噛ませ転生者のかまさない日々   作:変わり身
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七年目

⊂月 ⊂日

 

 

今日から俺も中学生である。

 

流石私立校というべきか、中等部における制服はスタンダードな物では無く、聖祥独自の物と思われる白一色に濃紺のアクセントが入った詰襟制服である。こんなんまどマギでしか見た事無いぞ。

着るのにも結構勇気が要りそうなシロモノであるが――まぁ俺は超格好いいので完璧に着こなす事が出来た訳だ。部屋の姿見の前でポーズをとってみたのだが、バイオリン少年なんぞ目じゃないくらいに格好いいな俺、ハハハ。

 

……しかしこれは俺だからこその結果であって、他のモブ達はそうではあるまい。幾ら髪の毛の色とか結構カラフルな奴が多いといえど、普通の三次元連中には荷が重いんじゃないか?

もしかしたら中学のクラスはなかなかシュールな事になるかもなぁ。そう思ってちょっとワクワクしながら入学式に臨んだのだが……意外や意外。割と違和感の無い絵ヅラに収まっていた。

 

流石に坊主頭のゴリラっぽい男子生徒は多少違和感があったものの、それでもどこか精悍な雰囲気を引き立てている気がする。そりゃ違和感が激しかったら制服に採用されないよな、どこか拍子抜けしながら一人で納得。

特にここに来てもまーだ一緒のクラスだったオリ主の似合う事似合う事。彼自身はザ・平凡といった風の容姿なのだが、返ってその無個性さが制服の気品さを引き立て無駄に清潔感が溢れる感じになっているのだ。性格から考えれば爆笑モンである。

 

そうして式が終わり、割り振られた教室に移動。今後の事に思いを馳せる。中学校か、この男だらけの園ではどんな日々が待っているのだろうね。とりあえずゲームとアニメ漬けなのは変わらないだろうけど。

というか今年の年末は待ちに待ったときメモ4の発売だ。加えてラブプラスも発売されるし、年の後半はギャルゲー的に充実した日々になる事は確定しているかな。いやー楽しみだなぁ。

 

その輝かしくすんばらしい未来予想に半笑いになっていると、やがて始業時間になり教師が現れた。そうして軽い挨拶が終わった後にホームルームに入り、自己紹介タイムへ。

……ちらり。隣を見たがそこに居たのはさっきも見た坊主頭のモブだった。少し迷ったが、とりあえず気にせずに読書を続ける事にする。

 

今日の本はバッカーノっぽい何かの漫画版だ。一応設定的には小説の1931に繋がっているという話だが……まぁ雑誌休刊の煽りを受けた後付けだよな。フフフ、流石誤字から新しいキャラや設定を生み出す作者さんだけはあるという事だろうか、後のシリーズでジャッカローゼらしき男がちょろっと描写された時はそりゃもう興奮したものだ。

そういえばDS版1931の死亡遊戯モドキに出てきた連中も後から拾ってくれんのかな。色々と無茶苦茶なギャグテイスト溢れる奴らだったが、ジャグジーに惚れたくぎゅ声の女の子とか可愛くて良かったんだけど。

 

……と、そんな事を思っている間に自己紹介はすぐそこまで迫って来ていたらしい。前の席の奴が着席し、教室中の視線が俺へと向けられる。

 

よかろう、ならば聞くがいい――――俺は30を優に超える視線の中で勢いよく立ち上がり、胸元をはだけさせ髪を掻き上げる。そうして朝に姿見の前で研究した格好いいポーズをビシ決め、一言。

 

 

 

「――――六千六百六十六堂院ベルゼルシファウストだ。趣味はゲームとパソコンとお手玉、これからよろしくお願いしよう」

 

 

 

――――瞬間、教室内を包み込む沈黙たるや。

 

 

何というか、最早職人芸ですよね。この六年近くどんだけ同じ事繰り返してきたと思ってんだドアホウが!

