指パッチンで整え準備を済ませた後、抱き枕を抱えてテレビを見やすい位置に陣取った。

今でも幼心を忘れない彼は「アニメを見る時は部屋を明るくしてテレビから離れてみてね!」を律儀に守り続けているらしく、最低でも三メートルは離れるようにしているそうだ。

 

少女も今や彼女専用となった抱き枕を机の下から取り出し、彼の横へと移動する。絵を描いていない時は、こうして二人並んでアニメを見る事が習慣となっていたから。

 

 

「…………、」

 

 

……その際、今まで思い出していた記憶を参考にし、少々勇気を持って抱き枕に寄りかかる振りをして少しだけ重心を傾ける。

あの頃より少しだけ伸びた髪がさらりと揺れ、少女の纏う柑橘系のような薄い香りが彼の方角へとふわりと漂う…………のだが、何時も彼の愛用する女子高生の香り香水が存在感を主張し、香りを紛れさせてしまった。これだから全くもう。

 

しかし少女も少女で、何だか良いにおいがするなぁと呑気に小ぶりな鼻をすんすん。同時に彼の体温を感じ、ほっこり穏やかな気分。

当初感じていた不安など今や見る影も無い、彼も彼で問題は大有りだが少女も結構アレであった。本当にこれだから全くもう。

 

……そうして、彼と二人。体温を感じられる距離でアニメを見る少女は、前にも同じ様な状況があった事に思い至り。

画面の中を華麗に舞うビギニングガンダムの勇姿を眺めつつ、彼女は再び過去の記憶に没入していった――――。

 

 

 

 

 

修学旅行。卒業を眼前に控えた、小学校最後の学校行事である。

友人達と一緒に作る思い出の時間。多くの生徒が楽しみにしていたように、少女もまたそれを楽しみにしていた。旅行の前日には中々寝付けず、寝過ごしそうになった程に。

 

グループ分けは勿論何時もの八人編成。その中に自分が含まれている事に誰も拒否を示さず、今更ながらに不思議そうな顔をした彼が居た。

どうやら、まだアリサ達の内面に起きていた変化に気付いていなかったらしい。グチグチ文句だけは忘れないアリサ達と疑問符を飛ばしている彼の姿を見ながら、少女はニコニコと笑っていたのだった。

 

大人の手を借りずに切符を買うという事に多少緊張し、電車を乗り継ぎ辿り着いた旅行先。

長い事電車に乗っていた事による疲労、そして観光名所が予想以上に広かった為に楽しさと同時にちょっぴり疲れを見せていた少女だったのだが――ふと気づけば、彼に肩車をされていた。

 

……何故? いや、彼の突飛な行動に慣れていた筈の彼女であったのだが、流石に何の予備動作も無しによく分からない力で射出されれば驚きもする。加えて太ももの間に彼の頭があるとなれば尚更だ。

 

確かに以前の遠足で同じように肩車された事もあったが、当時と同じように扱われても困るしかない。何せこちとらそれなりに成長し、色々気になる部分が出てくるお年頃なのだ。

結局は恥ずかしいやら嬉しいやらで混乱し、「成長したなぁ」とトドメを刺されて撃沈。一段階下がっておんぶに落ち着く事となった。「重くなった」と言われなかっただけ良かったのだろうが、羞恥心的には多分同レベルだっただろう。

 

……その日の夜、はやてを始めとしたクラスメイトの女子達にからかわれたのは少女的に顔を覆ってしまう類の記憶である。

 

 

その記憶を振り払うように、次の日の自由行動はとても楽しい物となった。

テンションの上がったアリサを先頭にして街中や観光名所を練り歩き、様々な場所に訪れて。風情のある景色は見ているだけで楽しく、時折見惚れ過ぎて置いて行かれそうになりつつも皆揃って見て回ったのだ。

 

途中幾つかトラブル(彼の路上ストリップ未遂&男の子による光速腹パン)はあったものの――それはもう、満たされた時間だった。

 

笑い合い、騒ぎ合い。その全てが良き思い出となり。楽しい時間はすぐ過ぎるとはよく言うけれど、正にその通り。我に返れば長い時間あった自由時間も残り僅かになっていて、集合場所に向かわなければならない時刻になっていた。

皆も相当に楽しかったらしくはしゃぎ過ぎたようで、彼や男の子の二人を除いた全員に疲労が蓄積し、少女に至っては彼に縋り付いて半ば眠っていた有り様。この時彼の背に涎が染みこんでしまったのだが、幸か不幸か誰も気づかなかったそうな。

