噛ませ転生者のかまさない日々   作:変わり身
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※ この回には地理に関して致命的な間違いがあります。
  ただまぁ書き直すと別物になっちゃうし、何より面倒なのでそのままです。
  気になった人はごめんね。


六年目

◎月 ◎日

 

 

6年生になった。

 

最上級生となり、あと少しで卒業かと思うと何やら感慨深くなる今日この頃。俺は何か大切な事を忘れているような気がしてならないでいた。

割と重要な事だったような、そうでないような。さて、何だったっけかなぁ。このチート頭脳を持ってしても思い出せん。

 

そんな魚の小骨が喉に引っかかった様なモヤモヤ感に唸っていると、オリ主がなのはを伴って登校して来た。時計を見れば朝8時20分過ぎ、遅刻ギリギリの時間帯である。

何か最近アイツ等時間にルーズだよな。この前なんてフェイトとはやても一緒になって昼休みを過ぎてから登校してきた程だし、また補習とかになるぞ。

 

……もしかしてアレか、ついに年齢認証ページを越えて「がっついて来て朝が辛いの……」状態に至ったか。声だけ聞きたいから録音して寄越して。

オリ主に小型レコーダーを渡しながらそう問いかければ、死ぬ程面倒臭そうな顔で否定する。その表情で返すのも凄いよな、純情さとか欠片も無い。

 

ともあれ話を聞いてみればどうやら魔法関係のアレやコレやで忙しく、慢性的に寝不足気味らしい。

何でも最近上の方から結構無茶な任務を言い渡されてあっちこっちの世界を飛び回っており、昨日も夕方から呼ばれて長い事出撃していてあんまり寝てないそうな。

 

成程、そりゃあ面倒くさがりのお前には辛かろう。俺は机に突っ伏し「面倒くせぇ面倒くせぇ」と念仏のように唱え始めたオリ主の横にそっとお煮しめ(手作り)の入ったタッパーを置き、ニヒルに立ち去る。

休み時間にこっそりモソモソするつもりだったオヤツだが、まぁくれてやるよ。腹が減ったらダイナミックで一旦帰りゃいいしね、学校からマンションまで往復2分もかからんもの。

 

そうして机に戻り家族ゲームっぽい何かの最新刊を読みふけっていると、突っ伏したオリ主になのはが近づいて励まし始めた。自分も疲れている筈なのに健気な事よ、これで二次元だったら以下略。

にしても、何というかアレである。ただでさえ原作ヒロインと言う強力無比な属性を持っているのに、幼なじみなんて属性も追加されたらもう完全に正妻で「あ、撃墜」唐突に忘れていた事を思い出した。

 

そうだ、確かなのはは小五の冬に任務先で大怪我するんだった……! その原作知識に一瞬で血の気が下がり、咄嗟に携帯で日付を確認。いやだからもう6年生になったんだっつーに。

どうやら少しばかり混乱しているようだ。俺は数年間愛用している女子校生香水を手首にふりかけ、深呼吸。これはメイ様の香りだと妄想し、気分を落ち着かせる事に努めた。逆にムラっときた。だから落ち着け。

 

 

……そうして冷静になってみたのだが、まぁ考えれば当たり前の話である。原作と違い、なのはにはほっといたら面倒臭さを拗らせて死にかねん幼なじみが居るのだ。

小さい頃からそんなのの世話を焼いていれば幼少時のコンプレックスだの魔法への傾倒だかも少ないだろうし、もしかしたら現時点でオリ主>>>魔法とかになってんじゃねぇの? そりゃイベント自体盛大にブレイクされてもおかしくないわ。

 

おそらくオリ主が家事もしない面倒臭がりである限り、なのはも彼の事を優先して任務にかまける事も無かろうて。

んだよ焦って損した。俺は溜息を一つ吐き、再び漫画を読み込み始めたのだったとさ。

 

 

……やはり家族ゲームは二巻からが本番だよな。匂わせる程度のエロ要素がかぐわしくて堪らんわぁ。

 

 

◎月 ◎日

 

 

俺はパワポケ2が大好きです。何故って? ハーレムエンドがあるから。

 

まぁそれに到達するのも真っ当にやれば事前準備が必要な上、ランダム要素が良い感じに絡むので結構大変なのであるが、やっぱり夢があっていいよね。羨ましい限りだ。

……あれも転生ほぼ必須なのになぁ、同じ転生者なのに何で俺の方はこんな有様なんだろうな。全部三次元の所為だ。

 

ともあれパワポケの話だ。今俺がプレイしているのはパワポケ10……っぽい何かなのだが、やはり面白い事に変わりは無い。特にサクセス。

 

10のサクセスの舞台は前時代的で閉鎖的な学校。その野球部に入部した主人公は先輩の厳しいシゴキに耐えながら、甲子園を目指して血と汗とその他色んな汁を流しつつ野球選手として成長してく――というのが大まかなストーリーだ。

共に野球を愛する仲間達やムッサイ先輩やホモ後輩と切磋琢磨し野球魂を蓄え、ライバルの待つ甲子園へと一直線に目指していくスポ根ものとしての定番をキッチリ抑えた展開はかなり熱い物がある。特にライバルルート時に岡田と知り合った上で迎える甲子園決勝はもう燃える燃える。

どいつもこいつも野球が好きな事が伝わって来るような、それはもう渋い試合が繰り広げられるのだ。難易度的にも超渋いよ、土方お前ホームラン打ち過ぎなんじゃアホタレ!

 

……まぁ、彼女候補に目を向けた途端にSF展開溢れる超能力バトル物にその姿を変える訳だが、それはそれで嫌いではない。むしろ大好きである。

さらもナオも五十鈴もしあーんもカズもタエちゃんも蘭ちゃんも陸手先生も可愛いし、みんな良い娘だ。ちょっと攻略しくじると自殺したり悪墜ちしちゃうのが難点だけど、その分ベストエンドに到達した時は心に暖かいものが湧いてくる。

え? バッド見すぎて心が血塗れになっただけじゃねぇのって? 聞こえんな!

