新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

9 / 52

ガーベイ・エンタープライズの一件は、トレーズの側近・ディセットの画策によるものだった。

トレーズも行き過ぎた画策を指摘しながらも、次の一手の引き出しを開ける。

その中でフロンタルやマリーダ、そしてヒイロとデュオは各地で攻撃任務を遂行していく。

トリントン基地では、トレーズの次の一手の可能性・バイアランカスタムに五飛が狙いを定め、強襲をかける。

そして、そのテストパイロット・ディエスと交戦。

強き者と見定めた五飛とディエスは、激しい接近戦を展開する。

だが、バイアランカスタムに彼の恋人を乗せていた事に気づいた五飛は、再戦を考慮して勝負を預けた。

一方、マリーダはソマリアの地を去る前に、現地のジオン残存軍やカレッタとの親睦を深めていく。

だが、そこ不穏分子の影が忍び寄っていた……。






エピソード9 「ソマリアの地で…」

 

 

オルタンシア・MSドック

 

ガンダムヘビーアームズ、ガンダムサンドロック、ガンダムジェミナス02と並ぶ中、ガンダムジェミナス01のコックピット周りに少しばかりの人だかりができていた。

 

トロワやカトル、ロニ、オデル、そしてプルがデータ外部表示を見守っていた。

 

画面には、現在のシュミレーションデータの映像とスコアが表示されていた。

 

これを見ていたロニがカトルに軽く質問をした。

 

「これってゲームみたいなモノなの?」

 

「え?うん、簡単に言えばそうかな。実戦とのギャップはある程度あるけどね。トレーニングにはなるかな?」

 

「ふぅん………私も後でやってみようかな?」

 

「まぁ…ゲーム感覚だからね。やってみなよ!」

 

ロニの様子も大分回復してきた様子だった。

 

カトルも安心を感じはじめていた。

 

それはプルの力添えならぬ癒し添えも大いに影響していた表れでもあった。

 

「ぷるぷるぷるぷる~!」

 

「わ!プルちゃん!」

 

そこへプルがロニの腕にしがみついた。

 

女の子特有のスキンシップだ。

 

「ロニ~!あたしね、これ得意なんだよ~!!」

 

「そうなの?じゃ、競争しよっか?」

 

「しよしよ~!」

 

プルと他愛ない会話を交わすロニを見たカトルは思わず笑みをこぼした。

 

そこへトロワがカトルの肩に手を置く。

 

仲間の安心を励ます表れでもあった。

 

「……よかったな、カトル」

 

「トロワ……うん、ありがとう!」

 

コックピットの中ではシュミレーションスコアを競う為、アディンが奮闘していた。

 

「ビームソードでスラッシャアアアアアア!!!からの~……ハイパーショット!!!どーだ!?っ………だぁあああ、トロワの記録更新できねー!!!」

 

「接近戦や反応はいいが、射撃に関してはまだまだだな…」

 

「もっと理屈で考えろ、アディン!!接近戦バカなお前は、射撃をもっと鍛えることに専念しろ!!」

 

トロワのダメ出しが入り、更にオデルのダメ出しが入る。

 

「~……ちくしょー…この前は誉めてたじゃねーかよ……」

 

「この前と今回は別だ!!今は射撃に関して言っている!!」

 

「第一、トロワのスコア異常なんだよ!!兄さんでもキツイぞ!!!」

 

「言い訳だ!!上を目指してこそだろう!!!」

 

「う………」

 

そこへプルがコックピットハッチに首を突っ込み、交代をねだる。

 

「ねー、次あたしやりたい!ロニと競争するんだよ!」

 

「おわ!!プル!!あ、ああいいぜ………」

 

更にオデルの一言が飛び込む。

 

「アディン、彼女に代わる前にもう一度やっておけ!!トロワのスコアに及ばなければ、飯は食うな!!」

 

「なにー!?!マジかよ!!?」

 

「当たり前だ!お前はGマイスターなんだからな!!そしたら彼女に代われ!!」

 

「ったく~……って、だからプルは彼女じゃねー………って……」

 

真上から覗くプルと目が合い、アディンは否定しづらくなってしまう。

 

「違うの……?」

 

「うっ………えと…うん、早い!!そう!!彼女になるにはまだ早いっ!!だからえーと…なんだ…婚約の軽いやつだ!」

 

「ええ~……婚約の軽いやつって何~?早い遅いなんて関係ない!!今からでもいいじゃん!!」

 

「う…」

 

ガンダムジェミナス01のコックピットは他愛ないラブコメ劇場と化す。

 

カトルやロニはクスクス笑い、オデルは頭を押さえてやれやれと言わんばかりになり、トロワは静かに口許に笑みを浮かべていた。

 

それから後は、プルとロニが交替しながら遊び感覚でシュミレーションスコアに没頭した。

 

その光景を見ながら、アディン達はタブレットモニターで現在の任務状況を確認し合う。

 

カトルがタブレットモニターを手にして皆に見せる。

 

「ヒイロ達の任務が終われば後はニューエドワーズ基地の件とダカールへの強襲が主になります。後は随時入る任務をこなす感じですね」

 

「ふぅ~ん……じゃあ、今が休むチャンスか!!ラッキー!!休み最高!!任務ばっかじゃしょーがねーもんな~」

 

休み優先思考な発言をしたアディンの頭を、オデルが叩いた。

 

「バカも休み休み言え!!!お前は去年の事を忘れたんじゃないだろうな…?!!」

 

いい加減なアディンの発言にやや本気でオデルは怒っていた。

 

「去年って……忘れるかよ!!!?だから戦って………」

 

「だったらもっとGマイスターの自覚を持て!!!軽はずみに考えるな!!!!」

 

少し緊迫した空気になった所で、カトルがオデルをなだめる。

 

「まぁ、まぁ………オデルさん、落ち着いて!デュオくらいのノリも時には必要ですよ」

 

「アディンが言った事は一理ある。Gマイスターにも休息は必要だ。だが、Gマイスターとして、あからさまに任務より休息を喜ぶのはどうかと思うがな…」

 

トロワの意見は最もでもあった。

 

しかし、オデルはアディンのGマイスターの意識に関して憂いを感じて止まない。

 

「……確かにトロワの言う通りでもあるが………アディン!!初心が揺らいでいるのなら、原点に帰れ!!!よく考えてみることだ!!」

 

これにはアディンも否を認めざるを得なかったが故に、アディンは珍しくオデルに謝罪した。

 

「わかったよ………俺が悪かった。ゴメン、兄さん………」

 

「……今一度よく考えろ。お前自身が去年の事を風化させているからさっきのような発言をしたんじゃないか?!?そうならガンダムに乗るな!!!!」

 

オデルのこの言葉がアディンの反省の気持ちをひっくり返してしまう。

 

これに対しアディンは不満を爆発させてしまった。

 

「な!!?だから、忘れるもんかよっ!!!頭ごなしに決めつけるな!!!」

 

アディンはそう言い残して、その場を後にしてしまった。

 

カトルも少し言い過ぎなオデルに、過去に何があったのか問いただす。

 

「あ!!アディン…………オデルさんも少し言い過ぎですよ。一体、一年前にどんな事があったんですか?事によっては言いづらいかもしれませんが……」

 

「……」

 

「場合によっては今後に響く。そこまで強調するなら教えてくれ」

 

トロワが問いただしの後、オデルは少しの間口を閉ざした後でその理由を口にした。

 

「……俺達が住んでいた資源衛生が、連邦軍によって破壊されたのさ………家族も、俺の婚約者やアディンの当時の彼女も、皆犠牲になった………」

 

オデルは事をしばらくの間カトルとトロワに説明して聞かせた。

 

カトルとトロワもバーネット兄弟が背負うものを知った。

 