教室の何とも言えない雰囲気を流し着席した俺は、隣席の坊主頭に目を向けてみる。ムッツリと目を瞑った。つついてみた。微動だにしない。

 

……やっぱゴリってる奴はダメだな、長い事慣れ親しんだ奴じゃないと。何故か心に隙間風が吹いた錯覚を感じながら、今度は小説版1931臨時急行編を読み込み始めた俺であった。

 

 

⊂月 ⊂日

 

 

中学に上がり男女別々になった俺達だったが、学校内ではともかくとして学校外で会う機会はそんなに減っていなかったりする。

そう、俺のマンションに来る面子三人はまぁ当然として、原作メンバーの奴らともちょくちょく顔を合わせているのである。卒業したら縁が切れると思ってた俺としては、そりゃもう意外だったともさ。

 

原因は卒業式後のバニングス邸でのパーティだ。あの一件より高町一家と面識を持ちそれなりに気兼ね無く翠屋に行けるようになった為、コーヒーを購入しに行った際に結構な頻度でかち合うようになってしまったのである。むしろ学校外に関しては会う機会が増えていると言っても過言では無い。

当然奴らとは顔を合わす度にギャースカ騒ぐ事になるのだが、でもこれ俺の所為じゃ無いよね。強いて言うなら俺を引っ張ったオリ主やそれを許可したアリサ達だべ。俺悪くねぇだ。

 

まぁともあれ、そんな感じで騒がしい付き合いは変わらず継続中という事である。嬉しいのかそうでないのか良く分からんなハハハハ。

 

……にしても高町一家が意外と話せる人達で助かったな、「店のコーヒー美味いっすよ!」と熱弁したのが良かったのだろうか。これからは好きな時に豆を手に入れる事が出来るようになって大変満足である。

良い香りを立て始めたコーヒーメーカーを眺めうむうむと頷き、お手玉をポンポンと回す。いやぁ実に落ち着くひと時だ。ほっこりまったり。

 

そうして来客用のカップを用意しているうちに出来上がったコーヒーを啜り――ふと思い立ち、保温ポットを持ってテレビ前のソファに陣取った。そうしてWiiの電源を入れ、アークライズファンタジアのディスクを差し込む。

今の頭が冴えて落ち着いた状態ならば、詰将棋じみた謁見の間での対鬼畜三人組戦を打倒出来るかもしれん。フフフ、ドーピングされた俺の先読みに敗れるが良い。

 

……まぁ結局は一手ミスってヤンデールの堕歌で一掃。体勢を立て直せないままログレスでこんがりローストされた訳だが。いやはや、頭の冴えには効果無くとも荒んだ心を癒す為にこのコーヒーは超有用だね、本当泣きたくなる程に。畜生。

 

ぐったりとカフェイン臭い溜息を吐き出していると、何時もの如くインターホンが鳴った。

はてさてオリ主かメガネっ娘か、俺は持っていたクラコンを放り出し相手の顔も見ないままにロックを外したのだった。まぁそんな日常である。変わんねー。

 

 

⊂月 ⊂日

 

 

マインドシーカー……っぽい何か。

最早伝説と化したクソ……いやいや、超能力者育成アドベンチャーゲームである。

 

 

未だに研究者の間でマジモンの超能力者かどうかの議論の交わされるエスパーキヨタの指導の下、透視やら念力やらサイキックパワーを開発する……らしい。

この色々な意味で妖気漂う一品を、俺、オリ主、ユーノの魔力持ち三人でやったらどうなるか。というのが今回のゲーム合宿のテーマである。うっひょうヤな予感しかしねぇ、俺ゾクゾクしてきた。雨降ってるからかな。

 

いやいやもしかしたら凄い事になるかもしれないじゃないか、最初から決め付けてかかるのは良くないぞ。うん。

如何にもな地雷臭に酸っぱい顔をしているオリ主とユーノの肩を叩き、カセットをフーフーしてファミコンにガチャコン。妙に緊張しつつ電源を入れ――――気の抜けるBGMと共に過酷極まる修行は幕を開けたのだった。

 

 

ゲームとしてはアドベンチャー形式であり、俺達三人の分身たるゆうのくん(三文字で手頃だった)が、講師たるエスパーキヨタのアドバイスを受けつつコンピューターの出題に答えていく……という流れだ。

話だけ聞くとシンプルで簡単そうに見えるのだが、これがかなり難しい。なにせ出題される内容がちょっとおかしいのである。

 

裏返しになったカードの模様を当てる、5つのランプのうち光る物だけを当てる、念力を込めてボタンを押してランプを点灯させる。これらを何のヒントも無く成功するまでやらなくちゃいけないのだ。どれもこれも完全な運ゲーじゃねぇか。

俺達も大なり小なり魔法なんて非常識に関わる人間であるが、これは流石にキツいキツい。何度も失敗し不合格を言い渡され、そりゃもうアホみたいに苦戦した。途中途中で挟まれるリラクゼーションタイムがまた良い感じにぼんやりしていて、なんか洗脳されている気分になってくる。たしけて。

 

これはもうある種の拷問じゃないのかと思わないでもなかったが、俺達は諦めずに挑戦し続けた。時間も深夜帯に突入し、何だか無性におかしくなっていたのだ。二つの意味でな!

