噛ませ転生者のかまさない日々   作:変わり身

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五年目

∀月 ∀日

 

 

五年生。

 

上級生となりそろそろ卒業の足音が聞こえて来たが、俺は変わらずにアニメ、漫画、ゲーム三昧の日々を送っている。

クラスのモブの中には早めの中二病に突入し「アニメなんてだっせー」とか宣っている愚か者も居るが、そういう奴に限って大学生位になってからカムバックして「ああ、当時見ときゃ良かった」と後悔する羽目になるのだ。と言うか、しろ。

 

まぁそんな事はさておいて。

俺のマンションにオリ主、ユーノとメガネっ娘が訪れるようになって久しいが、先の休日に遂に一同が鉢合わせした。

 

アイツ等が来るようになってから何年経っているんだという話だが、メガネっ娘は基本的に毎日来るものの放課後から門限までの短い時間にしか居ないし、休日も午後一時から三時間ほど。

対してオリ主達は休日の夕方から翌日の午前中までの泊まりがけでというパターンだった為に、微妙にタイミングを外していたのだ。彼らが早めに来る事がなければ今回もまたすれ違っていただろう。

 

何となく間男のようなハラハラした気分で見ていたが、全員顔見知りだった事もありあっさり打ち解け和気藹々とそれぞれの作業(遊び)に取り掛かっていった。

 

俺的にはユーノとメガネっ娘が知り合いだった事に驚いたのだが、そう言えばA'sの時に魔法関係の事を知ったようだし、その時の縁なのだろう。

せっかくなのでそれに気付かなかい振りをして「あれ、二人知り合いなの?」という空気を出してみれば、予想以上にメガネっ娘があわあわと慌てふためいていて見ててほっこりした。

魔法バレ云々でアレコレ考えているのだろう、既に知ってる事になってるんだけどな。ハハハ。

 

ともあれ、いい機会だと思ったので以前より暇な時にダラダラと作っていた例の棒人間格闘ゲームのグラフィック差し替えバージョンをお披露目してみた。

中割りを打ち込むのがかなり面倒だったのでサボりサボりやってたら年単位の時間がかかってしまったが、何とか完成できて良かった良かった。

 

それなりに真面目に取り組んだのでそれなりの出来にはなっているはずだし、ただの棒人間ゲームから随分と立派になったもんだ。

これまでの事を思い出しつつ感慨に耽っていると、メガネっ娘が花を飛ばしつつ喜びの声を上げた。どうも自分の絵が動いているのが嬉しいらしい。凄かろう凄かろう、フフフ。

 

他の二人もキャラ作成に絡んでいる分感動したようにゲームをプレイしているし、いやはや、作成者としては嬉しい限り。鼻がクリエイティブに高くなるね。

 

結局その日はメガネっ娘が帰宅するまでそのまま格闘ゲームで遊び込む事となった。

当初はメガネっ娘に格ゲーの洗礼を浴びせてやろうと画策した俺とオリ主だったが、絵を描いているおかげか手先が器用で中々に強く逆にこちらがリンチされてしまった。嘘ーん。

 

そうしてユーノとメガネっ娘が頂上決戦を繰り広げている背後で、俺とオリ主は仲良く体育座りで応援したのだったとさ。

……俺製作者なんだけどな、高い鼻がクリエイティブに折れちまったい。

 

ちなみに更なる続編としてベクターに上げた所、反応はそれなりに上々だった。後でホームページでも作ってみるかなぁ、そんな事を考える俺である。

 

 

∀月 ∀日

 

 

いやはや、今年は俺好みのアニメが多すぎて笑いが止まらない。

 

グレンラガンにらき☆すたにキミキスにひぐらしにバッカーノに電脳コイルにみなみけにプリキュア5にしゅごキャラにDTBについでにファイテンションデパート他多数。燃えから萌えまで四月から来年まで休む暇もないアニメパレードである。

まぁ前にも言った様に全て「っぽい何か」が付くのだが、それでも期待値が高い事には変わらない。毎日の深夜と休日の朝が楽しみで堪らん。DVDデッキの録画予約もフル稼働だ。

 

困ったな、これで益々積みアニメが増えてしまうぞい――――放課後前の掃除中そんな事を半笑いでオリ主と駄弁っていた所、何故かアリサが突っかかってきた。何でもオリ主に変な事教えるなとの事らしい。