 

まぁともかくそんな感じで野球がしたくなった俺とオリ主とユーノは、ゲーム合宿を途中で抜け出し近所の公園までやって来た訳だ。どこも破綻していない完璧な流れだな。うむ。

 

と言っても三人じゃ野球なんてできっこ無いから、とりあえずキャッチボールから始める事にしたんだが――まぁ、俺とオリ主の膂力から言ってどうなるのか予想付きますわな。四年ほど早い魔球リーグ編の開幕である。

吹き荒れる土煙、破裂する衝撃波。ここがそれなりに広い敷地を持つ場所で無ければちょっとえらい事になっていただろう。俺達ってすごいね。

 

そうしてパシコーンパシコーンやっている内に何かお手玉してる時みたいに楽しくなってきて、徐々にボールを増やしていったら何か紛争地域みたいな感じになってしまった。

ズドドド、と絶え間無く轟音が響き、弾けた土が頬に飛ぶ。おまけにせっかく用意したグローブも破けて空に飛んで行き――思わず目で追いかけ集中力が途切れた瞬間に俺の全身に魔球がめり込んだ。もう超痛い事痛い事。

 

まぁ何とか軽い突き指で済んだのだが、落ち着いて辺りを見回せば何時の間にかユーノの姿が消えていた。先にマンションへ戻ったんかなーと思いキャッチ紛争を切り上げ公園を整地して帰ったのだが、ゲーム部屋は無人のままだ。どこ行ったんだアイツ。

仕方がないので二人して魂斗羅で死にまくっていたら、突然ストラグルバインドで身体の自由を封じられラウンドシールドのカドで脳天をかち割られた。「おぉ゛ぉ゛おおンぉぉ」涙目になって見上げれば、そこには頭から二匹のフェレットを生やしたユーノが仁王立ち。ツノのつもりかそれ。

 

何でも衝撃波に巻き込まれ隣町にまで飛ばされていたようで、もうちょい僕の事を考えろとクドクドと説教されてしまった。いやごめんね、ホント。

 

そしてユーノが帰り際に買ってきてくれたというお土産のマドレーヌを三人で食べながら、ゲーム合宿を再開。パワポケ10の装甲車バトルディッガー編を5日交代でプレイする事となった。

 

ハハハ、方針が定まんなくてクリアできねぇ。ハハハハハハハ。

 

 

◎月 ◎日

 

 

最近は暑い日が続いているものの、俺の部屋は快適である。

冷房はガンガンかけてるし、日差しからの熱は特殊性の窓ガラスに遮られ伝わりにくい。ミンミンと喧しいセミの音だって完全にシャットアウト。まさに天国の様な環境と言っても過言ではない。

 

あまりにも天国過ぎて恐ろしくなったので、布団と一緒に毛布も日干ししてしまった。太陽の光を思う存分吸った布団達はフカフカと柔らかな魔力を発し、俺を惹きつけて止まない。

もうおっそろしくなってその日は冷房を消す事無く、その毛布を被ってぐっすり眠ってしまった。何日も徹夜を続けていたせいか泥のように眠り、起きた時には何と二日が過ぎていた。夏休みでなかったら欠席扱いされていた所だ、何と恐ろしい。

 

冷房と毛布の組み合わせの危険性をこれ以上無い程に理解した俺は、毛布を封印しようと押し入れを開いたのだが――――しかし、ダメだ。毛布を持つ手が動かない。幾らチートを用いて動かそうとも、俺の意思を反映せず身体が言う事を聞いてくれないのである。

このままではアニメ鑑賞やゲームをする時間が取れなくなってしまう。そう思い焦るのだけれど、やはりどうにもならん。流石に丸々二日間眠る事は無くなったが、それでも夜の九時から朝六時まではぐっすりだ。

 

ああ、これでは規則正しい生活に引き込まれる……! それは俺みたいな存在にとっては致命傷もいいとこだ、だって積みDVD積み漫画積みゲー積み小説がえらい事になってしまう。恐ろしい恐ろしい。

 

 

……まぁ詰まるところ、毛布が気持ちよくて堪らん訳だ。アレかな、この毛布ももう結構使ってるから、妖怪暮露々々団になっちゃったんかな。

そう思ったら何か可愛く見えてきて、思わず美少女布団カバーを買ってしまった。抱き枕と合わせてもうハーレム同衾状態。環境が更に天国に近づいてしまった。

 

このまま行ったら最終的にどうなってしまうのか――いやはや全くすんげぇ恐ろしい話だよ。うん。

 

 

◎月 ◎日

 

 

録画していたペルソナ・トリニティソウルっぽい何かを視聴していたら、何時もの様に後ろでPCを弄っていたメガネっ娘が小さく悲鳴を上げた。

 

何、ゴキブリでも出たの? そう思って彼女に振り向けば、何やら目元を抱き枕で覆って目隠しをしていた。どうもモニターを見ないようにしているらしい。

疑問に思った俺が近づいてPC画面を見てみれば――――そこには、ブッスブスで血みどろのグロCGが映っていた。良く良く見ればそれはPC版Chaos;HEADっぽい何かの「張り付け」犠牲者遭遇シーンのようだった。

 

どうやらデスクトップに置いていたショートカットを何かの拍子にクリックしてしまい、そのまま何となくプレイしていたらしい。そういや俺プレイし終わった後ディスク抜き出してなかったっけな、すっかり忘れてた。

まぁジャンルがグロサスペンスだとは思わなかったのだろうな。アイコンはヒロインの女の子の顔であるし、オープニングを見ても女の子同士の超能力バトル物としか見えないよね、これ。

 

とりあえず頑なに画面を見ないでいるメガネっ娘に「消しとく?」と聞いたら物凄い勢いで頷かれたので、一応進行状況をセーブしてウィンドウを閉じる。

そうしてメガネっ娘の抱いていた抱き枕を回収し、俺は定位置へと戻りアニメ鑑賞を再開した。……ナイトハルトって結構気持ち悪い感じで個性的なのに、よくあそこまで進めたよな。鼻先にほんのりと蜜柑の香りを感じつつ、妙な所に感心。

 