「そんなことが……」

 

「だから、つい熱くなってしまった………嫌な空気にしてしまって悪かったな」

 

「あ、いえ………」

 

 

その後、アディンは本調子を取り戻すべく、ガンダムジェミナス01でテスト飛行をしていた。

 

だが、アディンはオデルに言い放たれた事を気に病んでいた。

「っ………忘れるもんかよ………あの出来事を……」

 

アディンの脳裏にMO-5がハイパーメガ粒子砲で破砕されていくビジョンが浮かぶ。

 

バーネット兄弟が抱える過去の片鱗だ。

 

「みんなが殺されていったあの瞬間………俺は一時も忘れてねー!!!第一………なんで俺ばっか攻めやがる!!カトルの言うようにデュオだって軽いノリでいるじゃねーか………」

 

アディンは次第に愚痴を溢す。

 

そこへプルからの通信が入った。

 

「なーに落ち込んでるの!?アディン!!心配になって通信しちゃった☆」

 

「な?!!プル!!べ、べつに落ち込んでなんか………くっ……」

 

ニュータイプの鋭い感覚の前ではアディンの心境は丸裸同然であった。

 

「隠したってあたしには解るよ。落ち込んでるのアディンらしくないよ。まぁ、オデルさんの気持ちも確かなんだけどさ………」

 

プルはモニターへ覗き込むような勢いで頬杖をついて言ってみせる。

 

「プルまで………っく、いや、俺だって解ってるさ………けど、言い方があるだろ!?あんな言い方できめつけられてさ!!!腹立っちゃってさ……!!」

 

プルに対し、アディンは愚痴を溢す。

 

アディンがプライドの意地を取り払い、プルに心を許し始めた瞬間だった。

 

プルはアディンの愚痴に対し、まるで姉のように諭していく。

 

「オデルさんもアディンの事を本気で想ってるから熱くなっちゃったんだよ。心配なんだよ、アディンの事。あたしだって、こうしてる今、マリーダの事心配してるんだよ……兄弟や姉妹ってそんな感じじゃない?」

 

「プル……」

 

「それにあたしだってちゃんと解ってるから。アディンが頑張ってるコト!だ~からっ!いつものアディンに戻って!!俺がキメるぜって!!」

 

アディンはここへ来て初めてプルの優しさと癒しに触れた気がした。

 

「……へへっ、プルは本当、癒し上手だな!!なんか元気戻ったぜ」

 

「えへへ♪なんか、アディンに言われると恥ずかしいな……」

 

「そーかい?ま、とりあえず慣らしテストして戻るぜ!!やっぱ実戦だ!!!」

 

「うん、それじゃ気をつけて!アラカルト作って待ってるね♪じゃぁね♪」

 

プルとの通信を終えたアディンは、再びメンタルを回復させ、ガンダムジェミナス01の操縦に専念した。

 

彼女が人に与えるヒーリング効果は確かであった。

 

「っしゃ!!とりあえずオルタンシアから離れてテストするか!!」

 

いつものテンションを取り戻したアディンは、コントロールグリップを押し込んで、ガンダムジェミナス01を加速させて行った。

 

 

 

ソマリア・ジオン残存軍キャンプ地

 

 

 

シャワーを浴び続けるマリーダ。

 

静寂に満たされた夜の空間に、シャワーの音だけが聞こえる。

 

仮設シャワールームで体を洗うマリーダのその仕草や裸身は、エロティックにも感じさせる。

 

彼女の肌に残る傷の痕が痛々しさを物語っていた。

 

マリーダは自らの傷痕を見ながら、かつての忌まわしき時代を思い出す。

 

身体の傷痕を見ると致し方なく脳裏を過ってしまう。

 

そして、ふとプルの事を思い出す。

 

(……姉さんは幸いにも私のような道には行かなかった。そうだ………私だけでいい。このような運命を背負うのはな………)

 

プルは天真爛漫かつ純粋だ。

 

まさにピュアという言葉が彼女に相応しい。

 

そんな彼女が汚れた暗黒街に身を投じるコトは、想像するに耐えなかった。

 

マリーダは髪をかきあげながら仮設シャワールームの天井を見上げ、呟く。

 

「汚れは私だけでいい……そう……私だけで……」

 

マリーダはシャワーを浴び終え、バスタオルで体を拭く。

 

髪を拭き終え、バスタオルを首にかけた時だった。

 

突如と違和感がマリーダを襲った。

 

マリーダは、頭に手をあてながら鋭い視線を違和感を覚える方角へと向けた。

 

「っっ!??嫌な違和感―――!!?」

 

直ぐにマリーダは敵意的な違和感であることを察した。

 

その直後―――。

 

突然の爆発が、ジオンの野戦キャンプを襲った。

 

「っ…?!!」

 

地表を揺るがす衝撃で、体勢を崩されるマリーダ。

 

間髪入れずに幾度も爆発が続く。

 

外部からの攻撃が加えられている事は間違いなかった。

 

「嫌な感覚はこれか!!夜を狙うとは卑怯な!!直ぐにでも返り討ちに―――」

 

マリーダが着替えのシャツに手を伸ばしたその時、隣接地点が爆発する。

 

そしてその爆風が、仮設シャワールームのテントを吹き飛ばした。

 

「何っ!??これじゃ着替えがっ………やむを得ない!!!」

 

憤るマリーダは着替える間もなく、バスタオルで胸を隠しながら走った。

 

外は既に炎が昇り、施設がピンポイントで破壊されていた。

 

「………ちっ!!!」

 

マリーダを狙うかのようにビームの砲弾が撃ち込まれる。

 

異様に持続性のあるビームが撃ち込まれた地点は、溶解して爆発を巻き起こした。

 

マリーダはニュータイプ的な直感と強化人間の身体能力でこれを回避しながら走る。

 

だが、裸足で走る痛みが見舞い、更に片腕でバスタオルを添えながら走るのは利に叶わない。

 

マリーダの動きはどうやってもぎこちなくなる。

 

「はっ…はっ…はっ…はっ…はっ………くっ!!」

 

別方向からも砲弾が撃ち込まれ、立っていたザクやドムトローペンに直撃。

 

機体が激しい爆発音を響かせて砕け散った。

 

攻撃がMSの方へ移り、破壊が始まる。

 

マリーダはその隙に、倒れたザクの躯に隠れてバスタオルを身体に巻いていく。

 

「……これではクシャトリヤに取り付けない。何とかして反撃しなければ………」

 

再び持続性の高いビームが撃ち込まれ、グフの胸部を穿ちながら破砕させた。

 

その吹き飛んだグフの残骸が落下した。

 

そこはカレッタが泊まっていたテントの横であった。

 

「マリーダ姐ちゃん!!マリーダ姐ちゃーん!!」

 

その近くからはカレッタ少年のマリーダを呼ぶ声が聞こえた。

 

「カレッタ!!何をしている!!!早く逃げろ!!!巻き添えを食らうぞ!!!」

 

マリーダは叫んだ。

 

「マリーダ姐ちゃん!!!」

 

マリーダの叫び声に反応したカレッタが、マリーダの方へと走り始めた。

 

このまま飛び付く勢いでカレッタ少年が走る。

 

「マリーダ姐ちゃん………!!!」

 

周囲の炎がマリーダに見える程、カレッタ少年の表情を照らす。

 

「来い!!今は逃げるぞ!!」

 

「っ………!!あわわ、タオル一枚―――」

 

カレッタ少年がマリーダの格好に反応した直後、倒れたグフのスパークが、誘爆を巻き起こす。

 

そして破砕したグフの爆風が、カレッタ少年をマリーダの目線先で吹き飛ばした。

 

一瞬の出来事だった。

 