……何、お前まだこいつらにオタク趣味の事バレてねぇの? そんな視線を向けてやれば、ミッフィーの様な表情をして顔を逸らされた。やめろよその顔気持ち悪ぃな。

 

ともあれ噛み付いてくるアリサを適当にあしらっていた俺だったが、彼女が放った「アニメは子供の見る者」という戯けた言葉を聞いた瞬間頭蓋を突き破り勢いよくラガンが飛び出してしまった。おお、それは俺達のような存在には禁句も良いとこであるぞ。

 

まぁ「いや実際俺達子供じゃねぇか」という一言で簡単に論破する事は出来るのだが、それでは中の人的に何か納得がいかん。

さーて早速発見されたこの早期中二病患者をどうこましてやろうかと考えていると――ガチリ、と。最早懐かしい擬音と共にオリ主がアリサの肩に手をかけた。彼の目はいつぞやのリィンフォース戦の時よりギラギラと煌き、何時もの面倒気な空気は欠片も無い。

ふむ、どうやら彼の琴線にも触れてしまったようである。まぁリリカルなのはのオリ主になろうなんて奴は基本オタクですしね、さもありなん。

 

そうしてそんな一種異様な雰囲気にたじろいだアリサを引きずり、オリ主は「ゴゴゴゴ」という効果音を残し下校していったのだった。どさくさに紛れて掃除当番サボりやがったよアイツ。

何時もと違うその様子に他の原作メンバーも不思議がっていたが、俺から言う事は何も無い。強いて言うならば、世の中には口に出しただけで戦争が始まる言葉がある、それだけである。

 

俺は遠い目でそんな事を思いつつ、邪魔な「ゴゴゴゴ」を教室の窓から投げ捨てたのだった。

 

 

……で、後日。帰った後に何があったのかは知らないが、メガネっ娘とこっそりアニメの話で盛り上がるアリサの姿がちょくちょくと確認されるようになった。

話題はプリキュアやしゅごキャラ、電脳コイルと相応の時間帯に放送されている物で、他の原作メンバーにバレないようヒソヒソ声で話していたりと初心者っぽくてほっこりする。何のかって? 察しなさいよ。

 

……せっかくの逆襲のチャンスであるが、俺は見ないふりをしてやる事にする。何というか、彼女には極めれば女版の俺になりそうな気配がするのである。

新たな仲間が生まれようとしているのに、その誕生を邪魔する事はあるまいて。俺はいい仕事をしたと汗を拭うオリ主とハイタッチを交わしたのであった。いぇー。

 

 

∀月 ∀日

 

 

さて、以前俺がやりたいとぼんやり思っていたニカニカ動画での実況プレイ関係であるが、何とかオリ主とユーノの理解を頂き投稿に漕ぎ着ける事が出来た。やったね。

 

まぁ俺がネタバレされるのが嫌いなのでレトロゲー縛り、しかも実況を意識しない単なる対戦動画なのだが、まぁいいだろう。どうせゲーム合宿のついでだし。

それにオリ主のデバイスを使って集音する事によりマイク無しのごく自然な会話が録音できるし、互いの名前呼びもいい感じに編集してくれるし、ゲーム画面も同様だ。やりやすいったらありゃしない。

 

……ただ、その録音と名前の編集を任せているオリ主のデバイス(丸い方)が俺の名前だけ無編集で通そうとするのはどういうこっちゃ。俺にもプライバシーを寄越しなさいよちょっと。

指の油を擦りつけながらそう抗議してみたのだが、帰ってきたのは『だって64ですし、何より六千六百六十六堂院ですよ?』うるせぇよタコ。

お前らも何とか言ってくれとユーノ達に振り向けば「仕方ないよ六千六百六十六堂院だもん」「しかもベルゼルシファウストだもんなぁ」うっせばーか俺の格好良さを理解しない奴は疾く散れッ!

 

自力で編集しようにも俺だけピー音を入れると不自然感が半端ないので、仕方がなくそのままで動画を投稿する羽目になったのだが――今の所、俺の名前が出ても視聴者の誰一人としてそれが本名だと気付いていない。

やはり三次元は俺に厳しい世界のようだ。次に転生する時は二次元に行けたらいいな、そんな事を呟いたらゲーム画面担当の四角形に鼻で笑われた。おめぇはブレねぇなぁホントに。

 

だがまぁガキ三人が素の状態でギャーギャー騒いで居るだけの動画にもかかわらず割と楽しんでいる人は多いようで、批判コメもそこそこに高評価を頂いている。

何というか、アレだ。皆で一緒にゲームしてる感覚でニヤニヤするよね。

 