 

 

そうして夕食と入浴を終え、夜が更けるのに反して少女の目が冴え始めた頃。突然はやてが、男子部屋に遊びに行く事を提案してきたではないか。何でも「これをやらんと何が修学旅行や!」との事らしい。

……実ははやてよりも先に「やらないのかなー」とか何とか思ってた汚れた少女が居た気がしたが、気のせいだろう。

 

それはさておき、如何にベタではあろうとも当然旅のしおりでは禁じられている行為である。教師に見つかれば説教を受けるのは確実だ。

しかし、旅行でタガの外れたクラスメイトは皆乗り気。本来はブレーキ役であるアリサやすずか達も、想い人である男の子が絡んでいる為悪魔(仔狸)に魂を売り渡し。あれよあれよという間に教師の目を盗む無駄に緻密な作戦が立てられ、行動が開始されてしまった。

 

唯一「男子の部屋に行く」という行動に慣れていた少女となのはだけは流されなかったのだが、自分だけ残るのも寂しかったので何となく付いていく事に。

ドキドキと、そわそわと。そんな擬音を飛ばす集団を後ろで見ながら、彼女はとてちてと追従し――――そのままホテルのロビーに差し掛かった時、彼の姿を見つけこっそりと抜けだしたのだ。

 

その後の展開を考えるとはやて達を見捨てたに等しい行為だった訳だが、その時の彼女には全くそんな考えは無かった。何故ならば、ロビーにあるテレビにはアニメが映っていたからだ。

彼、そしてアニメとくれば、その隣で自分が鑑賞しない訳にはいけない――ごく自然にそんな事を思い、少女は流れる動作で彼の隣に腰掛ける。

 

彼は少女を見る事は無かったが、気配で誰か分かったようだった。彼女もその後は彼を見る事は無く、雑談もそこそこに二人してテレビを見続けた。

昼とは別の、穏やかな時間。海鳴から離れた土地であるにも関わらず、まるでいつもの部屋に居るかのような錯覚を受けたのは決して気のせいではないのだろう。

 

「スキバラはガレッジのが一番面白かったよなぁ」

 

少女的にはココリコが一押しである。後に一時間番組に昇華されることを考えると、見る目はあったのではなかろうか。

ともあれそんなこんなでひと通りの番組を見終わり、いい時間になった後。何やら疲れと照れの混じった様子でロビーまで戻ってきた女子達にくっついて、少女は事も無げに部屋に帰っていった。完全犯罪の完成である。

 

……すると遠くの方から教師の怒鳴り声とはやての悲鳴が轟いてきた、どうやら一人だけ逃げ遅れたらしい。素知らぬふりして布団の上に座った少女は、ひっそりと冥福を祈るのであった。

 

そして迎えた次の朝、彼らは帰宅の途についた。道中何故か彼が騒いでいたが、それもそれで「らしい」のだろう。彼と男の子が繰り広げる喧嘩をオチとして、少女達の修学旅行は終わりを告げたのだった。

 

――旅行途中に彼らが撮った写真は、卒業式の写真と合わせて今でもフォトスタンドに入れられて飾られている。無論、少女だけではなく全員の部屋に。

 

 

 

 

卒業式も終え、少女達が中学生になっても皆との交流は続いていた。

アリサ達同じ女子中学校に進学した者達は勿論として、男子中学校に別れた彼や男の子とも友好は途切れなかったのだ。

 

まぁそれも当たり前である。例え学校が違えたとしても、放課後に彼の部屋に行く習慣まで変える必要は無いのだから。

加えて小学校の卒業式の際には少女の両親にも特に悪感情は抱かれなかったようで、交流を阻む存在は殆ど無い訳で。結局はほんの少し会う頻度が減るだけに収まった。

 

……学校で隣を見ても見慣れた存在が居ないというのは中々に味気ない物があったが、おそらく彼はいつもの通り過ごしているだろう。それを考えると少し寂しい気持ちになる少女である。

 

 

春が過ぎ、夏が来て。新しい学校での生活にも慣れ、新しい友人も出来それなりに中学生を満喫し始めた頃。少女はアリサ達から海へのお誘いを頂いた。

以前までとは違い今回は彼も参加を表明したので、旅行当日を楽しみにしていた事をよく覚えている。

 

