新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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 本二次小説を読んでくださっている皆様、大変……大変長らくお待たせいたしました!!!一年以上も待たせてしまい非常に申し訳ありませんでした!!!
 本来の自分の計画ならば今頃原作でいう所のイブウォー編になっていたはずでした。物凄い遠回りをしてしまいました。

 スランプやモチベーションの低迷、といろいろございました。ですが、決してシスター・ネルさんの感想が影響しているわけではございませんのでご安心ください。

 原因は別にございます。先に感想の件ですがアンサーいたしますと、書いてみたいように書く、描くをモットーにしております(かつ素人者)ので、ご指摘の通りなことが多々にじみ出ると思いますが、そこはご了承いただければ幸いです。 

 ビルゴとトーラス……ネタバレになりかねませんが、名前の通りシルヴァ・バレトとリゼル指揮官機に役割を置き換えてます。更に昔から考えていたMD「サジタリウス」にもビルゴの役目をしてもらう感じです。

 そして滞りの理由の大半は仮面ライダーWを核に、東方シリーズとの二次創作にモチベーションの大半をもっていって、結果手一杯になりスランプするという本末転倒なことをやらかしてしまっていた為です。

 非常に愚かで申し訳ありませんでした。

 まずは「マリーダの真の幸せ」を描き切ることに自らを置き、未定ではありますがどこかで「仮面ライダーW 超常犯罪事件簿」(仮)もやっていければなと思います。


 今後も不定期にはなりますが、極力「金曜日」の更新を目指して頑張ります。

 (金曜=ガンダムで育ちましたので……)

 それでは大変お待たせいたしました!!!本編再開です!!!





エピソード28「覚醒のユニコーン」

宇宙要塞バルジ周辺宙域

 

 

 

2機の真新しいMSが宇宙空間を駆け抜ける。

 

旧連邦軍から接収したドーベンウルフに改造を加えたMS、シルヴァ・バレトだ。

 

2機はスムーズな機動でビームランチャーをターゲッのト機雷に向け攻撃をかける。

 

攻撃は一撃必中な狙いだ。

 

機雷が次々に爆発し、爆発光が拡がっていく。

 

2機は機体を旋回させながら急減速と補助ブースターを使い体勢を整えた。

 

それぞれが狙いを定めたターゲットへほぼ同時にビーム射撃を放ち、フィニッシュの着弾を披露した。

 

「試験終了。データ解析、回収に移る。機体を収用させろ!!口酸っぱく言ってるが、くれぐれも変な気は起こすなよ?ま、貴様らの命は我々の手中にあるのだからな。身をわきまえることだ」

 

一方的に理不尽な言葉を投げ掛けられながら機体のコックピット内でため息をつくのはデュオ、動じる事なく無反応にしているのは五飛だった。

 

二人は捕らえられた後に、ひたすらテストパイロットを強要され続けているのだ。

 

テストを終え、ハッチから出てきたデュオは、不平不満を軽々しく言ってみせる。

 

「へっ……身をわきまえな、身をわきまえなってよぉ、こっちだって耳にタコができるくらい聞かされてるっつーの。毎日毎日何だかのMSの実験に使われてやってんだからなー」

 

「利用されてるだけまだましと思え。俺達は今殺されても不思議ではない身分だ。連中はそれほど俺達に利用価値を見出だしているという事だろう」

 

「五飛、おまえはどっしりしてんだなー。デュオ君はもーうんざりだぜー。ブタ箱のメシだって不味いしな……ま、今は耐えるしかないか……そのうち何とかなるだろ?何とか……な?」

 

「ふんっ……」

 

不満と投げやりな言動にどこか含みを持たせたデュオは、MSデッキ上ですれ違う一人のOZ兵士へ視線を向け、五飛も同じくその兵士とすれ違い際に一瞬視線を向けて鼻で不敵に笑う。

 

そしてそのOZ兵士もまた口に軽い笑みを浮かべていた。

その一方において、二人を遠くから観察していたOZの整備兵が見下すように言う。

 

「まだまだ利用できるなあいつら。採取したデータは今後のMD開発に大いに利用できる。生のMD……薬物無しであのパフォーマンスは究極の生体ユニットだ」

 

「このデータはシルヴァ・バレトにOZの技術とMDシステムを組み込んだ別の新型MD・シルヴァ・ビルゴに反映される。つまりはガンダムパイロットが大量に生まれるに等しい……!!!」

 

「あいつらのデータが反映されても、オリジナルは機密書類の原本みたいなもんだからな。あいつらの補完と利用は必須だ。よし、データはまたツバロフ技師長に送信報告する」

 

「了解」

 

OZプライズの最高技師ツバロフのデータベースにそのデータが送信され、そのデータをツバロフが直接閲覧する。

 

「連日いいデータばかりが届く……ゆくゆくはこのデータとオリジナルを戦わせる。どの道これからは生体ユニットと見なしたプライズの選ばれた兵と私が造り出すMD達が戦争と宇宙世紀を変えるのだ……くくくっ!!!」

 

データベースに映し出されるシルヴァ・ビルゴのデータ。

 

ベントナは強化人間に対して狂心を抱くタイプだが、ツバロフは機械に対して狂心を抱くタイプの人間のようだ。

 

更にツバロフは、もう一つのMD案である「サジタリウス」のデータを開く。

 

技師長室にツバロフの野心を募らせた笑いが響いた後にサジタリウスを誰もいない空間で語る。

 

「サジタリウス……以前より案はあったが最終的にはヴァイエイトとメリクリウスのデチューン機として事が運んだ。その名の通りに射撃性能……特に精密射撃を特化させ、α型には高出力の疑似GNDエネルギーを持続的に撃ち飛ばすことも可能なパーシスター・ビームライフルを、β型には簡易化させたビームカノンを装備・実装。最強の量産型MDとなるぞ……!!!」

 

宇宙要塞バルジでは日々、新型MDの開発を促進させており、テストとデータ採集に追われていた。

 

配属着任したディセットは捕らえたデュオと五飛のMS操縦技術に目をつけ、処刑ではなくモルモットとしての利用価値を見いだしているのだ。

 

「ガンダムのパイロット……使えるな。あれ程のデータを叩き出すパイロットはプライズにもそういない……」

 

ディセットはバルジから警備に展開中のリーオーやリゼル・トーラスを見ながら部下に語る。

 

「ですね。やつらのガンダム要素はつくづく利用価値を感じてしまいます。ディセット特佐、ウィングゼロなるガンダムはいつまで補完を……?」

 

「あのガンダムか……こちらで抑えているガンダム開発者達の言葉を恐れ、これまで隔離していた。どうもガンダムデルタカイ同様、パイロットを暴走させ、破壊を招くらしい。それも地球圏規模の破壊だそうだ」

 

「そんな……バカな……」

 

「ガンダムデルタカイ自体が捕らえたウィングゼロというガンダムを参考に建造されている。事実、テスト時に廃棄コロニー3基を破壊した上に、周辺の味方機をも破壊して暴走に至った。」