……異世界転生までしてする事が実況プレイかよ。心のどこかで常識的な俺が呆れたような気がしたが、直ぐに俺議員にタコ殴られ埋葬されたので知らんぷりである。

ともかく次は何をプレイしようかな。二週に一度のゲーム合宿が更に楽しくなり、気合を入れてレトロゲー選びを行う俺であった。

 

 

……俺の淫靡ダンスの評価? いいじゃないかそんなんどうでも。

 

 

∀月 ∀日

 

 

スーパーロボット大戦Wっぽい何かの四週目が終えた。

 

いやはや、やはりWはスパロボDSシリーズの中で随一の作品である。

特に複数作品のクロスオーバーの仕方がすばらしい。設定からロボからキャラクターから違和感なく一つに練り込み、感動や熱血を生み出すその完成度たるや神ゲーの名に相応しい。

 

家族の繋がりを通して成長する主人公、アキトとガイによる劇場版バージョンの合体攻撃、カナードとの和解、ロウの赤い一撃、そして最終決戦での総力戦。どれもこれもが号泣物の熱え具合である。

そして何より女の子だ。可愛い女の子がたくさん出て、しかもおっぱいが自然に揺れるようになったのが超嬉しい。ミヒロたんにアカネたんにシホミさんにアリアちゃん、ちっぱいからおっぱいまでプルンとしていい感じなのだ。

 

……その分ディセイバーが女の子だと思っている俺としては、彼女の胸揺れ一枚絵が無いのが残念でならない。

まぁ量産型の強化ザコ敵である以上仕方ないといえば仕方ないのだが、せめてバストアップくらいは欲しかった。クローン系美少女とか結構好みの属性であるし、Wのネタスレでは普通に可愛い女の子やってたし。

 

そうして悶々とする感情を持て余していたのだが――――その時、残念ならば作ればいいと俺のクリエイティブ精神が囁いた。そう、つまりはメガネっ娘への懇願である。

 

思い立ったら即行動。俺は何時もの様に背後でペンタブを弄っていたメガネっ娘の耳元でねっとり囁き、唆し。グルグル状態にして了承させた。そうして顔グラしか元絵の無い状況からディセイバーの全身図と一枚絵を描き出して貰ったのだ。

彼女の元となった二人(三人?)のイラストを組み合わせて半ばイメージで描き上げたらしいが、これがまたそれっぽい出来であり。本人も良い勉強になったと満足そうだったので、お互いに得る物のある唆しだったのではなかろうか。

 

そして以前のドットポチポチ作業で培った技術を活かし、見事な乳揺れを作り上げた俺はそれをPCのスクリーンセーバーにして悦に浸る事にしたのだが――まぁ、何時もPCを使ってるのが誰なのかを考えれば明らかなミスでしたよね。

 

結果としてこれ以上無い程に赤面し狼狽える事となったメガネっ娘は、そう言ったエロ方向に関して警戒する事になり唆し辛くなってしまった。

うむ、一応は目的は達成したが、最終目的であるなのは達のエロ絵は更に遠のいた訳である。くそぅ。

 

 

∀月 ∀日

 

 

やっぱり俺って格好いいと思うんだよ。

 

サラッサラの銀髪に、フィギュアの如く整った容姿。体のバランスだって完璧に均整取れてるし、オッドアイというミステリアス要素まである。

キャーキャー言われる事はあっても、不気味がられるなんてあってはならん筈なのだ。いや三次元でキャーキャーなんて言われたくもないんだけどさ。

 

ともかく何が言いたいかというと、俺のダンスがオカルト扱いされるのが納得いかんという話だ。この前Дちゃんねるのオカ板の心霊映像スレで俺のダンス動画を見かけた時は怒気で服が破けたわ。どこの世紀末だっていうね。

 

ちょっと残像残したり二十メートルくらいすっ飛んだり関節ぐねんぐねんしたりしただけで、どうして天狗とまで言われなきゃいけないんだ。そんなのよりもっとマジキチが居るだろうよ、馬の被り物して全裸で毒物かっ食らうアイツとかさぁ。

調べてみたら天狗ってゴブリンとも表現するらしいし、つまりTheytubeでの評価もそういう感じって事じゃねぇか。いい加減泣くぞ俺も。

 

――六千六百六十六堂院ベルゼルシファウストは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の三次元世界を塗り替えねばならぬと決意した。

 

