噛ませ転生者のかまさない日々   作:変わり身

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二年目

△月 △日

 

 

春が来て、二年生となった。

 

俺は去年と変わらずサブカル漬けのまま、悠々自適且つ自堕落な生活を送っている。変わった部分といえば、ほんの少し背が伸びた事ぐらいだろう。

原作メンバーやオリ主近辺が微妙にスイーツ臭くなってきたのに比べ、何てどっしりとした安定感だろうか。自分で自分が誇らしくなるね。

 

進級したという事は当然クラス替えもあった訳だが、一部モブの入れ替えがあっただけで主要人物には変更は無かった。

俺と原作メンバーとオリ主は勿論の事、ついでにメガネっ娘も一緒。三人娘の方は露骨に「いやーん」という顔をしていた気もするが、俺とオリ主はまぁ呑気なものだ。

グダグダとだべったり、たまーにアドバンスを持ち寄ってポケモン的な何かで対戦したり。それなりに宜しくやっている。

 

ああ、それと全然関係ない話なのだが、最近になってようやくプリキュア的な何かが始まった。

やはり前世の物とは微妙に差異があるが、それでも萌えと燃えがうまく融合した作品であり楽しめる事には変わりない。

 

さて、これでようやく日曜朝六時半から始まるゴールデンパレードの要一柱がお出で遊ばされた訳だ。これからの益々充実したアニメ生活が楽しみである。

 

……俺何のために転生したのかな、自分でも分かんねぇけど別にいいやな。ハハハ。

 

 

△月 △日

 

 

せっかく六千六百六十六堂院ベルゼルシファウストという超格好いい名前のイケメンなのだから、それに見合った振る舞いをすべきではないのか。と唐突に思い立つ。

 

そうして洗面所の鏡に向かってキザなポーズをつけてみたり、蠱惑的に微笑んでみたのだが、銀髪オッドアイという事もありそういう仕草の似合う事似合う事。

おそらく世のショタコンどもは俺のウインク一つであっさりと陥落する事だろう。吐き気を催すので絶対にやらんが。

惜しむらくは格好が冴えない子供服姿であるという事だが、それを抜きにしても超格好いい。俺自身も思わず見蕩れ、うっとり。

 

何かテンションの上がった俺は、パソコンで整髪剤やらファンデーションやらを買い付け、本気で着飾ってみる事にした。

子供服の中でも精一杯スタイリッシュであろう物を選び、メイクの教導本に従い髪の毛を整え、うっすら化粧を施し透明感のある肌に仕立てる。そう、俺は持てる限りの力を尽くして自分自身を磨き上げたのだ。

 

――そうして三時間後、鏡の中に漆黒の堕天使が降臨する事となる。

 

ふんわりと外にはねた銀髪は風もないのに横へと靡き、周囲に光の粒子を振りまくマスカラの隙間からは憂いを帯びたオッドアイがゆらりと覗く。その視線で射抜かれた者は、男女問わず腰砕けになる事請け合いだ。

そして黒を基調としたレザー生地の衣服は適度に着崩され、身体チートで生み出した薄い筋肉の描く曲線が妖しく光を帯びていて。そしてアクセントに振りかけた女子校生の匂いの香水が、清潔感のある香りを辺りに漂わせる。

その姿はどこぞの有名彫刻家が手掛けた芸術品のように気品に溢れた物で、この俺ですら三十分程目を奪われてしまったくらいだ。

 

……これ程の美しさなら、もしかしてギャルゲーの中の美少女達に自意識を与える事も可能なんじゃないか? 

我に返りそう確信した俺は、一直線にゲーム部屋に向かいときメモを起動。そうしてこれまで温めてきた超格好いいポーズを決めながら、もう何度目かも分からないヒロインの攻略を開始する――――!!

 

全てが終わった後、俺はもう二度とお洒落なんてしないと、そう決めた。

 

 

△月 △日

 

 

最近、メガネっ娘と三人娘の仲が良い。

 

どうやらメガネっ娘が未だ俺からエッチな事をされていると思い込んでいるようで、半ば一方的に相談を聞いている内に仲良くなったようだ。

まぁ彼女達の事情なんぞどうでもいいのだが、メガネっ娘とは今も割とよく話す間柄なので、原作メンバーと親交を深めて居るのを見ると感慨深いものがある。

 

もしかしたら原作開始時には主要メンバーの一員になっているかもしれんな。

一般モブが原作メンバー入り、果たしてジャンルは何になるんだろう。やっぱオリ主物で良いのかな。

 

……と、そんな事を正真正銘のオリ主とポケモン的な何かで対戦しながら考えていると、上方から影が刺す。見上げてみれば、モッコスアリサが腰に手を当て得意げな顔をして立っていた。

表情からして俺に文句を言う為に来た訳では無さそうだが、では何の用だろう。疑問に思いつつ彼女を見つめていると、目の前に一枚の紙が突き出された。なにこれ。

 

首を離して焦点を合わせたそれは――何と、漫画調のタッチで描かれたアリサの姿ではござらぬか!

