新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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初めまして、さじたりうすです。本作は、ガンダムの世界観の一つである、宇宙世紀の世界観に、00的にW系のガンダムを主に介入させるスタンスの話しになってます。

Wガンダム系のガンダムが宇宙世紀にアグレッシブに武力介入してやらかす感じです。

あと、ヒロインはマリーダです。原作のDVD見て彼女の結末が不満でした。彼女自身は悟りの境地に着いた………んですが、やはり観てるこちらからすれば腑に落ちない…

要は彼女に萌えてたんです。ですから「萌える」マリーダを「燃える」ヒイロに救済させてもらう………

私的文になってしまい申し訳ありませんが、 W、宇宙世紀共に、原作好きの方はその点を御了承ください。

小説も初心者故に、読み苦しいかと思います。その点もまた御了承ください。


それではどうぞ。


ファースト・オペレーション
エピソード1 「マリーダが見た流星」


宇宙世紀0079。人々が宇宙に進出し、スペースコロニーに生活圏を広げてから約80年の月日が経とうとする時代。

 

だが、人々が予想していた宇宙生活の希望は次第に折れ曲がり、平和とは名ばかりの地球連邦軍による力による支配下に変わっていった。

 

この情勢に対し、ジオン・ズム・ダイクンとヒイロ・ユイという二人の指導者が立ち上がった。

 

彼らは宇宙移民者・スペースノイドの自治権確立と地球圏の完全平和主義を掲げ、武器を持たない闘いを地球連邦に対して臨んだ。

 

強力な指導者を得たコロニーのスペースノイド達は、苦しみながらも闘い、自由と平和への活路を見いだそうとしていた。

 

しかし、それも僅かな期間であった。

 

ジオン・ズム・ダイクンとヒイロ・ユイは大富豪・ザビ家の謀略により暗殺された。

 

ザビ家はジオンの名を騙り、ジオン軍を立ち上げ、表向きの自治権確立を語り、地球に宣戦布告した。

 

ここに人類史上初の人型兵器・モビルスーツ(以下MS)を運用した地球圏での戦争が開戦したのである。そしてこの戦争が皮切りとなったかのごとく、デラーズ紛争(0083)、グリプス戦役(0085)、ペズンの反乱(0086)、第1次・第2次ネオジオン抗争(0086~0088)と、地球圏規模の戦争が断続的に行われていった。

 

繰り返し行われる人類の所業は変わることなく続き、多くの犠牲者を出しながら歴史を残して時が流れる…。

 

ようやく戦争が終結を迎えても尚、地球連邦はスペースノイドの自治権確立を許さず、支配体制を頑なに継続。更には反抗勢力の討伐に踏み切る。

 

ジオン軍残党軍、ネオジオン残党軍、その他反抗勢力に関係するものは力による討伐。更には、ニュータイプと称される、宇宙環境で変革した人間、又はそれらを模して強化された人間に対して、非人道な所業が連邦の手によって行われていた。

 

戦争から支配と弾圧に切り替わり、更なる混沌が地球圏を覆った。

 

だが、決して反抗の芽が無くなることはなかった。

 

物語は宇宙世紀0095年より始まる……。

 

 

 

L(ラグランジュ)3コロニー群の一角のコロニー・X18388。このコロニーの港に一隻の貨物艦の姿があった。

 

ネオジオン残党の偽装貨物船・ガランシェール。文字通り、偽装貨物船であり、主に仲間の勢力に物資の提供をするのが、この船の任務である。

 

物資は武装関係の物はもちろん、生活における物資も提供している。偽装どころか半ば本物の貨物船だ。

 

物資の積み降ろしをする作業風景はなんだ違和感がない。

 

髭を生やした大柄の中年男性が、ガランシェールの搬入口で、ネオジオンの関係者とやりとりをしていた。

 

男の名は、スベロア・ジンネマン。ガランシェールの艦長を勤めている、部下からの人望も厚い男だ。

 

「いつもの物資はこれで全てだな」

 

「そうっすね。旦那にはいつも世話になりますぜ」

 

ジンネマンは伝票を懐にしまいつつ、穏やかに答える。

 

「なに…御互い様だ。持ちつ、持たれつってやつだ。」

 

「同感すね。何せ潜伏ってのはどうも釈然としませんよね。堂々としたいもんです」

 

「そいつがまかり通れば苦労はせんさ…」

 

短い世間話が流れたあと、ネオジオン関係者の男は、話しを重要な方向へ変えた。

 

「ははは……それで、話しが変わりますが…例の機体の事なんですけど、受け渡し場所が急遽変更になりやして…」

 

「何?連邦の監視が強まったのか?」

 

眉を細めるジンネマン。連邦の監視の風当たりが強まった事と確信した。だが、次に出てきた答えが、それを覆す。

 

「いや、実はまことしやかな噂ですが……受け渡し予定だった場所のコロニーに、我々ネオジオン以外の反乱分子がいるっていう情報がこちらに入りましてね。連邦のガサ入れに巻き込まれる危険性を考えると…」

 

反乱分子の存在は、ネオジオンやジオン軍だけではなく、宇宙、地球問わず各地に存在している。故に連邦のガサ入れも珍しくない。

 

ジンネマン達、ネオジオン残党はその厳重な状況の間に潜みながら反抗の機会を伺っているのだ。

 

「そうか……今はオペレーション・ファントムの前だ。確かにいざこざを起こす訳にはいかんな……承知した」

 

ジンネマンが口にした「オペレーション・ファントム」。それは各地にいるネオジオン、及びジオン軍残党軍による連邦軍への一斉蜂起の作戦だ。

 

連邦軍が拠点を置くセネガルの首都・ダカールに攻撃を加え、それを皮切りに同時多発的に連邦の基地を破壊して大打撃を加えようという作戦だ。

 

彼ら自信、無謀・無茶は承知の作戦だ。しかし、これ程の事をしなければならないほど連邦の愚行は荒んでいた。

 

とあるコロニー。ここには難を逃れたネオジオンの残党軍が駐留していた。コロニー内にテントを張り、各兵士達が久しぶりの安息に着いていた。

 