海といえば水着。しかも中学生に上がり大人へと近づいた事でアリサ達は妙に張り切り、例の男の子を悩殺するのだ何だと気合を入れて水着を新調していたのだが――少女としては特に盛り上がる事も無く、前年に着用していたものを使う事にした。

確かに新しい水着に興味が無い訳でも無いし、可愛いと思うものも幾つかあった。しかしどうせ何を着ても変わらないのだから、今のままでも十分だろうと判断したのだ。

 

そうして水着売り場で一人呑気に構えていた少女であったが、そんなノリの悪い行為を許してくれない狸が一人。八神はやてである。

彼女は思春期が死にかけている少女を無理やり更衣室へと引きずり込み――割愛。

結果として彼女は大事なもののようだった気がする何かを失い、そして露出多めの水着を着る事となった。

 

加えて比較的大人しめのなのはやすずかも流されるまま大胆なものを買う羽目になり、イマイチ羞恥心の感じられないフェイトや引っ込みのつかなくなったアリサ、そしてノリノリのはやてもそれに合わせて夏季における少年誌的イベントを起こす準備は完成。

 

それぞれ期待感や羞恥心やその他色々乙女を抱きつつ海へと望んだ――――のだ、が。それらは「彼」の着用した常軌を逸する変態水着により全て纏めて吹き飛ぶ事となった。

 

――何せ布、である。二枚、である。クロス、である。尻、である。

 

例えどのような大胆な水着を着ようとも、それの前では印象は薄いものとならざるを得ず。がっくりと砂浜に膝をつくはやての姿が目撃されたそうな。

唯一フェイトだけは何やら興味深そうに観察していたのだが、一体何を考えていたのだろう。男の子に吹き飛ばされ砂浜に犬神家している彼をチラチラ伺いながら、ひっそり友人の事を心配する少女であった。

 

 

そうして彼の家に畳が敷かれ増々居心地が良くなったり、妙に張り切って始めたゲーム制作に巻き込まれたり時は経ち。

そんなこんないつも通り過ごしている内に冬が訪れ、ラーメン屋に一緒に行った事もある。

 

……まぁ話としてはそれだけなのだが、色々と初めての経験だったので何となく少女の記憶に残っている。いや、だって、ほら。夜だったし、暗かったし。

後日アリサ達と遊びに出かけ、初めて皆でデパートのフードコーナーに訪れた際。この時の経験を活かし淀みなくラーメンを頼めたのが密かな自慢である。

 

 

 

 

彼がちまちまと作っていた自作格闘ゲームが完成したのは、中学二年生になって少し経った頃だった。

それこそ年単位で少しずつ制作していたのだが、男の子、少女、ユーノも加えた四人で作ったその作品はとても良い出来で苦労した分完成の感動も一入という物。

 

せっかくなので完成祝いに皆で遊んでいたのであるが…………気づけば、何故か彼ら男子勢の顔が曇っていた。少女の脳裏に嫌な予感が過ぎる。

彼ら曰く、何でも格闘ゲームなのに声が無いのが寂しいらしく、そのせいで一味足りない感じになっているらしい。

 

――そうして話の流れで自分達で声を入れる事になってしまったのだが、少女にとってこの時の事はとても恥ずかしい記憶として残っている。

 

何せ少女は今まで「演じる」というものに縁が無かったのだ。学芸会でも美術の裏方に徹していたのに、突然そんな事を言われてもハードル高すぎである。

しかも自分の描いたキャラクターに声を当てる等、大昔に描いた自分を主人公にした魔法少女漫画を彷彿とさせ、恥ずかしさのあまり死にそうになった程だ。

 

まぁ結局は演じるキャラを引っ込み思案な性格設定のキャラにしてもらい、やられ声の部分は予告なしに脇腹を突いて貰ったり小手先を弄して臨場感を出し何とかなったのだが、終わった頃には畳に突っ伏してすんすんと泣いていた。

後に来たなのは達が結構ノリノリで声を当てているのを見て、よくあんな声が出るなぁと感心した次第。

 

ともかくこうして今度こそ完成したゲームなのだが、翌年においてとても大切な存在となるとは予想していなかった。

少女にしてみれば見る度に赤面を禁じ得ない黒歴史一歩手前のゲームなのだが、それも引っ括めていい思い出と言えるのだろう。きっと。

 

 

それ以降は特に何事も無く、穏やかな日々をのびのびと堪能していたのだが――1回だけ、突然彼に抱き着かれた事がある。

 