 

ガンダムデルタカイのバスターファンネルによるコロニー破壊実験がメテオ・ブレイクス・ヘル壊滅より一ヶ月後に行われていた。

 

 

 

 

 

 

唸るビーム渦流を放つ2基のバスターファンネルが、廃棄コロニーを縦横無尽に切り裂き、分解へと導く。

 

更にビーム渦流を集中させて別の廃棄コロニーに撃ち込むと、ビーム渦流の高エネルギーがコロニーを貫通し、更に外壁を超高エネルギーで満たした後に大爆砕を巻き起こす。

 

その後、リディは暴走し、周囲のリーオーやリゼル・トーラスを次々にバスターファンネルやメガバスター、ハイメガキャノンで破壊を強行。

 

ビーム渦流たるビーム渦流をぶち撒き、破壊に破壊を重ねた。

 

遂には同行していたOZプライズ所属のクラップ級巡洋艦を3隻破砕させる事態に発展したのだ。

 

その後リディは特定の任務や指定された掃討任務時以外は幽閉され、彼女であるミヒロ特尉が精神安定を踏まえながら付き添う日々を送っていた。

 

だが、リディが叩き出したデータは目を見張るものがあった。

 

更に言えばその後の実験では被験者のほとんどがシステムに耐えかねて、絶命する結果となった為に、生還したリディを重補したのだ。

 

 

 

 

 

 

以上を踏まえればオリジナルたるウィングガンダム・ゼロは如何に危険かが予想できた。

 

「だが……近々遂にウィングゼロの実験が成されるそうだ。今は力ずくでも反抗の芽を潰さねばならんという事だ」

 

ディセットいわく、地球圏の至る所で反抗の芽を潰す動きと抗う動きが見られた。

 

カーディアスが危惧する宇宙世紀の疲弊は目まぐるしく加速の一途を突き進んでいるようであった。

 

囚われているガンダム開発者達もまたウィングガンダム・ゼロの実験を危惧する中、ドクターJとプロフェッサーGがほとんどの会話を成立させて話し合う。

 

「聞いたか?ウィングゼロの実験が成されるようだ」

 

「馬鹿な連中だ。デルタカイで結果は判っておろうに……リディとかいう奴は適応とも不適応とも言えん中途半端な状態だが、ゼロは適応力を持った一部の奴でしか扱えん。あいつらの中でもヒイロと五飛だけしかいなかったんだ」

 

「どうやらキルヴァとかいう狂った強化人間の奴を乗せる計画のようだ……間違った奴が乗れば、ウィングゼロ周辺のコロニーは沈むぞ」

 

「密かに開発中のガンダムデスサイズ・ヘルとアルトロンガンダムの開発……来るべき時に備えて急がねばな……」

 

博士達いわく、バルジの格納庫で改修中のガンダムデスサイズとシェンロンガンダムがあった。

 

OZプライズは孤立化したGマイスターや特定の兵士、強化人間を最大限に利用し、圧倒的な弾制圧と秩序をもたらそうと画策していた。

 

その一人のキルヴァは情事に身を重ねてシーツにくるまり、再調整されてしまったロニを抱いていた。

 

強化調整を終え、再び己の欲望のままに行動する。

 

「キヒヒ……今度は破壊任務の実験だとよ……ロニ。宇宙に行ってくるぜ。」

 

「うん、必ず戻って来て……キルヴァ。私にはキルヴァしか……」

 

「……あたりめーだ。お前は俺のモノだ……キヒヒ(ベントナのオッサン……いい具合にロニを調整してくれたな……益々理想的な構想になってらぁ……!!!)」

 

そしてそのベントナを顎で指示する月の女帝・マーサが腕を組みながらベントナと共に今後の方針を企てていた。

 

「ミズ・マーサ……またキルヴァを自由の身にしてはいますが今後は?」

 

「無論、プルトゥエルブの奪還と確保。そして二人を利用してラプラスの箱そのものを破壊させるのよ」

 

「しかし……プルトゥエルブの所在地が不明ですが……」

 

「大体は検討はついているわ。資源衛星パラオ……私と繋がりがある地球圏に散りばめられた『例の組織』のエージェントからの情報よ……」

 

「ミズ・マーサ?!!」

 

「先にOZプライズが向かうような話しを聞いているから今は彼らにパラオの戦力状況確認してもらいましょう……そしてプルトゥエルブとガンダムのパイロットの奪回及び連行も既に秘密裏に依頼してるわ……うふふふっ!!」

 

 

 

L1コロニー群 インダストリアル7市内 夜間

 

 

 

コロニー内の時刻が夜に切り替わり、浅い夜の時間帯を迎え、コロニー内には夜景が敷き詰められたように拡がっている。

 

円筒状に奥ばんでいく夜景はどこか幻想的にも写る。

 

その夜景の直中をアディンとプルが行く。

 

二人して歩きながらシェイクとホットドッグを飲み食べ歩いており、アディンの腕にはプルが欲しがったアクセサリーや服、雑貨の品々が下げられていた。

 

プルも楽しげに笑みを浮かべており、最早完全にデートを楽しんでるようだった。

 

一応はアディンの身からすればボディーガード兼ラプラスに関する任務中ではある。

 

アディンは自らの状況にツッコミをしたくなり、食っていたホットドッグを飲み込むとソレを吐露した。

 

「俺……任務中……だよな?いくらなんでも遊び過ぎじゃね?ヤバくね?」

 

「自分でもすっかり楽しんでるじゃん。説得力ないなー。今さら硬いコト言っても……」

 

「……はい……その通りです。すいません」

 

「じゃーもっと楽しも!あ!あのブティックショップ雰囲気良さそう!コレ食べ終わったら寄ろ!」

 

「任務了解……」

 

二人は路駐の壁に背もたれしながらホットドッグを頬張り、シェイクを飲む。

 

客観視すると、あからさまに少しの歳の差カップルのように見える。

 

別の言い方をすれば、二人は自然体に見えていた。

 

ホットドッグをひときれ飲み込むと、アディンは自ら言った言葉に懐かしさを感じる。

 

軍の力にたった七人で武力介入した頃の懐かしさ。

 

否、七人だけではない。

 

今亡き支えてくれたウィナー家やエージェント達を含め、皆で時代や現状を変えようとした頃だ。

 

「任務了解……か。何か久しぶりに言った気がするな……」

 

アディンは「任務了解」の言葉から直ぐに亡きオデルと兄弟で任務をしていた時を思い出し始めた。

 

懐かしさと哀しみ、つらさが混じる感情を味わう。

「兄さん……」

 

アディンの脳裏にオデルの最後の瞬間が甦り、ホットドッグを食べる勢いが止まる。

 

「アディン……」

 

アディンは今でも背中合わせのようにオデルを死なせる方向に導いてしまった自らの不甲斐なさを責める気持ちを持っていた。

 

その感情を感知したプルは、少しの間その感情に共感し、憂いの表情でアディンを見つめる。

 

