新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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エピソード30 「マリーダとの再会」

宇宙世紀0097に突入してより、地球圏各地にて反OZ勢力の弾圧の活発化が拡がりを見せていた。

 

L3のとある宙域において、旧地球連邦軍の艦隊がたった3機のMSと交戦する。

 

その3機のMSとは、OZプライズに所属を変えたアスクレプオスとヴァイエイト、メリクリウスである。

クラップ級3隻が後進しながらメガ粒子の主砲を断続的に撃ち続ける中、艦載MSのジェガンやジムⅢも護衛に応戦している状況であった。

 

各機体群が幾つものビームライフルのビーム火線を宇宙空間へ飛ばし、襲い来る3機へと抗う。

 

だが、そのビームは躱され続けた挙げ句、メリクリウスのプラネイト・ディフェンサーが発生させるフィールドによって攻撃はシャットダウンされ、ビームがフィールドに着弾する度に虚しく潰えていく。

 

すかさず、アスクレプオスとヴァイエイトが反撃のパイソンビームランチャーとビームカノンを連続で撃ち、複数機のジェガンを連続で射抜き、ビーム渦流で破砕爆発を拡大させた。

 

更に8機のジムⅢにもその直撃を浴びせながら、一層の爆発を拡大させる。

 

スタークジェガン3機やリゼル3機の編成で応戦する部隊にはビームカノンの高出力ビーム渦流が叩き砕くように迫り、3機づつを消し飛ばす。

 

更にヴァイエイトはレフトマニピュレーターに握り閉めたレーザーガンを撃ち放ち、連発してリゼル4機、ジェガン4機とレーザーを貫通させて破砕爆破へ導く。

 

そして連続持続射撃を放つと、1機のジェガンの貫通破砕を皮切りに、横一線状にレーザー火線を動かしながら一気に4機のジムⅢと3機のジェガン、2機のリゼルを切断させて破砕・爆破した。

 

どの機体も一瞬で装甲を切り飛ばされながら爆発に爆発を重ねていく。

 

展開する爆発光を掻き分けて、ジェガンとジムⅢを中心にした部隊が抵抗を推し進めるも、走り唸る二重の高出力ビーム火線とビーム渦流がジェガンやジムⅢにその力量差を叩きつけていく。

 

メリクリウスのクラッシュ・シールド二基からのビームキャノン射撃も加わっており、乱発するビームは更に破壊の過剰さに加担する。

 

単機でミサイルランチャーを撃ち飛ばす3機のスタークジェガンの攻撃もまた、プラネイト・ディフェンサーが発生させるディフェンス・フィールドにミサイルを阻まれてしまう。

 

そのスタークジェガンの1機がビームバズーカを放つ矢先、クラッシュ・シールドのビームサーベルを発動させたメリクリウスが、返り討ちの斬撃を浴びせる。

 

左右のクラッシュ・シールドが発動させるビームサーベルの連続斬撃は、高い破壊力を見せつけながらスタークジェガンの至る箇所を叩き斬る。

 

「捕捉した反乱分子は徹底的に駆逐する!!!」

 

「カモもいいところだぜっ!!!粛正っ、粛正っ!!!」

 

「身の程を知れよ……古い時代がでしゃばるなよなぁあっ!!!」

 

パイソンビームランチャーの連続射撃からのパイソンクローによる突牙破砕。

 

ビームカノンによる連続ビーム渦流群とチャージショットによる大出力のビーム渦流に加え、連発させたレーザーガンの火線貫通。

 

クラッシュ・シールドの連続斬撃。

 

殴り乱れるかのように唸り荒ぶる3機の猛撃が、ジェガンやリゼル、ジムⅢの機体群の破壊を怒涛の勢いで拡大させた。

 

高性能MSと言えど、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムさえも超える性能を持つこの3機が相手では不利も良い所であった。

 

悔し紛れに歯軋りをするしかない旧地球連邦軍サイドのパイロットは、歯痒さの中に命を削り飛ばす想いでモニターに映る3機を睨んだ。

 

「くぅっ……!!OZプライズめぇっ!!!絶対に我々を逃さないつもりかぁっ!!?」

 

その時、後方より飛び込みをかける別のスタークジェガンが映る。

 

「うぉぉおおっ!!!」

 

「これ以上はぁあぁああ!!!」

 

歯軋りをしていたパイロットが見るコックピットモニター上に、僚機のスタークジェガン3機が特攻を仕掛ける映像が映る。

 

無意味たる無謀な行為に、パイロットは制止を呼び掛けた。

 

「?!!馬鹿ヤロッ、待てぇっ!!!無理だぁあああ!!!」

 

特攻を仕掛けるスタークジェガン3機は一斉に火器を全門一斉に発射。

 

前方一面に叩きつける勢いのミサイル群を3機に見舞う。

 

そして2機のスタークジェガンがビームバズーカを放つ中、1機のスタークジェガンが武装をパージしてビームサーベルを取り出した。

 

ミサイル群は瞬く間にアスクレプオスとヴァイエイト、メリクリウス直撃し、爆発の光を拡げた。

 

その爆発にスタークジェガンがビームサーベルを突きだして突入する。

だが、ビームサーベルを突き出すスタークジェガンに爆発から飛び出すアスクレプオスのパイソンクローが穿った。

 

突き砕かれたスタークジェガンは虚しく爆砕四散する。

 

「はっはははっ、現実を見るんだな!!!」

 

更に爆発の向こう側からメリクリウスが飛び出し、クラッシュシールドの斬撃乱舞がもう1機のスタークジェガンを斬り潰しに潰した。

 

「所詮は獲物に過ぎねーんだよっっ!!!そらそらそらぁああああっっ!!!」

 

爆発光が引いた中にヴァイエイトがビームカノンを構えながらエネルギーチャージをして姿を見せる。

 

開放した背部のGNDジェネレーターが時折スパークを帯ながら超高出力エネルギーを充填させていた。

 

「じゃーな……古い連中さん!!!ヒャッハー!!!」

 

ミューラの小馬鹿にした一言の直後に、ヴァイエイトの構えるビームカノンの銃口から大出力のビーム渦流が唸り放たれ、一気に突き進むそれは残存したスタークジェガンやリゼル3機、ジェガン2機を呑み込みながらクラップ級を抉り飛ばすように破砕。

 

更に持続する破砕流が残り2隻のクラップ級に移動し、ゆっくりと巨大な船体を吹き飛ばしながら轟沈へと導いていった。

 

 

 

その一方、L3方面のとある宙域においても、旧連邦勢力が集う廃棄コロニーに力の蹂躙が見られた。

 

ジェガン、ジムⅢ、ジムⅡと旧地球連邦軍の主力機の面々が襲い来る何かにビームを射撃し続ける。

 

だが、連続で撃ち注ぐビーム火線に、次々と連邦主力機体群は装甲を穿たれて爆砕する。

 

その襲い来る存在とは五飛を襲ったあのガンダムであった。

 

禍々しい六枚のカギ爪のような翼を展開させながら迫り、展開させているストライククローを奮い、格下のMSを蹂躙する。

 