その日は別段変わった様子のない、何時もの一日だった。唯一違う事といえば、何やら貴重なゲームソフトを手に入れた彼がはしゃいでいた事だろうか。

 

ぬおー、うおー、ひゃあー、わきゃー。自らの操る主人公が息絶える度に彼は悲鳴を上げ、少女もその残酷な死に様に意味合いの違う悲鳴をあげていた。

そうしてそんな騒がしい時間の中で、彼が何の前触れもなく「あァづぁだだだだだァーーッハハハァー!?」と苦しいんだかそうでないんだかよく分からん叫びを上げたのだ。

 

いつもの巫山戯たものではない、本気の絶叫。少女は慌てて蹲る彼に近づき体を揺すり――――がっし、と。いきなり背中を引き寄せられ、力強く抱きしめられたのである。

 

否、抱きしめられているというよりも、縋り付いていると言った方が正しい様相を呈していた。しかし当時の少女には、その違いを認識できる冷静な思考能力が残されている訳も無し。

体を微細に震わせながら自らの膨らみに顔を埋め、荒い息を繰り返す彼。その様子を目の当たりにした少女は、心配やら恥ずかしいやら混乱の局地にあったのだ。

 

また、凄い力で抑えられていたために動く事もできず、ただ彼の名を呼びながら体を支え背中を撫でる事しか出来ず。

幸いにしてそれ程時間が経たずして彼の不調は治ったようだが、少女はしばらくそのまま固まったままだった。ちょっとばかり刺激が強すぎたのである。

 

……しかしそれに対して彼の方は特に何も感じた様子がなく、何事もなかったようにゲームを再開した。その姿に安心した少女であったものの、ちょっぴり寂しさを禁じ得なかったそうな。

 

 

 

 

女子中学校での修学旅行は、小学校の時と比べてほんの少し味気ないと少女は思った。

旅行先の沖縄はいいところであり楽しい事は楽しかったのだが、やはりふとした時に足りない人物を思い出してしまうのだ。

 

同じ班になったなのは達も同じ気持ちだったようで、女子だけの旅行という事で新鮮ではあったものの、皆僅かに物足りなさを感じていたようだ。「今度は皆で来たいわね」とアリサは言っていたが、全く持って同意である。

……それとアニメ放映局の電波が入ってこない事も物凄く物足りなかった。こっそりフェイトに頼んでバルディッシュに電波を引っ張ってもらったが、それが出来なかったらアリサと同じように頭を抱えていたかもしれない。

 

ともあれ旅行もそれなりに楽しみ、おみやげを買って海鳴に帰還。同じく男子中学校でも沖縄に修学旅行へ行っていた彼とおみやげの交換会をしたが、何とびっくり中身は全く同じキーホルダー。

沢山ある沖縄土産の中から、全く同じものを選んだというのは結構凄い事なのではないか。少女は何となく喜んだのだが、彼は何やら渋い顔。おみやげが気に入らなかったのかと不安になったがそうでなく、どうも彼曰く「カブリは負けっぽい」のであるらしい。

 

そうして何故か作ってくれたゴーヤーチャンプルはとても美味しく、旅行先での思い出を語り合っている内にようやく帰ってきたような心持ちになった少女であった。

 

 

春の早い時期にあった修学旅行が終われば、後に迫り来るのは受験である。

 

少女達の通う学校はエスカレーター式であり、よほど酷い点数を取らなければ自動的に進学する事はできる。

しかし、例えそうだとしても努力を怠って良いという事は無い。流石にアリサやすずかと言った本当の優等生には届かないとしても、その友達である以上は指先が掠るくらいには追いつきたいと思うのは至極当然の事だった。

 

彼の部屋に行くという習慣を変える事は終ぞ無かったものの、その手に持つペンで描くものを人物の顔から数式に、横に置く資料を風景の写真集から参考書へと変え。

四六時中流れるアニメやゲームは目の毒になりかねないと不安だったが、むしろ逆に集中できる要因となってほっと一息。日々真面目に勉強へと取り組んでいた。

 

……が、そんな少女とは裏腹に、彼は何もする気配は無かった。いつもの余裕を持ち続け、生活ペースに変化を見せなかったのだ。

彼の成績が良い事は知っているが、ここまで余裕を持てるものだろうか。可能性は少ないだろうが、もしかすると既にどこか進学先が決まっているのでは……?