更にカレッタが吹き飛んだ方に、バズーカの弾丸が炸裂し、周囲を吹き飛ばすような爆発に見舞われた。

 

爆死は必至であった。

 

立ち尽くすマリーダに幾つもの地響きが迫る。

 

マリーダは風に吹かれながら無言で立ち続けた。

 

そして燃え盛る野戦キャンプ場の敷地内に、ジムコマンド、ハイザック、イフリート、ゲルググ、マラサイ、陸戦ジム、そしてジムスナイパーが姿を見せる。

 

所属を越えたMSの群れ。

 

彼らこそ、連邦・OZが手を焼く武装集団であった。

 

彼らの存在は、野蛮を意味する「バーブレス」。

 

主義主張が無く、殺戮行為に欲望を満たし、狩ったMSなどのジャンクパーツを利益としている集団である。

 

正に野蛮その物の集団だ。

 

そう言った意味では、まだテロリストの方がまともであろう。

 

彼らに突き付けられた幾つもの現実が、マリーダに飛び込む。

 

先程までの一時が嘘のような光景と化していた。

 

燃え盛る炎。

 

変わり果てた姿で斃れたジオン兵達。

 

そして、瞳孔を開けたまま燃えるカレッタ少年。

 

マリーダの心理が怒りに包まれた。

 

「貴様ら…………なんてことを……おのれぇぇっっ!!!!」

 

マリーダは悲しみよりも怒りを露にさせて叫んだ。

 

それを嘲笑うかのように、バーブレスのジムコマンドが、マリーダに銃口を向ける。

 

この時、マリーダはクシャトリヤだけ無傷なことに気づく。

 

狙いは、売り飛ばしを目的としたクシャトリヤの強奪。

 

そう直感したマリーダは即座にダッシュした。

 

その瞬間に撃ち放たれるマシンガンが、マリーダを狙う。

 

流石のマリーダの跳躍力も、逃げ切るに精一杯になってしまう。

 

走るマリーダの背後から襲い来る弾丸の嵐。

 

唸る銃声と砕ける地面の激しい音がこだまする。

 

そして遂には走るマリーダの足許に衝撃が走った。

 

「ぅあっ!!?」

 

前屈みに吹っ飛ぶマリーダ。

 

マリーダは、吹っ飛ばされながらも、受け身をとるように転がる。

 

その瞬間、バスタオルがはだけてしまう。

 

「……―――っく………」

 

更に傷つきながらも、マリーダは痛みに耐える。

 

両腕で胸を隠しながらマリーダは上体を起こしてバーブレスのMS達を睨んだ。

 

だが、傷の痛みと状態の恥ずかしさから立ち上がれず、成す術が無いマリーダ。

 

「―――……マスタ――……ヒイロ………!!!!」

 

ジンネマンやヒイロの事がマリーダの脳裏を過る。

 

だが、更にマリーダの精神に嫌悪感が包む。

 

「っく…!!!邪な奴等めっ……!!近寄るな!!!」

 

嫌悪感の流れに沿うように、ジムスナイパー、イフリート、マラサイに乗っていた男達がMSを降り、マリーダに近寄る。

 

薄ら笑いを浮かべているその手には銃が握られていた。

 

「へっへへ………ただで殺すわけ無いだろ?」

 

「そー、そー♪存分にあじあわなきゃなぁ………滅多にないぜ~……」

 

拳銃を持った男が、他のMSに向かって叫んだ。

 

「お前ら少しばかり散って見張ってろ!!なーに、味わったら直ぐに廻してやる!!!!」

 

他のMS達はその場を離れて持ち場に着いた。

 

マリーダはこの後に待ち受けるコトは、嫌と言うほど解っていた。

 

かつての忌まわしい娼婦時代の記憶が過る。

 

あの頃は当時のマスターの言うがままの人形に成り下がり、何も想うべき人もいなかった。

 

だが、今は違う。

 

父親代わりのジンネマンや、同じく戦うべくしての存在意義を見出だしている境遇のヒイロがいる。

 

女性としての有りたい潜在意識も混ざり、バーブレスの男がこれからしようとする事を、全身全霊で拒絶した。

 

「それ以上近寄るな!!来るな!!!殺す!!!!」

 

マリーダの気迫は確かだった。

 

だが、全裸のあげく傷ついた彼女の状態から、バーブレスの男達は、マリーダの叫びに構うことなく、嘲笑うようにマリーダの脚と腕に発砲した。

 

 

 

ダァン、ダァァンッ!!

 

 

 

「くあああああっっ――――!!!っく!!!うぅぁあっっ―――……!!!!」

 

マリーダの二の腕と左の太ももに銃弾が射貫いた。

 

引き裂くかのような激痛がマリーダの身体にはしる。

 

最早こうなっては流石のマリーダもどうすることも出来ない。

 

抵抗の余地はなかった。

 

「急所は外してやった……さぁ、ヤるとするか!!具合所をみせてくれよ………!!」

 

「やめろっっ………うぅぁあっっっ……うっ!!」

 

マリーダを押し倒すバーブレスの男。

 

仲間の男二人はニヤニヤしながらその光景を見下ろしている。

 

普段であれば、殴り飛ばすことは容易だが、受けた傷と激痛がそれを阻む。

 

悔しさとやるせなさに、マリーダは涙を瞳に溜めた。

 

その時だった。

 

マリーダは絶望と屈辱の中に近づく「陽」の感覚のモノを感じ取った。

 

思わずひきつった口許が笑みに変わった。

 

「……ふふっ……」

 

「あ!?何が可笑しい!??」

 

 

 

キィイイイイイン………ザァズゥガァアッ―――!!!

 

ゴバォオオオオォォッッッ!!!

 

 

 

迫る機動音と共にビームサーベル系の兵器にジムコマンドが斬撃され、斬り裂かれた部位が爆砕する。

 

「なんだ!?!」

 

マリーダの笑みに続いて響き渡ったビームの焼灼音と爆発音。

 

バーブレスの男達が一斉にその方角を向く。

 

そこには、ウィングバインダーの可動音を響かせて加速するウィングガンダムの姿があった。

 

轟と唸るビームサーベルの斬撃が、ゲルググを一瞬で寸断する。

 

巻き起こされる爆発の炎にウィングガンダムが照される。

 

「が、ガンダム!??連邦か!!?くそっっ!!!!」

 

男達は、一斉にマリーダの許を後にしてMSへ乗り込む。

 

その光景を見ながらマリーダは身体を起こして呟いた。

 

「せいぜい思い知るがいい。そのガンダムの力をな………ぅッ!!!」

 

だが、マリーダのマインドコントロールの後遺症が違和感と更なる感覚的な苦痛を引き起こす。

 

「ガンダムは敵っ…………だが、違う………マリーダっ!!!あの……あのガンダムはっ……敵じゃない!!!」

 

マリーダはかつての自分に言い聞かせる感覚で自らに言い聞かせた。

 

ハイザックと陸戦ジムが、マシンガンを浴びせながらウィングガンダムへと接近する。

 

情報不足の彼らは、ウィングガンダムを連邦のガンダムと思い込んでいるようだ。

 

無論、ガンダニュウム合金性であるGND合金には皆無のダメージである。

 

ウィングガンダムのコックピットモニター画面では、しっかりとこの2機がロック・オンされていた。

 

「この状況でバスターライフルを使うには目立ちすぎる。接近戦で叩くのが利に叶う…………無所属の武装MS集団、バーブレス。狙いはクシャトリヤか………マリーダ、無事でいろ!!」

 

ヒイロは、マリーダの安否の事を気にとめながら、コントロールグリップを押し込み、ウィングガンダムを加速させた。

 

ハイザックと陸戦ジムが放つマシンガンの弾丸が、空しくウィングガンダムの装甲面で砕け、無力化していく。

 

「―――?!?」

 

一瞬で懐に飛び込むウィングガンダムが、一気にビームサーベルでハイザックを斬り飛ばす。

 

 

 

ズジュガァアアアアアア!!!