 

ともあれ俺が身体チートに任せてボタンを連打し、ユーノが画面から某かの乱数らしき物を読み取り、眠ったオリ主を二人がかりで蹴っ飛ばし。卒業試験からPSIレベル上げまで変な笑い声を上げつつ突破。

そうして妙なハイテンションに至った勢いのまま最終試練に突入。これまで培ったエスパー(?)能力をフルに使い、エスパーキヨタの待つ扉の向こう側へと辿り着かんと決死の戦いを挑んだのだった。馬鹿か。

 

……が、そこから何度挑戦しても一向に扉を突破する事が出来ない……! 流石は最終局面であるというべきか、念力でのランプ点灯を40回中24回成功させろというアホみたいな試練が立ちはだかったのである。

 

一見すると何かいけそうな気がするのだが、とにかく当たらん。連打しても読み取っても24回目の壁がどうやっても越せないのだ。

ふと窓の外を見れば既に日は昇っており、プレイし始めてから長い時間が経っている事が伺えた。ここらがもう潮時だ……オリ主とユーノが廃人となり倒れる中、俺の脳裏にそんな言葉が過ぎる。

 

そして遂には目も霞んできて、俺自身も廃人の仲間入りしようとした――その瞬間、画面でアラームが鳴り響く。咄嗟に顔を上げてみれば、そこには大きく口を開けた扉の姿があるではないか! どうやら無茶苦茶に連打している内に何時の間にか壁を突破したらしい。

超能力ってなんだっけという疑問が浮かんだ気もするが、俺はいい子なので深い事は考えない! そんな事よりキヨタだ! 会いたかったわ一発殴らせろ!

 

訳も分からず興奮した気分の中、ゆうのくんはその扉を潜った……が、しかしそこにあったのは第二の試練。透視能力で本物の扉を見抜き、再び開錠しろとの事らしい。もう息絶えるしかないよねゲレゲレゲレ。

 

……今なら分かるぞ、この場にいる三人は同じ気持ちを抱いていると。やったねこれで俺もエスパーだ!

精神的疲労からくる無気力感でふわふわと定まらない意識の中、俺はそんな事を思いつつ意識を手放したのだったとさ。もうぜってぇやんねぇ。

 

 

 

で、後日。オリ主とユーノの魔道士としてのランクが爆発的に上がったという話を風の噂で耳にした。いやはや、これでStrikerSも有利に事が運びそうじゃないか。良かった良かった。

 

 

「…………」

 

 

…………いや、流石に関係無いよな? 俺も最近使うスプーンがよく曲がるんだが、ただ力で曲げちゃってるだけだよな? ほら、俺ってチート持ちだし。

柄の部分がぐんにゃりしたコーヒー用のスプーンを力ずくでまっすぐに直しつつ、自分にそう言い聞かせる俺だった。おいやめろよ何か怖いんだけど。ねぇちょっと。

 

 

⊂月 ⊂日

 

 

原作メンバーが海に行くらしい。

 

夏休み。クーラーの効いた室内で希望号のプラモデルを作っていると、何時も通り部屋に入り浸っていたメガネっ娘がそんな事を言い出したのだが、それを俺に言ってどうしようと言うのだろう。勝手に行ってくればいいんじゃないすかね。

もしかして小遣いの催促か? おぉ随分とまぁちゃっかりするようになって、何となく嬉しくなりながら財布に手をかけると慌てた様子で止められた。え、違うん?