 

もしそれが県外の学校であったらどうしよう。端から見れば無用の心配をしつつ彼に聞いてみれば、少なくともこの場所から離れる事は無いと聞いて安堵の溜息を吐いた。

 

……少女は知らなかった。彼女は彼と共に高校生になる事を前提としていたが、この時点においてそれが叶う確率は驚く程に低いものであった事を。

そしてこの時の会話がなければ、彼は裡に燻るものを持て余したまま深く思考すること無く、魔法世界に行く面々の多くと同じく学生を止めていた事を。

 

それ以降彼は自らの進路に対し少しばかり腰を入れて悩むようになり、それなりに長い期間悩みを引きずる羽目に陥るのであった。

 

 

受験関係の書類の整備や追い込みの為、少女が彼の部屋に訪れられなくなって暫く。月村家にて、おそらく皆揃って集まる最後の機会であるクリスマスパーティが開かれる事となった。

 

今回は例年のものとは違い、それぞれの家族も招待されている。会場となる部屋や料理もそれに準じた物が用意され、それなりに大きな規模のものとなっていた。

隠し芸大会やプレゼント交換会などのイベントも催され、皆が皆楽しいひと時を過ごす事が出来た事だろう。少女の披露した隠し芸は勿論イラスト、即興で訪れた人々の似顔絵を動物風に描き上げ場を沸かせたものである。

 

プレゼント交換もイベントで回ってきたものとは別に、彼より合格祈願のお守りを貰い嬉しさ爆発。その場で鞄に付けさせて頂いた。

一歩ごとに揺れるそれにニコニコしながらパーティを楽しみ――または惜しみ。そうしてなのはやフェイト、アリシア達と喋って居る内に時間は過ぎ行き閉会の時刻。

 

寂寥感を抱きつつもメイドのファリン達と一緒に部屋の片付けを手伝った後、周囲の皆と同様に自分も帰り支度を整えていると――「彼」がアリシアに手を振っていたのが目に映る。

おや、彼が初対面の女の子と仲良くなっているなんて珍しい。何となくそれを嬉しく感じた少女は何時もの通りその隣に立ち、二、三言軽く会話し別れを告げたのだった。

 

――後日、その時にした会話について彼から礼を言われる事となるのだが、少女には何の事かさっぱり分からなかった。まぁ、彼女の認識ではそんなもんである。

 

 

 

 

――そうして訪れた別れの日。少女自身は多分泣くだろうなと思っていたのだが、予想に反し泣き顔にはならなかった。

 

寂寥はあった、未練もあった。しかし、涙は流れない。

それは別れる前に十分に話し合えた結果か、それとも予めまた会える事が分かっていた為か。判断は今でも付かないものの、いつも通りの自分で送り出せて満足である事には変わりない。

全力を尽くして彼と作った格闘ゲームのパッケージもなのは達に渡す事が出来たし、何より「また一緒に遊ぼう」と笑顔で伝える事も出来た。

 

――――自分がした「さようなら」は、これ以上ない程良い形だった。自信を持ってそう言える。

 

 

そうしてアリサ達とも別れ、彼と並んで歩いた帰り道。

無言のままの雰囲気にちらりと横を見てみれば、彼は顎に手を当て何事かを考えこんでいる様子だった。

 

……やはり仲良しだったユーノや男の子と別れたのが寂しいのだろうか。確かにアリサ達の居る少女とは違い、彼は一人きりだ。男子の中では唯一残される形になるため、その寂しさも人一倍大きいのだろう。

 

何か慰めた方がいいのかな。真剣にそんな事を悩んでいると――「……んー」いきなり、彼の大きな手が少女の頭を撫で回してきた。

ぐわんぐわんと脳が揺れ、バランス感覚がかき回されて目が回る。多分この時脳細胞が死んで更にダメになった、いや勉学方面ではなくもっと別の方向に。

 

抗議をしようにも混乱が勝り、そもそも自分が何をされたのかも理解できていなかった為どうしようもなく。そのまま目をぐるぐる回し続けて――――そうして、最後に彼の声を聞いたのだ。

 

 

「……ほれほれさっさと行くぞ、すっぽりメガネ」

 

 

……メガネはいつも通りとしても、すっぽりとは何ぞや?