ライトアーム側にはビームソードが握られ、レフトアーム側にはストライクシューターが握られており、それらを駆使させての破壊が襲った。

 

左右のストライククローのセンターから放たれるビームと、ストライクシューターの多連装ビームとが合わさり、ジェガンやジムⅢ、ジムⅡの装甲を豪快に砕き散らす。

 

「くくくく……私がこのような雑兵のや掃除を任されるとは……腕慣らしにはなるが……少々不満だな、愛馬・ヴァサーゴよ……」

 

シャギアは若干の不満を吐露しながら、平然と旧地球連邦残存勢力に牙を向ける。

 

ストライククローのビームとストライクシューターの射撃を次々に撃ち出し、駆け抜けるようにジェガン、ジムⅢ、ジムⅡ各機体を撃破していく。

 

その過程でストライククローと同時にビームソードの刺突を幾度も個々に取りついては飛びかかるヴァサーゴと言う名のガンダム。

 

その猟奇的な風貌は、胸部のデザインも相まって悪魔以外の何物にも例えられない。

 

連続でジムⅢ3機を斬り潰しながらジェガンにレフトアームのストライククローを見舞う。

 

ストライクシューターにも装備された牙が更に破壊力を乗せて砕き散らす。

 

そしてストライクシューターをかざしながら連続でビーム射撃を展開させ、爆発の嵐を眼前に拡大させた。

 

襲い来る絶対的な存在に果敢に立ち向かうジェガンが背後をビームサーベルで捉える。

 

だが容易くかわされ、ビームソードに貫かれ爆発に帰す。

 

四方から迫るジェガンとジムⅢに対し、ガンダムヴァサーゴは引き付けるように敢えてその場を飛び去る。

 

そして振り向きながら悪魔然とした胸部を開放し、さらなる醜悪な悪魔のような顔が展開させた。

 

悪魔の顔の内に潜んだ更なる悪魔の表情が露になる。

 

「消え失せるがいい……!!!」

 

ガンダムヴァサーゴに迫っていた機体群にシャギアが照準を絞った瞬間、胸腹部からメガソニック・ブラスターの超高出力ビーム渦流が撃ち放たれた。

 

 

ヴィギュルゥダァアアアアアアアアアアアアッ!!!!

 

ヴァズゥゴゴゴゴォババババババガァアアアアッ!!!!

 

 

 

一直線に伸びるビーム渦流を放ちながらガンダムヴァサーゴは機体を自転旋回させながら更なる破壊力で、廃棄コロニーの外壁諸とも連邦残存勢力のMSや艦を破砕し続けた。

 

凄まじき破壊力で吐き出し続けるビーム渦流が旋回を始め、廃棄コロニーそのものを崩壊させながら旧地球連邦残存勢力のMSや艦を広範囲に渡り壊滅へ至らさせた。

 

シャギアは佇むガンダムヴァサーゴの中で満足感を得たように薄ら笑いを浮かべていた。

 

「悪く思うな。仕事なのでね。それに私の愛馬は……狂暴なのだよ……っ!!!」

 

最後の抵抗に1機のジェガンが、ガンダムヴァサーゴ背後からビームサーベルを斬り込もうと迫った。

 

だが、その攻撃を見透かしたかのように、ジェガンに向けて振り向き様にリーチの長いビームソードの斬撃を見舞った。

 

「狂暴だと……言った筈だ……狂暴だと……!!!」

 

爆発四散するジェガンの爆発光を浴びるガンダムヴァサーゴのその様は、より一層の悪魔の形相を強調させていた。

 

そして主のシャギアもまた、その殺戮に対して薄ら笑いを止めることはなかった。

 

 

 

OZプライズとOZの支配体制は、弾圧と懐柔の両極端のバランスを連ねて地球圏世界情勢を統べる。

 

OZプライズによる過激な弾圧は、OZの懐柔支配体制をより柔軟に浸透させる為の意図的な狙いがあった。

 

標的に選ばれている対象の殆どは社会情勢的に見て非難の対象にならない存在……すなわち地球側にとって影響がない、あるいは無関心である一部のコロニー市民の排除や戦闘対象として違和感がないネオジオンやジオン残存勢力、旧連邦軍残党勢力であった。

 

だが、地球で起こったOZプライズによるオーブ侵攻は例外であり、表向きにはメテオ・ブレイクス・ヘルによる大規模テロという形でメテオ・ブレイクス・ヘルに罪を着させた茶番劇を展開させた。

 

このオーブ侵攻は、実質的に国家の機能が滅ぶ程の破壊をもたらした。

 

狂気の強化人間部隊・バーナムがメテオ・ブレイク・ヘルを装って占拠するオーブの都市部は、廃墟のような有り様となりながら幾つもの破壊されたM1アストレイとムラサメの残骸が散らばっている状況にあった。

 

警察や消防機関、国の首脳部たる議事堂の場も完全に破壊されており、オーブ首長国内一帯を機能停止の絶望が包んでいた。

 

その中に墜ちたM1アストレイYFやRFの姿も確認できた。

 

アサギやマユラ達の生存は限り無くゼロに等しい。

 

そのニュース映像を見てしまったジュリは、膝を崩して床に座り込みながら絶望に放心した後に泣き振るえはじめる。

 

カトリーヌは以前に悲しみに沈む彼女へのかける言葉を見失った少しの後悔から、彼女の悲しみに歩み寄る行動に移して共に泣き合った。

 

その後に追加されるように、オーブの一件以降にテロに遇った国や都市が挙げられていき、より一層の残忍たる彼らのやり方がメディアを走る。

 

メテオ・ブレイクス・ヘル残党の集団テロと偽装された挙げ句に、多くの罪なき人命が無造作かつ理不尽に奪われていく。

 

悲しみと哀しみを拡げていく。

 

メディアを通じて知らされるその現実と非道が、カトルとトロワにも映る。

 

「我々OZは新たなメテオ・ブレイクス・ヘルの一刻も早い殲滅を目指しております。が、彼らが今要求して来ている事は、我々の出方次第で更に甚大な被害を招く恐れがあり、慎重に彼らと交渉しております……今後は長期に渡り……」

 

偽りの姿勢で記者会見に言葉を述べるOZプライズ士官。

 

OZとOZプライズによる完全なる茶番劇が、彼らの地球圏懐柔支配を拡大浸透させていく。

 

トロワは眉間を静かな怒りを持って絞り、カトルは内から込み上げる怒りを拳を握り締めて震えさせた。

 

「トロワ……こうしている間にも次々に罪の無い人々の命が奪われ、OZの力と懐柔的支配が拡大していく……!!!」

 

「俺も奴らの手口には我慢の限界に達しつつある。確かにカトルの言う通りだが、行動するなら俺の具申に対するラルフの返信が来てからだ」

 

「うん……そうだけど……だけどっ!!!」

 

「今に至るまでラルフは、お前を最も慕う男達と密かにやり取りをしてきている。デュオと五飛もバルジに囚われているが、もう少しの辛抱だ」

 

「それって、マグアナック隊……?!!」

 

「あぁ。マグアナック隊も動いている」

 