 

詳しく話を聞けば、どうやら俺も一緒に行かないかと誘われているらしい。何か最近妙にフレンドリーだよなアイツ等、ちょっと背中が痒い痒い。

まぁ特に断る理由も必要もないので適当に了承しておくと、メガネっ娘は嬉しそうに微笑んだ。そうかそうか、そんなに美しい俺の水着姿が見たいのか。これはちょっとばかり気合を入れてやろうかね、ウフフ。

 

幸いにして彼女が提示した日程にはまだ時間的猶予がある。ならば俺に相応しい大胆な水着を新調してもよろしかろう――そう思った俺はすぐさまネットを回遊。水着の選定に乗り出した。

 

すると出るわ出るわ大胆な水着がもうワラワラと。大事な部分を残して全体が穴だらけになっているような物やら、変態仮面のようなパンツのゴムを肩まで上げた形状の物まで。多種多様なエロ水着がディスプレイいっぱいに広がった。

今まで男の水着なんてどれも似たような物だと思っていたのだが、こうして見ると結構色んなタイプがあるんだな。半ば感心しつつマウスホイールを回し――「……ッ!」ンズキュバッキューン! と胸を撃ち抜かれる逸品を見つけた。

 

それは所謂ボクサーパンツと呼ばれる形状の物で、通常の物とは違い二枚一組で着用するユニークな代物だった。パッと見拳銃のホルスターに見えなくもなく、非常に格好良くて心惹かれる。

……二枚一組、その意味が分かるだろうか。そう、左右の足に一枚ずつ通し、股間をクロスるように隠しつつ腰に引っ掛けるだけという色々と危なげな水着なのである。特に後ろの防御力が無いに等しい。お尻の割れ目も丸見えだし、動けばその奥のお宝穴まで見えてしまいそうだ。

 

流石の俺もこれは大胆すぎるかと躊躇したのだが……この水着ならば俺の美しさ、格好良さを十二分に引き立ててくれるだろうと踏み、一息にポチる。心臓をドッキンドッキン高鳴らせて待っていれば、翌日にはブツが到着。ちゃんと内容物が分からないよう梱包して頂きありがとうございます、ホントに。

で、姿見の前で試着していたら何かテンションが上がってきて、せっかくだから俺専用の物にしてしまおうと最寄りの業者にペイントカスタマイズまでオーダー。右足用にハイゴッグ、左足用には希望号と水棲ロボット仕様の特注水着を作り上げてしまった。いやぁ良いねぇ良いねぇ超格好いいねぇコレ!

 

まぁ本当はときメモヒロインの絵をペイントしたかったのだが、それをしたら彼女達を穢してしまう気がしてどうしても出来なかった。ああ、俺ってホント一途で純粋なんだから。

ともあれこれはこれで超気に入っている。学校の水着もこれで通そうかな。そうウキウキしつつ、俺は旅行の日を楽しみに指折り数えていたのだった。いやはや、皆にセクシーボディを晒す瞬間が楽しみである。

 

 

…………そうして迎えた旅行当日。例の水着を身に付け自信満々に砂浜に繰り出した俺だったが、女子連中にポーズを決めた瞬間に悲鳴を上げられ、直後にオリ主のニーソバットを叩き込まれ昏倒。今後の人生全てにおいて普通水着の着用を強制されるという悲劇に見舞われた。

 

俺の美しさに見合う普通水着がある物か! という魂の叫びも届く事は無く、結局は旅行中も地味な水着を着て過ごす事となったとさ。海や水族館が楽しかっただけにそれだけが残念でならん、全く美意識の欠如した連中である。

ちなみに俺専用水着は捨てるのも勿体無いので部屋に飾る事にした。すると時折メガネっ娘が俺と水着をチラチラ見比べるようになったのだが、見たいのだろうか。言えば喜んで見せてやるのにねぇ。

 

……あ? 女性陣の水着? 原作メンバーは普通に似合ってたし、メガネっ娘も普通に可愛かったんじゃないの? いやそんな事より俺の水着の話の方が重要だろうに全くどいつもこいつも。

 

 

⊂月 ⊂日

 

 

隣席の無口ゴリラ坊主が……いや、これは話す程の事じゃないか。

 

それよりもこの前とある同人2D格ゲーエンジンのトーナメント動画を見てたんだが、何とそれに俺達の作った格闘ゲームの棒人間が参戦していた。

まぁフリーのゲームとして上げてたし特に問題は無いのだが、ホームページも作りかけのまま放置していて連絡先も指定してなかったもんだから事前情報が全く無く、OPで名前とグラを見た時は目ん玉が飛び出すかと思ったわ。