 

 

 

そして機体を振り向かせながら、シールドの鋭利な先端部を陸戦ジムの胸部に刺突させた。

 

 

 

ズドォガアアアアアアッッ………ドドドゴォオオオオンッッ!!!

 

 

 

陸戦ジムの胸部面が連続爆発を起こして吹き飛ぶ。

 

瞬く間に4機のMSが破壊され、バーブレスの男達はパニックに陥った。

 

「な!?なんだ、あのガンダムはぁっ!??」

 

「あんな機体………あったか!?!」

 

「楽しみを邪魔してからに………畜生!!!」

 

ジムスナイパーのビームに続くように、マラサイとイフリートがウィングガンダムへと攻撃を開始した。

 

ジムスナイパーの放つビームが、マラサイの放つバズーカ、ミサイルランチャーが、ウィングガンダムへと直撃していく。

 

対しウィングガンダムは、シールドでビームや弾丸を遮る。

 

「うぅおらぁあっっ!!!」

 

バズーカの弾丸による爆煙にイフリートが突っ込み、ウィングガンダムへとヒートソードを振るい見舞う。

 

激しい激突音を響かせた斬撃だったが、攻撃は容易くガードされた。

 

「なっ!?チキショーが!!」

 

イフリートは何度も斬撃を繰り出すが、全ての斬撃がシールドによって弾かれる。

 

斬撃の感触も、鋼鉄に鉄板を当てるかのような感触が続き、一向に斬れ味が伝わらない。

 

「なんだ!??この装甲?!?ガンダリウムって言ったってよ、こんなに斬りまくれば少しは斬れ………」

 

次の斬撃の瞬間、ウィングガンダムはシールドの表面でヒートソードを弾き飛ばし、ビームサーベルで袈裟斬りの斬撃を食らわせた。

 

 

 

ザシュドォオオオォッッッ!!!

 

ドゥズガァアアアアアンッッ!!!

 

 

叩き斬られたイフリートの爆発を突き抜けたウィングガンダムが、マラサイへと斬り掛かる。

 

「ひぃいいい!!!」

 

ウィングガンダムに恐怖したマラサイの男は機体を後退させようとした。

 

だが、両腕に担がれたバズーカと両脚のミサイルランチャーの重みによって、ブースターで舞い上がろうとするも機動性が鈍くなってしまう。

 

「装備が重過ぎだ………!!!」

 

ヒイロは無情にウィングガンダムを飛び込ませながら、薙の斬撃を食らわせる。

 

 

 

ゴッッ――――ヴィズギャァアアアアアッッッ!!!

 

 

 

横一線に真っ二つに斬られたマラサイが火の華を咲かせるかのように爆砕した。

 

 

 

ゴォバァォオオオオオオォッッ!!!

 

 

 

ジムスナイパーの男は、標準をウィングガンダムのコックピットハッチ部に絞り混む。

 

「くそがっっ!!!いい気になるなよ!!!!」

 

トリガーを引き、ビームが一直線にコックピットハッチへと向かってはしる。

 

だが、ウィングガンダムは加速して、ジムスナイパー目掛け突き進んだ。

 

ビームも躱し、胸部を掠める。

 

ウィングガンダムは、ウィングバインダーの加速をかけた衝撃をのせて、一気に斜め上からシールドを突き出した。

 

ジムスナイパーは射撃の死角に追い込まれ、成す術無くコックピットをシールドで突き砕かれる。

 

 

 

ディガシャアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

ウィングガンダムは、シールドを突き刺したままジムスナイパーを地表へ押し倒し、更なる破壊ダメージを食らわせ破砕した。

 

その瞬間の光景がマリーダの面前で起こり、衝撃の風がマリーダへと吹き付ける。

 

地表へジムスナイパーを押し混んだシールドを抜き取ると、ウィングガンダムは体勢を起こして、マリーダの方へと向いた。

 

「くっ―――……ヒイロ………」

 

マリーダはマインドコントロールの後遺症とひしめき合いながらも、ウィングガンダムに向かいヒイロの名を呼びかけた。

 

 

 

一方、ゼクスとリディ達は、過剰に勃発し始めたジオン残存軍と現地のテロリスト達の紛争に、軍事介入の名目で派遣されていた。

 

場所はボルネオ諸島・サンダカン

 

未だ存亡とジオン再興を掲げて闘う残存軍と、宇宙より来た勢力を良しとしない現地テロリスト達の紛争は断続的に行われていた。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムやネオジオンによって感化されたジオン残存軍が、ここで手始めに反目勢力を打破せんと打って出たのだ。

 

既に市街地戦が開始され、各地の機能に問題が生じ、最早国家レベルの問題となっていた。

 

これに対し、連邦政府は連邦とOZの部隊を派遣させ、事態の沈黙を図っていた。

 

市街地の上空をトールギス、オーバーエアリーズ、ユニコーン、リゼルカスタムが編隊を成して飛行していた。

 

ゼクスが地上のMS展開状況を確認しながら、味方部隊各機に呼び掛ける。

 

「各機に次ぐ。これより武装勢力の駆逐任務に入る。最早敵機は混成部隊同然だ。ジオン、テロリスト関係無く殲滅戦で押しきる!!手当たり次第個々に撃破していけ!!後、我々の任務において、ガンダムに巡り会えずにいるが、それも自分の機体を慣らし、戦いに備える為の時間と思え…!!散開!!」

 

「了解!!ふふっ、ゼクス特佐。その考え、勉強させていただきます!!リゼルカスタム各機、少しでも各々の機体を慣らしておけ!!!」

 

「はっ!!」

ゼクスのその言葉に、リディは感化され士気を昂らせ、部下達にもその熱い士気を伝えた。

 

ゼクスの直属の部下である、オットー、ワーカーも昂らせながらオーバーエアリーズを突撃させる。

 

「ごもっともで!!では、しっかりと慣れさせていただきます!!」

 

「これも、後の兵士の為の一環と受け止めさせていだきます!!」

 

散開していくリゼルカスタムとオーバーエアリーズの部隊が、眼下で戦闘を繰り広げるMSの群れに攻撃を開始する。

 

すると、トールギスのコックピットにミスズからの通信がからかうように入った。

 

「言葉が上手いじゃないか?ゼクス。ゼクスの一言でこうも士気を上げられるなんてな」

 

「ミスズ……私は別にそのようなつもりで言っているわけではないんだが……」

 

「ふふっ、私もその言葉に乗らせてもらうぞ」

 

ミスズもトリガーグリップを押し込み、オーバーエアリーズを加速させ、敵機へと突撃する。

 

左翼に装備されたビームサーベルを取りだし、ビーム刃を発生させた。

 

「はぁああああ!!!」

 

ミスズのオーバーエアリーズは、駆け抜けるように、ビームサーベルで立て続けにザクやジムコマンドを斬り刻む。

 

ミスズのオーバーエアリーズの後方で、上半身と下半身に斬断されたMSの部位が爆発した。

 

周囲ではリゼルカスタムのビームランチャー、オーバーエアリーズのビームライフルが放たれ、各々の行動の許で敵機を破壊していく。

 

リゼルカスタムが装備しているビームランチャーは、バスターライフルに遠く及ばないが、量産機の中で最も出力の高い兵器であり、ガンダリウム合金を容易く破砕する威力を持つ。

 

上空より放たれていくビームが、カスタムザクやカスタムドムを破壊していく。

 