ラルフは再起の為の根回しを時間をかけて行動して来た。

 

デュオ達をテストに駆り出す最中、デュオのみぞおちに殴る行為をしながらも、反抗プランの入った映像再生式データを手渡す。

 

体を張りながらの演技をするデュオだが、ダメージを堪えながら口許に笑みを含め、ラルフもまた少しの笑みを見せた。

 

その後ろでは五飛が表情を変えずに立つ。

 

カトルは今一度、それぞれがそれぞれの想いで動いている再起の為の行動を想うと、再び冷静な位置に立った。

 

「……ありがとう、トロワ。そうだよね。みんながここまで行動してきてくれているんだ……!!!今はラルフさんの返信を待つよ」

 

「俺たちは既に準備はできている。今が耐え時だ」

 

カトルは気の持ちようを改め、妹のカトリーヌやオーブのジュリを見ながら決意も改めた。

 

 カトリーヌもジュリの悲しみに寄り添い、必死でかける言葉を一つ一つ見つけながらいた。

 

「カトリーヌ達にもこれ以上の重い哀しみを与える訳にはいかない!!!もちろん……ロニも……!!!」

カトルが想うロニは焼き尽くした街を見ながらサイコガンダムMk-Ⅲのコックピットにいた。

 

その瞳には光がなく、ただ冷徹な眼差しを向けるだけの操り人形にさせられてしまっていた。

 

「私が生きる意味……家族を奪った世界を破壊するコト。そう……家族を奪ったセカイを……!!!」

 

その時、飛び立ちながら領域を離脱する5機のアンクシャに反応したロニは、血走った眼差しをむける。

 

そしてサイコガンダムMk-Ⅲは、かざしたレフトアームのハンド・メガパーティカルキャノンを放ち、五指から放つ高出力ビームの束で容易く破砕させてみせた。

 

「ふふっ……ウフフ、あはははは!!!」

最早カトルの知るロニではなく、狂気の嗤いを響かせる強化人間的な少女になっていた。

 

ロニの嗤い声が高鳴る中、サイコガンダムMk-Ⅲは無情に佇み続けていた。

 

 

 

 

資源衛星パラオ

 

 

 

ガランシェールの船体が、パラオの第三宇宙港のゲートに入港していく。

 

「僅かに前進の最微速!!ゲートアーム接続に入る!!」

 

「了解!!」

 

ギルボアの操舵操作で徐行するガランシェールの巨大な船体がドッキングアームへと寄せられて行く。

 

ブリッジで腕組みをしながらヒイロは静かに入港の様子を眼光に見据える。

 

(L1コロニー群資源衛星・パラオ……この資源衛星にマリーダが……)

 

ヒイロはこれからの行動の先にいるマリーダに静かに高揚する感覚を覚える。

 

正直な所、ヒイロは闘いに闘いを重ね続けた日々に、自覚の範疇外で疲弊していた。

 

自覚外である故か、意識が自然に癒しを欲し始めていたのだ。

 

(何かが……いや、マリーダのコトで感情が高ぶる……らしくないな……)

 

「ヒイロ!」

 

アディンが外を見続けるヒイロにアディンが声を当てる。

 

横目にして僅かに首を向かせたヒイロは、またパラオの景色に目をやりながら答えた。

 

「なんだ?」

 

「さっきからずっと同じトコ見てるぜ?まさか、マリーダのコトばっか考えてるんじゃねーの?」

 

「……!!!」

 

からかい半分を絡ませて珍しく図星を突いてきたアディンに対して、ヒイロは驚きを外に出すコトなく、静かに動揺させられる。

 

しかし、ヒイロは妥当然とした意見を返して見せた。

 

「それがどうした?マリーダが強化人間の人体実験の悪影響を受け続けているんだろ?それを心配しない方が人的に問題がある……」

 

「いぃ?!」

 

「プルも意識を回復させていない。むしろお前の方が不謹慎だ。見舞いに行ってやれ」

 

「な……!!?」

 

からかったつもりが硬い正論返しを受け、逆に一杯食わされるアディン。

 

更にヒイロ自身、マリーダを想っていたことを否定していない。

 

そのやり取りを聞いていたジンネマンは、諭すように言って見せた。

 

「……食わされたなアディン」

 

「いや、違うぜ!!俺だって気を紛らわしたくってよ……」

 

「プルを憂いる気持ちは俺も同じだ。紛らわしに走るアディンがまだまだな小僧ってコトだ……現状と向き合って己を据わらせろ。所でヒイロ……」

 

ん?とジンネマンを向いたヒイロにジンネマンは改めて今のマリーダのコトを語った。

 

「マリーダはあれから……俺達が救出して以降からずっと時折くる激痛、シナップス・シンドロームと闘っている……衰弱傾向からは回復してきてくれてはいるが、医師からは戦闘は止められているくらいにまだとても万全に至っていない。正直俺は安静していて貰いたいが、本人は有事に戦いたいと思っているみたいだ……」

 

「そうか……」

 

「ちょくちょくお前の事も聞かされたりする。直接会ってやれば更にいいかも知れん。是非とも俺からも願いする……会ってやってくれ」

 

「あぁ……アディンにも言ったが、そのつもりだ」

 

「ヒイロ!!キャプテン公認かよ!?いーな、もー!!ってうわっ、違う!!そうじゃない!!!俺はっ……!!!」

 

「アディン……認められたくば先ずは自ずとすべき事に気づけるようになるんだな……」

 

ジンネマンのその言葉に暫く思考を巡らせてアディンは固まったが、はっとなりながらジンネマンに頷きながら直ぐにその場を後にした。

 

その様子を見た後、ヒイロはジンネマンのアイコンタクトに頷き、再び外に視線を向けて心で呟いた。

 

(そうだ……感情で行動する事だ……感情で……!!)

 

その時のアディンの行動は、直ぐにプルが気を失わせている寝室に駆けつけ、彼女の横側に引き出した椅子を置き、自身を座らせた。

 

彼女の側に居続けて見守る……それがアディンの感情が成したコトだった。

 

 

 

サント夫人やティクバ達が食卓を囲むサント家宅の団欒の時間。

 

居候と療養生活を兼用するマリーダも家族同然に食事し、サント家特製スープを飲んでいると、突如として直感的な感覚がはしる。

 

(っ……!!この感覚は……姉さん……?!マスター達がパラオに戻ったたのか!?それに……もう一つの感覚は……ヒイロ……?!!)