珈琲やタバコで一服する者。家族共々逃亡してきた者。次の行動を会議する者……様々な表情が野戦キャンプにはびこる。

 

周辺の自治体の者達が、物資や食料を支給する姿も見られた。同じスペースノイド故に、今を生きるジオン軍の苦しみを理解しての振る舞いだ。

 

ネオジオンの量産型MSであるギラドーガや、ガザC達がそびえ立っている下にその光景が広がる。

 

暗黙の了解でこのような振る舞いをするコロニーも珍しくなかった。

 

兵士と戯れる子供達。MSのコックピットを見せてもらっている少年達。そこには人としてあるべき光景があった。

 

しかし、それを否定するかのように、連邦軍の量産型MS・ジェガンが降り立つ。

 

青ざめるネオジオン兵や民間人達。ゴーグルのようなカメラアイを発光させてジェガン部隊はビームライフルを構える。

 

そして、警戒を促さずに発砲。容赦のないビームの斉射が人々を無差別に襲った。

 

無防備状態のMS達が何発ものビームに打ち砕かれて爆発。先程の少年達も、兵士達の巻き添えとなる。

 

ビームの流星弾雨が降り注ぎ、老若男女問わず虐殺されていく。非情なまでに連邦軍は反乱分子に対しての対処を徹底していた。

 

場所が変わり、とあるエリアの廃棄コロニー。ここでは、ネオジオンの艦隊が身を潜めて物資の調達を待っていた。

 

ムサカ級戦艦一隻とエンドラ級戦艦二隻が無重力の中のコロニー内に駐留している。

その周囲には、警戒にあたるギラドーガや、ミサイル支援型のMS・ズサの部隊が時折特徴的なモノアイを左右に動かしながら漂う。

 

その時、一機のギラドーガのモノアイが高速で点滅した。直後、ビームマシンガンをジャキンと構える。

 

敵機を捕捉したのだ。一斉に確機が戦闘体制に移行する。MS部隊が警戒する方角には、連邦軍の巡洋艦・クラップ級戦艦が二隻進攻してきていた。

 

クラップからは、ジェガンや強化されたスタークジェガン部隊が展開を開始。事態は戦闘体制に入った。

 

ビームマシンガンやミサイルの斉射がネオジオンサイドから放たれる中、連邦サイドからも、ビームやバズーカが斉射される。

 

静寂を破壊する戦闘。飛び交う攻撃がコロニーの外壁を刺激する中、ムサカとエンドラが戦闘体制に移行し動き出した。

 

可動する砲塔。だが、クラップ級のメガ粒子砲が先手を打ち、コロニー内に注がれる。

 

その攻撃の直撃を動力炉に受けて、エンドラが爆発。

 

ムサカともう一隻のエンドラがこの爆発に巻き込まれ大破。更なる爆発が連鎖してMS部隊が巻き込まれていく。

 

蹂躙とも言えるこれらの連邦軍の行動は、珍しいものではない。故にネオジオンを始めとする反乱分子が後を絶たないのだ。

 

戦争、弾圧、反乱、弾圧、反抗…悪循環の情勢下が混沌を繋げていく。

 

ジンネマンの言うオペレーション・ファントムもまた悪循環に加担しているのも否定できない事実なのである。

だが、どの勢力も己の信じる大儀、思想を掲げている姿勢があるのもまた事実なのだ。

 

一段落のやりとりを終えたジンネマンが、ガランシェールのブリッジに戻る。艦長座席に着くと共にジンネマンは航行士のフラストに指示を出した。

 

「例の機体の受け渡し場所が変更になった。変更場所はL1コロニー群の廃棄コロニー、D2866だ。フラスト、座標をナビに出しとけ」

 

「了解…」

 

「舵とり、気合いれてけ…ギルボア」

 

「そいつは、常に入ってまっせ!!任してください!!」

 

「ははは…違いない!よし!!ただちに出港する!!ガランシェール出せ!!」

 

出港するガランシェール。その艦内の一室で、頬杖をつきながら外の景色を見る、ネオジオンの軍服を着た女性がいた。ライトブラウンの髪を中間で束ねたヘアースタイルが印象的だ。

 

彼女の蒼い瞳にコロニーから宇宙に出る瞬間が映る。

 

その視線に何を想うかは彼女しかわからない。

 

彼女がふぅっと前髪をかきあげた時、ジンネマンからの室内通信が入る。

 

「マリーダ。今、いいか?」

 

「はい」

 

「お前が乗る、例のMSの受け渡し場所が変わった。今からL1コロニー群へ向かい、そこで受領することになった。もうしばらくくつろいでてかまわんぞ」

 

「了解、マスター」

 

ジンネマンをマスターと呼ぶマリーダ。だが、ジンネマンはこの呼ばれ方をよくは思っていなかった。

 

「マスターはよせ。娘が父親に言う呼び方じゃないぞ。何度も言わせるな」

 

マリーダはジンネマンの養女だった。故にマスターの呼び方で呼んでもらいたくはないのだ。

 

マリーダは目を閉じて謝る。

 

「すみません、マスター」

 

「あのな……まぁ、またあとでな。とにかく休め」

またしてもマリーダはマスターと呼ぶ。ジンネマンは座席にもたれ、マリーダを想う。

 

「ふぅ…いまだにマリーダのネオジオン抗争の呪縛は解けんのか…」

 

「また、マスターでよばれちゃいましたか?キャプテン?」

 

操舵操作をしながら、操舵士のギルボアがジンネマンに視線で振り返りながら言った。

 

「まあな…あの汚れた裏社会から連れ出して数年…せめてこの先は救われていってもらいたい」

 

「同感です。理不尽に創られた、かつてのクローン兵士の生き残りですからね…ですが、今のマリーダは幸せだと思いますよ。キャプテンが父親なんですから」

 

「ははは…フラスト、それこそよせ」

 

話に便乗するフラストに下手な照れ隠しをして笑うジンネマン。彼の記憶にマリーダと出会ってからの日々を想う。

 

マリーダはかつてのネオジオン抗争で闘ったニュータイプ部隊の生き残りであり、当時のネオジオンが作ったニュータイプ少女・エルピー・プルのクローンシリーズであった。

 