 

溜息と共にそう投げかけられたその定冠詞は、一体どういう意味を持っていたのだろう。聞き返そうにも直後に抱え上げられ宙を舞う羽目になってしまい、結局その意味は聞けないまま現在にまで至っている。

穏やかな声色から察するに、そんなに悪くない意味だったのかもしれないが…………まぁ、彼の事だ。どんな暗喩が組み込まれていても不思議ではない。

 

……まさか少女の苦手なエッチな意味が含まれていたりするのだろうか。いや、彼の性癖を考えるにその可能性は皆無だろう。となると、さて。

 

 

――――ねぇ、あのいやらしマンとはどんな感じなの?

 

 

…………そうして再び少女の脳裏にその声が響き。記憶の再生が、止まった。

 

 

 

**************************************

 

 

 

「…………」

 

 

ぼんやりと沈んでいた意識が浮き上がり、焦点が像を結ぶ。

目の先にあるテレビ画面では未だアニメが続いており、白いサザビーが小さいビグザムをどついている所だった。

 

彼女の記憶が正しければこれは終盤のシーンだった筈、どうやら思い出に没入している内に結構な時間が経っていたらしい。……後でDVDを借りて見直そう、そんな事をひっそりと思う。

 

 

「やっぱいつ見てもビルダーズ……っぽいのの作画ってハンパねぇよなぁ。今やってるビルドファイターズもスゲェし、ストーリーも熱いし、正史ガンダムよかこれ系統のが好きかもしれん」

 

 

彼は顔を画面に向けたまま、少女に向かってそんな事を話しかけた。その表情にはロボットアニメを見る子供特有のキラキラとした光が宿り、目を見開いて画面を見つめている。

おそらく、その無駄に高い動体視力で中割りの一枚ですら見分けているのだろう。よくよく見れば瞳孔が細かく収縮を繰り返していて、アニメ鑑賞に全力を賭している事が見て取れた。

 

――その瞳を見ている内に、何だかどうでも良くなってくる。

 

……全く困ったものだ。少女はそんな自分に軽く笑みを漏らし、画面へと視線を移す。一秒毎に胸の内に溜まっていく満足感が、先ほどまで感じていた不安その他を追い出していくのだ。

自分でもいい加減だとは思うが、実際満足してしまうのだから仕方がない。彼との関係、言葉の意味。思う所は色々あるが、そのどれもが今の時間を遮るに値しない程度のものだったと言う事だろう。

 

 

――――どんな感じと問われれば、こんな感じ。今はそれで良いのではなかろうか。

 

 

まぁ、あれだ。良し悪しは別としても、このまま日々を送っていれば自ずと行き着く先には辿り着く筈である。だからその日を楽しみにしておこう。

そう結論づけた少女は、穏やかな気持ちで抱き枕を抱える力を強め。少しだけ、彼の側へと近寄ろうとして――――

 

 

「……………俺さぁ、この頃言い訳ばっかり浮かぶんだよ」

 

「……、?」

 

 

――――突然、当の彼からそう声をかけられた。

 

気づけば既にアニメはエンディングを迎えており、スタッフの名前と主題歌が流れている。

しかしその最中に話しかけてくるなど「提供スポンサー一覧までがアニメ、スタッフに敬意を評しエンディングは黙って見るべし」と常々語っている彼にしては珍しい暴挙だ。

 

思わず目を向ければ彼の視線は少女に注がれており、アニメを鑑賞してる時とは別種の光が瞳に宿っていた。雰囲気も先程までとは別物のように乾き、全身からつまらなさそうな空気を醸し出している。

……一体どうしたというのだろう。心なし背筋を正し、彼の言葉を待つ事にする。

 

 

「お前も分かっていると思うが、俺が大好きな超格好いい俺は2・5次元なんだよ。何故ならば、俺が美少女フィギュアのように美しい存在であるから。

 あのアリサ達でさえ3・2次元止まり、三次元の壁――俺はフィギュアの壁と呼んでいるが――を突破できてはいない。そう、世の三次元共には到底到達不可能な場所に俺は居るんだ。今更言うまでもねーけど」

 

「……………」

 

 

何時ものナルシスト発言だろうか。いや、しかしそれにしてはテンションが低めである。言っている意味がさっぱり分からない点に関しては、いつもの事である為気にしなくとも良いだろう。

とりあえずは様子見に徹し、溜息を吐きながら目を瞑り渋い顔をする彼を眺めつつ、静かに耳を傾ける。

 

 

「……この壁はそう乗り越える者が出てきていい物じゃねぇのよ、もし乗り越える事が出来る物が居るとすれば――――それは、この俺のように神の手によって作られた美術品のみ。