 

マリーダが感覚と向き合っていると、ティクバがターメリックライスを呑み込みながらマリーダに話しかけてきた。

 

「んぐっ……マリーダ姉ちゃん、体はもー大丈夫なの?」

 

「ん?あぁ……以前よりはな」

 

「じゃー、明日できるモールセンター街にパーっと行こうよっ!!パーっとさ!!楽しいよー!!」

 

「そうか。ありがとう。だが、気持ちだけ受け止めて置く。まだ完全ではないんだ。ご免な、ティクバ」

 

「えぇ~……俺、早くマリーダ姉ちゃんと遊びたいよ~……遊びたい~遊ぼ、遊ぼ、遊ぼ、遊ぼ~」

 

「ティクバ……」

 

食事中にわがままを言うティクバに、サント婦人が叱責を入れた。

 

「ティクバ!!あんた、もっとマリーダちゃんの体の事を考えてやりな!!!無理、わがまま言うんじゃない!!!マリーダちゃんも困ってるじゃないかっ!!!」

 

「いっ?!ご、ご免なさい……!!でもどーしてもさ……」

 

「まったく……ご免ね~家の馬鹿息子が無理言って……」

 

「いや、私は全然気にはしていない。それに家の中や近所くらいの範囲なら遊べるくらいに回復しつつある……それなりの家事も……」

 

「そうかい……今日の料理の持て成し、よかったらマリーダちゃんも作ってみたらどう?」

 

「愉しそうだが、私自身余り料理ばかりはしたことはないな……」

 

「マリーダちゃんもいつかは旦那さん持つんでしょ?料理の一つ二つ作れるといいよ?現にお姉さんのプルちゃん、料理できるし。でも、あっははは、結婚なんて言ったらジンネマンさん大騒ぎだね!!」

 

「くすっ……確かにマスターなら私が結婚なんて言えばきっと大騒ぎするな……そうか……私も料理やってみようか……な」

 

ふとヒイロの姿を過らせながら少しばかりのチャレンジ精神をマリーダは懐き、サント婦人もマリーダの事情を踏まえながらそれに笑顔で答えた。

 

「やってみるといいさ。けど、例の病もあるから無理はしないでね」

 

「はい……そのつもりです……」

 

その時、サント家の家電話が鳴り、サント婦人がその受話器を手に取りに居間を出て行く。

 

すると、しばらく夫のギルボアと思われる相手と通話した後に通話を終えたサント婦人は、慌てふためいた様子で戻ってきた。

 

「今旦那からパラオに戻ったって連絡あってね!!プルちゃん、何だか大変みたいだよ!!」

 

サント婦人のその言葉を受けるも、マリーダは感覚でヒイロやプル達がパラオ入りしたことを既に察知していたが故に、驚きの様子を見せることなかった。

 

それ以上にシンドロームを患った自身と共鳴することを憂いだ。

 

「でも……今の私が姉さんに会いに行ったとしても、あの激痛が来たら……姉さんが!!!」

 

「あぁ……そうだったわね。例の病、プルちゃんにも感覚だけ伝わっちゃうんだっけ……」

 

「はい……姉さんに私のあの苦痛を味わってもらいたくはない……!!!もどかしいけど……行けない……」

 

一方のガランシェールクルー達はパラオに入港して休む間も無く慌ただしい動きを展開させていた。

 

意識を失ったプルを背にして急ぐジンネマンとその付き添いに走るアディン。

 

ジンネマン不在の船内で代わりを務めるフラストや、各役割作業に動くギルボア、アレク、ベッソン達。

 

そしてユニコーンガンダムやキュベレイMk-Ⅱのメンテナンスに徹するヒイロとトムラ達。

 

穏やかな雰囲気ではない状況の帰還になった中、マガニーとハサンによるプルの診断が行われ、その診断結果が言い渡された。

 

「過度の力による強い疲労……ですか?!」

 

「無理にニュータイプの……力と言うべきモノが比較的長い時間彼女に加わり続けた結果、彼女の体が防衛措置として意識を失わせたと思われます」

 

「長い時間て言ったって、10分も経っていなかったんだぜ?!!相当ヤバい力になるのか?!!」

 

「今計測できるものではないが……言い変えれば初めて味わう力の量に体が追いつけなかった……今の所生命に別状はないが、確実な安静が必要だ。彼女が意識を取り戻しても、直ぐにユニコーンガンダムというガンダムには乗らない方がいいかもしれない」

 

「やはり危険なシステムに……なるのか?!ユニコーンガンダムは!?」

 

「でも、プルは……プル自身は自分の意志でユニコーンガンダムに……ラプラスの箱探しに……複雑だぜ!!!」

 

ジンネマン達一行が診察に複雑な空気を落とす中にプルの一言が響く。

 

「アディン……」

 

「え!!?俺?!!」

 

「プル?!!」

 

意識を取り戻したプルに駆けつけると、プルは再びプルは言葉を発した。

 

「アディン……アディン……パパ……んんぅ……」

 

「プル?!!俺は二番手なのか?!!」

 

「いや、キャプテン、ソコ触れる所違うって!!!」

 

「あれ……ふぁ~……あたし、寝ちゃってたの?ここは?どこ?さっきまでユニコーンガンダムの中にいたのに……」

 

意識を取り戻したプルは、何事もなかったかのように体を伸ばしてあくびをして見せていた。

 

『プル!!!』

 

驚きと嬉しさの余り、アディンとジンネマンは同時に声を上げた。

 

「きゃっ?!!パパ?!!どーしたの、急に?!!」

ジンネマンはプルを抱きしめ、半泣きで意識を取り戻した事を喜んだ。

 

「よかった……!!よかったぁ~……!!!」

 

「パパ……ちょっと、くるしーよー……心配してくれてて嬉しいけど~……」

 

その光景を目の当たりにしたアディンは、プルを抱き締めれて羨ましいという下心を心の片隅に置き、改めて微笑ましい情景と認識して胸を撫で下ろした。

 

その後、改めて意識を取り戻したプルを診断し、命に別状はないとの診断をもらうも、しばらくはユニコーンガンダムでのラプラスの箱探しは見送りとなった。

 

そのユニコーンガンダムに組み込まれたラプラスプログラムをヒイロが解析作業に集中する中、トムラがヒイロのそのスキルに息を呑む。

 

ヒイロは展開させているノートタイプデータベースをプログラムユニットにケーブル接続させて作業を進めていく。

 

「カーディアスとか言ったビスト財団のあの男……簡単には言ったが、実際にやれば次の座標表示の前に何層ものデータディフェンスが仕組まれている……」

 

「そこまでして座標を隠したがるなんて、きっと余程のモノらしいな……ラプラスの箱ってのは!!」

 

「あぁ。一説では地球連邦政府を根底から覆す程のモノのようだ……俺の見解だが、大量破壊兵器の可能性も否めない。っ!!座標が出た……!!」

 

「何!!?何処なんだ?!!」

 

「……旧ラプラス官邸……歴史上初のスペースコロニーだ。最もかつてのテロによって成り果てた最古の廃棄コロニーになっているがな」

 

「旧ラプラス官邸……!!場所が場所だけに重要な何かがあるかもな……」

 

「あぁ……後は任せる」

 

座標の確定を済ませたヒイロは、ツールを素早く片付けてすくっと立ち上がる。その場を後にしようとした。

 

「ヒイロ?」

 

「行く場所がある……」

「……マリーダか?」

 

「あぁ……」

 

ヒイロは単身で赴こうとするが、トムラはヒイロの肩を捕まえ、穏やかに制止した。

 

「だったらみんなで行こうじゃないか、ヒイロ。俺達も久しぶりに戻った事もあるしな。キャプテンが戻ってからでも遅くはないんじゃないか?」

 