彼女達は闘う為に産み出された存在。女性らしい生き方は皆無とも言うべき運命に囚われていた。

 

かろうじて戦乱を生き残った彼女であったが、戦後は身体を裏社会に売られ、幼い少女の娼婦として苦痛の人生を送ることとなる。

 

そこへ、人道的な行動を起こしたジンネマンによって保護され、彼の養子となったのだ。

 

マリーダはじっと頬杖をつきながら、外の広大な宇宙の景色を見つめていた。所々には円筒形のスペースコロニーが浮かぶ。人類の宇宙生活の要かつ代名詞である。

 

進むにつれて過ぎ去っていくコロニーを見つめながらマリーダは、静に呟いた。

 

「オペレーション・ファントム……簡単に言えば、新型機で連邦に大打撃を与え、かつ地球圏の同胞を手助けする作戦……か……」

 

オペレーション・ファントムを前に、彼女なりに色々な物事を考える。少なくとも無茶な作戦は確かであった。マリーダ自身は忠実に貫く一心でいた。

 

各地で蹂躙される同胞達。彼らが連邦に長きに渡り反目するのは、宇宙移民者の公正な国家と自治権確立故なのだ。

 

マリーダもその志に賛同している。それ以前に慕う主がその志を持ってる故であるが。

 

「この情勢で無謀な作戦なのは解っている。どんな作戦だろうと、マスターの為に闘う。任務こそが私の存在意義だ………」

 

マリーダはそう呟きながら、姿勢を変えて頬杖をついて目を閉じた。

 

過去を回想するマリーダ。脳裏にはネオジオンの小惑星要塞・アクシズの宙域で起きていたネオジオン同士の内乱のビジョンが浮かんでいた。

 

ビームの斉射が唸り、爆発の光球が絶え間なく空間に現れ消えていく。

 

その最中、ニュータイプ用MS・量産型キュベレイの部隊が闘う。ハンドランチャーを連射し、同時にニュータイプの遠隔射撃兵器ファンネルを射出して、ターゲットのガルスJやズサ部隊を攻撃する。

 

適格な命中率で、次々と敵機の装甲を射貫くキュベレイ部隊。当時のマリーダも、空間の激戦が表示されるコックピットに身を投じていた。

 

この時のマリーダのコードネームは、プルトゥエルブ。すなわち12番目のプルであった。彼女の姉妹達の声がコックピットに響いた。

 

「敵部隊撃破!!次の新手が来るよ!!」

 

「私達は強い!!とことん見せつけてやろう!!」

 

「ああ!!ファンネルで仕留めるぞ!!」

 

「あまり突っ込みすぎるなよ!!」

 

姉妹が呼び掛けあって闘う。キュベレイ部隊はシンクロしてファンネルを展開。攻撃に移項する。だが、相手もまたファンネルで反撃に出る。強化人間が操るMS・ゲーマルクだった。

 

ゲーマルクは怒濤の勢いで彼女達の部隊に突っ込んできた。ゲーマルクのファンネルがキュベレイ部隊を狙い撃つ。

 

唸る重斉射。キュベレイ部隊は機動性を生かしてかわしていく。

 

「っ!!こいつ!!」

 

プルトゥエルブは、ビームをかわしながらゲーマルクを睨んだ。だか、更にゲーマルクは全身に装備されたメガ粒子砲を乱射し始める。

 

高出力のおびただしいビーム。重斉射音を響かせ発射されたビームが1機のキュベレイを仕留める。

 

「きゃああああっ――――!!?」

 

キュベレイの装甲が粉砕され、爆発音と共に姉妹の悲痛な悲鳴がプルトゥエルブの耳に響いた。

 

更にファンネルのビームがキュベレイを穿つ。

 

「っっ私達がっ……負けっっ……ああああああっ―――!!!!」

 

怒濤の攻撃は連続でキュベレイを襲う。手から胸から連射されるメガ粒子の束がプルイレブンのキュベレイを破壊した。

 

爆発の中に次々と消えていく姉妹達。やるせない気持ちがプルトゥエルブの唇を噛みしめさせる。

 

言い切れぬ怒りがファンネルにも呼応し、ゲーマルクを撃つ。ダメージを与えたが、ついにプルトゥエルブのキュベレイをファンネルが襲う。

 

左腕とファンネルコンテナに直撃。激しい衝撃がコックピットに走った。

 

「うああああああ!!!」

 

自分の死を覚悟した。ダメージによる誘爆の恐怖が覚悟を振れさせる。

 

死にたくない。その一心が芽生える。

 

だか、容赦なくゲーマルクが突っ込んできた。

 

その時だった。プルテンが乗るキュベレイが、両腕からビームサーベルを発生させてゲーマルクに突っ込んだ。

 

ゲーマルクに突き刺さるビームサーベル。同時にキュベレイにもゲーマルクが発生させたビームサーベルが突き刺さる。

 

その時、プルトゥエルブのコックピットにプルナインからの通信が入った。最早最後の会話であることは火を見るよりも明らかだった。

 

「プルトゥエルブ……なんだかんだでアタシが一番突っ込みすぎたね……もうあんたは逃げな!!アタシ達の代わりに生きて!!!!」

 

プルナインのキュベレイは刺し違えるようにしてゲーマルクと共に爆発した。

 

「っ………!!みんな………!!」

 

一瞬で先程まで闘っていた姉妹達が死んだ。戦乱の中、プルトゥエルブは哀しみで戦意が無くなり、その場をプルナインの遺言通りに逃げるように離脱した。

 

その後、プルトゥエルブはとあるコロニーに行きつき、コロニー内をさ迷った。

 

闘う為に産まれた彼女は存在意義を無くしさ迷う。

 

そして、流れ着いた先には10代で幼くして娼婦に成り下がる運命が待っていた。

 

毎日、不特定多数の男を相手にし、妊娠中絶を繰返しながら、女性としての生活は哀しいまでに無くなった。

 

そこへジンネマンの暖かい救いの手が彼女を救った。

 

そして、マリーダ・クルスという名をもらい、再びパイロットとして、そして女性としての人生が始まったのだ。

 