だがすぐにクスッと笑みを口元に表し、アディンの頭を撫でた。

 

「お、おい!?や、やめろよ……恥ずかしいからよ」

 

「アディンは悪くない。そう……アディンは悪くないよ……」

 

プルのその励ましに、アディンの気持ちに恥ずかしさと嬉しさが混ざる。

 

それと同時にもう一つ思い出す事が過った。

 

口癖の域と言っても過言ではない、ヒイロがよく言う言葉でもあった。

 

「そう言えば……あいつもよく言ってたな……ヒイロのヤツが……任務了解って」

 

アディンはそう言いながらコロニーの上を見上げた。

 

星空のように夜景が拡がっている。

 

その星空夜景に吸い込まれるような感じを味わいながらプルは答えた。

 

「うん……今でも諦める事なく戦い続けてる。そんな強い意志の感じがこの向こうの宇宙から感じてくる……それに……聞いて驚いちゃうかもだけど、近いよ!!ヒイロの感じ!!」

 

「え?!!マジかよ?!!」

 

「うん……!!」

 

 

 

一方のその外では、ひっそりと確実にECHOESの部隊が展開していた。

 

メテオ・ブレイクス・ヘル壊滅作戦時に約9割の部隊をラボコロニー自爆に巻き込まれたECHOESは、現在OZ宇宙軍の隠密部隊として存在していた。

 

ECHOES部隊はインダストリアル7の外壁に沿わせるように輸送艦を隣接させ、ECHOESロト3機、ECHOESジェガン3機、ECHOESジェスタを出撃させる。

 

その中には当時にディセットと共に作戦指揮を務めていたダグザ中佐がいた。

 

「ラプラスの箱に関する重要なファクターがある。我々は連邦時代からその存在を把握していたが、未だに何なのかは判明していない。判っているのは当時の連邦政府を根底から転覆させる程のモノだ」

 

「無論、今のOZも……?」

 

「その通りだ。故に今この時に把握し、掌握する必要がある。これより鍵を握るビスト邸へ突入するルートを確保し、タイミングを見計らいビスト邸に突入する」

 

「はっ!!」

 

その時、ダグザの通信機が部下からの通信を受信した。

 

「ダグザ隊長!!報告致します!!つい先刻、本コロニーの周辺エリアで展開していたOZプライズの部隊が、壊滅したとの報告を受けました!!」

 

「何!!?」

 

部下との任務に関する疎通の最中、近隣エリアで展開中だったOZプライズの部隊が壊滅したとの報告を受けたダグザは、部隊を二分し、ラプラス捜索隊と未確認機警戒隊を急遽編成した。

 

ダグザは警戒隊の指揮を執り、副隊長のコンロイに捜索隊を任せ侵入ルートの確保に向かわせた。

 

「今回の任務はあくまでラプラスの箱に関するモノである!!本来の任務を忘れるな!!頼んだぞ、コンロイ!!」

 

「はっ!!ダグザ隊長もお気をつけて!!」

 

インダストリアル7内の裏口ルートをコンロイ隊がロトに収用されながら駆ける一方、警戒隊が突っ込んで来る未確認機を捕捉する。

 

ダグザは隊長として最前線の危険性が高い任務を選択したのだ。

 

ECHOESジェガンとECHOESジェスタが警戒しながらビームライフルとビームバズーカを構えた。

 

「未確認機捕捉!!真っ直ぐ突っ込んでくる!!」

 

「あれは……MS輸送艦!!?だが、かなりの速度だ!!!とてもこれからコロニーに入る速度ではないっ!!!各機迎撃!!!」

 

ECHOES部隊各機が輸送艦に向けて砲撃を慣行する。

 

攻撃力は輸送艦に対しては十分過ぎであり、瞬く間に輸送艦は爆発し、爆発光と化した。

 

「目標撃破!!引き続き警戒……っ!!!」

 

その時、モニター画面に映し出されたのは、爆発の中からから現れたのは翼を持つシルエットのMSだった。

 

「MS!!!?やはり……あのガンダムなのか?!!」

 

次の瞬間、その機体は一気にECHOESジェガンへ迫り、構えたライフルを胸部に銃口を突き刺した。

 

 

 

ディガギャアァアアアアッッ!!!

 

 

 

レフトアームを半壊させているが、紛れもなくそれはウィングガンダムリベイクであった。

 

「展開するECHOES部隊を確認……破壊する!!!」

 

ヒイロの静かなる殺意をのせたウィングガンダムリベイクは、プロトバスターライフルを突き刺したままECHOESジェガンを振り回す。

 

そして、銃口の向こうにコロニーが無い空間所で機体を止め、極限の零距離射撃を放った。

 

 

 

ヴァズダァアアアアアアアアアアッッ!!!

 

グワヴァァアアッッ……ヴゥゴバァアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

爆砕するECHOESジェガンを尻目に、別のECHOESジェガンへと飛び掛かる。

 

高速機動に対応し切れず、取り付かれたECHOESジェガンはプロトバスターライフルの銃身で縦横無尽の打撃を受け続けた。

 

ビームサーベルが無ければ、ガンダニュウム合金故の超高硬度を持つ銃身で格闘するまでだ。

 

ヒイロは再びECHOESジェガンの胸部にプロトバスターライフルを突き刺すと、その状態から加速して展開するECHOES部隊の拠点であるMS輸送艦に急接近する。

 

ヒイロはインダストリアル7の爆発被害距離を考え、外壁側に回ると、輸送艦にECHOESジェガンの機体をめり込ませるまでの力でぶつけた。

 

ヒイロはインダストリアル7の反対方角にプロトバスターライフルの引き金操作を慣行する。

 

「破砕する……!!!」

 

 

 

ヴゥッッ……ヴァズダァアアアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

「がぁあああああああ!!!」

 

「おぉおあああああっ……!!!」

 

 

 

ヴゴォガゴゴゴバァガァオアアアアアアアアッッ!!!

 

 

ECHOESジェガンのパイロットをかき消し、MS輸送艦を内部から破裂させるように爆砕させてECHOES隊員達を爆死させた。

 

「な……!!!貴様ぁああ!!!」

 

自らを任務の歯車と規定した男の「たが」が外れ、感情が解き放たれた。

 

残されたECHOES隊員達を失ったダグザは、その感情の突き動くままの行動を起こし、ECHOESジェスタをウィングガンダムリベイクへ突撃させる。

 

「何故今になって……!!!」

 

ビームライフルを連発し、必中でウィングガンダムリベイクに撃ち中て、その機体を爆発に巻き込ませていく。

 

「ちっ……!!!」

 

「……現れたぁ!!?」

 

ビームライフルを捨てながら、ビームサーベルを引き抜いて斬り掛かるダグザ機。

 

斬撃はプロトバスターライフルの銃身に受け止められ、スパークする。

 

「貴様らの行為によって……多くの隊員が散った!!!歯車故に覚悟はしていた……だが限界だ!!!」

 