それからメガネっ娘はその後PCに向かい合う気になれなかったようで、大人しく俺の横に腰を下ろしアニメ鑑賞の姿勢をとった。なので上映作品をバトルスピリッツに切り替え、のほほんとしたひと時を過ごしたのであったとさ。

 

 

……で、後日の話。あれだけ怖がっていたにも関わらず、PCの前で青い顔してChaos;HEADをプレイするメガネっ娘の姿がよく目撃されるようになった。

 

何でも怖いのは嫌いなのだが、それ以上に話の続きが気になるらしい。いやはやカオへファンが増えたようで何よりだね、フフフ。

しかしグロシーンに遭遇する度に一々悲鳴を上げたり、俺の服の裾を摘んだりするのはどうにかならんものか。アニメの時は良いんだが、ゲームやってる時にされると集中切れて割と致命的なんですがねぇ。

 

仕方ないので「悲鳴を上げる時には顔をうずめて思う存分摘みなさい」と予備の抱き枕(無地)を一つ貸し出す事となった。彼女も意外と気に入ったらしく、有効に使ってくれているようで何よりである。

プレイし終わった後も家に来る度に抱きついてくれているし、もうあれは彼女専用機という事にしても良いかもしれんね。

 

……そういやこの前、布団カバーと一緒にときメモGSの葉月君抱き枕カバーを買ったっけな。贈呈するべきか否か、はてさて。

 

 

◎月 ◎日

 

 

欲しい本があったので本屋に立ち寄ったら、何やら本を探しているフェイトに遭遇した。

 

相変わらず嫌そうな表情をしている彼女に問いかければ、何でも修学旅行に訪れる奈良、鎌倉のガイドブックを探していたらしい。

ああ、そう言えばあともう少しで修学旅行の時期なのか……。ゲームやアニメばっかり堪能してる内に随分と時が経ったものである、光陰矢の如しとはよく言ったもんだ。

 

何となく感慨深くなって頷いていると、フェイトは俺から視線を外し本棚の探索を再開。何冊も並んでいる同じような内容のガイドブックを見比べ始める。どれも変わらんと思うのは俺が実行動派だからだろうか。さて。

 

まぁ好きに悩めばいいさ。そうして俺も目的のブツを手に入れようと歩き出した――――ふと思うところがあり、振り返る。

そういやこいつらって俺を嫌ってる割にはちゃんと会話するんだよな。今だってあれだけ「いやらしい痴漢さんみたい」とか表現してた俺を視界に入れる場所に立ったまま逃げずに立ち読みしてるし。三次元の考える事は良く分からん。

 

少しばかり気にはなったが……まぁ別段それ以上の興味は引かれない。俺はそのまま彼女を素通りして階段を上がり、本屋のある複合ビルの上階にあるメロンブックスっぽい店に移動。

暖簾をくぐった瞬間店員が何やら困惑した目で見つめてきたが、それ以上の接触は無かった。堂々としていれば意外と声をかけられないものなのだよウフフ。

……流石に会員カードまでは作れないため18禁系のアレソレをレジに持っていくと弾かれるけどもな。畜生。

 

ともあれ、そうして通販では在庫無しで手に入れられなかった同人誌(非エロ)を購入し、ホクホク顔で一階にある本屋まで戻る。そうして通り道の店内を通り抜ける際に再びすれ違えば、フェイトは未だうんうんと唸っていた。

どうやら二冊までは絞れたらしいのだが、どちらも良い感じにガイドしてくれているらしく決めきれないらしい。二人(冊)の間でフラフラするたぁビッチな奴め! どうせなら俺のように胸を張ってハーレムを狙え!

 

欲しかった同人誌をゲットし上機嫌だった俺は、上がったテンションのまま悩むフェイトの手からガイドブック二冊を奪い取りレジに直行。両方共買ってやる事にした。

後ろで何やかんや騒いでいるフェイトを無視して紙袋に入れられたそれを投げ渡してやれば、彼女は何とも形容しがたい表情で頭を下げ、お礼と共にポツリと一言。「もしかしたら君はいやらしい痴漢さんでは無く、いやらしい漢さんかもしれない」何言ってんだお前は。

 

そうして頓珍漢な事を言い出したフェイトとギャースカ言い合いつつ別れ、マンションに帰宅。煎餅をボリボリ齧りつつ同人誌を堪能したのであったとさ。

 

 

……にしても。フェイトと、同人誌か。うにで種な人はこの世界では何を描くんだろうなぁ……。

 

 

◎月 ◎日

 

 

最近ぬか漬けが美味しくて仕方がない。

 

いやスーパーで糠床セットが売ってたんで興味本位で買ってみたのだが、思いの外良い感じでハマってしまったのである。

程良いしょっぱさと独特の風味と食感。そのまま食べても炒めても美味いし、醤油や七味をかけると尚グッド。逐一かき混ぜないといけないのが割と面倒ではあるが、アニメ見ながらやってれば苦にもならないし、いや良い買い物をしたもんだ。うん。

 

漬ける野菜はきゅうりに白菜にナスにオクラ、個人的には山芋なんかも結構好きだ。あのシャリシャリ感とねっとり感は他の漬物とは一線を画す魅力を持っている。

更に醤油を一垂らしして白米と一緒に食べると最高だ、とろろを想起させ幾らでも箸が進んで止まらない。まぁお茶漬けや炒め物等に出来ないのが少し残念だが、それを補って余りある美味しさだ。

 

炒め物といえば、白菜の漬物をチャーハンに混ぜて食べるのも良い。以前より刻んだ梅干を入れたりして作ってはいたが、それとは別種の酸っぱさがいいアクセントなるのだ。

それに加え、俺はそのチャーハンに梅昆布茶をかけて変則的なお茶漬けにして食べていたりする。これがまた食欲を掻き立てて美味いんだ、幾らでも食えるね。

 

まぁそれもこれもアレだな。俺の格好良さのおかげだな。糠をかき回す際に俺の手から何かが染み出しているんだろうな。ウフフ。

だって美味とは「美しい味」と書くのだ、ならばそれは俺の味という事だろう? フッフッフ、さぁ我が身の美しさを吸って更に美味しくなるが良い――――!