一方のオーバーエアリーズは、ビームライフルと両翼のメタルミサイルランチャーを駆使して攻撃をかけていく。

 

ビームライフルは、元々トールギス専用に設計されていたもので、高い出力を誇る。

 

ザク、グフ、ジム、ネモ、等のMSを寄せ集めて作った複合MS達に向かい放たれるビームが各機を射抜く。

 

そして一斉に放たれるメタルミサイルが、市街地を滑るように突き進んで、ハイザック、ネモ、アッグガイ達へと貫通する。

 

ガンダムの未知の装甲に対し、鉄甲弾として急遽装備された開発中の弾丸である。

 

戦闘が巻き起こる上空からユニコーンがビームマグナムを撃ち込む。

 

 

 

ヴゥシュヴゥゥウウウウウンッッ―――

 

 

 

撃ち込まれる一撃が、押し潰すようにゲルググを破砕させ、それに追従するように一発、二発、三発と撃ち放っつ。

 

ズゴック、ザクキャノンを同じように破砕し、更にはネモとガルスKが刃を交えていた所へと直撃し、2機を同時に破砕させた。

 

「この連中も反乱ガンダムに感化されたって言うのかよ………反乱ガンダムめ、迷惑この上ないな!!!」

 

ユニコーンは方向を転換させ、その方向へもビームマグナムを撃ち放つ。

 

一発、二発、三発、四発と撃ち込まれ、五発目の射撃の時に銃口にエネルギー球を発生させたチャージショットを撃ち放った。

 

バスターライフルの縮小版とも言える威力のビームが、ドムトローペン、量産型ガンキャノン、ジムカスタム、マラサイを撃ち砕き、更にMS達を破砕させていく。

 

そして五発目のビームが、ザクスナイパーを抉り飛ばすように爆砕させる。

 

爆砕されたMSの爆発が、サンダカンの市街地に咲き乱れた。

 

「…………いつの時代も考えが変わらない奴等だ!!!いつまで続けるつもりだ……ん!?!」

 

突如敵機接近のアラートがユニコーンのコックピットに鳴り響く。

 

モニターには迫る敵機が映し出された。

 

リックディアスが、上昇しながらクレイバズーカを構えている。

 

だが、リディは淡々とユニコーンを操作し、ビームマグナムをロック・オン。

 

瞬時にビームマグナムを撃ち放つリディ。

 

リックディアスの胸部に直撃したビームマグナムのビームは、リックディアスを豪快に撃ち抜いて破砕させた。

 

「どんなに楯突こうが無駄だ………貴様達は少しでもユニコーンの糧になってもらうさ」

 

リディは楯突く反乱分子に一切の容赦はしなかった。

 

眼下の敵影を排除したユニコーンは、次のポイントへと加速する。

 

トールギスを駆るゼクスもまた、市街地上空を駆け抜けながらドーバーガンを撃ち放つ。

 

 

 

ドゥバァォオオオオオオオオオッッッ―――!!!

 

 

 

強力極まりないビーム弾が、ゴッグをバラバラに破砕させる。

 

その高速かつ高威力のビーム弾が次の瞬間には、何発も撃ち放たれ、地上の敵機を次々とバラバラに粉砕させていく。

 

一気に六発を放なたれたドーバーガンのビーム弾に、ガルスJやズゴックE、ネモカスタム、ハイゴック2機、ハイザックが木っ端微塵に機体を砕き散らされていった。

 

トールギスも高速で飛ぶが、決して撃ち損じる事がない。

 

これもゼクスの高度な技術の現れでもあった。

 

レールガンのような高速を帯びたビーム弾は、大半の装甲材質の物体を破壊できる。

 

高出力、高速、高衝撃のビーム弾が中る瞬間に、強力な衝撃波を発生させる。

 

耐えられる物質はガンダニュウム合金のみであった。

 

トールギスを加速させながら巧みに射撃するゼクス。

 

既にこの次元内のトールギスをモノにしつつあった。

 

ザクⅠ3機がバズーカを撃ち放つが、容易くトールギスのスピードに躱される。

 

ゼクスは機体を反転させ、ロック・オンしたザクⅠに三発のビーム弾を撃ち飛ばす。

 

直撃を食らい、一瞬でザクⅠ3機が砕け散った。

 

再び反転しながら突き進むトールギスに向かって、3機のドムトローペンが、かつての黒い三連星に習い、ジェットストリームアタックを試みる。

 

ラケーテンバズーカを構えるドムトローペン3機が向かい来るトールギスに上昇しながら迫る。

 

「ふっ……流行らないな。その攻撃方は」

 

ゼクスは、ブレーキバーニアで激しいブレーキをかけてトールギスの慣性を殺す。

 

そしてホバリングしながら向かい来るドムトローペンへ、ドーバーガンのチャージショットを見舞った。

 

 

 

カシュコォォォッッ―――ディシュカァアアアアアアアアアア!!!

 

 

 

バスターライフル級のビームが撃ち出され、一瞬でドムトローペンを呑み込む。

 

3機のドムトローペンは呆気なく爆砕した。

 

そこへ間髪入れずに弾丸がトールギスに撃ち込まれた。

 

「おっと……私としたことが……油断したな」

 

だが、シールドで防御されたために機体は無傷だ。

 

トールギスはドーバーガンの銃口を2機のガンタンクとガンキャノンに向け、瞬く間に高速ビーム弾を撃ち込んだ。

 

機体が破裂されるかのようにガンタンクとガンキャノンは粉砕した。

 

「一方的過ぎるな………これでは。だが、トールギスは確実に私の手足となりつつある!もっとそれを確めてみたいな!!」

 

ゼクスは一気にトールギスを加速させ、自らを試そうと試みる。

 

殺人的なGと闘う為だ。

 

それをモニターで確認したミスズは、攻撃をかけながらもゼクスの身を案じた。

 

「トールギスは危険なはずだ。余り無茶はするな、ゼクス……いや、ミリアルド…」

ミスズの心配をよそに、ゼクスはトールギスを加速させる。

 

だが、ミスズの心配が的中してしまう。

 

ゼクスの身体に身体的に問題になるGがかかり、一気にゼクスの身体を追い込んだ。

 

実を言えばフロンタルと戦闘した時はまだバーニアのシークレットリミッターは解除されていなかった。

 

更なるデッドゾーンの領域を後々に知り、ゼクスはそれをも越えてこそが有るべき姿勢と捉えていた。

 

「ぐぅぅっ―――っく!!!やはり………この領域になると………だが、まだまだぁ!!!!」

 

加速するトールギスがドーバーガンを何発も地上に撃ち放ち、テロリストのMS群を破砕させて駆け抜ける。

 

そしてある程度突き進んだポイントで機体を停止させホバリングした。

 

奇しくもその眼下には4機のガンタンクⅡが確認できた。

 

空かさずトールギスはドーバーガンをガンタンクⅡ達へと撃ち込む。

 

ガンタンクⅡ達は、凄まじい衝撃と共に破砕爆発を起こして砕け散る。

 

ゼクスは再びその場で一気にレバーを押し込んでトールギスを加速させてた。

 

この時のGも凄まじく、トールギスの加速時に衝撃波が起こる程だ。

 

「うぉおおおお!!!ここでトールギスの真の性能を乗りこなして見せるさ!!!」

 

撃ち損ねた機体群をドーバーガンで次々と破砕させていく。

 

トールギスは凄まじい衝撃波を起こしながら空中を駆け抜けた。

 

「ガンダムを斃すまでは………故郷を解放させるまでは………死ねん!!!!」

 

トールギスはゼクスの信念を宿し、サンダカンの空を駆け抜けた。

 

 

 

戦闘の収拾がついたジオン残存軍野戦キャンプ地。

 