 つまりオリ主があんなド平凡である以上、壁を乗り越え俺と同位置に立てる可能性があるのはStrikerS以降に参戦してくるかもしれない転生者だけなんだよ。それなのに、なぁ…………」

 

 

と、ここで一呼吸挟み。彼は瞑っていた目を開き、再び少女へと視線を合わせた。その表情は先程までと同じ雰囲気を湛えており、自分がつまらなく思われているように感じて思わず身じろぎしてしまう。

……しかしそうではなかったらしく、そんな少女の様子に彼は優しげな笑みを浮かべ……直後に白目を剥き眉をハの字に歪め鼻の穴を膨らませ歯茎をむき出し顎を突き出し舌をうねらせた。相変わらずイケメンが台無し。

 

 

「内申点込みで良いじゃねぇか、俺の一部としてみれば良いじゃねぇか、ギリ2・999次元として処理すりゃいいじゃねぇか。最近、俺議員がそんな意見を出しやがるようになった。……この意味、分かるか」

 

「…………?」

 

「分からんか、まぁそうだろうな。いや俺もさ、もう別に良いんじゃねぇかとは思うんだ、その方が自然だし。でもさぁ、それを認めると……おかしくなるだろ?」

 

 

がっくりと頭を垂れつつ最早独り言に近い彼の言葉を聞きながら少女は首を傾げ、そして疑問を舌に乗せる。……つまり結局、何を言いたいのだろう?

 

 

「んー、つまりだな…………俺という存在は、近い内に惨たらしい死を迎えるだろう。と言う話だ」

 

「――――」

 

 

……冗談でもそんな事は言って欲しくない。少々怒った様子でその旨を伝えると、彼は一層嬉しそうに笑みを深め――同時に困った様に眉を寄せる。

それは少女が今までに見た事の無い表情であり、思わず抱いていた怒りが何処かへと消えてしまった。

 

 

「まぁ、さぁ。そも言い訳なんて浮かぶ時点で俺としては末期に等しくてだな、このまま行けば多分年内には死ぬ感じなんだよなぁ」

 

 

行き着く先がそこってか、あー下んねぇ下んねぇ。顔を手で覆いそう繰り返す彼の言葉には悲壮感は無く、どうやら「死ぬ」とは比喩表現である事が分かる。

……しかしそうなると、一体何が「死ぬ」のだろう。考えを巡らすものの答えは出ない。

 

 

「……はン」

 

 

そうして表情を覆った手の隙間から少女を見つめ、その頭上にクエスチョンマークが飛んでいる様を見た彼は溜息一つ。もう片方の手で少女の頭をかいぐり回す。

 

それはまるで、先程まで思い出していた場面の再現だ。前後左右、まるで3Dスティックを回すかのようにぐわんぐわんと。力強い腕の動きに抗う事が出来ず、振り回される。

今までに散々慣れた感覚であるが、やはり目が回るのはどうしようもない。少女は眼鏡の奥の瞳を渦巻き模様に変化させ、ゆらゆらと上半身をフラつかせた。

 

 

「――すっぽりってぇのは、収まるんだよ。こう、在るべき場所にすっぽり、みたいな」

 

 

――――どうやら彼も同じ事を思っていたようだ。そう呟いて、不貞腐れたように唇を尖らせる。

 

成程、すっぽりメガネとは、それ即ち自分には眼鏡が似合うという事か。未だハッキリ定まらぬ意識の中で少女はそう結論づけ、何となく愉快な気分になる。もうダメだ。

その言葉に彼は立ち上がりつつ苦笑を漏らし、エンディングの終えたアニメを止めてDVDを取り出した。パッケージに戻し、DVDラックへと収めに戻る。

 

 

「ま、ともあれ俺が死んだ後は宜しく頼むぜ。死体の処理とか、墓とかな」

 

 

そう言って彼は渋い顔してヒヒヒと笑い、すれ違い様に足先で少女の脇腹を突っついた。

 

 

――――どんな感じと問われれば、こんな感じ。

 

 

もう少し経った頃には「あんな感じ」になる日も来るかもしれないが、その情景は未だ明確に浮かぶ事が無い。おそらくまだ暫くは先の話であるのだろう。

……しかし、その未来は少女にとって中々に悪くない光景になる筈だ。根拠は無いが、きっとそう。

 