 

……などと半笑いになりつつ、俺は今日もニチニチと糠床を掻き回すのであった。

 

 

ちなみに、作った漬物を俺の家によく来る面子にお茶菓子として出した所、約一名から「ババ臭ぇ」との評価を頂いた。

そんな事言うアホンダラにはあげません! と漬物の入った器を下げようとしたら「不味いとは言ってねぇだろ」とチートを超える力でガッチリ抱え込むように死守された。美味いなら美味いと正直に言えという話である。ぷんぷん。

 

 

◎月 ◎日

 

 

さぁ修学旅行だ。

日程は去年の臨海学校と同じく二泊三日。バスと電車を乗り継ぎ奈良と鎌倉を回る、修学旅行としては定番のコースである。

 

一日目と三日目は教師に連れられての名所見学となるが、二日目だけは班で分かれての自由見学となっている。当然事前に班分けがなされる訳だが、今回は男女混合での班分けとなった。

男子と女子で別々幾人かのグループを作り、後にそれを超融合。最終的に8、9人程度の班を錬成させるのである。

 

俺としては今回はオリ主と組むのは止めておく事にした。男女混合という事ならまず確実に原作メンバーは奴と組もうとする筈だし、そこに俺がくっついていたら当然喧しい事になるからだ。のほほんと観光したい俺にとってそれは余り好ましい物では無い。

となるとオリ主の班には別のモブが組み込まれる事になるだろうが……まぁ頑張ってくれとしか言えんわな。精々ハーレム横目に肩身の狭さを感じながら友情を育んでくれたまえ。ハハハ。

 

と、そんな感じでそこらを歩いていたモブ夫を引っ捕まえ、彼をダシにグループを作ろうかと考えていたのだが――――ガチリ。突然オリ主が俺の腕を引っ掴み、気付けばあれよあれよと言う間に何時もの面子での班が結成されていた。なんでやねん。

 

え? お前達それで良いの? そんな疑問に満ちた目を向ければ、原作娘達も各々ブチブチ言いつつ俺が班に入るのが当然という意見で纏まっていたし、意味が分からん。お前ら俺を嫌ってんじゃなかったんか。

しばらく疑問符を飛ばしていた俺だったが、メガネっ娘が最早定位置となった俺の隣で嬉しそうにしていたのを見て「まぁいいか」と流されてやる事にする。お互い納得しているのなら、これはこれで気兼ねしなくて楽だしね。

 

 

で、迎えた修学旅行当日。学校ではなく直に海鳴駅に集合した俺達は、電車に乗って奈良方面へと旅立った。

 

おそらく二日目の自由行動の練習なのだろう。その際最初に自分で切符を買う、というイベントが挟まった。まぁ移動には電車を使う事もあるだろうし、教師達の粋な計らいと言っても良いんじゃなかろうか。

俺やオリ主がサクサク切符を買い終えるのとは裏腹に、殆どの奴が券売機の前で戸惑っていたのが微笑ましい。電車の中でその事を話題に出せばアリサが噛み付いてきたが、それは墓穴というものであるフフフ。

 

とにもかくにも電車は進む。俺は窓の外に流れる景色を眺めつつ、ウノをしたりトランプをしたりする原作メンバーを横目にイナズマイレブンをプレイ。旅行の席で無粋だって? 知らんなこれが俺である。

どの程度の技なら俺でも再現できるかなーと思いつつカチカチやっていると、後ろの席でなのはの叫び声が聞こえてきた。どうも大貧民でドンケツになったらしい。「やーい貧乏人」と半笑いで声をかければ、何故か俺も無理やり強制参加させられた。藪蛇でござる。

 

フフフ、良かろう。命と人生を代償にマジモンの金持ちとなった俺の力を思い知らせてくれるわ! そう言って意気揚々と勝負に臨んだ俺だったが、結果は平民。富豪にも貧民にもなれない何とも中途半端な地位だったが、まぁこれはこれで俺らしい。そう拍子抜けしつつ妙に納得した俺であった。

……ちなみに、大貧民の地位はオリ主に落ち着いた。それに関しては全員一致で「あぁ~」と納得の声を漏らし、オリ主の面倒臭さゲージを急上昇させる事態になったのだがまぁどうでもいいやな。

 

 

そんなこんなで目的地である奈良に到着。電車からバスに乗り換え、奈良公園へ。教師に引っぱられ、旅のしおりを片手にぶらぶら園内を歩き回る。

荒池園地だとか正倉院だとか依水園だとか、趣深い風景を見学。この日のために購入し改造を施した虹野さんデジカメをフル稼働し、景色を写真に収めていく。後でPCのデスクトップにでも設定しよっと。

 

いやそれにしても綺麗である。時期が時期だけに紅葉も鮮やかで美しいし、見ていて心が癒される。やはりこういった自然物に関しては三次元の方が良い感じだな。

うんうんと頷きながら風景を堪能していると、俺の後ろを付いて来たメガネっ娘がちょっと疲れたような表情を……ん? 何か前にもあったよなこんな事。

 

あまり死ニコルアバンが好きじゃなかった俺は会話イベントを省いて彼女を射出させ、今蘇る根性合体。記憶に残るあの頃より密度の増した感覚に思わず「成長したなぁ」ポロっと零した所、彼女は俺の美しい髪に顔を押し付けか細い声を上げたまま動かなくなった。

うむ、以前のように原作メンバーからセクハラだと文句を飛ばされたが、今回は自分でもそう思う。仕方がないのでおんぶに方針転換し、残りの道をてくてく歩いたのだった。いやごめんねぇ。

 

 

そうして昼食を摂った後。しばしの間自由行動の時間を与えられた俺達は、各々好き勝手に動く事にした。

と言っても流石にこのような場所でヤンチャをすれば周囲にえらい被害が出る事は想像に難くないので、チートは用いないように留意する。

 

ユーノくん、君の説教は俺の中で生きているよ。晴れた空にフェレットの笑顔(存命中)を浮かべつつ石畳に腰掛け、のたのた近寄ってくる鹿にエサを放り投げ、まったりと時を過ごす。

エサは勿論かの有名な鹿せんべいだ。売店で売ってた物を買ってきたのだが、この辺の鹿って金払ったら寄ってくんのな。店売りの商品には手を付けない所を見ると、随分調教されているようだ。全くやーらしぃんだから。