「……そうか。ならば他にやるべき事をしている」

 

「他にやるべき事?」

 

「あぁ。パラオが有事になった時に使う機体が欲しい。ウィングガンダムは長期に渡って戦い続けてきた。オーバーホールが必要だ。今の俺には乗る機体がない状況に等しい」

 

するとトムラも合点がいったようで、持っていた工具を置きながらヒイロにMS格納庫にサムズアップの形で親指を向けた。

 

「そうか……キャプテンが戻るまでだが、俺も探してやるよ。幾つかがパラオの格納庫にあるぜ!!」

 

「頼む……」

 

トムラにパラオ内のMS格納庫に案内され、ヒイロはトムラと共にデッキ橋を歩いて回る。

 

格納庫内にはガ・ゾウム、ガザC、ギラ・ドーガ、ゲルググ、マラサイ、そしてバウが格納されていた。

 

「パラオでは今や自らMSを降り、パラオ内の企業に身を移す軍縮主調者や平和主義者がいてね……ここは一時的に主を失ったMSの寝床となっているのさ……何かあったか?気に入る機体は?」

 

ヒイロはトムラの質問に答えるように足を止めた。

 

トムラがその機体を見上げると、その機体はネオジオンの可変MS・バウであった。

 

「……バウか!」

 

「あぁ。この機体は元より機動力と火力が長けている。コックピットも見せてくれ。テストシミュレートもしてみる」

 

ヒイロは機体のシステムを起動させ、テストシミュレートを交えながら仮の機体フィーリングの掴みを模索する。

 

卓越した操作技術とセンスは短時間でバウをモノにさせた。

 

シミュレーション上のジェガンやリゼルの敵機種を、射撃と斬撃を巧みに繰り出しながら墜とし、時おりシールドメガ粒子砲も駆使して破砕させていく。

 

トムラが見るコックピット視点からのMSの挙動は次元が既に違っていた。

 

予想を超えたヒイロのパイロットセンスにひたすら驚愕するばかりだった。

 

 (すごいな……流石、あの反乱ガンダムのパイロットだ!!)

 

しかしながらその間にもヒイロは半ば集中できておらず、ある程度のシミュレーションを切りにして直ぐにシートから降りてしまう。

 

「え?!もう終わりか!?流石、ガンダムのパイロットだな!!」

 

「いや……やはり集中できん……マリーダの所へいく……」

 

「え?!!そ、そうか……ふー……やれやれ……しょうがないな。場所は判るのか?」

 

「あぁ。ギルボアの自宅で療養中なんだろ?所在も事前にジンネマンとギルボア本人から把握させてもらった。問題はない……行って来る」

 

去り行くヒイロをトムラは工具で肩を軽くポンポンとする仕草をしながら見送る。

 

「ガンダムのパイロットも青春するんだな……ま、普通ならそれが当たり前の年頃なんだからな……」

 

 

ヒイロはサント家宅を目指してパラオの内の街並みを歩く最中にマリーダとの約束を思い出していた。

 

その約束に基づき、歩く足を側道に寄り道させる。

 

向かう先にはパラオ問わず、他のコロニーでも有名なアイスクリーム店があった。

 

ヒイロと共にアイスクリームを食べたいという、彼女のお願いのような約束を果たそうとする行動だった。

 

列に並びながら予めピックアップしていた32スペシャルアイスクリームに視線を絞って確認すると、目をつむりながらマリーダの顔を思い浮かべた。

 

(マリーダ……)

 

バニラ、ストロベリー、チョコミントの種類をミックスさせてコーンに乗せ、チョコチップやチョコソースがかかったデザインのアイスクリームだ。

 

物静かに喜ぶ表情に変化したマリーダを浮かべていると、店の稼働率がよいのかスムーズに列が進みだした。

 

32スペシャルアイスクリームを買い終えたそのネオジオン兵とすれ違ってから間もなくして更に列が進み、列が並列化すると、幾つかあるカウンターに行き着いた。

 

「32スペシャルアイスクリーム、一つ」

 

「大変申し訳ありません~……先程お買い上げされたお客様で本日分は品切れに……」

 

「?!なら他のメニューでいい……これは?」

 

ヒイロはしてやられた気分になったが、別メニューにあったツイン32アイスクリームに切り替えた。

 

メインだったアイスクリームよりもカップル向けの感じであり、むしろこちらの方が二人で楽しめそうなアイスクリームであった。

 

店員は一旦モニターで在庫状況を確認する。

 

「えー……こちらのメニューでしたら大丈夫ですよ!」

 

「なら頼む」

 

購入を済ませたヒイロは、ジンネマンからサント家宅間近まで足を運び、サント家宅を目指す。

 

マリーダと交わした人生初のキスの記憶がヒイロにフラッシュバックする。

 

互いに戦闘のスペシャリストとして歩まされ、歩んできた人生を持ち、互いにMSを駆る。

 

オペレーション・メテオ発動時の大気圏での偶然の出会いから今に至り、彼女が身を置いて住んでいる場所に足を運んでいる。

 

その瞬間がまた不思議な感覚を覚えさせる。

 

ましてや普段買うはずのないアイスクリームを引っ提げている自らにも違和感を感じて止まない。

 

それも一人の女性の為にアイスクリームを買ったのだ。

 

やがて、ヒイロは角ばったマンションが建ち並ぶ区画に入り、「E12」と記されたマンションに入った。

 

「E12-182……ここか」

 

チャイムを鳴らすと、防犯スピーカーからサント婦人の声が聞こえてきた。

 

「はぁい……あら?!あなたは?」

 

「俺は……ジンネマン達に世話になっている、ヒイロ・ユイと言う者だ。家主であるギルボア少尉から教わり、マリーダ……マリーダ・クルスに会いに来た」

 

「あ!?貴方がヒイロ君ね!旦那からマリーダちゃんのボーイフレンドが行くかもしれないって話は聞いてるわ!今開けるわね」

 

「……!?」

 

既にギルボアを介して余計な要素がサント婦人に伝わっていた事に、ヒイロはこそばゆいような何とも言えない感情が疼いた。

 

中に入るとサント婦人がヒイロを迎え入れ、マリーダのいる寝室へと案内する。

 

「わっ?!兄ちゃん誰!?」

 

「だれなのー?」

 

「だえー?」

 

その最中、サント夫妻の子供であるティクバ達にヒイロが出会うやいなや、ティクバの粗相な態度にサント婦人が半ば叱る。

 

「あんた達、挨拶は『誰』じゃないでしょうが!!お客さんだよ!!」

 

「は、は~い……兄ちゃん、こんにちは!!ほら、お前達も!!」

 

「こんにちはー」

 

「こんいちは」

 

ティクバが弟や妹にも挨拶させるとヒイロが以外な一面を見せた。

 

「あぁ、こんにちは。もし遊ぶなら後で遊んでやる。今はマリーダに会わせてくれ。アイスクリームを渡さなきゃいけない」

 

「えぇえ?!!兄ちゃんがマリーダ姉ちゃんの彼氏なの?!!」

 

「かれし??」

 