この俺の美しさが過小評価されたまま泣き寝入りして溜まるものか、絶対にこの世に蔓延る衆愚共に俺の超絶格好良さを伝えてやらねばならんのだ! だって二・五次元の俺より美しいのは二次元の存在だけだもん! レベル三次元の範疇に収まってる奴らに思い知らさねばなるまい。

 

……そうして俺は、目の曇りまくった世の節穴達の為にも踊る事にした。ゲーム実況をやってるアカウントを使って、ひっそりと踊り続けた。

ダンス時には常に黒ジャージとライダーお面を着用しているのがもどかしい所だが、身バレして周りの奴らに何かあっても嫌なのでまぁしょうがあるまい。

 

例え暗黒舞踏と呼ばれようが天狗ダンスと呼ばれようが、実況の傍ら踊りに踊り、踊り続ける。そう、俺は決して負けないのだ。俺は俺の美しさを、格好良さを伝えるため。これからも俺ダンスを舞い続けるだろう。

 

踊れ俺! 進め俺! 三次元への反逆は今始まったばかりである――――!

 

 

 

……後日、ニカニカ大百科に「天狗の人」という記事が出来た事を風の噂で知った。

見ていないから分からないが、俺でない事を祈るばかりである。

 

 

∀月 ∀日

 

 

最近さ、梅昆布茶にハマったんだよね。俺。

 

スーパーで食材の買出しに行った際、梅と昆布のお茶とは変わった物が売っているなと思い買ってきたのだが、それが予想外の方向で美味だったのである。

例えるならば、梅茶漬けの素から煎餅や海苔やその他余計な物をとっぱらった感じ、と言うべきか。普通のお茶とは違い、何とも食欲をそそる香りと味だ。

 

ご飯にかけてお茶漬けにしても良いし、小腹が空いた時の足しにもなる。しかも七味唐辛子を加えれば尚グッド。

煎餅や大福にはちょっと合わないのだが、食事の時に一杯あるといいアクセントになる。チャーハンや煮物の隠し味としても使えるし、中々に優秀な存在だ。

 

俺は顆粒タイプの小袋分け24本パックを毎回買っているのだが、すぐに無くなるしゴミは邪魔になるしと色々面倒だ。なのでもう少し大きな物が無いかなーとネットで検索をかけてみたら、何と業務用梅昆布茶パックなるものを見つけた。

……何の業務に使うん? 疑問に思ったもののまぁ良いかと頼んでみたのだが、届いたものは顆粒がみっちり詰まった大きな缶詰だった。サイズで言えばHGハイゴッグの箱より少し小さいくらい。でっけぇ!

 

まぁ使う分には特に問題なかったので、適当にスプーンで掬いつつ美味しく飲んでいたのだが――――俺の管理方法がダメだったのか、湿気にやられて顆粒が潰れ粘土モドキになってしまった。

いや、お湯を入れれば普通に梅昆布茶なのだが、スプーンで掬う際に毎回「ネチッ」という音がするようになって微妙な気分になるのだ。いや美味しいんだよ、美味しいんだけどもさぁ……。

 

……オリ主を見ている限り、面倒臭がっても碌な事にならないのは分かっていたじゃないか。

反省した俺はこれからは面倒臭がらずに、小まめに自力でスーパーに仕入れに行く事を決意したのであった。

 

うーむ、どんどん主婦化が進んでおる気がするな。まぁ良いけど。

 

 

∀月 ∀日

 

 

さて、二泊三日からなる臨海学校の日がやって来た。

 

海に臨むと書いて臨海と読むのだから当然海の周辺に赴く訳なのだが、何でこんなクソ寒い時期にしたのかが分からん。どうせなら夏の方が良いと思うんだが。

他のモブや原作メンバーも同じように思っているのか、宿泊施設へ向かうバスの中でも夏の海に来たかったという話題が多かった。それでも楽しみな事には変わりなかったようだけど。

 

そうして海鳴市の端にある海浜公園までやって来た俺達だったが、やはり冬の海周辺は寒い寒い。俺はチートで体温を上げていたために何とも無かったものの、それが出来ない他の奴らはブルブルと震えている程だ。

しかしながら、俺と似たような事をやって五人娘に引っ付かれ動き難そうにしているオリ主。そしてそれに嫉妬の炎を燃やすモブどもはその限りでは無いようで、片やピンク、片や黒赤と妙な色の付いた熱が広がっていた。マセてんなぁお前ら。

 