幾度も斬撃をウィングガンダムリベイクに対して叩き込んだダグザ機は、一瞬の隙を突いてウィングガンダムリベイクの背後に回り込み、左翼側のウィングユニットをホールドした。

 

怒り任せのようにジェスタのジェネレータエネルギーゲージのリミットをカットする操作をし、ビームサーベルをウィングガンダムの左翼ジョイントに叩き込む。

 

基本、構造的にジョイントは弱いウィークパーツだ。

 

疑似GNDドライヴ搭載機のECHOESジェスタ故に、パワーがGNDドライヴ搭載型のガンダム並みに上昇していた。

 

「貴様らの時代は……反骨精神の輩の時代は……徹底的に潰す!!!」

 

ジョイントを溶かしながら、左翼ウィングユニットジョイントをへし折り、斬り捨ててみせるECHOESジェスタ。

 

そして、更に勢いを増しながらレフトショルダーを斬り潰す。

 

「くっ……!!!左翼ウィングバインダーユニット、レフトショルダーユニット損失……!!!」

 

ヒイロは機体損失を把握しながら反撃の一手を狙う。

 

ダグザはひたすら滅多打ちにビームサーベルを叩き込み続ける。

ウィングガンダムリベイクは斬り裂かれる事なく、装甲を少しずつ歪ませていく。

 

「貴様らの存在価値はっ……既に……終わっている!!!絶対に……認めんっ!!!反抗の芽はっ……」

 

ECHOESジェスタが最大出力の刺突体勢になった瞬間にヒイロはプロトバスターライフルの銃口をECHOESジェスタのコックピットハッチに突き刺した。

 

「おおおおおっっ……!!!」

 

 

ズガドォッッ!!!

 

 

 

「ごぉがぁっ……がぐはっ!!!」

 

 

 

ダグザは画面正面から一気に押し迫ったプロトバスターライフルの銃口に押し潰され吐血。

 

次の瞬間にプロトバスターライフルがビーム渦流を唸り放った。

 

 

 

ヴァズダァアァアアアアアッッ!!!

 

 

 

破裂するようにダグザのECHOESジェスタは激しく吹き飛ばされ爆散した。

 

ヒイロは直ぐ様コックピットハッチを開き、ECHOESジェガンのコックピットハッチに取りつく。

 

ハッチを外部から開けたヒイロは、刹那的速さでECHOESパイロットへ携帯していたハンドガンを撃ち込む。

 

そして機体を奪い、ウィングガンダムリベイクを放棄したままインダストリアル7内に突入した。

 

「必ずこの後にOZ、OZプライズ所属の戦艦が来る……あえてガンダムは回収させ、注意を向けさせる。同時に今一度俺達の存在意義を確かめる。今はECHOESを叩く……!!!」

 

ヒイロは戦い続ける意志を絶やす事は微塵もない。

 

今行動に移すべき戦いを絶え間なく模索し、実行し続けているのだ。

 

コロニー内の裏ルート内をブースター噴射で駆け抜けながら奥へ奥へと潜入していくヒイロ。

 

進行しながら通路を右折した時、モニター上にECHOESジェガンが3機、ロトが3機通路上に姿を見せた。

 

「やはり先行部隊がいたか……」

 

ヒイロは当然のごとく予想しており、相手が味方機体の識別信号で油断した隙を突き、ビームバズーカを撃ち放った。

 

1機のロトへと直撃し、破砕爆破させてみせる。

 

当然のごとくながら反逆者と躊躇なく見なし、ECHOESジェガンがビーム射撃を開始した。

相手が射撃をするタイミングと共に右側通路へ飛び込んで回避するヒイロ機のECHOESジェガン。

 

ビームライフルのビーム射撃が通路に唸る中で、ヒイロは通路角から最小限に機体を出し、シールドミサイルを撃ち放つ。

 

空間をかっ飛びながら奥面の壁にミサイルが着弾し、ECHOES部隊の近距離で爆発を巻き起こした。

 

爆風に当てられながら身構える3機のECHOESジェガン。

 

そして再び射撃体勢に移った次の瞬間、爆煙を突き破ってヒイロ機体のECHOESジェガンが1機のECHOESジェガンにビームバズーカの砲口を押しあてた。

 

刹那に唸ったビームバズーカは激しくECHOESジェガンを爆砕させ、自らのビームバズーカの砲口をも破壊。

 

瞬時にビームサーベルへ装備を切り替えたヒイロは、唐竹斬撃を面前のECHOESジェガンに食らわせ、その場から機体を離脱させた。

 

爆発が後方で唸り、その爆発の中へと機体を突っ込ませる。

 

その時、レフトアームに爆煙から飛び出したビームが被弾し、肩ごと爆発する。

 

ヒイロは構うことなく、ビームサーベルでECHOESジェガンの胸部を突き刺し、そのまま走行する1機のロトに突っ込ませた。

 

激しい激突衝撃がロトを叩き伏せ、同時にビームサーベルの突き刺しを受けたECHOESジェガンが爆発し、ロト諸とも破壊した。

 

これにより、ライトアームを失ったヒイロ機は構わずにロトを追撃する。

 

通路上を走行するロトを確認したヒイロは、最後の一手であるグレネードランチャーをロック・オンし放った。

 

グレネード弾は1機だけのロトを破砕させて終わった。

 

「1機撃ち漏らしたか……後は追撃に専念する」

 

ヒイロは捉えている3機目のロトを追撃し、更にその状況内で自機体であるECHOESの任務データを調べた。

 

「……ラプラスの箱……?」

 

 

 

デート(?)を終えたアディンとプルは、ジンネマンやフラスト、アレク、ベッソン達と合流し、ビスト財団とのアポが取れた為にビスト邸を訪れていた。

 

待つ間にアディンはジンネマンから説教めいた感じで指摘を受ける。

 

「全く……予定よりも大幅に遅れちまった。アディン、すっかり遊び呆けていたみたいだな」

 

「す、すんません……でしたっ」

 

「もー、パパ!!アディンばっか攻めないでよ!!あたしがわがまま言ってたんだから!!アディンはあたしのコトずっと考えてくれてたんだから!!」

 

「う……プル……ううむ……」

 

義理娘のプルに押され、ジンネマンのぐうの音も出ない様にフラストは頭を片手で抱えながら言う。

 

「なに娘に押されてんすか?キャプテン……親バカ丸出しですよ?プル……俺達はパラオを始めとした資源衛星やコロニー市民達の希望の可能性にこれから接触するんだ。遊びもホドホドにしとけってことだ」

 

「ぷぅ~!それに、ヒイロも近くに来てるんだよ!!マリーダの好きなヒイロが!!」

 

「何だと!!?コロニーにいるのか?!!」

 

マリーダの大切な存在であるヒイロの生存を知ったジンネマンは動揺を隠せなかった。

 

「うん!!コロニーの中!!感じるよ……!!」

 

その時、モニターに執事と思われる男が映った。

 

ジンネマンはどこかで見たような記憶を過らせた。

 

『ご用件を』

 

目的はラプラスの箱に関する交渉である。

 