一連のこれまでの人生を振り返りながら寝てしまったマリーダは再び瞳を開ける。

 

場所は既にL1宙域に来ていた。

 

「寝てしまったか……もうL1なのか?」

 

浮かぶコロニーの景色をぼんやり眺めるマリーダ。

 

その時、長方形の箱のような形のMS輸送艦とガランシェールがすれ違う。

 

「っ!!?」

 

マリーダはこの瞬間に不思議な感覚を感じる。強いて言葉で現せば、感覚的に誰かに惹かれるとでもいうのか。ぼやけた意識が瞬間的に覚醒した。

 

「何だ?この感じは?!」

 

ニュータイプは、時折直感的な感応が鋭くなる時がある。不思議な空間に身を投じて直接会わずとも会話できたり(ニュータイプ同士に限る)、予知的、あるいは運命的なものを感応できるのだ。

 

マリーダが感じたのは、運命的な感応だった。通り過ぎていく 輸送艦を目で追う。

 

「それにしても……嫌な感覚じゃない。一体なんだ……鋭いけども優しさも感じる。不思議だ……」

 

瞳孔に映したL1宙域で感じたこの感覚は、マリーダの脳裏に深く刻まれた。

 

「誰が乗っていたのだ……あの船に?」

 

マリーダは過ぎ行く輸送艦に視線を送り、軽く疑問符を投げ掛けた。

 

すれ違っていくその輸送艦内には二人の少年だけが乗っていた。一人は、腕組みしながら前を見据えるナイフのように鋭い雰囲気を宿す美少年。もう一人は操縦レバーを握る、三つ編みのおさげがトレードマークの陽気な雰囲気の少年だった。

 

三つ編みの少年が、操縦しながらサイドシートで腕組みする少年に陽気に話かける。

 

「ヒイロ!!最終段階だぜ!!始まるな、オペレーション・メテオがよ!!」

 

「ああ」

 

かつての指導者ヒイロ・ユイと同じ名前の少年は、単調な返事だけをする。対し、三つ編みの少年は絶えず喋る。

 

「散々コロニーを好き勝手しくさりやがった連邦の連中を『俺達のガンダム』で叩く!!考えただけでも爽快だよなぁ!!」

 

「……各コロニー、資源衛星で造った俺達のガンダムで地球に一斉降下し、連邦の主要基地・施設を叩く。これがどういう意味かわかるか?デュオ」

 

三つ編みの少年の名はデュオ・マックスウェル。ヒイロに対して、非常に明るい少年だ。

 

「ああ!世界を敵にまわすに等しい!!軍規模のジオンの連中でも成しえなかった連邦を叩くんだからな!!」

 

「ただ叩くんじゃない。例の組織殲滅が最終目的だということも忘れるな」

 

「おっとそうだっけな!!けどま、順序は大事だ。まずは連邦に一、二泡吹かせてやろーぜ!!」

 

ヒイロ 「……」

 

輸送艦の格納庫には、翼を持ったガンダムと死神のようなガンダムが搭載されていた。だが、薄暗い為に全貌はよく見えていない。

 

ガンダムは元々連邦の強力な軍事兵器であり、伝説的な兵器であった。だが、彼らの保有するガンダムは一線を画す存在であり、連邦のガンダムとは別次元の兵器であることは強調しておこう。

 

ヒイロ達は先程までマリーダ達がいたL3を目指していた。

 

連邦の目を盗みながらL3の資源衛星MO-3には各コロニーよりガンダムが集結していた。

 

内部のドックにはヒイロ達の輸送艦と同型艦が到着していた。

 

更にその奥には、赤が主体色のガトリングを装備したガンダム、何処と無く鳥を模したような中東戦士のガンダム、かつてのガンダムMk-2を彷彿させる白と黒のガンダム。

 

オペレーション・メテオに投入される4機の各ガンダムが集結していた。

 

パイロットと思われる青少年が顔を合わせていた。

 

優しい雰囲気を纏う金髪の少年、カトル・ラバーバ・ウィナーが敬語で顔を会わせたメンバーに話し掛けていた。

 

「皆さんとは通信動画ではお会いしましたが、直接は始めてですね」

 

「そうだな」

 

鋭いかのような長い前髪が特徴の少年、トロワ・バートンが単調に返事を返す。

 

ヒイロとはまた違う物静かさを秘めた感じがある。

 

「 改めてよろしく頼むぜ!!」

 

軽く明るい雰囲に加えて、どこか熱さを感じさせる少年、アディン・バーネットが握手の手をカトルとトロワに差し出す。

 

続けて彼の兄、オデルが握手する。アディンとは対照的な冷静な雰囲気がある青年だ。

 

「俺達は巨大な組織に闘いを挑むんだ…これは並大抵な作戦じゃない。それぞれ覚悟を固めていこう!!」

 

「ええ!でもその点なら心配はありませんよ。覚悟がなければ此処にいませんから!」

 

「ああ(最も俺の場合、覚悟は物心ついた時にはできていたが)」

 

「ははは!それもそうだな」

 

「兄さん、今更だぜ。当たり前な事言うなよな」

 

今更な事を言ったオデルは頭に手をあてながら笑う。

 

アディンは兄弟故に、オブラート無しでダメ出しする。

 

「う、うるさいな!そう言うお前は任務で余り調子に乗りすぎるなよ、アディン!ただでさえ熱い奴なんだからな」

 

「なっ…兄さん、余計なお世話だぜ!」

 

「熱く気張りすぎてシュミレーションシクリまくったのはどこの誰だ?」

 

「う……最初の頃だろ!!」

 

軽く兄弟の言い合いを始めるバーネット兄弟。カトルが笑わずにはいられず、笑みを溢す。

 

「くすっ!仲がいいんですね。さすが兄弟です」

 

「そーかよ?!まー、いーや……とにかく!!俺は絶対にキメテやるぜ!!見てろ!!」

 

「だが、お互いに競う事が任務じゃないぞ!!その辺履き違えるな!!」

 

「ぐ……わかってら!!このオペレーションは必ず成功させてやるぜ!!!!」

 