 

どうやら友情の印的なアレコレでメガネっ娘に描いて貰ったようだ。

原作絵に似た感じで、大きな瞳のふっくらほっぺで可愛いく描けている。丁度アリサの顔が隠れるようにして掲げられているので、絵自体がくぎゅ声で喋っているようにも見えて超グッド。

 

――そうだよ! これだよ! やっぱお前らはこうじゃないと! これこそ正しい原作メンバーの姿だよ!

 

彼女は「親友だから変な事するな」とか何とか言っているが、俺は萌えるのに忙しくてそれを理解している暇は無い。

もしやと思いギラつかせた目を右に転がせば、すずかとなのはも同じ様にイラストを掲げていた。それも可愛い二次元絵で、これがまたいい目の保養になる。

 

もう辛抱堪らん。俺は身体チートを駆使して千円札とイラストの描かれた紙をすり替えようとして――――ガチリ、と。財布を握った腕が横合いから掴まれた。

何だ何だと伸びた腕の先に目を向ければ、アドバンスSPを片手に持ったままのオリ主が神妙な顔で首を振っている。面倒事になるからそれは勘弁してやれという事らしい。

 

ええいならば直談判だ! 俺は光をも超えた速さでメガネっ娘の元へと大ジャンプ、アリサ達が持っているイラストと同じ物をくれと土下座する勢いで頼み込む。

 

メガネっ娘は最初は驚いた様子だったが、俺の言葉を理解すると周囲に花を飛ばして自由帳にペンを走らせた。

淀み無く、迷い無く。そうして驚く程の短時間でイラストを描き上げ、ニコニコと笑いながら切り取って差し出してくれた。やったぜ!

 

俺は天に昇る程に喜びながらそれを受け取り――――紙の中に描かれていた俺のイラストを見た瞬間「ちゃうねん」床と額がごっつんこ。

 

……違う、違うんだ。そういう意味じゃなくて、アリサ達のイラストが欲しかったんだよ……。

 

机に縋りつきメガネっ娘にそう懇願しようとしたが、先程の音でアリサ達がようやくこちらに気付いたらしく「あー!」と叫びながら走り寄って来た。

そうなるともう駄目だ。わいのわいのやいのやいのと騒がしくなり、中心で巻き込まれたメガネっ娘はあわあわと狼狽える事しか出来なくなるのだ。

 

 

……やっぱりこっそりすり替えて――――ガチリ。

 

分かった、じゃあ五千円で――――ガチリ。

 

よし、なら一万――――ガチリ。

 

…………良いだろう、ならば俺の秘蔵のときメモ――――ガチリ。

 

 

希望へと必死に伸ばしたその腕は、尽くオリ主に邪魔をされ。俺は涙を流しながら床に突っ伏したのだった。おのれオリ主め、俺のハーレムを邪魔するなよぉ……!

そうして後日改めて頼んだのだが、「皆の許可がないと……」と拒否られた。畜生。

 

 

△月 △日

 

 

先日の一件より、俺はクリエイティブ精神に目覚めた。超目覚めた。

 

そう、欲しい二次絵があるのなら、自分で描けばいいのである。理想の二次元なのはを、二次元アリサを、二次元すずかをその他諸々を。

前世の俺は致命的に絵心が無かった為に消費者側に回っていたが、この体は前の俺の物では無い。身体能力チートや魔法チートを備えたスーパーオリ主マンなのである。イラスト位ちょっと練習すればお茶の子さいさいその筈だ。

 

既にイラストの描き方を纏めた本や、シャーペンGペンネオピコ等のイラスト機材を購入し、そしてフォトショップにイラストスタジオといったパソコンソフトとペンタブまで用意した。

これだけの物があって、やる気もあるのだ。きっと一週間もすれば、なのは達のエロ絵も描けるまでに絵心が上達しているに違いない。多分。

 

まずは基本中の基本、ペンの使い方から勉強しよう。俺は目の前に広がる画材道具を前に指を鳴らし、タコ足のように指を蠢かせつつルパンダイブを敢行した――――!

 

 

△月 △日

 

 

よく考えたら身体はチートでも心は以前のままじゃないか。だったら絵心も昔のままに決まってる。

 

努力の残骸である紙の山をマンションの庭先で燃やしながら、俺はしょっぱい水をぽたぽた落とす。

炎の中で踊るのは、辛うじて人に見えるか見えないか、といった化け物達だ。信じられないかもしれんが、あれアリサなんだぜ。嘘みたいだろ?