破壊されたMSから炎が燃え盛る中で、ウィングガンダムとクシャトリヤが向かい合って立ち並んでいた。

 

ヒイロは傷ついたマリーダの為に、ウィングガンダムのコックピット内から医療ツールを取り出していた。

 

「これだな……」

 

星空の下、ヒイロは早速マリーダの怪我の応急治療を施し始めた。

 

だが、マリーダはタオル一枚の状態でいた為に、恥ずかしさを覚えてならない。

 

ある意味、身体の痛みよりも問題であった。

 

だが、それ以上にかつての傷痕をヒイロに見られてしまうことが嫌だった。

 

ヒイロから目を剃らしながら、マリーダは恥ずかしさや複雑さを隠せずに礼を言った。

「っ……す、すまない…私が負傷したばかりに……こんなことに付き合わせてしまって………礼を言う」

 

「いや、気にするな。俺は当然のことをしているだけだ……感情で行動したまでだ」

 

感情で行動する。

 

少し前にヒイロがマリーダに伝えた概念だ。

 

「この前に言っていた事か。感情での行動……」

 

「ああ。任務に向かう途中、不自然なMSの熱源を探知した。来てみればマリーダのMSが……クシャトリヤが確認できた。状況の判断からあとは言うまでもない………後は俺の感情で行動した」

 

それを聞いたマリーダは、感情での行動の発言をした。

 

ある種の劣等感を秘めた発言だった。

 

「……女である私に、こんなにも傷があるなんて……きっと大抵はヒクだろうな」

 

「俺はそうは思わない。この傷もマリーダの一つだ。この傷痕を俺は否定しない」

 

「!!」

 

ヒイロのその言葉にマリーダは「はっ」となり、感情がまた一つ惹かれる。

 

マリーダは身体に痛みを感じつつも、口許に軽い笑みを浮かべた。

 

ヒイロは小型ライトでマリーダの傷口を観察しながら、治療に集中する。

 

「……弾丸は二つとも貫通しきって、中には残っていない。応急治療でとりあえず済む」

 

「そうか………っうぅ!!」

 

「……!!すまない、痛むか!?」

 

処置の際の痛みがマリーダにはしる。

 

ヒイロは直ぐにマリーダを気遣った。

 

「っ……あぁ………だが、大丈夫だ。私はお前の腕を信じている」

 

「そうか……」

 

マリーダもまたヒイロを惹くような発言をしてみせた。

 

ヒイロは感情を表に余り出さないが、この時マリーダには少し笑っているかのように見えた。

 

その後もヒイロは淡々とマリーダの治療に専念し、処置を施しきってみせた。

 

ウィングガンダムの足に背もたれして安静しているマリーダに、ヒイロは着替えを持って来る。

 

見つけたマリーダのものと思った着替えを拾い、かごにまとめたのだ。

 

「服を着ろ。風邪をひくぞ」

 

「すまないな……それじゃ、着替えるから向こうを向いてくれ。私でも………なんか恥ずかしい…」

 

「任務了解」

 

そう言いながら反対方向を見るヒイロの行動に、マリーダは思わず笑った。

 

「くすっ……」

 

「着替えはマリーダの……女性用の物と思う物を集めた。合っていたか?」

 

「ああ。着替えは全部正解だ…」

 

ヒイロが向こうを向いている間に、マリーダはバスタオルを身体から外し、下着を痛みに耐えながら着る。

 

エロティックな空気と緊張がヒイロとマリーダに流れる。

 

「……」

「……」

 

マリーダにはヒイロの緊張した感覚が伝わっていた。

 

戦闘のプロフェッショナルとしての普段のヒイロとの心理的なギャップを感じずにはいられない。

 

(ふふふ…普段はナイフみたいな鋭さを纏っていてもやっぱり男子なんだな……ドキドキしている……はっ!!)

 

その時マリーダは、はっとなりヒイロに呼び掛けた。

 

「ヒイロ!!」

 

その後マリーダは、ヒイロに手伝ってもらいながら二人で亡くなった者達の墓を作った。

 

「はっ」っとなった理由はこれであったのだ。

 

これはマリーダが感情で行動した結果である。

 

カレッタの墓の前でマリーダはヒイロにカレッタの事を少しばかり語った。

 

「この少年は、現地の食料調達を担ってくれていた………私にも弟のようになついてくれてな…」

 

「そうか…」

 

「……ヒイロ、すまなかったな。任務があるというのに手伝わさせてしまって……」

 

マリーダが負傷していたが故に、殆どの作業はヒイロがやっていた。

 

申し訳なさそうに言うマリーダに対し、ヒイロは肯定的な言葉を投げかけた。

 

「マリーダが感情で行動した事に、俺自身が協力したまでだ。亡くなった者を手向ける行為に間違いはない………」

 

「ヒイロ…」

 

しばらくしてマリーダは、ウィングガンダムの足を背もたれにして安静にしていた。

 

その隣でヒイロも同じように星空を見上げている。

 

そんなヒイロに、マリーダが先に言葉を投げかけた。

 

「ヒイロの任務は今どうなんだ?」

 

「俺はこれからソマリア基地を叩く。その後の主だった任務はニューエドワーズ基地で展開される大規模演習に武装介入する。その後にダカールを攻める形になるだろう…」

 

「そうか。ヒイロ達もダカールへ行くか。私もこれから潜伏と移動を繰り返しながらダカールを目指す所だ。ダカール陥落が成功を成せば宇宙へ帰れる………か」

 

マリーダはそう言いながら、何気なくヒイロに寄り添う。

 

「………!!」

 

マリーダは無言で動揺するヒイロの感情を直に感じとりながら、話を進めた。

 

「その帰る場所はパラオと言う資源衛生なんだが、そこにはネオジオンの兵士やその家族達が暮らしている………幸いにも今のところ連邦の目にはつけられてはいない所だ。私は同じ部隊の人の家に居候させてもらっている」

 

「パラオか。宇宙にいれば聞いたことはある。成る程な……マイナーな場所故に潜伏しやすいか………」

 

「一理あるかもな。もし機会があればそこへ、ヒイロに来て欲しい。何か饗(おもてな)そう。別にオルタンシアの借り返しではないが……」

 

「了解した…」

 

「なら約束だ…」

 

確かにマリーダは借り返しも兼ねて考えていたが、純粋にヒイロを住んでる場所に来て欲しい気持ちが殆どだった。

 

更にマリーダは頭をヒイロの頭にあて、ヒイロにもたれかけるように寄り添った。

 

流石のヒイロも緊張が隠せなくなる。

 

「マリーダ…っ!!」

 

ヒイロの感情を理解しながら、囁くようにマリーダはヒイロに言った。

 

「ヒイロ………任務に出撃する前に、しばらくこのままでいさせてくれ………一時でもいい。今は安らぎが……癒しが欲しい………私は悲劇と屈辱を浴びすぎた」

 

「………任務、了解」

 

マリーダは立て続けに浴びた負の要素に軽い疲弊を起こしていた。

 

ヒイロもその事は十分に理解し、本来の任務の時間を割いてマリーダと過ごす時間にあてた。

 

共に任務が日常とも言える戦士だ。

 

だが、今のマリーダは任務を遂行する上で明らかに支障が出る状態だ。

 

ヒイロの思考は緊張からマリーダへの思いやりへと移行していた。

 

「マリーダ………今のお前は任務に支障が出る怪我をしている。ダカールまで大丈夫なのか?」

 

「私を心配してくれているのか?ふふふ……確かに痛むが、何とか大丈夫だ。戦闘を回避しながら行くのだからな。それに戦闘になった場合はファンネルがある……」

 

「だが接近戦や今回のような戦闘に巻き込まれる可能性は十分にある……!」

 

「ヒイロ…」

 