「かえし、かえし!」

 

「ふっ……彼氏か」

 

「違うの?!」

 

「なにマセタこと言ってんの?!あんた達、直ぐに退く!!」

 

マリーダが療養する寝室で、マリーダは上体を起こしながら窓の外を眺めていた。

 

開けた窓から雑踏に耳を傾けるのは今のマリーダの日課であった。

 

無論、近所への散歩や買い物程度ならば外出するが、いつシナップス・シンドロームの発作が来るかわからない為、パラオから外へは出る機会はなくなっていた。

 

(パラオに帰って来てどのくらい経つか……こんな一年以上戦闘をしてないなんて、かつての私以来だ。マスターに助けられる以前と助けられてからの数年間……無論、環境は……天と地、いや、コロニーと地下の差があるがな)

 

マリーダは袖をめくり、かつて風俗街に墜ちていた頃、客の趣味でいたぶられた火傷の痕を見る。

 

(本当に……オーガスタ研究所と、この忌々しい火傷や傷を負わせられたあの場所は……ある意味戦場よりも劣悪な環境だった……)

 

ふとした思いの流れから過去の傷に向き合った後に、マリーダは再び今のいる空間に目を向けてみる。

 

視界に映るは日常的な風景だ。

 

差は歴然としていた。

 

(本当に今がありがたいな……本当に……あの日とは違う。そして……今はヒイロがいる……そう、ヒイロが……!!!)

 

マリーダはヒイロの感覚を既に感じており、ドアの向こうに視線を向ける。

 

そこへ、サント婦人の声とノックの音が入り込んだ。

 

「マリーダちゃん?今いいかしら?」

 

「えぇ、大丈夫です」

 

「はい、どーぞ……」

 

ドアを開けたサント婦人がドアの外に声を投げ掛けると、その向こうからヒイロが入って来た。

 

マリーダは待ち続けていたヒイロの姿を目の当たりにした瞬間、瞳孔を大きくしながらその名を口にした。

 

「ヒイロ……!!」

 

「マリーダ……」

 

サント婦人は二人を暖かい目で見守るようにドアを閉めた。

 

ヒイロは手に引っ提げているアイスクリームの袋を差し出し、素直じゃない一言を言った。

 

「任務を完了させに来た……」

 

「……ヒイロ……私は待っていた……そう。私は待っていた……お前に会いたかった!!」

 

マリーダはベッドから降り、あまり見せない笑みをこぼしながら、これまでの溢れんばかりの想いをぶつけるかのようにヒイロに抱きついた。

 

「!!!」

 

ぎゅっとヒイロを抱き締めるマリーダと、思いもよらなかったマリーダからの包容に驚愕するヒイロ。

 

マリーダは包容しながら想いをこぼし続け、よりヒイロを抱き締めた。

 

「ヒイロ……!!お前は生きてくれていた!!会いたかった!!会いたかった……ずっと……!!!だからパラオにヒイロを感じた時、信じられない気持ちと嬉しい気持ちが溢れた……!!」

 

ヒイロは初めて味わう想いの包容に、軽い混乱を起こすが、本能的な動作が彼女を抱き返させた。

 

そして素直じゃないヒイロらしい言葉を囁いた。

 

「俺は果たしたい任務があった……だから来た」

 

「その任務、軽く一年以上は過ぎてるぞ……でも……今こうしている。こうして……ヒイロを抱き締めることができている……!!」

 

二人が抱き合っているこの時、奇しくもパラオのMSドック内で応急修理が完了しているクシャトリヤの隣のMSデッキに、半壊したウィングガンダムリベイクがドック入りしていた。

 

その光景を見たトムラも、ニッと笑う。

(……クシャトリヤの隣にウィングガンダムか……調度MSも隣同士になったな!もしかして本人達も同じだったりしてな!)

 

トムラの想像のごとく、ヒイロとマリーダは二人でソファーに腰掛け、早速二人でアイスクリームを食ようとしていた。

 

ヒイロが買ったツイン32アイスクリームは、元よりカップル向けのアイスクリームの為一つのトレーの左右に、カップ式アイスクリームが三つあるものだ。

 

二人の片方の膝にトレーを置くと、その時点で既にマリーダは頬を赤くしながらいつにない柔らかな表情を浮かべていた。

 

スプーンを手にしながらマリーダは今一度確認した。

 

「本当にいいのか?しかも……隣り合わせに食べれるアイスクリームのセットだなんて……」

 

「あぁ……妙に遠慮気味だが、マリーダ自身が俺に与えた任務だ。アイスクリームを俺と食べるっていう任務のな……」

 

「ヒイロ……ふふっ、ありがとう」

 

「……っ!!!」

 

これまでに見たことのないマリーダの嬉しげな表情を目の当たりにしたヒイロは静かに動揺する。

 

同時にマリーダへの好意がより増幅した。

 

「それに……ヒイロこそ私とアイスクリーム食べたかったんじゃないか?」

 

「……俺はこれまでに幾つもの、幾多の戦場を駆け抜けてきた……その最中、常に脳裏のどこかにマリーダがいた……そしてようやくここに辿り着いた」

 

「私も人体実験の後遺症と闘いながらヒイロを……本当に同じだな……なにもかも……」

「あぁ……同じだ。俺達は……」

 

「……じゃあ、溶けない内に頂きます……」

 

マリーダはスプーンに掬ったアイスクリームを口にすると一段と瞳を輝かせた。

 

「……っ!……美味しい……!こんなにアイスクリームが美味しいと感じられるなんて……!」

 

「あぁ、美味い」

 

これまでの距離と時間を埋めるかのような一時が、アイスクリームを一口、一口噛み締める二人に流れる。

 

幾度か食べて、マリーダはまた嬉しげな表情をしながらヒイロに掬ったアイスクリームを向けた。

 

「ヒイロ……こういうのも、一度してみたかったんだ……ほら、あーん」

 

「……?!!」

 

先ほどから続くマリーダからの想像を超えたその行動に、ヒイロは再度驚愕に値する動揺を覚えた。

 

好意を核とするヒイロの驚愕ぶりに、ある程度の心理状態を感じられるマリーダはより嬉しげに表情を柔らかくする。

 

「くすっ……もったいぶることもない。それに……ここには私達だけだ」

 

「っ……」

 

「はい……あーん…………は、早く食べろ!わ、私だって恥ずかしいんだからな!」

 

「っ……了解した」

 

「うん!はい……」

 

「あーん」をヒイロは行動で示し、マリーダからの一口を食べた。

 

こそばゆいにも程があるモノを感じながらも、今度はヒイロが無言でマリーダに掬ったアイスクリームを差し出す。

 

「くすっ、今度は私か……いいぞ、別に……あーん……」

 

照れくささ全開になりながら顔を火照らせ、今度はマリーダがヒイロからの「あーん」をぱくっと受け入れた。

 

「……マリーダ……感じが今までにない感じがするな……」

 

「あぁ。私自身にも解る……ヒイロと再会できてこうしていられることに、心がはしゃいでいる……だが、やはり私が『あーん』した方が可愛いヒイロが見れていいな……ほら!」