 

そんな事を呟きつつせんべいを高く上げ鹿にお辞儀をさせていると、遠くの方ですずかが鹿に集られ曼荼羅が展開されている姿が目に付いた。何やってんだアイツ等。

まぁすずかって変換すると鈴鹿って一番先に出るし、相性は良いのかもしれん。もしかしたら野生の勘で夜の一族的なアレコレを感じ取っているのかもなぁ。はよせんべい寄越せと催促する鹿の角につつかれながら、そんな事を考察する。

 

はいはい分かった今やるよ。上げていたせんべいを鹿に差し出せば、それはそれは美味そうに齧り付き、噛み砕く。

……そんなに美味しいのかね。興味が湧いたので試しに齧ってみれば…………うん、まぁ。不味くはない、が、美味くもない。やはり鹿専用だな。

何か体に悪い気がしたので、チート胃袋を稼働させ無理やり消化させた。この体は大抵の毒物なら問題なく分解できるので、腹を下す事も無いだろう。俺は口内に残った米糠の味を流すべく、自販機を探しに歩きだした。コーヒー飲みたい。

 

 

奈良公園を離れたた後も一つ二つと観光地を周り、鎌倉方面にある宿泊ホテルに着いた時には既に夕方となっていた。

鎌倉という地にぴったりの和風テイストなホテルである。俺達に割り当てられた部屋も畳の敷かれたそれなりに広い部屋で、屏風とかツボとか置かれていて中々良い雰囲気だ。

 

もしかして漫画みたいに掛け軸の裏に隠し通路でも無いかなーと散策をしている内に、いつの間にやら夕食の時間。そうして教師に連行された先、大きな宴会場で出された何か高そうな和食にテンションの上がる事上がる事。そらもう隣に座ったオリ主とすげぇすげぇ言い合いつつ夢中でモグモグである。

特に漬物が美味しく、これを作ったものは俺より少し下くらいの美しさに違いあるまいと確信したね。まぁ三次元の範疇は出ないだろうがな!

 

ともあれ夕食が終わり、入浴タイム。去年のように突き落とされるのも嫌なのでさっさと入り、部屋に戻った頃にはもうそろそろ六時になろうかならないかという時間だった。さぁ六時アニメの始まりだ。

今回の作品はソウルイーターっぽい何かである。同室のモブ達に反対されるかとも思ったが、結構見ている奴も居るようで特に問題も無く出張版アニメ鑑賞会を開始。

 

いやー阿修羅って何度見ても気持ち悪いなぁ。お前らもそう思うだろと同意を求め振り返れば、オリ主含めた全員の視線が俺に注がれていた。成程、お前らは喧嘩がしたいんだな。いいだろういいだろう。

 

……しかし、まともに戦えばオリ主に一撃でノされてしまう。さてどうしたもんか。

そうやって悩んでいると、ソウルイーターのEDが流れてきた。画面に映るマカ達の踊っているかのような映像と軽快なリズムを聞いている内に――ピンと来た。そうだ、俺の土壌であるダンス勝負なら負けんぞ!

 

俺は意気揚々と着ていた浴衣を脱ぎ、美しい肉体を誇示させつつスペースチャンネル的ダンスバトルで勝負を仕掛けた。ノされた。

まぁ何とか気絶はしないで済んだが、そりゃないだろう。もうちょっと乗ってこいよお前さぁ。そう文句を言えば帰ってくるのは「面倒臭ぇ」ふざけんな。

 

お前なんてなのは達に構い殺されてしまえば良いのだ。そうブチブチと呟きつつ、その後も花札やらオセロやらで騒いで一日目の夜は更けていったのだった。

 

 

……………………………………………………………………………………

 

 

二日目の朝。

 

いやにスッキリとした目覚めのまま挨拶をしたのだが、誰一人として返事は帰ってこなかった。見れば他の奴らは皆熟睡しているようで、畳に並べられた布団イモムシ共が規則正しく寝息を立てていた。

時計を見れば早朝4時半。どうも俺は旅行先だと早起きになるらしい。

 

無理やり起こすのもアレなので、去年と同じく朝散歩に行くことにしよう。俺は瞬時に私服に着替え、ベランダの鍵を開けて街中に飛び出した。

やはり観光地というべきか中々に風情のある街並だったが、所々普通にコンビニが立っているのが結構シュールだ。まぁ人が住んでいる以上当たり前なんだけども。

 

せっかくなので、昨日チートを使えなかった分全力で建物渡りをしてみた。スパイダーマンのように屋根から屋根へ飛び移り、空中の高い場所から街中を見下ろす。

……うむ、ここから見るとやはり寺や自然豊かな公園といった観光名所が多々あるんだな。その壮観に大変満足した俺は、さっき見かけたコンビニに寄って同室の奴らにアーモンドチョコを買ってってやった。

 

俺と違ってお前らは小遣い限られてるもんなぁ、いやぁ俺ってば優しすぎてやんなるわァ。そう言ったら大顰蹙を買ったのだが、何故だろう。まっこと三次元とは奇っ怪である。

 

 

まぁとにかく朝食も済み、ホテルの従業員に別れを告げていざ鎌倉へ。バスに乗って鎌倉駅前まで移動し、そこから班ごとの自由行動に移る。

午後4時までに宿泊先のホテルに辿り着きさえすれば、どこに行っても構わないそうだ。まぁ俺はどこでも楽しめる自信があるので、予定組みは原作メンバーとメガネっ娘に丸投げをしたのだが……はてさてどこに行く事やら。ワクワクである。

 

あっちへキャーキャーこっちへキャーキャー、キョロキョロと落ち着きの無いアリサを先頭に鎌倉の街中を歩く。まるでテンションの高い外国人観光客みたいだ、いや実際そうなのか?