まぁそんなギスギスした空気の中、ちゃっかり俺をホッカイロ替わりにしていたメガネっ娘と共に教師の後を追いかけ宿泊棟へと到着。去年と同じく男女に別れ、それぞれの部屋に荷物を置いた後公園内のハイキングを行った。

 

海辺を沿う小道を磯の香りを感じつつ、てくてく歩く。流石の俺やオリ主もこんな精密機械にとっての地獄とも言える場所でゲームをする気にはなれず、のんびりダラダラ無駄話に興じる。

ホタテ食べてぇなぁ、海苔くいてぇなぁ、カニって良く見るとバッタみてぇだよなぁ。そんな実りの全く無い会話であるが、気付けば周囲のモブとも会話が花開いていた。

そこにはオリ主への嫉妬などは微塵も感じられず、あれだけヨコシマってたのが嘘のよう。女の子が絡まなければ普通の態度に戻るあたり、よく悪くも思春期男子という事だろうか。

 

ともかくそんな感じであれこれと話していると、話題は今日の昼飯の事へと移動する。どうやら去年と同じく昼食は自分達で調理する形式らしく、前に一緒の班だった奴は今回も俺に殆どを任せる心積もりのようだ。ヤだよ少しは自分でやれよ。

山と違って今度は海なのだ。肉類じゃなくて魚介類中心だろうし、それならお前らでも何とかなるだろう――そう言って突き放せばオリ主も混ざっての大ブーイングである。他力本願も良い所だよ全く。

 

そうしてギャーギャーやっている内に、ハイキングコースの終わりである砂丘エリアに到着。ここからは別ルートを歩いていた女子と合流し、一旦の休憩を挟んだ後バーベキュー場へと移動し昼食の時間だ。

……そして女子と合流したという事は、当然オリ主周りの原作娘ペンタゴンも完成する訳で。それに伴い一旦は下火だった嫉妬やら何やらが再着火。あっという間に友情の花が散ったね、がっくり頭を垂れるオリ主にナムナムと合掌する。

 

 

まぁ下らん話はさておくとして、昼食は海の幸たっぷりの海鮮鍋だそうだ。

ホタテ、カニ、タラ、海藻類その他色々。とにかく旨味の出そうな色んな物を一つの鍋で煮るという豪快な料理である。

 

切った具材を入れ、煮込み、味噌を溶くだけという比較的作りやすい鍋料理。流石に今回はアリサ達でも上手く作れるだろう――そう思って具を煮込んでいる間に視線を女子の方に向けてれみれば、彼女達は何故かマヨネーズを持っていてなのは達に止められていた。ネタだろ、流石に。

……いや、こっちはこっちで塩を塊ごと入れようとしたり、無駄に薪をくべて火を強めるアホンダラが居るからあまり強くは言えないんだけどもね。やめなさいよ汁気が飛ぶから。

 

でもまぁ、何だかんだ俺達も彼女達も美味しい料理は作れたんじゃなかろうか。後でメガネっ娘のお椀から一口貰ってみれば、俺の鍋と大して変わらん普通に美味い味だったし。ふむ、今年はドローだな、フフ。

 

とにもかくにも賑やかな昼食を終え、次は森中の広場での自由時間だ。

様々なアスレチックが設置された広場の中を、腹一杯になったガキどもがわらわらと騒ぎ回る。そんなガキの一人である俺も例外に漏れず、丘の上から続くチューブ状の長い滑り台を駆け上ったり、ロッククライム用の岩壁を足だけで踏破したりと自由気ままに楽しんだ。違う意味で例外に漏れている気もするが、それはさて置き。

 

夕方になり宿泊棟に戻り、少し早めの夕食をとり宿泊棟から少し離れた場所にある大浴場にて入浴。そうして就寝時間まで再びの自由時間である。

去年はゲーム大会を開いた俺達だったが、今回はちょっとアダルトに枕投げ大会だ。むしろ子供に逆戻りしてるって? さて聞こえんな。

 

まぁ俺とオリ主が参加すればただの虐殺にしかならんので、俺達は避けに徹する。前屈し、海老反り、腰をグラインド。四方八方に飛び交う枕を上半身だけで避けてみたりして。

調子に乗って残像を生み出しつつ六千手六百阿修羅六十六観音などと嘯いていたら、「キメェ!」の一言と共に亜音速を超えた枕が顔面に飛んできた。おいおいルール違反とは酷いじゃねぇか、そりゃ俺でも避けきれんて。