 

ヒイロはもう一度マリーダの「あーん」を受け入れ、アイスクリームを一口含んでから呑み込む。

 

「……マリーダ……そろそろ普通に食うぞ。俺達がこんなやりとりしていたら直ぐにアイスクリームが負けて溶ける……」

 

「ヒイロ……もしかしてそれはジョークか?」

 

「……俗に言う『激アツ』とか言う空気だ」

 

「ぷっ……あっはははは!ジョークそのものじゃなく、ジョークを言うヒイロが可笑しいぞ!それに、ヒイロから『激アツ』なんて言葉が出るなんて想像もしなかった!!」

 

普段声を上げた笑いをしないマリーダがヒイロのらしくないジョークを前に笑った。

 

ヒイロもそんなマリーダの意外な一面を見て、表情を綻ばせながら改めてアイスクリームを食べ始めた。

 

マリーダもまた口元の笑みを絶やすことなくアイスクリームを食べる……振り返るこれまでの過酷たる日々を思えば、次元さえも違えるような暖かな時間だった。

 

「食べるアイスクリームは冷たいが、今私達がいる空間は暖かいな!」

 

「あぁ……」

 

その後、ヒイロはソファーでマリーダの膝枕の上でこれまでの疲労を癒すように熟睡し、マリーダにしか見せない一面をさらけ出していた。

 

マリーダはそっと熟睡するヒイロの頭に手を置きながら、感じ取れる範囲でヒイロのこれまでの闘いの感覚を感じ取り、穏やかに囁いた。

 

「ヒイロ……随分と闘って来たんだな。ある程度は私にも感じられる。今はゆっくり休むといい……私もヒイロとこうしていられるだけで忌々しい後遺症のコトを忘れる……ヒイロと居れるだけで私は嬉しい……ありがとう……」

 

その言葉に反応するかのように僅かに体を動かすヒイロにマリーダはくすっと笑い、またヒイロの頭を撫でた。

 

 

 

帰宅したギルボアを迎えてのディナーの時間帯になり、マリーダはギルボアとサント婦人から料理のレクチャーを受けながら料理に励む。

 

時折失敗する場面もあるが、戦闘という世界観から逸脱したその日常的な微笑ましい構図の様子がヒイロの目に映る。

 

ヒイロはなつかれたティクバ達とトランプの遊び相手をしながら料理が出来上がるのを待っていた。

 

「兄ちゃん、メテオなんとかのガンダムのパイロットなの?!!マジで!!?すっげー!!!じゃあ、メテオなんとかのガンダムに乗ってるんだ!!?でも、メテオなんとかってOZにやられちゃったんだよね?それでも兄ちゃんはスペースノイドの為に闘ってくれてるの?!」

 

「あぁ……半分壊れてはいるが、パラオのドックにある。俺は今でも闘って……いるのさ。ブラック・ジャックだ……」

 

案の定、身を乗り出してヒイロに質問を出してくるティクバにヒイロは淡々と答えながらさりげなくブラック・ジャックに勝つ。

 

「あぁー!!また兄ちゃん、勝った!!うー……もーいっかい!!」

 

「いいだろう……」

 

「だろう、だろう!」

 

「兄ちゃん、弱い……」

 

「うるさいなー……相手はが、ガンダムの兄ちゃんだぞ!!そりゃ強いよ!!」

 

「ティクバ。ガンダムとトランプは関係ないと思うがな……」

 

「ううっ……!!」

 

そして食卓を皆で囲んでのディナーの時間になり、団欒の時が流れる。

 

マリーダが自ら作ってみたパエリアを口にしながら幾度かヒイロに視線をちらつかせて感想を聞く。

 

「どうだヒイロ?私が作った料理は?」

 

「あぁ、どれも美味い……本当に初めてとは思えん」

 

「そ、そうか……なら、よかった」

 

ほっとした様子と嬉しげな表情を浮かべたマリーダにサント婦人が一言を入れた。

 

「マリーダちゃん、頑張ってたからね。プルちゃんと一緒で料理のセンスあるかもね」

 

「そんな……姉さん程じゃ……そういえば姉さんは今?パラオに居るのは解るが、ガンダムに乗って意識を失ったって聞いた……」

 

マリーダがプルの身を案じた事にギルボアがフォカッチャをつまみながら答えた。

 

「プルはガランシェールで安静にしてもらってるよ。本当ならここに連れてきてあげたいんだけどな。今頃キャプテン達と食事してるんじゃないか?」

 

「今日のところは後遺症は起きてはいないが……姉さんにもあの苦しみを共有してしまうと思うと……一緒にはいられない」

 

「プルは……ユニコーンガンダムの力を解放させた影響から気を失っている。何らかのニュータイプ的な負の負担がかかれば危険だ……マリーダの気遣いは正しい。だが、今はディナーだ。マイナスな話題は余り似つかわしくない」

 

「そうだな……すまない、私が言ったばかりに」

 

「気にするな。マリーダ自身は悪くない。悪いのはマリーダをそうさせたヤツだ」

 

「ありがとう」

 

「ねー、ねー!マリーダ姉ちゃんとヒイロ兄ちゃんて付き合ってるの?!」

 

「え?!」

 

「……っ!!!」

 

ティクバの増せた質問に対してヒイロとマリーダが赤面して絶句する中、ギルボアが父としての一括を与えた。

 

「ティクバ!!年上に対してマセタ事を聞くんじゃない!!」

 

「う……ごめんなさい……じゃ、じゃあ出会ったきっかけくらいは聞いてもいいでしょ?」

 

「俺達が初めて旧地球連邦とOZを攻撃した際、大気圏での戦闘で出会った。俺のガンダムとクシャトリヤのな。それから俺達の仲間の所で世話になり、その時に初めて会話した……」

 

ヒイロはティクバにそういうと、ハンバーグステーキに手を付け食べ始めた。

 

「へぇ~!!でも、連邦に攻撃してたのになんでマリーダ姉ちゃんと戦ったの?」

 

「それは当時根強くあった……いや、そうだな……ガンダムだったからだ。ガンダムは基本、連邦のMSだからな」

 

「そっか!最近はガンダムはスペースノイドのヒーローって思えちゃってるけど、元々連邦の機体だもんね!」

 

「……俺達のガンダムは反抗の象徴だ。反抗のな」

 

スープを飲み始めたヒイロにマリーダが一言かける。

 

「時にヒイロ……食事の後に時間はあるか?」

 

「あぁ。トムラには一言言って来ている。問題はない」

 

「え?!告白?!」

 

「こら!!ティクバ!!父ちゃんがさっき言ったろ?!」

 

 

 

食事を終えたヒイロとマリーダは、近所にある教会跡への道のりを歩く。

 

「ヒイロ……ヒイロは自分にとって光と言えるような存在は意識したことはあるか?」

 

「光?」

 

「あぁ。光のような存在……」

 

「光のような存在か……俺にとっての光はGマイスターとしての存在意義……闘い続ける信念が光だ」

 

「自らが持つ想いが放ち続ける光……か。流石だ。ヒイロにはいつも感服させられる」

 