 

本当はもっと時間をかけて、それこそ年単位で頑張るべきなんだろうが、三週間経っても棒人間すらまともに描けなかった時点で心が折れた。

そう言えば、学校の図工の授業でも花丸貰った事無かったっけ。俺美術とか向いてないんだな。ウフフフ。

 

――しかし、俺はここで諦める人間ではない。二次元がダメなら一次元で勝負だ。

 

絵がダメならば妄想があるじゃないか。俺の脳内に繰り広げられるなのは達のあられもない姿を文字に起こせば、その一助となるに違いあるまい。

目で二次絵を認識できないのは残念だが、過ぎた妄想は現実化するというセリフがある。この世界も創作物の世界だと言うならば、それも決してありえないとは言い切れない筈だ。

 

既にネットショップで小説の書き方を纏めた本や、原稿用紙や万年筆、ワードワープロポメラその他執筆機材は用意した。

これだけの物があって、やる気もあるのだ。きっと一週間もすれば、なのは達のエロ小説も書けるまでに筆心も上達しているに違いない。と良いな。

 

まずは基本中の基本、文法の使い方から勉強しよう。俺は目の前に広がる執筆機材を前に首を鳴らし、イカゲソのように指を蠢かせつつルパンダイブを敢行した――――!

 

 

…………………………………………

 

 

……努力の結晶である原稿用紙をマンションの庭先で燃やしながら、俺は塩辛い水をぽろぽろ零す。炎の中で踊るのは、「ました」で締める文が殆どの……まぁいいや、とにかくダメだったという事である。

 

絵もダメ、文もダメ。やはり俺は創作活動という物自体に向いていないらしい。

これは生粋の消費者としてこれからもサブカル界隈を買い支えろ。ついでに二次元なのは達を諦めろ、という神の啓示に違いない。

 

……プリメ的な何かでもやって傷ついた心を癒そう。今回は貧乳ステの子が来ればいいな。

 

俺の心身のように燃え尽きた炭を蹴り散らし、そのまま勢いよく飛び上がって部屋のベランダに着地。ゲーム部屋へと舞い戻る。

そうしてセガサターンのコントローラーを拾い上げ――――ふと、俺はまだゲームの方は挑戦していない事に気が付いた。

 

……いや、でもなぁ。絵も文もダメだったのに、何のゲームを作れと?

 

そもそもプログラミングなんて習った事ないし、どうやったら良いのかさっぱり分からん。

 

けれど漫画、アニメの分野。小説の分野と来てゲームにだけ挑戦しないというのも何か収まりが悪い気もするし……まぁ、やるだけやってみる?

俺は拾いかけたコントローラーを置き直し、パソコンを起動してプログラムの組み方を纏めたテキストデータやら各種ツクールシリーズやらを購入するのであった。

 

 

△月 △日

 

 

どっこい何とかなっちまったい。嘘だろ。

 

ストーリー性の欠片もない、不格好な棒人間が殴り合うだけの簡単な2D格闘ゲームではあるが、一からプログラムを組み上げてそれなりの形に出来ちゃった。無理だ無理だと思ってたのに、自分でもビックリだ。

 

おそらくだが、これは魔力チートの影響がでかいんじゃないかと思う。なのは世界の魔法は科学の行き着く先であるという事だし、その資質を持ってるって事はイコールそういう方向に特化した脳の構造をしている、とも言えるのではなかろうか。

今まで大して修行もしていなかった俺であるが、それでもSSSランクの端くれである。例え力を掌握していなかったとしても、その片鱗程度は引き出せていたのだろう。

 

ははぁ、成程。何か不気味な程にすらすらプログラム言語が理解できるなーと疑問は抱いていたが、そういう事だったのね。

魔力チートよ、今まで無用の長物と思っていてごめんなさい。意外な所で役に立ってくれてありがとうございます。ほんとに。

 

 

「ウフフフ」

 

 

PCに繋いだゲームパッドでグリグリ棒人間を動かしつつ、ニヤニヤと半笑い。正直素人の作品もいい所だけど、自分でサブカル関係の何かを作れた事が嬉しくてたまらん。

当初の二次元云々の目的からは大分離れてしまったし、その役にも立ちそうもないのだが……うん、まぁ。なんか満足したしこれはこれでいいや。

 

調子に乗った俺は出来上がったゲームをベクターに上げ、PCの電源を落とし床に就く。なんだか今日は割といい夢が見られそうな気がした。

 

 