ジンネマンはヒイロ生存の歓喜を抑えながら身分証と交渉に関する合言葉を告げた。

 

しばらくして玄関扉が開き、執事と思われる今亡きジオンの将・エギーユ・デラーズ似の男がジンネマン一行を迎えた。

 

ジンネマンもこの時に先ほど過らせた記憶に納得した。

 

「パラオのネオジオンの方々ですね?執事兼ボディーガードを務めさせていただいています、ガエル・チャンと申します。話はカーディアス様から伺っています。さ、どうぞ中へ……」

 

ジンネマン一行は互いに頷き合いながらビスト邸の中へと入った。

 

接待室へと歩く一行は途中、「ユニコーンと貴婦人」のタペストリーが飾ってある廊下を通過する。

 

「キレイな絵ーっ」

 

それを見かけたプルはやや棒読みのように言ってみせる。

 

「ホントだ。ユニコーンか……なんか角ガンダムを思い出した……っ!!!」

 

アディンは直ぐに兄・オデルの敵である、リディを連想させてしまい、厚い怒りに駈られ、拳と歯ぎしりを固くした。

 

元々リディが、ガンダムデルタカイに搭乗していた以前はユニコーンガンダムのパイロットだった為だ。

 

幾度か剣を交え、ヒイロとゼクスのような好敵手に成りうるはずの兵士だった。

 

だが、ガンダムデルタカイのリディはそれを見る影もなく無くした上に、オデルを殺した。

 

思わず隣にある甲冑を殴りそうになるが、それを感じていたプルはアディンの袖を引っ張り、憂いの表情で首を振った。

 

アディンは我に帰り、ふぅと溜め息をつくと再び歩き出した。

 

ガエル先導の元、接客室に招かれた一行は、ブロンドカラーでミディアムショートヘアーが似合う美人のメイドに、紅茶と洋菓子をもてなされた。

 

「イギリスより仕入れた高級茶葉を使った紅茶と高級スコーンになります。当主が来るまで今しばらくお待ちくださいませ……」

 

「これはこれはかたじけない……本当に我々などが頂いてもよろしいのですか?」

 

「ご謙遜なさらずにどうぞご遠慮なくお召し上がりください」

 

「わー……美味しそう!頂きまーす!」

 

プルは下手気味なジンネマンに対して遠慮なく高級なもてなしを頂く。

 

「こら、プル!こういう所では少しは遠慮しながら、行儀よく食べなさい!」

 

「だってパパ、遠慮せずにって……すっごく美味しそうなんだもん。そりゃ食べちゃうよー……」

 

「くすくす、本当にご遠慮せずにどうぞ。素直で可愛いお嬢様ですね」

 

「あ、いや……どうもすいません」

 

わがままなプルの態度に詫びるジンネマンではあるが、プルはとことん素直に発言する。

 

「ふふ♪そう言うお姉さんも可愛いよ☆」

 

「え!?あ、私こそそんな……!」

 

プルにストレートに可愛いと言われたメイドは困り気ではあるが、顔を赤くした。

 

「そーそー!すっげー可愛いよ、お姉さん!!名前なんて……っいってててて?!!」

 

可愛い発言に便乗したアディンの耳をプルはぎゅうと引っ張った。

 

無論妬きもちからだ。

 

「アーディーン~!!」

 

「いててててっ、なま、名前聞こうとしただけっ……!!」

 

「くすくす!お二人仲いいんですね……あ、私はアレナ・ディアヌと申します。それでは私はこれで失礼致します。改めて今しばらくお待ち下さいませ」

 

メイド・アレナはガエルと一回の頷きをし合い、二人で一行に会釈をして部屋を出た。

 

二人が部屋を去ると、アディンはアレナの名前を呟いた。

 

「アレナさん……あだっ?!!」

 

ついに嫉妬したプルの平手打ちが頬に入った。

 

「アディン!!」

 

「いってー……そこまで怒るなよ!男子なら誰だってなる感情だ!!例えるなら目の前に綺麗な芸能人やアーティストがいるようなもんだろ!」

 

「怒るよ!!女の子なら妬きもちするよ!!」

 

「妬きもちって……!!!お、俺はなぁ……!!!」

 

「いい加減にしろ、二人共!!我々は重要な交渉に来てるんだ!!遊びで来てる訳じゃない!!わきまえろ!!!」

 

「す、すいません!!」

 

「ごめんなさーい」

 

ジンネマンの一括が痴話喧嘩を止めさせた。

 

一行がもてなしを召し上がり切った頃、ビスト財団当主であるカーディアスが、ガエルやアレナと共に姿を見せた。

 

「お待たせ致しました。私がカーディアス・ビストです」

 

「私、スベロア・ジンネマンと娘のプル、他四名になります。この度は宜しくお願い致します」

 

共々に会釈した後に、プルは全てを悟るようにカーディアスに笑みを示した。

 

カーディアス自身もプルに対し、ニュータイプめいたただならぬ素質を感じずにはいられなかった。

 

早速交渉の話が始まる中、カーディアスは箱ではなく箱の「鍵」を譲渡する話を出した。

 

「箱そのものではなく……箱の『鍵』をですか?」

 

「ご不満かな?」

 

「不満以前に解りません。そもそもラプラスの箱がどんなものなのかがわからないのです。こちらとしては直接ラプラスの箱を頂きたい……」

 

「元々非常に重要な物だ。回りくどいまでに厳重にしなければならない事は理解して頂きたい。それ故の鍵なのです。何れにせよ鍵が無ければ箱は開かない。そもそも……ラプラスの箱を何故あなた方は欲するのでしょうか?こちらからもお聞かせ願いたい」

 

「抽象過ぎて恐縮ですが……ただ言えるのは、箱の存在が陰と陽で言うと非常に陽のものだと。スペースノイドや地球圏にとっても……今時代は混迷に混迷を行く時代になっている……特にスペースノイドにとって。誰かがそれを止めねばならない。変えねばならない。その希望をラプラスの箱に見いだしたのです」

 

「ほう……何故にそう判るのです?」

 

「そう感じれるからです……この子がね」

 

ジンネマンはプルの頭を撫でながら言う。

 

この時、カーディアスの先ほどプルから感じたものが確信に変わった。

 

「……ニュータイプのような事を言う……いや、失礼。箱は少なくともスペースノイドに、最も望ましくばニュータイプの素質を持った者に託すべきモノだ。それも聡明純心なニュータイプに……」

 

「おじさんからも悪い感じはしないし、この向こうから感じれるラプラスの感じ……凄く温かい感じを感じれる……本当に希望って言える感じ……それが平和のイメージに繋がってる……!!ラプラスの箱は今の時代に必要な……昔の人達の想いを感じられる何か……!!!」

 

「プル……!!」

 

「……!!!」

 

カーディアスはプルの発言からはニュータイプの素質そのものを感じずにはいられなかった。

 

理屈ではない言葉が纏う説得力だ。

 

その目に驚きの表情を見せたカーディアスは、立ち上がって手を腰で組みながら外を見た。

 