「いや、マリーダが思っているほど大したヤツじゃない……ただ誰も覆せない世界の負を破壊したいと思っているに過ぎない」

 

「謙遜するな。本当にヒイロは凄いヤツだ……本当に……」

 

二人が向かった教会は、かつてパラオが地球圏外のアステロイド・ベルトにあった頃、時の宇宙開拓者達によって建てられたものだ。

 

太陽の光すら届きにくいアステロイド・ベルトにあった頃のパラオには僅かな光を求め、神にすがった。

 

誰もが光を欲していた。

 

その記憶達が満ちる空間にヒイロとマリーダがたどり着くと、マリーダは十字架を見上げながら再び光について語り始めた。

 

「人は光がなければ生きてはいけない……ヒイロは存在意義とか言っていたが、私が聞きたいのは光のような人の存在があるのかどうかだ。私にはいる……私を夜の街から救ってくれたマスターがな」

 

「マスター……ジンネマンか」

 

「あぁ。マスターが今の私をくれたんだ。マスターと出会っていなければ、当然ヒイロと出会うコトもなかった……」

 

マリーダはそう言いながら内陣に上がり、ヒイロに振り替えってみせる。

 

「っ……!!」

 

改めて見惚れてしまうような綻んだマリーダの表情にヒイロは思わず言葉を詰まらせた。

 

いつになく、これまで以上に魅力的にヒイロの瞳に映り込んだマリーダはヒイロを釘付けにしながら告げる。

 

「ヒイロ……お前も私にとって必要な光だ。それも今までに感じた事がない光だ」

 

「俺が……光……」

 

「そう……光。境遇を同じくし、心に安らぎや希望をくれる異性だ……こうしていられるだけでも心強い」

 

マリーダの微かに浮かぶ口元の笑みと共に、彼女の手が差しのべるかのようにヒイロにかざされ、ヒイロもまたその手に自らの手を向かわせた。

 

手を取り合い、二人の視線もまた重なった。

 

「……俺自身がこのような感情を抱いて行動できるのは……マリーダだけだ」

 

そして今度はヒイロがマリーダの元に向かい歩み寄り、彼女と面と向き合う。

 

「ヒイロ……行く宛てがなければ、パラオで暮らすといい。私はお前と居たい……私はお前が愛しい……」

 

「……俺もだ。マリーダ……だが、まだ闘いは続いている。俺は闘い続ける。今に至る争いの歴史に終止符が打たれれば、その時はパラオに身を置く……」

 

「わかった……」

 

マリーダは上目線上からのキスをヒイロにねだり、ヒイロもまた静かにそれに答えてキスを重ねた。

そしてヒイロとマリーダは、時間をかけて互いの想いを確め合っていった。

 

 

 

ヒイロとマリーダは再びサント家宅に戻り、ギルボアの手作りクッキーの振る舞いを受けた。

 

ヒイロは憧れの眼差しを向けるティクバからクッキーを貰い少しの笑みで答え、マリーダは可愛らしく歩み寄るティクバの妹からクッキーを貰い、頭をなでると手作りクッキーをかじった。

 

戦場とはかけ離れたような日常がパラオにあることを実感したヒイロは、手作りクッキーを口にしながらティクバ達に微笑むマリーダを見て、彼女の居場所もここであることを確認した。

 

一方のアディンやプルもまた、アディンが買ってきたパフェを二人で食べながらガランシェールの寝室で穏やかな一時を過ごす。

 

仮初めの平和の一時ではあるが、今だけでもという想いを二人のGマイスターは過らせていた。

 

だが、それを赦さぬがごとき現実が二方向よりパラオに接近していた。

 

「目標ポイントに到達まで約10マイル!!リゼル・トーラス部隊を先行させながらプライズリーオー部隊を発進させます!!」

 

高速宇宙戦闘艦の艦隊よりMDやMSが発進する中、カスタムリーオーのレオールとレオンが発進する。

 

彼らには前線での単独行動の免許があった。

 

「後から来るロッシェには悪いですが、先にパラオの狩りを始めさせていただきますよ……参りましょう、ブルム!!!」

 

「パラオごと沈めてやろう、クラーツ……!!!くははははは!!!」

 

ビームランチャーを装備したレオンに搭乗するブルムがパラオ破壊を宣言すると、クラーツが補則する。

 

「ブルム。それはミズ・マーサの私兵達の仕事になりますよ……ククク、彼女もまたえげつない……!!!」

 

もう一方の方角よりパラオに接近する艦影の姿があった。

 

それはネェル・アーガマ型二番艦・グラーフ・ドレンデという名の黒いネェル・アーガマだった。

 

指揮を執るのはヴァルダー・ファーキルというOZプライズの軍人気質の男であり、その鋭い眼光や佇まいからはあからさまな狂気を放っていた。

 

「進路はこのままだ……先に我がOZプライズの先行隊にジャブを仕掛けて貰う。目的のガンダムを確認したら、もしくはある程度の戦闘時間が流れたらフェイズ2に以降する。ククク、MO-5を沈めた時を思い出すな……!!!」

ヴァルダーいわく、彼こそが、かつてアディン達が居た資源衛星、MO-5の破壊を実行した張本人の男だった。

 

オペレーション・プレアデス以降、マーサの私兵側と結託して再びその狂気をパラオに場所を移して迫る。

 

時を同じくし、パラオに長期潜入していたマーサの関係者の一人がギルボア宅のマンションを見ながら内通行動をしていた。

 

「はい……間違いなく、ガンダムのパイロットです……やはり被験体マリーダ・クルス……いえっ、プルトゥエルブと密接な関係繋がりがあったようです。マークしていた偽装貨物船も入港し、半壊した飛行タイプのガンダムを…………はい、時はようやく満ちましたよ……では」

 

パラオに戦火の足音が静かに、かつ確実に忍び寄っていた。

 

 

 

To Be Next Episode

 

 

 

 次回予告

 

 ウィングゼロとデルタカイ。

 

 現存する宇宙世紀最強の機体同士の模擬戦闘試験の計画が進む。

 

 テストパイロットのキルヴァとリディがいがみ合う一方でデュオと五飛は危惧を感じてやまない。

 

 その頃、ヒイロ達はパラオでの安らぎのひと時を過ごし、マリーダもまたパラオの女性パイロット・テルスと共にサント家で料理に励んでいた。

 

 しかし、マリーダの後遺症の発作を期にその平穏が徐々に崩され、遂には忍び寄っていたOZプライズによる本格的なパラオ襲撃が開始される。

 

 パラオは瞬く間に戦場となり、ヒイロは療養するマリーダに再び戦場へと赴くことを告げて出撃する。

 

 その戦場では2機のOZプライズ新型機が猛威を奮い始め、次々にネオジオンの兵士達を蹂躙していく。

 

 出撃したテルスにも2機は容赦なく襲い掛かかり、弄ぶように蹂躙する。

 

 だが、その絶体絶命の中、新たなガンダムの力が介入した。

 

 

 次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY エピソード31「ジェミナス・グリープ、出撃」

 

 

 

 

 

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