主旨が変わりそうなアディンに、待ったをかけるオデル。トロワはやれやれと言わんばかりに目を閉じて腕組みしている。

 

(賑やかな奴だ)

 

トロワは、アディンのやり取りを、冷めた感情で見つめた後、目の前のドックに並ぶ4機のガンダムを見上げた。

 

(オペレーション・メテオ……か……)

 

一方、L5コロニーのとある格納施設には、中国の武術戦士のようなガンダムが眠っていた。ガンダムと向き合う少年が、そのガンダムに語りかける。

 

張 五飛(チャン ウーフェイ)。己の意志を貫かんとする、正義感の固まりのような少年だ。

「始まるぞ…ナタク。俺達で宇宙の悪を斃す時がきた!!打って出るぞ!!」

 

宇宙世紀に変革の火種が燻る。事は歴史の裏で静に、かつ確実に進み始めた。

 

 

 

1週間後

 

 

 

地球の成層圏エリア。地球と宇宙の境目とも言える大気圏に接近する艦艇がいた。

 

ガランシェールである。ジンネマン達の船だ。

 

この日、ネオジオン残党軍によるオペレーション・ファントムが敢行されていた。

 

ガランシェールは、既に大気圏突入段階に移項しており、基本的にMSの出し入れはできない状態である。

 

ガランシェールの格納庫には新型の大型MS・クシャトリヤが格納されていた。以前に「例の機体」といわれていたMSだ。

 

この日の為に建造されたMSであった。コックピットにはマリーダがエネルギードリンクを飲みながら待機していた。

 

つかの間の休息の中、ジンネマンからの通信が入る。

 

「マリーダ、そろそろ大気圏突入の準備をしておけ。もう地球が近い」

 

「了解」

 

ドリンクを飲むのをやめ、すっとスーツヘルメットを着用するマリーダ。計器類を再チェックし、機体のシステムを設定する。操作を終えるとコントロールレバーに手を添えて、モニターを見据えた。

 

マリーダの淡々とした機械的な行動に、ジンネマンはモニター越しに寂しさを覚えた。

 

未だに旧ネオジオンの催眠呪縛が、マリーダの任務の固執に繋がっているからだ。少しでも和らげようと、ジンネマンは少し本音をもらした。

 

「本当はお前を危険にはさらしたくないんだがな。できればここにいてもらいたいくらいだ」

 

「全ては任務の為です。それに、この機体は私でしか動かせない。同胞達の必用な力として闘えるのだから……私は構いません」

 

「マリーダ……」

 

クシャトリヤが投下されれば、その後のクシャトリヤのメンテナンスは、地球の同胞達の手に委ねられる。

 

今生の別れとまでは言わないが、娘同然のマリーダとのこの一時的な別れはジンネマンにとってそれに等しいものがあった。

 

「……来る!!」

 

「!?どうした!?」

 

突然マリーダの表情が険しくなる。連邦軍の襲撃を直感的に察知したのだ。

 

「マスター!!敵機が迫ってます!!すぐに応戦します!!」

 

ガランシェールが敵機を捕捉する以前の報告だが、決してジンネマンはマリーダを疑わない。

 

ジンネマンもマリーダのニュータイプ的な感を理解していた。だが、大気圏突入前にしてが故にジンネマンは出撃許可ができなかった。

 

「ならん!!作戦の大気圏突入前だぞ!!」

 

「成層圏で戦闘すれば最悪、皆のギラズールが重力に捕らわれて危険です!この状況で闘えるのは、私だけです!!」

 

マリーダのクルーを想っての意思に、ジンネマンは少しだけ確信した。マリーダ曰く、大気圏突入しても問題ないのは、その機能が備わったクシャトリヤだけだ。

 

任務への固執はあるものの、マリーダの一人の人間性が少しずつ確立してきているとジンネマンはかんじていた。

 

しばらく出撃指示を躊躇するが、彼女の意思を尊重して、ジンネマンは出撃を許可した。

 

「……早く行って帰って来い。魂だけで帰ってきたら承知せんぞ」

 

「くす………了解!!」

 

ジンネマンは「必ず生きて帰れ」の意味を込めた言葉でマリーダを送り出す。マリーダもジンネマンの想いを感じ、笑みを溢した。

 

ガランシェール内で、クシャトリヤが出撃のスタンバイする。

 

「システム良好、計器異常なし……マリーダ・クルス、クシャトリヤ、出る!!」

 

 

BGM 「モビルスーツ」

 

 

ハッチが開き、ガランシェールからクシャトリヤが出撃に移行する。マリーダは、コントロールレバーを押してクシャトリヤを加速させた。

 

クシャトリヤが、ガランシェールから飛び出す。モノアイカメラを発光させて進行方向を向き、四枚羽のブースターユニットを展開させて加速。敵を感じた方向へと飛び立った。

 

ガランシェールのブリッジではそれをクルー達が見送る。フラストがジンネマンに振り返り、一言言った。

 

「寂しくなりますね」

 

「言うな。わかっている」

 

ふと気持ちを我慢するジンネマン。ギルボアもなだめるように言った。

 

「可愛い子には旅をさせろ…とでも言いますか。遅かれ早かれ……いつかは来るもんです」

 

「……むぅ…」

 

その直後に、敵接近の警戒ブザーが艦内に響いた。

 

「さすが、マリーダですね。艦のセンサーより先に敵の接近を察知してくれましたよ」

 

「当然だ。自慢の娘だからな…」

 

マリーダは成層圏近くで展開しているクラップ級戦艦を捉えていた。展開中のモニターにそれが迫る。

 

「敵機確認……攻撃に入る!!」

 

ウィングユニットのバーニアの出力を上げてクシャトリヤがクラップ級に向かい加速する。

 

そのクラップ級からは、ジェガン部隊が出撃する。その中には武装強化されたスタークジェガンの姿もあった。

 

「敵機が多い。ファンネルでいく!!」

 

クシャトリヤのウィングユニットからファンネルが射出された。それぞれのユニットが、マリーダの意思で動く。

 

接近するジェガン部隊がビームライフルを放った。クシャトリヤはバーニアの出力音を響かせて、それを翻してかわす。真下には広大な地球の海や雲が見える。

 