「連邦政府がOZに変わった今……箱が持つ『"連邦"を転覆させる脅威』の効力は失った。だが、政権が刷り変わったということはOZもまた転覆しかねない事を意味する。OZがラプラスの箱の存在を知る……事態は一刻を争うかもしれません……既に周辺では戦闘らしき行為があったようです」

 

「当主……!!!」

 

「箱の鍵はあなた方に託させていただきます。あなた方のような存在がラプラスの箱に関わるというのは正に千載一遇……これよりはこの場を移し、鍵の場所へご案内致します」

 

場所を移した一行はMS格納庫に案内された。

 

クリア強化ガラスのエレベーターを降下していく中、白いMSが一行の前に姿を見せた。

 

「ビスト邸の奥にこんな施設が……これは?!!」

 

驚くフラストの横でジンネマンとアディンが立て続けに驚愕した。

 

「似ている……マリーダが乗せられていた黒いガンダムに……!!!」

 

「角ガンダム!!!何でここに?!!」

 

二人の反応を見たカーディアスは、既にユニコーンガンダムを知っていた二人に敢えて質問せず、ユニコーンガンダムに関する話を継続した。

 

「……当初、連邦のパイロットからラプラスの箱に相応しい者を来るべき時を見据えて適性者を捜した。あれは獣であり、適性ならぬ者が乗れば逆に殺戮マシーンと化す。それはニュータイプを含めたスペースノイドを殺すマシーン……広い意味でスペースノイドの可能性を肯定する要を持ちながらニュータイプを根底から否定する要素を持つ矛盾。正に純粋な処女以外の者は乗りこなせないユニコーンの如く……」

 

ユニコーンガンダムの足下付近でエレベーターのドアセキュリティを操作しながら、カーディアスは託す対象を要望した。

 

「ニュータイプの可能性が根強いとお見受けするそのお嬢さんに託したい」

 

「な!!?結局この子にこのガンダムのパイロットをやれと仰る?!!」

 

「一言で言うガンダムのパイロットとは意味合いが違う。これまでのガンダムや時代に反抗の楔を打ち込んだガンダムとも違うのです。あくまでラプラスの箱の鍵であり、ニュータイプの可能性を拡げ示す機体……」

 

「確かに……確かにこの子はニュータイプの素質はある!!あるが……!!!」

 

カーディアスは咳払いを踏まえ、ここにユニコーンガンダムを補完する経緯も説明した。

 

「そして……ここに機体を補完したのはユニコーンにこれ以上スペースノイドを犠牲にさせない為に、そして箱の破壊を狙う輩から目と情報を欺く為……それ程に重要なMSだ。そしてバンシィなる黒いユニコーンガンダムは本来もう一つの箱の番人としての役目を担うガンダムだった。だが、箱の開示妨害もしくは破壊を目論む者達によって誤った運用をされてしまったのだ……」

 

ジンネマンはマリーダが箱を知り、かつその破壊を目論む輩の手に堕ちていた事を改めて理解した。

 

更に、マリーダを散々な目に遇わせた上に、シナップス・シンドロームを植え付けた輩達に対する怒りを甦らせた。

 

プルにユニコーンガンダムに託そうとすることにもやはり合点がいかない。

 

「……っ!!!」

 

だが昂るジンネマンの感情を静めるように、プルはジンネマンをなだめた。

 

「パパ……この人は悪い事言ってないし、本当にニュータイプの可能性を考えてくれている……それにね、ここまで来て解った。あたしを呼んでる感じの何かはこのガンダムなんだって……だからあたしはこのガンダムに乗る!!」

 

プルの切り出した自らガンダムに乗るという発言に、ジンネマンは驚愕を隠せなかった。

 

「プル?!!俺は……俺は、ガンダムと判った瞬間、Gマイスターたるガンダム小僧のアディンに乗せるつもりでいた……!!!」

 

「アディンでも乗ったらダメな感じがする……今の話しにもあった殺戮マシーンにきっと呑まれちゃう。アディンがどーのじゃなくてそう感じる……!!」

 

プルが感じるイメージは、赤いイメージの中で殺戮マシーンと化したユニコーンガンダムが破壊に破壊を重ねるイメージだった。

 

「そしたらあたしが一番狙われる事になるし、みんなだって危険に……このガンダムもあたしに乗ってもらいたいんだよ……これ以上間違った使われ方をされたくないから。だからあたし達、今ここでこうしてるんだよ!!」

 

ニュータイプ独自の感覚を言葉にして素直に発信するプルの発言は、ジンネマンの心を改めさせるには十分な説得力があった。

 

ジンネマンはプルの発言とその純粋な眼差しから思い改めた言葉をプルに渡した。

 

「プル……!!!解った……ユニコーンガンダムは、お前が扱え……そして心に従っていけ!!」

 

「ありがとう……パパ」

 

プルのその言葉と笑みに、ジンネマンは複雑な心境を含みながら再びユニコーンガンダムを見た。

 

その後、一行はユニコーンガンダムのラプラスプログラムについてのレクチャーを受け、コックピット内の操作説明をカーディアスから聞く。

 

「……ラプラスプログラムのコードを入力する事でラプラスプログラムが立ち上がり、座標を示す。尚、座標毎にこの機体の特殊システムNT-Dを発動させる。そしてまた座標ポイントでNT-Dを発動させ移動する。そして最終座標を示した時……箱は目前となる」

 

「ようは座標毎にシステムを発動させていくだけ……ですか?」

 

「えぇ……あなた方の言わんとする事は解ります。ですが簡単なモノほど難しい……因みに座標は解りません。全てその時、その時の何かが座標を決めるようになっている……そう説明せざるを得ない」

 

「……我々のこの行動で、スペースノイドに光明がさすのであれば……もう迷う事もない……フラスト!!」

 

「え!?は、はい!!」

 

「ギルボアに連絡!!ガランシェールをインダストリアル7の裏搬入港に移動!!場所の詳細もな!!」

 

「了解!!」

 

フラストが威勢よく返答して通信機に手をかけたその時、プルは嫌な感覚を覚え叫んだ。

 

「……!!!嫌な感覚……怖い人達が来てる!!!」

 

「え!!?」

 

その時、カーディアスの携帯データベースが鳴り、カーディアスは通信をとった。

 

「わたしだ」

 

『アレナです!!!大変です、旦那様!!!と、突然、特殊部隊が押し入って来ました!!!みんな……みんな撃たれて……!!!』

 

「何だと!!?君は無事なのか?!!」

 

『はい!!でも……いつどうなるか……!!!』

 

「もしや……OZプライズの一派かもしれん!!!だとすれば、狙いは間違いない……ユニコーンガンダムだ!!!とにかく君は逃げるんだ!!!」

 

「旦那様……ですが!!!今しかあのユニットを渡す時がないです!!!」

 

『何!!?この状況でできるのか?!!』

 

「はい!!」

 

アレナは金庫のダイヤルをまわしながら確信突いた返答をした。

 