ヒイロが機具してしまう気持ちは、同じ任務に投じている境遇故に理解できる事だ。

 

ヒイロの想いを直に接しているマリーダは、ひしひしと優しさを強く感じていた。

 

「本当、優しいな……ヒイロは。ありがとう……」

 

ヒイロにもたれながら瞳を閉じるマリーダ。

 

ヒイロはマリーダの温もりを少し感じながら、今しばらくマリーダの癒しに専念した。

 

 

 

OZ・地球連邦軍・ソマリア基地

 

 

 

 

数時間後。

 

ソマリア基地では、デュオが先乗りして破壊活動に徹していた。

 

振るわれたガンダムデスサイズのビームサイズが、ホバリングする3機のエアリーズを一挙に斬り捌く。

 

その爆発光を突き抜けながら、ガンダムデスサイズは無双劇のごとくビームサイズを巧みに振り捌いて、エアリーズ部隊を連続で斬り刻む。

 

「おらおらおらぁああああ!!!」

 

豪快に斬り飛ばされたエアリーズの残骸が落下する中、ガンダムデスサイズは地上へ降下し、駆け抜けるようにリーオー部隊を斬り捨てて、地上を滑る。

 

次々とリーオーが薙ぎ斬られ、爆発していく。

 

駆け抜けるガンダムデスサイズに向かい、アンクシャ部隊や、ジェガン部隊も攻撃をかけていく。

 

ガンダムデスサイズは回転をかけながら一気に加速を兼ねた方向転換をした。

 

アンクシャ部隊とジェガン部隊のビーム攻撃を全て回避しながら、ガンダムデスサイズはバスターシールドを展開。

 

アンクシャの胸部目掛け刺突する。

 

 

ズゥドォシュゥウウウッッッ!!!

 

 

 

そのままガンダムデスサイズは格納庫へと突っ込み、アンクシャもろとも格納庫を吹き飛ばした。

 

凄まじい爆発を巻き上げる。

 

その炎から死神が飛び出し、ジェガンをバスターシールドで斬り払い、もう1機のジェガンへとバスターシールドを突き刺す。

 

間近で起こる爆発をい問わない攻めに、誰もが圧倒され、次の瞬間には、アンクシャ2機が斬り飛ばされた。

 

「ヘヘ………さぁ、どんどん来な!!あの世に招待してやるぜぇ!!!にしてもヒイロのやつ、いつまでマリーダとイチャついてんだぁ?獲物全部この死神様が貰って………いっちまうぜぇ!!!」

 

 

 

ズゥギィギャギャガァアアアアア…

 

ドドドヴァアアアアアアアッッッ!!!

 

 

喋りながら斬り掛かってきたジェガン2機とアンクシャを斬り飛ばして見せるデュオ。

 

余裕の現れだ。

 

ガンダムデスサイズの攻撃により爆発が連続し、燃え盛っていくソマリア基地。

 

サイレンが鳴り響く中、新型のビームバズーカとビームライフルを装備した蒼いリーオーフライヤーが出撃していく。

 

「ソラック特佐!!無茶です!!新型ビームバズーカとは言え、相手は反乱ガンダムです!!」

 

「今やらずにいつやる!!私が戦い方を見せてやる!!!」

 

ソマリア基地のMS部隊長であるソラックが、カスタムリーオーを駆ってガンダムデスサイズへと加速する。

 

だが、ガンダムデスサイズに迫るに連れてモニターが乱れ始め、激しいノイズと共にガンダムデスサイズの姿そのものがモニターから消えた。

 

「何?!!」

 

両肩から左右に向いたハイパージャマーが発動し、周囲の敵機のモニターを乱していた。

 

ソラックは成す術なく標的を見失う。

 

「どんなトリックか知らんが舐めるな!!!」

 

ビームバズーカを撃ち放つソラック機。

 

だが、ビームは空しくガンダムデスサイズを掠めた。

 

「ちょっとばかしカッコつけても無駄だぜ………」

 

デュオの不敵な囁きの直後、ソラックの右サイドモニター側からビームエネルギーが押し寄せた。

 

「なんだとぉ!?!?がぁぐぃはっっ―――!!!!」

 

ビームエネルギーに呑み込まれ蒸発するソラック。

 

客観視点ではガンダムデスサイズがビームサイズでソラックのカスタムリーオーの胸部を斬り飛ばしていた。

 

分断されたカスタムリーオーの二つの部位が爆発した。

 

ガンダムデスサイズは加速して基地施設へと突き進み、ビームサイズを振るって破壊の限りを尽くす。

 

「斬って斬って斬りまくるっっ!!!」

 

死神の鎌が容赦なく基地の施設を瓦礫へと変えていく中、基地に目掛けて巨大なビームが撃ち注がれた。

 

 

 

ヴィヴゥヴァアアアアアアアアアアアア!!!

 

ズゥダガァアゴヴァアアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

直撃地点を爆砕させ、そこにいたジムⅢやリーオー部隊を吹き飛ばす。

 

これを放った主は夜空にホバリングしていた。

 

バスターライフルの銃口を基地に向けたウィングガンダムだった。

 

デュオはモニターを上空へと向けた。

 

「やれやれ………やっとご到着かい。ま、獲物は残してやったぜ!!」

 

デュオはその言葉を直接ヒイロに送っていた。

 

ウィングガンダムのコックピットのサイドモニターにデュオの顔が表示されている。

 

ヒイロは不敵な一言の笑いで返す。

 

「ふん…!!」

 

ヒイロは機体をホバリングさせたまま、基地施設へとバスターライフルの銃口を向け、ロック・オン。

 

メインモニターのロック・オンマーカー赤く点灯した。

 

ヒイロのコントロールレバー操作に伴い、バスターライフルの銃口から再びビーム渦流が撃ち放たれた。

 

 

 

ズグゥヴァアアアアアアアアアァァァァ!!!

 

 

 

ビーム渦流は、基地施設へと突き進んで押し潰すように建造物を破壊。

 

同時にビームの衝撃波が近隣の建造物やリーオー、エアリーズの機体群を吹き飛ばす。

 

この一撃でも被害は凄まじい。

 

ヒイロは更にこのビームを持続させながら機体を自転旋回させていく。

 

それに伴うビーム渦流の斜線光。

 

あたかもコンパスで曲線を描くように被害を拡大させ、連続で施設やMS部隊を破砕させていく。

 

ビーム渦流が終息するまでその攻撃は続き、凄まじい爆炎の火柱を巻き上げた。

 

この攻撃で、MS格納庫や武器庫、整備施設の殆どを破壊していた。

 

「基地施設の約80%を破壊。MS部隊もほぼ同じ値を破壊……」

 

ヒイロは基地状況を把握しながら機体を降下させ、射線軸上に残りの施設が重なるポイントへと移動する。

 

ウィングガンダムはその間の攻撃を旋回スピードで躱してみせる。

 

機体を基地滑走路へ着地させ、バスターライフルの銃身をかざした。

 

メインモニターの射線軸上には輸送機の格納庫と管制塔施設がある。

 

その射線軸上に次々と残存するリーオーやエアリーズ、ジェガンの部隊が集まり、ウィングガンダムへと攻撃をかける。

 

ウィングガンダムは目標破砕に集中するために、敢えて躱さず攻撃を受け続けていた。

 

GND合金だからこそ成せる業である。

 

「輸送機格納庫、管制塔を捕捉。破砕させる。」

 

バスターライフルの銃口にエネルギーの球体が発生し始めた。

 

ヒイロは最大値までエネルギーを圧縮させる。

 

今更ではあるが、バスターライフルのチャージトリガーシステムは、チャージ用のストロークまで引いた後に発射用のストロークまで更に引いて発射する仕組みとなっている。

 

ヒイロはチャージが最大値に達したのを確認し、バスターライフルのエネルギーを撃ち放った。

 

 

 

ヴィヴゥゥゥ……ヴヴォヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――!!!!