クシャトリヤのモニターにもそれが映る。マリーダは広大さを感じつつ、ターゲットをロックオンする。

 

モニター画面に映るジェガン部隊。それらをロックオンマーカーが括る。多数同時にロックオンされた。

 

「マスター達の船はやらせない!!いけ!!ファンネル!!」

 

個々のファンネルが、同時にビーム火線を放つ。接近するジェガン部隊の個々にビームが直撃する。

 

射抜かれた部位が高熱を帯びオレンジに発光して溶解するジェガン達。爆発音を上げて砕け散った。

 

ファンネルは、マリーダの意思のままに個々が動く。 それぞれが独自に動き、次に接近するジェガンを撃つ。

 

次々とジェガンの装甲が射抜かれる。連続で爆発し、成層圏に炎の華が拡がった。この時点で、4機のジェガンを破壊していた。

 

その炎をかわして、スタークジェガン4機が一斉に肩のミサイルランチャーを放つ。軌道を描きながらミサイル群がクシャトリヤに直撃した。

 

だが、クシャトリヤの高純度のガンダリウム合金はこれを寄せ付けない。爆発の煙を破ってクシャトリヤがスタークジェガンに胸部のメガ粒子ブラスターを放つ。

 

放たれた高出力の太い火線ビームが、3機のスタークジェガンをかき消すように吹き飛ばす。

 

直撃を免れた1機が加速してクシャトリヤに接近。バズーカを射ち放った。

 

弾丸が胸部に直撃する。激しい衝撃がコックピットを振動させた。

 

「っ……!!!倍返しだ!!!」

 

クシャトリヤのモノアイの眼光が光った次の瞬間に、反撃のメガ粒子ブラスターがスタークジェガンを吹き飛ばす。

 

激し過ぎる高出力ビームが、スタークジェガンをぼろ切れの布地(ぬの)のようにして葬る。

 

爆発、粉砕するスタークジェガン。

 

「次!!」

 

標的をクラップ級に移してマリーダは、クシャトリヤを加速させた。それに呼応して各ファンネルも加速する。

 

連邦側も次の一手にでる。クラップ級のカタパルトから、新型の可変MS・リゼルが出撃。バーニアから青白い炎を噴射して各機が飛び立った。

 

クシャトリヤに対しある程度の警戒的な間合いをとって高速飛行するリゼル部隊。計8機が旋回する。

 

連邦のパイロット達は未登録の新型に警戒感を強める。

 

「相手は未登録の機体か!?」

 

「そのようだ。該当機種はない!!各機旋回して相手の注意を分散させろ!!」

 

機動性を活かした各機旋回。マリーダもニュータイプとはいえ、狙いが選定しづらくなる。

 

「……ちょこまかとっ!!」

 

個々にビームライフルをクシャトリヤに撃ち込むリゼル部隊。

 

だが、ウィングユニットに備わった対ビーム拡散装置・Iフィールドが作動。目に見えない球体の壁にビームが消滅していく。

 

「うざったいんだ!!」

 

マリーダのリゼルに対する状況感覚は、いわば周囲を飛び回るハエ。苛立ちを加味させたファンネルの攻撃が放たれる。

 

走る青白い複数のビーム火線。1機のリゼルが直撃を受けて爆発。3機にビームがかすめ、他の機体はビームを回避した。

 

「1機やられたか!!ビームライフルが効かん!!懐へ飛び込む!!援護しろ!!」

 

隊長機がMSへと変形し、ビームサーベルを取りだした。形成されるビームの刃をかざして一気に斬り込んだ。

 

降り下ろされたビームサーベルをクシャトリヤはウィングユニットで防御した。

 

ビームの干渉でスパークする音が鳴り響く。マリーダはクシャトリヤのパワーを活かして、これをはねのけて見せた。

 

「まとわりつくな!!」

 

はねのけたリゼルを更にクシャトリヤは鋼の拳で殴り、弾きとばす。そして止めのファンネルの火線が、穿つ。

 

砕け散り、爆発するリゼル。

 

更にクシャトリヤはウィングユニットからメガ粒子ブラスターを放ち牽制。2機を撃ち落とす。

 

「作戦のリミットも近い!!一気に蹴散らす!!」

 

メガ粒子ブラスターとファンネルを組み合わせてのフルブラスト・アタック。射線軸上にいた残り4機のリゼルが一気に蹴散らされ、爆散した。

 

だが次の瞬間、高出力のビームがクシャトリヤをかすめた。Iフィールドでビームが弾ける。

 

狙いであったクラップ級が放ったメガ粒子砲だ。更にミサイル群が放たれ、クシャトリヤ目掛けて迫る。

 

次から次へと来るミサイルをかわすのは容易だが、もはや作戦リミットだった。任務に忠実なマリーダは、戦闘を離脱するしかなかった。

 

「作戦発動時間か。やむを得ない……大気圏突入に移行する!!」

 

機体を翻しながら、クシャトリヤは地球へ向けて加速する。

 

ウィングユニットを降り立たんで大気圏突入の態勢に入るクシャトリヤ。だが、更にもう一隻のクラップ級戦艦が援軍で駆けつけていた。

 

搭載されたMS部隊が、展開してスタークジェガンとリゼルの部隊がクシャトリヤに迫る。

 

計器に表示される大気圏突入モード。一度このモードに入ると、安全上大気圏を突破完了まで解除できない。更にはIフィールド機能も、大気圏突入最優先の為にオフとなってしまう。

 

「オペレーション・ファントム……いよいよだな」

 

期待と不安が混じるような高揚感を感じるマリーダ。自分の存在意義を感じてが故に。

 

全天周囲モニターに拡がる広大な成層圏がマリーダの目に止まる。マリーダは、改めて地球の広大さを感じながら見惚れるかのように無心に見つめた。

 

その時だった。

 

「あ……あれは!?」

 

広大な成層圏に降り注ぐ流星群が、マリーダの視界に映る。

 

数は六つ。それぞれが地球に吸い込まれていくように落ちていく。

 

だが、ただの星屑の流星ではなかった。マリーダはこの流星たちが意志をもっていることを感じた。

 