 

バボン! と。俺の顔に当たった枕が喧しい音を立て弾け飛ぶ。そうして中身の綿が白い欠片となって辺りを漂い、ふわふわと、きらきらと。その中心に崩れ落ちる俺を更に美しく、幻想的に際立たせるのだ。

 

ああ、カメラ持って来りゃ良かった――絶好の俺シャッターチャンスを物に出来なかった事を悔しく思いつつ意識を手放し、俺の臨海学校一日目は(強制的に)終了したのであったとさ。

 

 

………………………………………………………………

 

 

早朝、五時。

 

無理やり意識を持って行かれ早く眠ってしまった影響か、その日は結構早めに目が覚めた。

……うーむ、気絶した後でベッドに放り込んでくれたのは有難いが、出来れば姿勢とかも考えて欲しかった。首とか背骨とかバッキバキに固まって完全に寝違えている、チートがなかったら今日一日地獄だったぞ。

 

バキボキと無理やり筋肉と骨を伸ばしつつ、周囲のモブの事なぞ何も考えずにカーテンを開ける。流石に寒い時期とは言っても既に日は昇りかけており、薄らとした光が部屋の中に差し込んだ。

窓ガラスの結露を拭ってみれば、眼下には自然豊かな森と何処までも広がる海の姿が見えた。未だ完全に日光の当たりきっていないその光景は、踏み荒らされていない新雪を思い起こさせるようで、俺の中の散歩心がむくむくと鎌首を擡げた。

 

……旅のしおりには七時に完全起床と書いてあるし、時間的にはまだ余裕はある。俺はすぐ様学校指定のジャージに着替え、外へと飛び出したのだった。

 

いやはや、潮の香りが混じった清々しい朝の空気が俺の肺を洗い流し、何だか気分がとてもスッキリした。上機嫌になった俺は七時少し前に部屋へと戻り、その上向いた気分のまま爆睡していたオリ主の脇腹に「おはようございまーす!」元気よく踵をめり込ませる。そりゃもうゴリっと。

おお、突然の衝撃にベッドから転げ落ち声もなく苦しむオリ主の姿の何と目に優しい事か。昨日の仕打ちから言ってこのくらいの事してもバチは当たらんじゃろ、フハハハ。

 

 

で、クラス揃ってバイキング形式の朝食をとった後、俺達は水族館へと向かった。

教員に連れられた先でそれぞれ一時解散し、多種多様の魚介類が泳ぐ水槽を見学していく。俺としてはクラゲが一番のお気に入りだ。あのフワフワした感じとか、何とも神秘的で見てて飽きないと思いませんか。

 

……多くのクラゲに囲まれた俺、ああ、何と神秘的で格好いいのだろう。そんな事を夢想しつつ、クラゲ関係の水槽はゆっくり、それ以外はチャカチャカ歩いて見て回る。そうして展示コーナーの終わりにさしかかった時、五人娘達が巨大なエイを眺めきゃあきゃあ言っている姿を見つけた。

すると向こうもこちらを見つけたらしく、それまでの表情から一転げっそりした顔をされる。ハハハ、その反応はもう見飽きたぞ、もうちょい変化をつけたまえ。

 

見た所オリ主の奴がいないようだったので一緒に回ってないのかと尋ねれば、先に土産屋に行っているとの事だった。

もう見たいクラゲは見たし、俺も何か買ってくべかな。そう思い挨拶もそこそこに別れ、土産屋に突入。お菓子やら煎餅やらを買い漁る事にした。

 

そうして様々な商品を見ている内に――ふと、以前貰ったイルカのキーホルダーを思い出す。

……ふむ、あの時のお返しをするのも悪くはあるまい。俺は両手に山ほど乗ったお菓子の群れの頂上に良さげに思った物をチートで射出し、一緒に会計を済ます。にしてもちょっと買いすぎたかな、どうやって持ち帰ろう。

 

まぁイザとなればチートで持って家まで投げればマンションのベランダまでは届くだろう。そう楽観的に考え、水族館内でのレストランでの昼食に舌鼓を打った。

いやー、魚介類を見て和んだ後に、その魚介類を料理を出すのはどうなんだろね。そのへんの機微を無視する俺やオリ主はともかく、他の奴らはかなり微妙な表情してたぞ。

 

 