その同時刻、ビスト邸の内部で一方的な銃撃が展開されていた。

 

ヒイロが追撃している先行部隊よりも更に先に先行していたECHOES部隊が、ビスト邸のSPや来客、メイド、その他関係者を次々に銃殺し、内部の奥へ奥へと潜入していく。

 

殺されていく人々はただそこに居合わせただけであり、日常の勤務をしていただけに過ぎなかった。

 

全く容赦も情もない非情な部隊は出逢う人という人を次々に殺傷する。

 

その最中、突如として迫る銃声と悲鳴に恐怖を覚えながらもアレナが必死に何かのユニットを持って走っていた。

 

「こ、これを旦那様に届けなくちゃ……!!!」

 

彼女が手にしていたのは、ユニコーンガンダム専用のバイオメトリクス・ユニットだった。

 

カーディアスも走りながらジンネマンにその説明をした。

 

「ユニコーンには、もう一つ必要な……ユニットがあった……選ばれしニュータイプだった場合……その者しか……使えないようにする……為の……!!!」

 

「何故、別の場所に!!?」

 

「ユニコーンを搬入している間に……あなた方に渡すつもりでいた!!!」

 

走るアディンは有事の戦闘に備え、ハンドガンの弾を装填しながらプルに問う。

 

「プル!!怖い人達ってのはOZなのか?!!」

 

「うん!!そして、危険な存在感……!!!」

 

攻めてくるECHOESのアサシン達は、素早い動きでビスト邸内の人々を射殺。

 

巧みにマシンガンを操り、ほとんどを即死させる。

 

中には倒れ呻いているメイドを踏みつけながら止めの射撃を加えるECHOES隊員もいた。

 

その諸行はまともな人間が成せる業ではない。

 

だがプルはそんな非人道たるECHOESを感じとる一方で、もう一つの感覚も感じていた。

 

「でもね……ヒイロもこっちに来てる!!!感じる!!!」

 

「え!!?ヒイロの奴は……ラプラスを知って!!?」

 

「それはわかんないけどね!!」

 

 

 

ヒイロは追撃していたロトの影に隠れながら、ECHOES隊員の銃撃をかわしつつハンドガンで反撃し、タイミングをつかまえて携帯型の爆弾を投げた。

 

爆弾は炸裂し、ECHOES隊員を巻き込む。

 

ヒイロはその隙を突き、一気に走りだして炸裂をかわしたECHOES隊員にスライディングして突っ込むと、見事にECHOES隊員の足許を崩させて、同時にマシンガンを奪いながらそのECHOES隊員の顔面に射撃して斃す。

 

ヒイロは素早く体勢を起こし、連続で銃撃してECHOES隊員達を銃殺した後に再び走りながらECHOES隊員の銃撃をかわした。

 

そして懐に飛び込み、至近距離でECHOES隊員を仕留め、接近したもう一人のECHOES隊員を蹴り飛ばした後に別のECHOES隊員の背後に回り込み、零距離で射撃。

 

この隊員を盾にして蹴り飛ばしたECHOES隊員の射撃を受け、その影から反撃して撃ち斃した。

 

ヒイロは盾にしたECHOES隊員を投げ捨て、即座に中へと突入した。

緊迫が増す中、ジンネマン達もまた銃撃戦闘に見舞われていた。

 

飛び交う銃弾の中の攻防。

 

隠れかわしては隠れかわすを繰り返し、ジンネマン達はプルの身を第一に、ガエルはそれに加えカーディアスを守り射撃し続ける。

 

アディンもしがみつくプルを守りながら反撃していた。

 

「アディン!!カーディアス当主に案内してもらいながら別ルートから行け!!!ガエル氏、我々の方の案内を頼みます!!!」

ジンネマンはこの状況下での最善を考えての指示を下す。

 

「ガエル、私はかまわん!!案内して差し上げろ!!この状況下、二手に別れた方がいい!!」

 

「ご党首……!!!解りました!!!」

 

「君達は私に!!別ルートからアレナ君との合流ポイントへ!!」

 

カーディアスもジンネマンの判断に賛同し、武装をしながらアディンとプルを先導した。

 

「パパ……!!!」

 

「プル、また後でな!!大丈夫だ!!!パパを信じなさい!!!アディン、頼むぞ!!!」

 

ジンネマンとの別れ際にプルとアディンは頷き、カーディアス先導の下に駆け出す。

 

三人の後方では銃撃戦闘が継続する銃声が響き続けていた。

 

その後も行き当たりに銃撃戦が三人を見舞い、アディンとカーディアスとで銃撃戦闘に対応せざるを得ない状況が続く。

 

隠れかわしては撃ち、隠れかわしては撃つ。

 

その度に経路変更をせざるを得ない状況下はアレナとの合流を難しくさせていく。

 

そんな状況下が続くに続く中だった。

 

「旦那様!!」

 

もどかしい緊迫感の中にカーディアスを呼ぶ女性の声が響いた。

 

「アレナ!!」

 

カーディアスはこちらにバイオメトリクス・ユニットを抱えて走ってくるアレナに振り向き、彼女の名を叫んだ。

 

「さっきのお姉ちゃんっ……!!来ちゃだめぇっ!!!」

 

だがその時、瞬間的に嫌な感覚を感じとったプルが叫んだ。

 

「え!!?」

 

 

 

ダダダダダララララァアアァアアッ!!!

 

 

 

「くぁうっ……!!!」

 

マシンガンの銃撃を浴びて倒れるアレナにカーディアスは雇い主としての責任感と自身の父性に駈られ、無言絶句しながら彼女に駆け寄った。

 

次の瞬間にはカーディアスにも銃撃が及んだ。

 

「がはっ……!!!」

 

倒れ込んだカーディアスとエレナにECHOES隊員が駆け寄り、止めの射撃を与えた。

 

「そんな……!!!このやろぉっっ!!!」

 

アディンは理不尽かつ残虐なECHOES隊員に怒りの発砲をする。

 

ECHOES隊員達は隠れながら銃弾をかわして陰に身を潜めた。

 

その時、アディンの銃がリロードをむかえてしまう。

 

止まる射撃はECHOES隊員のターンを意味した。

 

アディンとプルにECHOES隊員の銃撃が放たれようとした刹那、逆にECHOES隊員達がマシンガンと思われる銃撃に撃たれ斃れる。

 

その銃撃が来た方の陰から一人の少年が現れ、こちらにも反射的に銃を向けた。

 

だが、それは確実に見覚えがある戦士の少年であった。

 

「ヒイロ……!!!」

 

「アディン……!!?」

 

再会を果たしたヒイロはもうECHOES隊員がいない事を伝えた。

 

「ECHOES隊員はもういない!!?何で言い切れるんだ!!?」

 

「奴らの今回の極秘任務ファイルだ。奪った奴らのMSにあった。任務の詳細や投入隊員数、全てが記載されている。隊員の人数分は確実に排除した。ジンネマン達も今頃ビスト邸を脱出した頃だ」

 