 

ともあれやっぱり朝散歩した時も思ったが、表通りから裏通りまで趣のある場所が多いね。ただ歩いているだけで和んでくる。

のんびりだらだらまったりと。当然の如くメガネを伴いつつ、前方を進む賑やかな連中の声を聞き流しながらのたのたと進む。多少遅れても俺なら一飛びで追いつけるので問題あるまい、それより景色を楽しもうぜ景色を。ウフフ。

 

そんな感じで各々好き勝手に散策していると、第一の目的地であるらしい円覚寺に到着。美しい景色の心奪われつつ、広い土地の中をデジカメ構えて練り歩く。

鮮やかな赤や黄色に染まる紅葉も池の流れも大変によろしく、俺も心の赴くままに写真をカシャカシャ。あ、そういやここって撮影大丈夫だったっけ? 不安になったものの、フェイトの広げるガイドブックには商業に利用しない限りOKと書かれていたので問題なかろう、多分。

 

その際後ろから覗き込まれたフェイトが俺の淫靡魔力に当てられ「ぞわっとくる、ぞわっときたよ」と鳥肌を立てていた気もするが、まぁ些細な事だよね。あー、和むわぁー。

 

そうして俺がカメラマンになって記念写真を撮ってやったり、班全員で薬師如来に手を合わせたり。それぞれ十二分に堪能した上で俺達は円覚寺を後にし、東慶寺、浄智寺、鶴岡八幡宮と目的地を順繰りに回っていく。

どこもかしこも静かな雰囲気の漂う落ち着いた場所で、日本の心やら和の何たらとか、とにかくそういった物が何となく理解できたような気がした。いやぁ、自分で言うのもなんだが絶対理解してねぇよなこの言い方。ハハハ。

 

……そういえば、俺の会った神とかはこういったお寺に祀られてるような存在だったのだろうか。でも何か根本的に違う存在っぽい気がする。

正観音菩薩立像、三世仏坐像と続けて拝んでいる内にそんな事を考えたが、まぁ答えなんて出ないんだろうな。とりあえず転生仏神とかそんな感じで済ましておこうと鎌倉丼を食べつつ思う。次は二次元で頼むよ神様。

 

 

ともあれその後も明月院や江ノ島など様々な名所を見て回り、途中の小町通りの道がすらにも土産屋を何軒も梯子した。五人娘どもが寄り集まって騒いでいるのを尻目に、俺も鳩サブレーを始めとした銘菓類を気の向くまま片っ端から買い込んでいく。

するとその姿を見ていたオリ主がぽつりと「お前ってスネ夫みたいだよな」とか漏らしくさりやがった。いやどうせなら花輪くんの方にしろよ、あいつアレでもイケメン設定だった筈なんだから。

とりあえずその言葉に乗ってやり、「しょうがないなぁ全くのび太は、ほれ貧乏なお前に一つプレゼントしてやるよ」と裏声で宣いつつ「ハーレム万歳」と書かれたTシャツを渡してやれば、奴は「天狗」と書かれたTシャツを渡してきやがった。おぅ表に出ろダンスバトルだ。

 

光の速さでノされた後、他にも漬物かなんか無いかなーと土産屋の店内をウロウロしていると、木刀が売っているのを見つけた。こういうのって京都じゃなかったっけ、疑問には思ったが記念に一本購入。ベルトの横に差し込んでサムライ気分を味わった。

後はAI入ったガントレットがあれば完璧なんだけどな。そうだオリ主ちょっとお前のデバイス貸してくれ。いや四角形じゃなくてね。

 

そうしてグダグダやりつつも時は過ぎていき――――そして、気が付けば午後三時を回った所。もうそろそろ今日のホテルへの移動をしなければならい時間帯となっていた。

 

五人娘はまだまだ見て回りたいと後ろ髪を引かれている様子だったが、流石に半日ずっと騒ぎっぱなしは疲れたようで、口数が少なくなっている。メガネなんぞ今にも寝てしまいそうで誰かに寄っかかっていなければ進めない程だ、体力ねぇなぁ。

 

また今度個人で旅行に来ればいいじゃないの。俺とオリ主がそう宥めれば、今度は家族やユーノやヴォルケンリッターと一緒に来ようという話になり少なかった口数が復活。きゃいきゃいと楽しげに先の予定を話し始めた。

……しかし、何でナチュラルに俺も旅行メンバーに入ってるのだろうか。まぁ別に構わないっちゃ構わんのだけれども……何、喜ぶ所なのかしら、ここ。

 

さておき。そんなこんなでホテルへの道を歩む俺達だったが、少し時間があるという事で最後に行きがけにある土産屋に寄る事に。

当然俺も意気揚々と突入し、興味の惹かれたものを購入。ホクホク顔で店から出てみれば――店前のベンチで待っていたメガネっ娘が居眠りをしていた。仕方ないので無理やり背負ってホテル前まで持ってってやる事にした……のだ、が。待っても待っても他の奴らが出て来ない。

 

もうすぐ時間だぞ何やってんだよと店内を覗いてみれば、最後の土産選びという事で気合が入ってしまったようだ。皆騒ぎつつも真剣な表情で、まだまだ時間がかかりそうである。

……メガネっ娘と先にホテル行ってっかなぁ。腕時計を見ながらそんな事も思ったが……まぁ、別にいいかと思い直す。

 

――心落ち着く鎌倉の街を照らす、穏やかな夕日。軽い疲労と荷物の重みを感じながら眺めるそれもなかなかにオツなものであり、遅刻で怒られる程度なら別にいいかという気分になったのだ。

 

ああ、収まってる収まってる――――そうしてベンチでのんびりと夕日の鑑賞をしていると、ようやく時間の事に気がついたのか慌てた様子で五人娘が飛び出してきた。おお、おかえり。

 

「何で教えてくれなかったの!?」知るかよそんなん自分で時間管理しときなさいよ。理不尽に飛んでくる文句をテケトーに流しつつ、俺は一足先にメガネっ娘を背負って走り出す。途中で起きたかな、まぁいいや。

直後に後ろから幾つもの急ぎ足が聞こえて来たが、はてさて間に合うかね。そんな感じで二日目は慌ただしく終了したのだったとさ。

 

……まぁ結果としては五分ほど到着が遅れたものの、予定時間を指示した教師自身が遅刻したというオチがついた。当然怒られるはずも無く、なのは達は心底ホッとしたようである。

 

 

 

 

で、ホテルだ。

 

今回の宿も前回に引き続き和風テイストの物で、畳に襖に掛け軸と要点を抑えた部屋作りとなっていた。やっぱこういうの良いな、俺のマンションもちょっと内装変えてみるかね。

 

早めの夕食、入浴とつつがなく事が済み。お待ちかね昨日と同じくアニメ鑑賞会へ……進みたかったんだけどな。流石に6年男子できらりん☆レボリューションっぽい何かを見ていた奴は居なかったらしく、強烈な反対意見に流され鑑賞会は中止となった。ぐっすん。

幸いホテルのロビーにある誰も居ない待合室にテレビが設置してあったので、ちょちょっとチャンネルを弄りそちらで見る事にする。まぁ家に帰れば録画はしてあるんだけどさ。直で見たい複雑なオタク心といいますか、分かりますでしょ?