さて、いよいよ臨海学校も後半戦。二日目の午後は希望者ごとに分かれての選択行動である。

海水での塩作り、浜辺の砂や貝を用いてのペットボトルアート、そしてルアー作りの三つのコースから好きなものを選び、それぞれ体験授業のような物を行うのだ。

 

俺が選んだのは塩作り。出来上がった物は持って帰って良いという話であるし、帰ったら調味料として使わせてもらう所存である。

そうして塩作りの用意がされている場所に案内されていけば、そこでフェイト、はやて、なのはの超必持ちスリーマンセルにかち合った。やぁさっきぶり。

ルアーの方に行ったオリ主の奴と一緒でなくてもいいのかと問いかければ、この塩を使って料理を作ってやるそうな。愛されてるねぇ、全然羨ましくないけど。

 

ともあれ塩作りのスタートである。やり方は簡単。まず二人組を作り、海水を汲んでくる役と鍋の中身をかき混ぜる役に分かれてそれぞれの作業を行うだけだ。

フフ、俺程の格好良さともなると二人組を作る段階で相手が萎縮し結構手間取ってしまうのであるが、今回は教師の方で振り分けしてくれて助かった。もうオリ主が居ないからどうしたもんかと。

 

俺と組む事が出来た幸運なモブ夫を鍋回し係に任命し、俺は海水汲みの方に回る事にする。まぁ途中は地味な絵ヅラが続くので特に描写する事は無いのだが、モブ夫とはちょっと仲良くなった。どうでもいいな。

それで完成した塩なのだが、俺には市販の物と何が違うのか良く分らんかった。でも何となくミネラルやらそんな感じの物がたっぷりな詰まっているような気がする。思い込みかしら。

 

まぁ単純作業の割には中々に楽しかったな。うん。

 

 

午後の予定も終わり、宿泊棟に戻っての夕食。今回でここでの宿泊も最後かと思うと、何やら感慨深いものがあるなぁ。まだ一泊しかしてないけどさ。

何やらしっとりした気分の中で夕食を終え、俺達は入浴時間になるまで自室待機だ。予定としてはクラスごとに順繰りに大浴場を利用していく形をとっているのだが、今日は俺達のクラスが一番最後の時間帯であるらしい。

 

それぞれ花札やDSで遊びつつ時間を潰し、入浴時間が来た頃には外はとっぷりと日が沈んでいた。街灯があるとはいえ、懐中電灯がなければ歩く事すらままならんだろう。俺はチート視力で何とかなるが。

 

そうして大浴場に到着すれば――お待ちかね第三回俺の美裸鑑賞会の開催だ。フフフ、今日は何人のモブの若芽が淫靡なる開花を果たすかな?

成長期を迎え更に格好良さに磨きがかかったこの肉体、さぁとくと見るが宜しい――――そうやって格好いいポーズをとっていたら、オリ主に湯船に蹴り落とされた。鼻の奥にお湯が入って痛いよぅ。

 

 

とにもかくにも入浴が済み、火照った身体を自販機の飲み物で冷ましつつオリ主と共に浴場施設のロビーでダラダラしていると、女湯の方角から女子連中が俺達(正確にはオリ主)の下に近付いて来た。

どうやら入浴時間が被っていたらしく、全員風呂上がりのほっこりした雰囲気を放っている。シャンプーか石鹸か。何や甘い香りが俺達の方に漂ってくる……のだが、今飲んでいる飲み物との不和がヤバイんであんま近づかんで欲しい。おえ。

 

顔の周りをパタパタやりつつ臭気を散らし、アルミ缶を一気に傾けていると、その間に何やら一緒に宿泊棟まで戻る話になったようだ。

俺は? と顔を指差して存在をアピールしてみるのだが、彼女達はオリ主をドナドナしていくのに夢中で見てすらいねぇ。まぁ相変わらずの扱いだよね。

 

……まぁ俺一人ここに居てもする事無いし、あいつらに付いて帰るかね。ふむ、と俺は軽い溜息を一つ吐き、困ったように右往左往していたメガネっ娘を伴い帰りへの道を歩きだしたのだった。

 

 

 

暗いね。足元がよく見えないし、手繋いでいい? あ、じゃあ私も。あー! ちょっとあんた達ー! キャッキャウフフ。

 

前方に見えるイチャコラ空間に適当なアテレコを嵌め込んで遊びながら、てこてこ歩く。あー下んね。

よくもまぁあそこまで恥知らずな事が出来るもんだ、ああいうのは次元の壁を挟んで行うのが一般的だろうに。液晶やブラウン管でも可。

 