 

しかもちょっと調べてみればカラーチェンジでの強さ調節が妙に細かく、1Pでのカンフーマンにも勝てない弱キャラっぷりから12Pでの鬼巫女と互角にやり会える強キャラ設定まで幅広し。更に技の種類もカオスな事になっていて物凄い魔改造ぶりだった。

元はパンチとキックと特殊技2、3個しか使えないお遊びで作ったキャラであるが、よもやこの様な形で衆目に晒される事となろうとは。

 

……何でこんなマイナーなキャラをここまで弄ったのかは分からんが、何というか、アレだな。作者的にちょっと嬉しい感じがするよな、フフフ。

この程度だったら自分で棒人間を描いた方が良いだろうに、わざわざ俺の棒人間を使ってくれるという事はそれなりに愛着を持っていてくれていると見て良いだろうし、何かこそばゆいぞ。

 

そういや、前に作ったグラ差し替え版格闘ゲーム。PCのファイルに閉まったままどこにも上げてなかったっけ。せっかくだからちょっと適当に手直しして公開してみっかな。

今度はちゃんとホームページも作って、技の種類も背景グラフィックも揃えて。ちゃんとした格ゲーの体裁を整えてみようじゃないか。おお、ちょっとワクワクしてきた。

 

そうして何やら妙に高揚してきた俺は、作りかけのホームページを完成させるべくPCに向き直った――――

 

 

……のだ、が。編集ページのパスワードを忘れて手を加える事が出来ねぇ……! 仕方なく色々と心当たりを当たってみたが、全部ダメ。こうなったら一から作り直すか、あー面倒く……さくない! 全然面倒臭くないぞッ!! 

危ないなぁ、この頃気を抜くと奴が侵食してきよる。こめかみを伝う冷や汗を拭いつつ、キーボードをヘコヘコ鳴らし始めた俺だった。

 

 

⊂月 ⊂日

 

 

ときメモGSでは、ゲームを始めるに当たり主人公の部屋の内装を決める事ができる。

 

その種類は大抵3つ、シンプルな普通の部屋、オシャレな洋風の部屋、そして落ち着く和風の部屋だ。表現の違いはやや有るものの、大体のナンバリングではこれらに限定されている。

選ぶ部屋の種類によってステータスやキャラの登場順に若干の変化が見られるのだが、まぁよっぽど効率を求めない限りは余り気にしなくても良いシステムだ。俺は気にするけど。

 

そしてときメモの血脈を受け継ぐラブプラスでもそれは例外ではない。私立十羽野高校に転校してきた主人公は、新生活を送るに当たり先述の三つの中から部屋のデザインを選ぶ事になるのだ。

俺(六堂院ベル。愛称ヘー)が選んだのは和風な部屋である。いやはや去年の鎌倉旅行よりこちら、和室というものに結構な憧れを感じてたんだよね。

 

それでまぁいい機会だったので、現実世界の俺(六千六百六十六堂院ベルゼルシファウスト。愛称漆黒の堕天使)の部屋も和風に模様替えをする事にした。ゲームの中の俺とより一層深くシンクロ出来るかもしれんしね。

 

畳を敷いたり、壁紙を変えたり、壺を置いたり、俺執筆の掛け軸を掛けたり。部屋にあるグッズの量が量だけに結構手間取ったが、チートを用いてわずか半日で終わらせた。いや本当に万能で助かるな、貰って良かった!

まぁ美少女ポスターとかフィギュアを置いているのは変わらないのだが、それを差し引いても出来上がった和室は中々良い感じになったと思うんだ。特に畳とかな。冬にコタツを出す時が楽しみで仕方がない。

 

そうしてこの模様替えを行った後、俺の部屋に入り浸る連中がそれこそ自室もかくやという勢いでまったり寛ぐようになった。そんなに畳が心地いいか。

いやそれ自体は別に良いんだけどさ、ちょくちょく私物置いて帰るの止めてくれっかな。特にユーノの異世界文字で書かれた分厚い本とか超邪魔なんだけど、さっさと持って帰れよもう。

 

まぁそれはともかくとして、俺は今日も蕎麦殻クッションに身を埋めつつ、マナカの攻略を進めるのであった。最終的には全員攻略してハーレムを作り上げる所存である。ムフッフ。

 

 

 

……後でそれを翠屋にいる連中に得意げに語れば女の敵を見る目を注がれたのだが、お前らそれ視点を変えたブーメランだって気づいてんのか?