「あの流星………強い意志を感じる………!!」

 

その流星の正体は、反抗の狼煙を携えたコロニーの戦士達であった。

 

デュオ、トロワ、カトル、アディン、オデル、五飛……各々のガンダムパイロット達がそれぞれの想いを賭して降下していく。

 

「さーて……イチ死神としての役目を果たしにいくとしますか!!これ以上奴等にコロニーを好き勝手させないぜ!!なぁ…相棒!!」

 

「オペレーション・メテオ……遂に始まるか……連邦に過去と現在の愚行を清算させてもらう。その先にいる組織にもな」

 

「始まった……今の僕が父上の平和主義に背いているのは解っている。でも誰かが力を手にして戦わなきゃならない時もあるんだ!!」

 

「住んでいたMO-5を潰してくれたツケを払って貰うぜ!!絶対に連邦を叩く!!俺がキメてやる!!!」

 

「見ていてくれ…MO-5のみんな……仇は必ずとる!!さあ、いくぞ……オデル!!!」

 

「地球よ………俺の正義、受け止めてみろ!!俺は正々堂々と、悪を斃す!!!!」

 

彼らの様々な意志を感じたマリーダは、その流星さながらの軌道を描く降下カプセルにくぎ付けとなり、見つめ続ける。

 

自分達以外の反連邦の意志。

 

マリーダは、瞳を閉じて更に意識を研ぎ澄ます。

 

「あれが………私達以外の連邦に反目する意志………!!……まだもう一つの意志が…」

 

マリーダが、もう一つの意志を感じようとしたその時、スタークジェガンやクラップ級が一斉に放ったミサイルやバズーカがクシャトリヤに集中する。

 

装甲に着弾し、コックピット内のマリーダに爆発のダメージの衝撃が襲いかった。

 

「あうっ…!!……っくぅ!!しくったか!?」

 

激しく振動しながら、クシャトリヤの軌道が変わっていく。ダメージは軽微だが、反動による衝撃がクシャトリヤを襲う。

 

「……ダメだっ、軌道が修正できない!!」

 

更にクラップ級のメガ粒子砲が偶然中る。

 

「うあっ……!!」

 

ダメージを受けながら、更に大きく軌道がずれたクシャトリヤ。この軌道では、目標ポイントから大きくずれているのは、言うまでもなかった。

 

この光景を見てジンネマンが叫ぶ。

 

「マリーダ!!」

 

見るしかない状況が実に歯がゆい。歯がゆすぎた感情をシートにぶつけるしかできなかった。

 

「すまん…!!ここからでは何も出来ん!!くそ!!!!」

 

マリーダは現状に身を委ねるしかなかった。振動に包まれた状況の中で目を閉じてやり過ごす。

 

その間にも近づく意志を感じるマリーダに、再びあの感覚が覚えた。ヒイロが乗っていた輸送艦とすれ違う時に感じた感覚だ。

 

「この感覚は!?あの時の……!!」

 

開眼して、あの感覚を感じた方向へと全周囲モニターを見るマリーダ。

 

その方角からは、白が主体色に青と黄、赤のトリコロールカラーを所々施した鳥のような戦闘機が迫っていた。

 

異彩感を放つ翼と、先端に装備された大型のビームライフルが印象的だ。

 

その戦闘機のコックピット内。全天周囲モニターとは異なる三面モニターが拡がる。モニター画面には、連邦とマリーダ達が捕捉され、それぞれのデータが表示されていた。

 

そしてそれのコントロールグリップを握るのは、マリーダが感じた通り、ヒイロだった。冷徹に淡々と状況分析する。

 

「大気圏突入コース軸上にて、戦闘を確認。識別照合……連邦とネオジオンか……連邦のMS12機、戦艦2隻を確認……」

 

ヒイロは、機体を加速させ、自ら連邦の部隊へと飛び込んでいく。

 

ヒイロの機体が接近するにもかかわらず、部隊はクシャトリヤに攻撃を撃ち込み続けた。

 

クラップ級艦長は、クシャトリヤへの砲撃を再度命じようとする。

 

「相手はネオジオンの未登録のMSだ。どんなものかわからん!!ここで徹底的にたた………なんだ!?!」

 

クラップ級のブリッジから高速でMS部隊に飛び込んでいくヒイロの機体が肉眼で確認された。

 

突然の未確認機に唖然を食らうクラップ級艦長 。慌てて索敵班に状況確認させる。

 

「な……!?なんだあれは!?索敵班、どうなっているんだ!?」

 

「レーダーには、ネオジオンの機体しか認識できていません!!あの機体は………索敵不能です!!レーダー反応が有りません!!」

 

「なんだと!?」

 

そう。ヒイロの機体はレーダーに認識されていなかったのだ。遥かに無謀な行動をするその戦闘機に誰もが唖然とした。

 

MS部隊はようやくターゲットを切り替えて攻撃をかけた。だが、ヒイロの機体は驚異的な機動力で攻撃をかわす。

 

ヒイロは機体を横軸上に自転させて、高速で離脱。連邦兵達が放つビームは、虚しく逸れていく。

 

「このまま突破してもいいが……この機体を見た連邦兵は……生かしては帰さない。破壊する……!!!」

 

戦闘機は機体を一気に反転させて減速した。

 

その動きに、連邦兵の誰もが唖然とする。突破して逃げると思いきや今度はこちら目掛けて飛んできたのだ。

 

「な?!!今度はこっちに…!?!なんなんだ!!?」

 

例え任務以外にも遭遇しようものなら、連邦兵器は必ず消す。それがヒイロのやり方だった。

 

更に言えば、任務の障壁となる要素に対しても、同様の意識を持っていた。

 

「戦闘レベル…ターゲット確認。排除………開始……!!!」

 

ヒイロはこのタイミングで、上部レバーに手をかけてスライドさせた。

 

戦闘機の機体各部が変形していく。そして、その姿は翼を持った伝説の戦士へと姿を変えた。

 

 

BGM 「思春期を殺した少年の翼」

 

≪XXXG-01W ウィングガンダム≫

 

 

 

ヒイロは、ウィングガンダムのライトアームに装備された大型のビームライフルを敵機へ向けた。

 

ジャキンと構えた巨大な銃。モニター画面に射線軸ラインとロックオンマーカーが展開する。

 

「バスターライフル、ロックオン」

 

「な!?が、ガンダムだと!?!」

 

「あんな機体、知らんぞ!!それ以前……我々に銃口を向けているだと!?」

 

その姿に驚愕する連邦兵達。常識的に考えれば連邦にとってのガンダムは、伝説的な味方である。だが、その味方であるはずのガンダムが、今まさに自分達に銃口を向けている。

 

「馬鹿な…ガンダムが敵機?!!まさか…コロニーの反乱分子なのか…!!?」

 

連邦兵がそう悟った刹那、ウィングガンダムのバスターライフルが火を吹いた。

 

 

 

ヴァズゥドォオオオォオオオオオ――――――!!!!