そうしてなんやかんやと隣を歩くメガネっ娘とお喋りつつ道を進んでいると――前方のハーレム陣が立ち止まる。一体何ぞやと視線の先を見てみれば、帰り道にある丘の上から夜の海を一望しているようだった。はいはいスチル回収スチル回収。

 

まぁせっかくなので俺達もイベント進行の邪魔にならない位置に陣取り、夜の海を眺める事にする。

 

 

「……ほぅぉー」

 

 

何か変な声が出た。

 

まず俺達の目に映るのは、地平線の向こうまで続く満点の星空だ。浜辺には空を写したような真っ黒な波が押し寄せて、その黒いキャンパスに遠くの灯台や橋の放つ明かりが光の絵画を描き出す。

ゆらゆらと、こうこうと。白、橙、青、緑――様々な色の光は波の揺れにより一秒ごとにその形を変化させ、柔らかくも鮮烈な光景を意識へと焼き付けてくる。それは一種催眠術のようでもあり、見る者の視線を惹きつけて離さない。

 

そうして棒立ちになる俺達に吹き抜ける冷たい潮風が火照った体をじわじわと冷まして。同時に濃い潮の香りが鼻をつき、ここが海である事を強烈に印象づけるのだ。

 

……あぁ、これは、何か。すごく良い感じだ。

 

 

「……ふむ……」

 

 

風呂上がりの気怠い感覚と合わせて、何とも表現し辛い心地良さが俺の身体を包み込む。

家で寛いでいる時とは別種の安心感というか、在るべき場所に在るべき何かがすっぽり収まった感覚というか。そんな感じの穏やかなもの。……在るべき場所と、すっぽりな何かですってよ。ふぅん。

 

袖の触れ合う感覚に何となく隣を見れば、メガネっ娘も同じような気持ちのようだった。興奮から来るキラキラとした輝きと同時、とんでもなく穏やかな感情を瞳に湛えて海を見つめている。菩薩か。

 

 

――この空気を再現できるチートがあれば、貰っといても良かったかもしれんなぁ。

そんな雰囲気ぶち壊しの益体も無い事を考えつつ、俺達はしばらくその美しい光景を眺め続けたのであった。あぁ、和む。

 

 

 

……そうして迎えた三日目の午前中。俺達は今までお世話になった宿泊施設の皆様にお礼を言い、海浜公園を後にした。

いやはや、まぁ何だかんだ楽しい二泊だったな。やいのやいの騒がしいバスの中で、潮風に当てられベタついた髪を整えつつそう思う。うひーごっわごわ。

 

学校に到着するまでの暇つぶしに、お手玉をスタイリッシュポンポンしながら隣席のメガネっ娘の拍手を受けていると、視界の端でオリ主がぐったりしているのに気が付いた。何か今にも死にそうな様相である。

 

ああ、そう言えばお前あの後どうなったん? 俺らはお前から意識外してたんで見てなかったんだけど。

そう問いかければ、奴は果てしなく面倒臭そうな表情を浮かべてDSライトを取り落とした。しょうがないので爪先で受け止め、そのまま放り投げお手玉に加えておく。何かイベント起きたっぽいなこりゃ。

 

まぁお前ハーレム系のオリ主だし、そっちの神がスクイズ好きじゃなきゃ丸く収まるべ。

そんな感じで適当に励ませば、何とかポケモンが出来るくらいには回復した。流石面倒臭がり自称してるだけあって、こいつ自身も大概面倒な奴である。

 

そうして後はバスガイドに旅の感想を聞かれたり。メガネっ娘へのお土産返しである貝のぬいぐるみストラップをお手玉して、うっかりミスった振りして彼女に投げ渡したりしている内に学校に到着。俺達の臨海学校は終わりを告げたのであったとさ。

さて、また機会があったら行ってみたいもんだ。去年も似たような事言った気がするけどな。ハハハ。

 

 

……ちなみに、バスの出発前にマンションのベランダに向けて遠投した菓子類なのだが、きちんと届いては居たものの見事に中身が砕けていた。

 

いや一応食べられるには食べられるので成功といえば成功なのだが……まぁ、負けだよな。これ。

割れたマンタクッキーをポリポリ食べつつ、妙な敗北感に打ちひしがれる俺だった。

 




主人公は自分を誰よりも格好いいと信じて譲らない男なので、二次元に行って積極的になったら噛ませとしての役割を全うし闇の書の闇にパックンされて退場します。怖いね。

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