よっぽどそう叫びたかったが、あんまり他の奴らに構ってるとリンコがいじけちゃうのでスルーさせていただいた。おーよしよし、そんなにツンケンするんじゃないよヌホホホホ。

 

 

⊂月 ⊂日

 

 

ラーメンが食べたい。

 

ときメモ4で正司と伝説を作っている最中唐突にそう思い立った俺は、湧き上がる衝動に従い下半身を飲み込んで離さないコタツからチートを使って脱出。戸棚を開けてインスタントラーメンの類を探した。

すると1袋だけ残っていたチキンラーメンを発見、他にも無いか探してみたがそれ以外には無いようだ。カップラーメンなら作るの楽だったんだけどな……。

 

少々面倒臭さを…………うん、感じねぇっつってんだべさ。我に返った俺は身体を包み込む寒さを吹き飛ばすように腕を回し、意気揚々と食器棚から丼を取り出した。

ついでに冷蔵庫から常に作って置いてある刻みネギと卵を取り出し、さぁ今まさにチキンラーメンを開封しようとした瞬間――――ピンポーン、とチャイムが鳴った。なんだよ誰だよもー。

 

少しばかりイライラしつつカメラを覗けば、そこに居たのはメガネっ娘。時計を見ればそろそろ彼女が来る時間帯だった。こりゃうっかり。

……これ、一人だけラーメン食べていい匂いさせるのも悪いよなぁ。そう思った俺は泣く泣くラーメンの用意を仕舞い込み、マンションのロックを外したのだった。腹減った。

 

そうして何時も通りの日常を過ごしていた俺達だったが、妙に萎れつつ梅昆布茶を啜る俺を見咎めたらしいメガネっ娘が何事かと訪ねて来た。いやね、ラーメン食べたいの。ラーメンラーメンラーメンメーン。

 

……まるで駄々っ子のように足をバタバタさせつつ美しく呻いていると、彼女は苦笑を一つ零し。食べたかったら食べても良いと仰って下さった。うーん気持ちは嬉しいんだけどなぁ、何か気が進まんのよなぁ。

そんなモヤモヤした気持ちを持て余しつつ、更に激しく足をバタバタバタバタさせ――――ピン、と頭の上に出現したユンゲラーがフラッシュを使用した。そうだ、一人で食べるのがモヤっとするなら二人で食べに行けばいいのだ。

 

幸いメガネの門限も中学生となった事で少しは伸びたようだし、加えて卒業式に会ったあの親御さんの様子なら夕飯を食べて帰るくらいの事は許してくれるだろう。多分。

 

さぁ行くぞメガネェ! 俺の知る中で一番うまいラーメン屋を超ご紹介差し上げてしんぜようでござ候――――!

……そう叫びつつ勢いよくベランダに続く窓を開け放ち親指を立てれば、彼女は青い顔で首を振る。えー? 嫌なの? でも早いんだぜ? 嫌? ああそう。

 

しかしまぁラーメン屋に行く事自体は嫌ではなかったようなので、メガネの親御さんに許可を取り普通にマンションを出発。どうも彼女はラーメン屋に行った事が無いらしく、どこかそわそわしていたのが印象的だった。まぁ落ち着き給えさ。

 

いやぁ、ゲーム合宿明けとかの時に良く野郎共で行くんだけどさ、特に濃厚白湯とんこつが美味しいんだ。サイドは砂肝揚げが中々……。なんて事を腹を鳴らすついでにグダグダ語りつつ、駅前にある俺行きつけのラーメン屋までのんびりと歩く。

もう暦上は冬に入っている所為か外は完全に日が落ち、凍える程に寒かった。大丈夫か、と聞けばホッカイロがあるから平気だそうだ。なーんか前にもこんなんあったよな、臨海学校の時だっけ?