 

 

 

「な―――!?!!」

 

その銃口からは、全てを焼き尽くすプラズマ渦流の凄まじいビームが撃ち出された。メガ粒子砲の類いを凌駕するビームがリゼル、スタークジェガンを一直線に呑み込む。

 

容易く装甲が融解、蒸発して各機体が一斉に爆発した。かすめた機体さえもエネルギーの高熱で爆発していく。

 

爆発光と化したMS部隊の炎の華が、いくつも咲き乱れる。

 

MS単機で戦略兵器を撃ち出す前代未聞のこの光景に、誰しもが唖然とした。

 

マリーダやジンネマンも驚きを隠せない。

 

「MSが……単機で戦略兵器を?!!」

 

「なんなんだ、あれは?!!」

 

連邦の兵士も見たことも、置かれた事もない状況に恐怖するしかない。

 

「こんな……こんな機体あってたまるかああ!!!!」

 

残りの機体達が一斉にウィングガンダムに攻撃をかけた。誰もが恐怖をまぎらわしていた。

 

直接ありったけのビームや弾丸の攻撃を受けるウィングガンダム。

 

「撃て!!銃身焼き尽くすまで撃てぇぇっ!!!」

 

連続で撃ち込まれる攻撃。バズーカの弾丸と、ビームライフルのビームが重なって着弾。巻き起こる爆発がウィングガンダムを包んだ。

 

「やったか!?」

 

ガンダリウム合金とは言え、これ程の攻撃を一身に受ければ十分な破壊数値を満たしていた。

 

だが、再び爆発の中からウィングガンダムが現れる。

 

殆どが無傷であった。

 

ウィングガンダムの装甲……いや、それを含む7機のガンダムの装甲はガンダリウム合金ではなかった。

 

「ガンダニュウム……GND合金のこの機体には無意味だ。この装甲は、対弾、対ビーム、耐熱性に極めて優れている。破壊は不可能だ………!!!!」

 

そう言いながらヒイロはトリガーを操作した。

 

エネルギーをチャージしてエネルギーを一気に開放させる。

 

唸るバスターライフル。

 

リゼルとスタークジェガン部隊へと直進し、これらをかき消す。そしてその銃口をクラップ級へと向けた。

 

射線軸にいる残りのリゼルとスタークジェガンが2機ずつになり、攻撃を仕掛けてくる。

 

「MSごとクラップ級を破壊する」

 

再度撃ち出されるバスターライフルのプラズマ渦流が、MSをかき消しながらクラップ級へと直進。

 

凄まじいビームが、クラップ級戦艦を抉るかのように貫通した。

 

大爆発を起こして轟沈するクラップ級。ウィングガンダムは、発射を継続させてもう一隻を撃つ。

 

戦艦の側面からプラズマ渦流が船体を攻撃。もう一隻のクラップ級は「コ」の字に抉られ、激しく爆砕・轟沈した。

 

「任務の妨げとなる連邦勢力を排除。これよりオペレーション・メテオを発動させる」

 

連邦の部隊を壊滅させたウィングガンダムは、再び変形し、大気圏へと突入する。

 

その光景に唖然を続けざるを得ないマリーダ。あの時の感覚を放つ存在がヒイロであることを認識できた。

 

「あの感覚は……彼が……だが………!!!!」

 

突入していくウィングを目線で追いかけるマリーダ。

 

広大な成層圏に彼女の意識は吸い込まれていく中で、彼女のかつて潜在意識が暴走し始めた。

 

「……ガンダムは………敵……ガンダムは………敵…ガンダム………敵っ!!!!」

 

マリーダの中には洗脳の後遺症として、ガンダムを敵と認識するようにされていた。

 

マリーダの意識の中で、当時のZZガンダムのビジョンが過っては消え、過っては消える。

 

「……ネオジオン…か」

 

並走するように落ちていくウィングガンダムとクシャトリヤ。

 

2機は大気圏の摩擦熱を帯びながら紅くなっていく。

 

やがて2機は大気圏を突破する。

 

だが、マリーダは大気圏突破すると同時に、クシャトリヤはウィングを展開。そしてウィングガンダム目がけて一気に襲いかかった。

 

「ガンダムぅぅうっ!!!!」

 

「何っ……!!?」

 

手首のビームサーベルを振るい襲いかかるクシャトリヤ。ヒイロは即座にこれに対応し、ウィングガンダムを変形させた。

 

ウィングガンダムは、レフトアームのシールドで振るわれたクシャトリヤのライトアームを受け止める。

 

クシャトリヤのパワーとウィングガンダムのパワーが激突した。

 

両者は機体を回転させながら縺れ合い、落下していく。

 

「ガンダムは敵!!!!ガンダムは………敵!!!!」

 

「こいつ……!!!」

 

一方的に暴走するマリーダ。クシャトリヤがウィングガンダムのライトアームをレフトマニピュレータ(左手)で固くホールドする。

 

互いに本来の任務が狂いはじめる。

 

互いのスラスターのパワーを反発し合わせながら、いびつな軌道を描くウィングガンダムとクシャトリヤ。

 

ヒイロとマリーダ……二人の邂逅と共に、反抗のオペレーションが切って落とされた。

 

「任務妨害と断定……お前を…殺す!!」

 

 

 

 

 

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