 

そうして柔らかいソファに身を沈めつつ、きらりがアイドルとしてブンチャカしているのを見ていると――何時の間にか、隣に誰かの体温を感じていた。それが誰の物かなんて姿を見なくても分かり切っているので、視線をやらないままにのんびり会話。

すると何でも今現在男子部屋に女子連中で遊びに行くベッタベタなイベントが発生しているらしく、途中で俺を見つけたコイツはこっそり抜け出してきたらしい。

 

……となると、うーむ。きらりん☆レボリューションは終わったのだが、今戻ったらアレだよな。色々と騒がしくなってる最中だろうな。時計をちらりと見つつぼんやりと思考。

じゃあ、もう少しここで時間を潰してから戻るかね。特に良く考える事も無くそう決めた俺は、次に始まったロンブーの怪傑!トリックスターを惰性で二人、鑑賞する事にしたのだった。スキバラはガレッジのが一番面白かったよなぁ。

 

 

その後、ドラえもんとクレヨンしんちゃんまで見終え割り振られた部屋に帰ってみれば、グチャグチャになった布団と汗だくの男子諸君の姿があった。

多分騒ぎすぎて教師でも見回りに来て、慌てて隠れるなりなんなりしたんだろう。まぁラブコメにありがちな展開だよね。GSにもあったよ。

 

俺は鮮やかなテンプレに一種感動さえしつつ、部屋中の窓を開けて換気。そうしてチートの応用で一瞬で乱れた布団を直し、悠々と学園天国パラドキシアを開いて寛ぎ始めた。

…………視界の隅に黄昏ているオリ主の姿が見えた気がするが、おおっと六千六百六十六堂院選手は美麗にこれをスルー。見ないふりして黒花子さんに萌える事に務めるのだったとさ。

 

 

 

……………………………………………………………………………………

 

 

 

次の日の朝。ホテルを出発した俺達は再び奈良公園に訪れた後、海鳴市へ帰宅の途についた。

 

奈良公園では初日と違い最初から自由行動を言い渡され、気ままに園内の散策を楽しんだ。とは言ってもバスの周辺を彷徨いただけなのだが、まぁ俺はどんな場所でもぶらりぶらりと適当に歩けば結構楽しい気分になれる人なので割と有意義に過ごせたと思っている。

いやはや、数年前なら絶対家でゲームやら何やらしている方が良いと答えていた筈なのに、随分と安上がりになったもんだ。いや家のグッズの総額はとんでもない事になってんだけどな、ウフフフ。

 

にしてもまぁ楽しかったなぁ修学旅行。海鳴駅に向かう電車の中でデジカメで撮った写真を眺め、ここ数日の記憶を掘り起こしほっこり。

そうしてなのは達に目を向けてみると、座席の背もたれに体重を預けぐっすりと眠っているようだ。無理もあるまい、話では夜中遅くまで起きていたみたいだし、いい加減電池が切れたんだろう。

 

 

「…………ふむ」

 

 

肩にもたれ掛かる重さを感じながら、ため息一つ。頬杖を突き窓の外へと目を向けた。

視界に映るのは、後方に勢いよく流れていく街並みや森の姿だ。俺のチート眼球には小さな看板の文字一つから葉の葉脈まで事細かに見る事が出来――――それを認識する度に、何やら寂しい気分になってくる。

 

……そうだよなぁ、もう小学生も終わりなんだよなぁ。何かゲームばっかりしていたような気がするね。

 

殆どのイベントも消化し、残るは卒業式だけ。ついこの間入学したばかりだと思ったのに、いつの間にやらもうこんな時期だよ。ビックリする程山も谷も無かった六年間だった。まぁ後悔は無いんだけども。

 

俺はとりあえず義務教育の期間である中学までは学校に通うつもりでいるが、聖洋の中等部は男子校と女子校に分かれているんだよな。もう会わないなんて事にはならないだろうが、それでももうこいつら全員と一緒に学校イベントをこなす事は無いだろう。

そう考えると何かしんみり。今この時にも過ぎる一分一秒がとても貴重な物に思えてくるから不思議である。

 

「……ハイハイハイハイ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ! 修学旅行は帰るまでが修学旅行ですからねッ!」何となく焦った俺は手を叩きながら喧しく騒ぎ回り、せっかくの修学旅行に寝ているボケどもを叩き起こした。

原作メンバーやオリ主は安眠を妨害された事にご立腹のようだったが、そんな事知らん。昼寝なんて15分だけでいいんだ、それだけ寝れば午後はスッキリと動けるようになるんだから。

 

ともかくいいから起きて俺の相手をしろタコ! ほれトランプか!? ウノか!? 人生ゲームか!? 何でも良いから何かやるぞアホンダラ!!