 

当時の事を思い出し懐かしい気分になりながら、俺達二人はゆっくりと街の灯りに溶け込んでいったのだったとさ。

 

そうして食べたラーメンは腹が減っていたせいか物凄く美味かった。食い終わって満足しつつ隣を見れば、メガネのメガネが曇ってたんで思わず激写しちまったよ、ハハハ。

 

 

⊂月 ⊂日

 

 

……久々に、Nepheshelをプレイしたんだ。「っぽい何か」だけどさ。

 

今から6年近く前に作成されたフリーソフトなのだが、ベクターを覗いていたらたまたま見つけて懐かしくなってダウンロードしたのだ。

思えば、これが俺の初めて触れたPCゲームだった訳だ。いやはや懐かしいね、本当に。

 

全体的な見た目は典型的なツクール作品なのだが完成度が高く、独特のしっとりした雰囲気と骨太な難易度がプレイヤーを惹きつけて離さない。特に宝探し要素が楽しくて仕方がなく、当時は数時間ぶっ続けで洞窟に潜り続けたものだ。

 

キャラクターも個性的な奴らが多かった。ファル、ティララ、ディーヴァ……主人公を取り巻く三人の女の子もそれぞれ可愛く魅力的で、プログラムファイルに入っていた一枚絵をよく鑑賞していたっけ。

しかも覚醒後はチートかって位に強くなるもんだから、ボスや赤モンスター狩りやらずっと頼りっぱなしだったなぁ。時の砂を使って無理やりディーヴァのブーストを開放したのも良い思い出である。

 

……しかしながら、俺としては主要キャラでない数多くのNPC達が心に残っている。ストーリーというか、世界の探索が進む度に主人公の顔見知りである冒険者達が死んで行くのだ。

一人、また一人と。主人公は遺跡を進んだ先、洞窟を進んだ先で彼らの死に様を目撃する事となるのだが……誰も彼もが悲惨な最期だった。専用の顔グラも何もない汎用グラフィックなのだが、NPCの全員に性格付けがなされているため死亡した時の喪失感が凄まじいんだ。

 

そうして最終的には酒場に誰も居なくなってしまうのだが……もう、ねぇ。幾ら調停のオーブを手に入れてハーレムを築いていたとしても、全然嬉しくなかった。むしろ虚しさすら感じたね。

今やってもその面白さと寂寥感に陰りは無く、何とも言えない感情が胸中に渦巻いている。まぁ、アレだ。うまく言えないがとても素晴らしいゲームだという事だ。古い作品ではあるがまだ公開されているので、諸君らも是非プレイしてみて欲しい。

 

調べてみればBGM集も同人で発売されているらしく、俺は一も二も無くカートに入れさせて貰った。この作品は音楽も素晴らしかったから。

「でっでっでー、でっでっででー、でっでっでー、っでっでっででー↑」ほれ、今もディーヴァ覚醒BGMを口ずさめるぞ。いや合ってるかどうかは微妙だが。

 

 

そうだ、これは本当に面白いんだ――――そう呟いて感慨深くゲームパッドをグリグリ動かしている俺の心で、何かが熱を持ち始めた。

 

それはこれまでも何回か抱いた感覚。グツグツと煮えたぎる、何かを生み出したいという感情。所謂、俺がクリエイティブ精神と呼んでいる衝動である。

今までのようなエロが絡んだ物ではない。棒人間格闘ゲームを作った時と似たようなそれは静かに、しかし際限なく沸騰し続け。そして遂には俺の心の中にいるオリ主を釜茹での刑に処して白骨に溶かしてしまった。いやグロいグロい。

 

…………格闘ゲーム、本気でちゃんと完成させてみようかな。妙にやる気に満ち溢れた気分の中で俺はぼんやりとそう思い、同じゲーム好きとしての知恵を借りるべくオリ主とユーノに連絡を入れたのだった。

まぁ結局は各々好き勝手に意見を出し合う感じになるんだろうけど、ちょこーっと真面目に頑張ってみたくなったのだ。似合わないって? うるせぇほっとけ。

 

……ああ、それと追加グラフィックも必要だよな。後でメガネっ娘を唆しとこっと。




>プレシア
「あなたは人形なの!」とか何とか言ってしまった手前、引っ込みがつかなくなってここ三年近く家庭環境がドロっていたご様子。
裏でオリ主が面倒だ面倒だ呻きつつ説得を頑張っているらしく、サーチャーでこっそり卒業式を見て号泣したとかしないとか。やったぜフラグ増強だ!

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