アディンは投げられたファイルを手にして、中身を見ながらヒイロの相変わらずの凄まじさを改めて思い知った。

 

同時に新たに迫る危機を知る。

 

「本作戦が失敗した場合……鹵獲の為、ラー・カイラム級戦艦・ヨークタウンMS隊による制圧作戦をOZプライズ指揮の下、二次作戦として実行する……マジかよ……!!!」

 

「急いだ方がいい……脱出して次の手に繋げる!!」

 

「あぁ!!!けど、その前に……!!!」

 

プルは即死を免れながらも重症を負ったアレナに駆け寄っていた。

 

プルに掠れた声で涙を流しながらアレナは伝えるべき事を伝える。

 

「プルちゃん……だっけ?……これっ、旦那様に届けなくちゃと思っていた……ユニコーンガンダムの……!!」

 

「お姉ちゃん、無理して喋らないで!!無理したら……お姉ちゃんが……!!!」

 

「喋らせて……っ……私は旦那様から……ユニコーンガンダムに本当に適した……ラプラスの箱を託すに……相応しっ……うるニュータイプが来たら託すようにと言われてきました……」

 

ヒイロは銃弾の浴び方から彼女はあと僅かしかもたないと判断し、敢えて見届ける姿勢をとっていた。

 

下手に動かせば死を早めかねないからだ。

 

斃れたカーディアスが即死していた事を判断したアディンは、アレナの手当てに動こうとしたがヒイロに肩を掴まれ、制止させられた。

 

首を振るヒイロのサインに、歯を食い縛るアディンに悔しさが滲む。

 

アレナは瀕死の最中に、最も伝えるべきであるバイオメトリクス・ユニットの事を伝えた。

 

「ユニコーンガンダムのコックピットの……右側コントロールレバーの横に取り付けて……機体を起動させたら手をかざして……指紋認証させて……そうすれば、あなた以外は二度とユニコーンガンダムを起動できなくなる……っう……!!!」

 

「お姉ちゃん!!!」

もうアレナの命はあと僅かだ。

 

プルもニュータイプの感覚で解ってしまう。

 

それがよりプルに涙を誘う。

 

「私はっ……天涯孤独の身で……旦那様は……実の娘のようにっ……想って下さってました……だから私にこのような……機密を任せてっ……下さいました」

 

アレナはプルの頬に血の滲む手をかざし、ある言葉を託した。

 

「百年前に紡がれた希望を活かすために……内なる可能性をもって……人の人たる力と優しさを……世界に示すっ……人間だけが神を持つっ……今を越える力が可能性という……内なる神を……旦那様がよく言っていた箱に纏わる言葉です……プルちゃん、宇宙世紀に希望の可能性を示して!!ラプラスの箱を……!!!」

 

アレナは最後にカーディアスに代わりプルにラプラスの箱を託して息絶えた。

 

決意を決めたプルは涙を拭い、バイオメトリクス・ユニットを手にしてヒイロとアディンに叫んだ。

 

「あたし……ユニコーンガンダムの所へ行く!!!アディン達も来て!!!」

 

「あぁ……!!勿論行くぜっ……!!!」

 

「アディン。俺達は奴等のロトで脱出する。1機だけ破壊せずに抑えておいた。プルを送り届けた後は裏経路に行くぞ」

 

「了解っ……!!!」

 

 

 

そして、一行はユニコーンガンダムへと戻り、起動の手筈を実行する。

 

ユニコーンガンダムのシートに座ったプルは、バイオメトリクス・ユニットをアレナに言われた通りにコントロールレバーの右側へ装着した。

 

ヒイロとアディンも操作のサポートにコックピットのシステム操作を手伝う。

 

「機体を起動させる」

 

「うん!」

 

ヒイロの設定操作により、機体が起動音を唸らせて全天モニターを表示させた。

 

ヒイロは機体が起動した後に、全天モニターの一部に表示させた起動マニュアルを見ながら認証システムを操作する。

 

相変わらずヒイロのメカニックセンスには目を見張るものがあり、アディンは最早付け入る隙を見失う。

 

用無しにも思えたアディンはコックピットから半分悔し紛れに出ようとした。

 

だが出ようとしたアディンのその手をプルが掴まえた。

 

「アディンも居て。みんなで本当の起動をさせようよ!ユニコーンガンダムの!!」

 

「プル……へへっ、わかった」

 

照れ臭そうな仕草をしたアディンの隣で、ヒイロはバイオメトリクス認証モードを立ち上げる事に成功した。

 

「後はプルが手をかざせ。そうすればキュベレイとそう変わらない」

 

「ありがとう、ヒイロ。それじゃあ、アディン!起動させるよ!!あたしのユニコーンガンダム!!!」

 

「あぁ!!!」

 

プルは自分の右手を見て、ユニコーンガンダムを託したアレナ、カーディアスの想いを感じながら手をかざした。

 

その次の瞬間に機体はプルを受け入れ、直ぐに機体に変化が生じ、コックピットシートが変形を開始する。

 

ディスプレイが立ち上がり、そこには「NT-D」が表示されていた。

 

その文字の色は通常赤であるが、何故か緑となっていた。

 

ヒイロとアディンは頷き合いながら機体の外へと脱出し、ブースを駆け下りながら機体各部を変形させてガンダムとなっていくユニコーンガンダムを見た。

 

リディが搭乗した時とは異なるエメラルドグリーンの光を発光しかけていた。

 

コックピットの中ではプルを中心にエメラルドグリーンの光が生まれ、風のようにそれは巻き起こる。

 

プルを真のニュータイプとシステムが判断したが故に、機体そのものがプルと呼応していた。

 

髪をなびかせるプルは、瞳を閉じて力を感じながら呟く。

 

「もう一人のあたし……あたしの妹達……あたしはこのコと……ユニコーンガンダムと……行くよ!!!」

 

完全に変形したユニコーンガンダムは、プルの想いをのせ、鮮やかにエメラルドグリーンの光を拡げて動き出した。

 

純粋な少女を乗せたユニコーンのごとく。

 

 

 

To Be Next Episode

 

 

 

 

 次回予告

 

 プルは目覚めさせたユニコーンガンダムを駆り、包囲するOZの部隊へと守るための戦いに自らを投じる。

 

 ヒイロ達のOZの戦艦破壊工作と並行する中、プルの力を得たユニコーンガンダムはエメラルドグリーンの光を輝かせながらこれまでになかった力を発揮し、OZの部隊を次々に圧倒していく。

 

 しかしその力の負荷たる代償は、ジンネマン達に不安と懸念を許させなかった。

 

 一方、OZ、OZプライズの力による反抗勢力弾圧は止まることなく突き進む。

 

 そしてそれは今のカトル達に協力するオーブの本国に及び、理不尽を叩きつける。

 

 母国と仲間に襲い掛かかる現実に涙するジュリの姿に、カトルは一刻も早い反抗行動を決意するのだった。

 

 次回、新機動闘争記ガンダムW Liberty 

 

 エピソード29「ユニコーンと少女」

 

 

 

 

 


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