△月 △日

 

 

今日はクラスの皆で遠足である。

 

向かう場所は、海鳴市の東に位置するそこそこ大きな自然公園。小学校からバスで移動し、園内をぐるりと歩き回りつつ古墳や博物館を見学するというありがちなコースだ。

一年生の頃にあった散歩レベルのものよりはランクアップしたが、どうせならゲームセンター付きの遊園地にでもして欲しかった物である。

 

どちらかといえば勉強の延長線上にある行事だが、クラスメイトのモブ達は楽しみにしていたらしく皆笑顔。

出発前のバスの中で互いにオヤツを見せ合ったり、カメラで変顔を撮影したりと各々はしゃぎ合っていた。

 

俺としては面倒臭いとしか思えず、周りの空気に馴染めず持ってきたアドバンスでトルネコ3っぽい何かをプレイする。

するとここでも隣席となったメガネっ娘がそんな俺をやんわり注意してきたので、今巷で大人気のミルモでポン的な少女漫画を渡して黙らせた。いやはや、扱いの楽な子で助かるね。

 

ともあれそんなこんなで自然公園に到着。俺達は事前に番号順で決められた班ごとに別れ、引率の教師にカルガモの親子のように連れられてハイキングを開始する。

 

入口の鉄柵を潜った俺達の目に映るのは、視界いっぱいに広がる青々とした木々の葉と、手入れされた噴水。そして園内に敷き詰められたレンガの小道からなる趣のある光景だ。

遠足なんてどうせ退屈でしかないんだろうなと思っていたが、これがなかなか良い雰囲気で少し感動してしまう。俺は歩きながら続けていたアドバンスを仕舞い込み、純粋に景色を楽しむ事にしたのだった。

 

そうして気付けば、こっそり空高くジャンプして古墳を上から眺めたり、博物館に展示されている人類進化図にオリ主と一緒に紛れ込んでみたり。結構本気で堪能していた俺がいた。

何と言うか、ゲームとは違う素朴な楽しさというか。うまく言えないがそんな感じ。

 

明日あたりから俺の散歩コースに組み込んでみようかな。テンションの上がった思考でそんな事を考えていると、俺の後ろにくっついて来るメガネっ娘が疲れたような表情を浮かべているのが目に付いた。

 

……え、何? 歩きすぎて足が痛い? しょうがないなぁこれだからガキは全く。どれ、この六千六百六十六堂院ベルゼルシファウスト様がおぶってやる。え、やだって? しっかたねぇなぁじゃあ肩車だ!

 

無駄な抵抗をするメガネっ娘を身体チートを用いて射出させ、俺の肩の上に根性合体させていたら、例によって例のごとく耳年増が降臨。

ギャーギャーとセクハラを指摘しながら追い掛けて来たので、肩車のまま逃げ回る事と相成った。すぐに三人娘諸共先生に怒られ、とくとくと説教をかまされる。

 

……こりゃメガネっ娘に悪い事したかな。と思ったけれど、ちらりと様子を伺ったら何だか楽しそうだったので良しとしよう。

 

そうしてその後も何だかんだと騒ぎ、楽しみ。俺の遠足は終わりを告げた。いやぁ、思ったより良かったな。来年の物が楽しみだ。

 

 

△月 △日

 

 

俺はコンパスが苦手だ。

 

何が苦手ってあの針。ノートに刺して「ぐるりと回す」事で綺麗な円形が描けるという噂であるが、一度も成功した試しがない。

必ず「ぐるりと回す」途中でノートから針が抜け、片側に挟んだ鉛筆が意図しない方向にすっ飛ぶのだ。

 

当然円形なぞ出来る訳が無く、仕方がないので途中からは手書きで円を完成させようとするのだが……まぁ、俺の絵心からして結果なんて分かりきっている訳で。

 

くそ、この前買った円形定規でも持って来れば良かった。

そんな後悔をしつつペンを動かしていると、隣席から妙な音が聞こえてきた。一体何ぞやと目を向けてみると――――メガネっ娘がコンパスを持たずに正円を描いていた。二度見した。

 

シャッ、シャッと軽やかな音を立てて量産されるそれは、寸分の歪みもブレも無く。どれだけ絵が上手かったらこんな機械的な動きが出来るのだろう、俺には想像もつかん。

 

……やっぱり描いて欲しいわぁ、なのは達の二次絵。何とか描いて貰う理由というか、言い訳というか。ぱっと思い付かないものかな。

 

――緊急議題「如何にして彼女を騙くらかせばエロ絵を描いてくれるのか!」

脳内俺議員が喧々諤々の論争を繰り広げたが、全く良さげな案は出なかったとさ。ああもったいね。


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