ギャースカギャースカ、どったんばったん。俺は無駄にデジカメのシャッターを切りながら、ともすれば寝そうになる奴らを鼓舞し、抓り。無理やりテーブルゲームに参加させる。

 

当然その内容なんてゲームとして成立しない程にグダグダなものだった訳だが、一先ず寂しさは払拭された。そうだよ、これで良いんだ。

オリ主のガチパンチを必死の思いで避けつつ、俺はひっそりと満足感を抱き。列車が海鳴へとたどり着くまでの数時間、何時ものように何時もの面子で何時もの諍いを続けたのだった――――

 

 

◎月 ◎日

 

 

――卒業式、である。

 

 

今日この日を持って、俺達の小学校での生活は終わりを告げる。ガキ目児童科からクソガキ目少年少女科に分類されるようになり、中学生という一つ上の段階へステップアップするのだ。

六年間慣れ親しんだ学校にもう通えなくなった。それを思うと、俺のような不良生徒でも少しばかりおセンチな気分になるね。窓だけじゃなくてもっと昇降口も使ってやりゃ良かったかな。

 

ともあれ何時も通りに登校した俺達は、少しの注意を受けた後体育館へと移動する。そうして校長の長話、卒業証書授与、在校生の祝辞に生徒会長たるアリサの謝辞――完璧に、一部の隙もなくカッチカチに形式張られた卒業式を終え、最後のホームルームを教室で行った。

 

担任の教師が涙を浮かべながら一人一人に祝いの言葉を告げ、卒業証書の入った筒を渡していく。ある生徒は自信を湛えながら、ある生徒は笑顔で、ある生徒は泣きながら受け取り、何処か神妙な雰囲気が教室内に広がっていく。

それはモブよりも理知的で強靭なメンタルを持っている筈の原作メンバー達も例外ではないようだ。アリサもすずかもなのはもフェイトもはやても皆が皆教師からの励ましの言葉を受けて、感慨深げに卒業証書を握り締め涙と共に微笑みを浮かべていた。

 

……果たしてその胸中にはどのような思いが渦巻いているのだろう。まぁ少なくとも「問題オセロがよく卒業できたなぁ」と言われた俺とオリ主よりは綺麗な心持ちだろうな。絶対。

つかオリ主の黒髪はともかくとして俺のコレは銀髪であって白髪じゃないんだっつーの。せめてシルバー&ブラックで銀黒コンビとかさ。全然関係無いが過去編のアルゴノート格好良かったよなぁ、全体としてはユグドラッグ編が好きだったけど。

 

ともあれ、そんなこんなで卒業式はその殆どの日程を終了し、校庭での解散となった。

そうして下級生のモブ共が作った花のアーチを潜る俺の胸裡には割と大きな隙間風が差し込む。あーあー、もう卒業しちゃったよ本当に。別に俺の生活には大きな変化なんて無いだろうけど、何かねぇ。

 

全てのアーチを通過し、校門に寄りかかり大きな溜息を吐く。視線の先には保護者の面々と喜び合うモブの姿だ。前世含めて親と笑いあった経験が無い俺にはどうでもいい光景ではあるが、ああいうの見てると改めて全部終わったという感覚が湧いてくるなぁ。

そしてその中には原作メンバーは勿論メガネっ娘の姿もあったりして、微笑ましいやら寂しいやら複雑な気分である。

 

 

……何時までもこうして浸ってても意味無いか。大体卒業なんてもう何回もときメモで経験してきたしね、今更だ今更。さっさと帰って誕生でもプレイした方が有意義だ。

そう自分に言い聞かせ、卒業証書の筒をポンポコ言わせながら帰ろうとして――――ガチリ。背後から肩口を強く掴まれた。

 

擬音から誰か確信しつつ振り向けば、そこに居たのはやっぱりオリ主だ。彼は何時もの面倒そうな表情で、万力の様な力で持って俺の方を締め上げている。肩痛いんで離してくれぃ。

 

しかし彼は身を捩る俺を気にする事無く、クイッと顎を背後に振る。体をずらしてその先を見れば――多分アリサかすずかの家の物だろう。如何にも金持ち然としたリムジンが道端に駐車していた。

だから何だと疑問符を浮かべる俺を他所に、オリ主は肩を掴んだままズカズカと進み。件のリムジンに躊躇無く俺を放り込んだ。いや本当に何なんだよ一体。後から乗車してきたオリ主に話を聞いてみると、これからアリサの家で身内だけの卒業パーティを開くから一緒に来いとの事らしい。

 

……まぁ別に良いんだが、それって俺が参加しても良いの? もし原作メンバーの家族までパーティに参加するんだったら、高町一家とか俺の淫靡魔力でちょっと物騒な事になると思うが。

こっそり逃げる用意をしつつそう問いかければ、奴は超面倒臭そうな目をして「俺もちょっと気まずいんだよ」ああ成り行きとは言えハーレム作ってますもんね、そりゃ親御さんからはねっちりした目で見られるでしょうよ。

 

しかも「お前が居れば多分俺は目立たないしな」なんて言っちゃってくれやがりまして畜生結局は避雷針仲間が一本欲しかっただけかよ! ええいこんな所に居られるか俺は帰るぞ! 

フラグを吐き捨て車の外に飛び出そうとすれば、オリ主は俺の腰元にガッチリ腕を回して「逃げられない!」の姿勢。やめろ離せボケナス! 針のむしろには一人で座れ!

 

そんなこんなでギャーギャーやっていると、アリサ、なのは、フェイト、メガネっ娘とそのご家族達が乗車してきた。すずかとはやてが居ないようだが、あちらはあちらで大人数になるようなので別々に向かうようだ。いや今はそんなのどうでも良くてだな。

 

うぬぬ、今まで面識の無かった高町父母、バニングス父、リンディっぽい人の「いやらしい子が居る……」といった視線が痛い事痛い事。加えて隣でホッと一息ついてるメンドクサ怪人がイラつく事この上無い。

助けを求めてアリサに視線をやれば――彼女達は意地悪そうな笑みを浮かべて鮫島っぽい人に出発を促した。ひっでぇ奴らだよ本当。

 

……まぁこうなった物は仕方がない。パーティというからには何か美味いものでも出るだろうし、せいぜい堪能して帰るとするかね。俺は話しかけてくるメガネっ娘の両親に応対しつつ、心中で腹を決め。初めてのバニングス邸にドナドナされていくのであったとさ。

卒業式の感慨もまぁどこかへ消えちゃって、せっかくのアンニュイな雰囲気がぶち壊しである。でも何でか半笑いになっちゃうのが悔しかった。畜生フフフ。

 




マテリアルズは、主人公の知らない内にどこぞの姉妹に連れられて異世界に旅立ちました。

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