そうして少女は頭を振って意識を正し。背後から投げかけられた「なんか見たいのあるかー」との問いに対し、突かれた脇腹を押さえつつ文句の言葉を飛ばしたのだった――――

 

 

 




ユーノとスバルはあれ、ティアナとギンガをオリ主に取られ不貞腐れてる最中、仕事で無限書庫で会う内になのはさんの話題で仲良くなったんじゃないすかね。


【天狗】

            ,,、
          // ヽ,
         ,..└'"´ ̄  ̄ `.ヽ 、
       ,. '´      、 、  ヽ ヽ
      ノ   ,  lヽ N/ヘ、ヽト、_,,',
    r'´ r'"イ、ノ\| レ' r=ァVl  (  )
    {  !、 l rr=-       /  `'''l.>‐ 、  おお、きめぇきめぇ
    レヽ.,トl     ー=‐'   /    li、,_,,ノ
   (  ,}'  ',          レヘ,  /レ' ,/ .>‐、
    .7'´ レ1 ヽ           人ル'レ'  .i、 _ノ
  , ‐'、  レ~i`ヽ 、 _  __ - ´
  !、_ノ




天狗とは、

日本の伝説、伝記上の妖怪のひとつ。鼻が長いことが特徴。
うぬぼれて高慢になることの俗称、またはそのような状態になっている人のこと。「天狗になる」

・曖昧さ回避

天狗の人 ― ニカニカ動画の踊り手兼ゲーム実況者 ⇒ 鞍馬天狗の人

――――――――――――――――

【鞍馬天狗の人】

鞍馬天狗の人とは、現代に生きる妖怪変化こと六千六百六十六堂院ベルゼルシファウストの別称である。

■ 概要じゃ! 概要の仕業じゃ!

初出に関しては諸説あるが、一番古いとされる記録は2005年5月、Theytubeに投稿された動画が有力と言われている。

内容は未だ年端も行かぬ小学生程度の少年が、終始何の言葉も無いままに常軌を逸した動きを繰り広げるというもので、余りの異質さから当時一部の間で「天狗」と呼ばれ話題になっていた。
その頃はまだオカルト映像の領域を出なかった彼であるが、翌年の2006年にニカニカ動画のサービスが開始された際、その動画と合わせ新作動画を投稿しその存在が露見する事となった。

個人で動画投稿する際のジャンルは「踊ってみた」であり、その多くは所謂創作ダンスと呼ばれるものである。
(仮)時代の頃から投稿を続ける言わば踊り手の祖であるが、前述の通りダンスの殆どが常軌を逸した動き(10m以上のジャンプ、残像を残す程のステップ等)であり、長きに渡りトリック扱いされ実際の動きだとは信じられていなかった。

しかし2010年の公式生放送にて出演した際、その人間離れした身体能力を披露。トリックの入り込む余地のない動きをリアルタイムで観客と視聴者に見せつけ疑惑を払拭、見事鞍馬天狗の称号を勝ち取ったのだった。
本人的にはその称号は不本意なものであるらしいので、空気を読んで讃えてあげよう。

また2007年より複数人での実況プレイも行っている。

■ 関連項目の仕業だから仕方ない

・踊り手一覧
・実況者プレイヤー一覧
・六千六百六十六堂院ベルゼルシファウスト
・ハーレム野郎
・フェレット
・画面外ちゃん
・真・棒人間格闘ゲーム改Ragnarok(仮)

■ 清く正しい関連リンクです!

・ゲーム部屋(グループが制作したゲームの関連ページ)

■鞍馬天狗の人について語るスレ


1282:削除しました:ID:hsgdDf3e

     削除しました

1283:削除しました:ID:azmXn3mM

     削除しました

1284:【ななしのえがお】:ID:4SDTHHJJD

     この人なんでこんなに嫌われてんの?

1285:【ななしのえがお】:ID:LxDFGyui3

     >>1282
     だからタイムシフト見ろっつってんだろ。それすら出来ないんかお前は

1286:【ななしのえがお】:ID:aqberRTYU

     >>1284
     嫌われてるというか、前々から居た頭の硬い奴らが現実見れなくて発狂してる。
     天狗本人の口がとんでもなく悪いのもあるだろうが。

1287:【将軍】:ID:PaRAllEwOrLd

     しかしここで騒いでも、コメントもメールも見ないうp主には無意味なのであった。

1288:削除しました:ID:azmXn3mM

     削除しました……

……………………

…………

……




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