 

 

 

荒れ狂うビーム渦流が、MSを次々に呑み込み、融解消滅や高エネルギーによる誘爆発を巻き起させて破砕させていく。

 

そして輸送機格納庫を吹き飛ばし、管制塔施設へ直撃。

 

最終的には高エネルギーによるエネルギー爆発を巻き起こし、ビーム渦流が奔った痕に爆炎を巻き上げさせた。

 

この一撃でソマリア基地の殆どが機能停止となった。

 

ヒイロはモニターで状況を確認し、任務完了と判断した。

 

「ソマリア基地を破壊。基地機能停止を確認。任務完了……」

 

そこへ再びデュオからの通信が入る。

 

「いつもの事だが、また派手にやったなヒイロ!!流石だぜ!!遅れた分、随分と気合はいってたな!!マリーダとイイことでもあったのか!?どーなんだよ~?」

 

「……助けただけだ。それにいちいちお前に説明するのが面倒だ。お前の勝手な想像に任せる…」

 

「なんだよそりゃ!?じゃー、勝手にキスして更にその先に行っちまったってコトでいーのか~!?」

 

「ああ、適当に想像してお前だけ盛り上がっていろ」

 

しれっと言い切るヒイロに、やはりデュオは納得いかなかった。

 

「更になんだそりゃ!?てか隠すことないだろ~?」

 

「ふん…なら言ってやる。怪我を応急処置してしばらく一緒に居てやった。それ以上もそれ以下でもない」

 

「初めからそー言えよ!!成る程な~でー…キスは?」

 

デュオは、しきりとそのジャンルに話を持っていこうとする。

 

「していない………身体を寄せあっただけだ」

 

「なんか……俺が聞く度にボロ出てる気がするんだけどな………じゃー、セッく………」

 

その刹那、バスターライフルの銃口がガンダムデスサイズへと向けられた。

 

「だぁあああ!!わかったからムキなるなってよ!!」

 

「くだらん話はいい。とっとと戻るぞ!!」

 

他愛ないボーイズトークを陥落したソマリア基地にばらまいた後に、ウィングガンダムとガンダムデスサイズはその場を後にした。

 

そして、マリーダもまた、自らの意思で予定通りの方向で行動していた。

 

クシャトリヤを自動操縦に切り替えて、次のポイントを目指す。

 

マリーダはそっと傷の場所に手を添え、自らに囁くかのように呟いた。

 

「私にとって今は、任務が最優先だ。少しでも効率がいい方を選択をする。それに、ヒイロとはまた会えるんだからな……」

 

 

 

ボルネオ諸島・サンダカン

 

 

 

ゼクス達は、凄まじい攻撃を展開させたことで、事態を一気に終息させていた。

 

各地点にゼクスの部隊のMS達が着地した状態で聳え立っていた。

 

「ようやく事態を終息させることができたか……っ」

 

「ゼクス特佐とリディ少佐のご活躍がなければ、まだ事態が収まっていなかったかもしれないですね」

 

ワーカーはレポートに記録を書きながらゼクスとリディを立ててみせる。

 

「リディ少佐はともかく、私は買い被りすぎだっ………っく…一杯の状態だったのだからな」

 

「またご謙遜を。自分も一日も早くゼクス特佐の背中に追い付きたいですよ」

 

ワーカーやオットーをはじめ、多くの兵士達はゼクスを信頼し、尊敬していた。

 

故に彼自信が抱えている悩みを感じ取れない者が殆どだった。

 

尊敬するが故に、負の部分が見えなくなってしまうのだ。

 

彼女以外は。

 

「ワーカー特尉!ワーカー特尉はオットー特尉と共に事後処理に当たれ!!私がこちらのレポートをとる!!」

 

「ミスズ特佐!!はっ!!了解致しました!!」

 

ミスズはワーカーをゼクスから遠退かせた。

 

すると、キッとゼクスに鋭い視線を送りながら言った。

 

「ゼクス……少しいいか?」

 

「何だ?ミスズ……」

 

ミスズはズイとゼクスに近寄り、ゼクスの身を厳しいまでに案じた。

 

「お前………身体はどうなんだ!!?無茶してやせ我慢しているんじゃないだろうな!!?」

 

「っ!?!何故解る!??」

 

「大体、ゼクスがやろうとすることぐらい解る!!メーザー機付長から聞いたぞ!!トールギスのバーニアリミッター解除したことを!!大体、お前は赤い彗星の再来と渡り合えるほど十分なエースだ!!!これ以上は余計だ!!!」

 

「ミスズっ………くはっ!!」

 

ゼクスは肉体を精神の凌駕によって耐えていた。

 

だが、ミスズの叱責と共にその気合が崩れ、ゼクスはその場に座り落ちてしまう。

 

「ゼクス!!?っ聞いている傍からこれじゃないか!!!立て!!!医務室へ行くぞ!!」

 

「すまない………ミスズ!!」

 

その光景を見ていた連邦兵士やOZ兵士達がざわつきはじめた。

 

ミスズに担がれ、医務室へと向かうゼクス。

 

その一部始終の光景を見ていたリディの口が開いて塞がらない。

 

「まるで………スパルタ奥さんて感じだなミスズ特佐………ミヒロとは大違いだ」

 

ゼクスですら時にもて余すミスズの姿勢に唖然を食らうリディを他所に、ミスズはゼクスを強引に仮設医務室へと連れていく。

 

その最中、一人のOZの兵士がミスズに駆け寄ってきた。

 

その兵士は表情に慌ただしさを滲ませていた。

 

「失礼します!!実は………」

 

「……何!?ソマリア基地が陥落しただと!?!」

 

「はい……反乱ガンダムによって!!」

 

「そうか………了解したっ!!」

 

ミスズは一層表情を鋭くさせた。

 

ミスズの上官や後輩がいた基地だった為だ。

 

悔しさや憎しみを抱いくミスズであるが、先程の強気な姿勢が影を潜め、ゼクスに力を懇願した。

 

「ゼクス………撤回する。今はゼクスとトールギスの力が欲しい!!今回ばかりはOZとしてのプライドが許せない!!!」

 

「無論さ………トールギスならばガンダムと渡り合えるはずだ………リディ少佐にはここを撤収したら静浜基地へ先に帰投するよう伝えてくれ!!ここは我々がソマリアへ発つ!!あの基地は主にOZの基地だからな!!」

 

「了解!!」

 

そしてゼクス達は、直ちにソマリア基地へと飛び立って行った。

 

その向かう途中の機内へ更なる新情報が入る。

 

オットーが、ミスズへとその情報を伝えた。

 

「ミスズ特佐!!新たな情報です!!ソマリア基地で生き残っていたステルス機が、現在ガンダムを追跡中との事です!!」

 

「何だと!?!今何処にいるのだ!?!」

 

「現在、アラビア海沖を東へ向けて飛行中との事です!!」

 

「よし、わかった!!直ちにこちらも迎撃だ!!随時座標を送るよう伝えろ!!」

 

「は!!」

 

いよいよ迫るガンダムとの戦闘に誰もが緊張に包まれる。

 

またとない機会と錯覚し、誰もがトレーズの命令に関係無く部隊が動いてしまっていたのも事実であった。

 

これまでに遭遇し損ねていた事がそのような状況を産み出してしまっていたのだ。

 

そして、事態を終息させたリディ達は、ゼクスの指示通り、一度OZ静浜基地へと向かう。

 

その最中、輸送機の操縦席より肉眼で未確認MSを視認した。

 

「ん!!?前方に未確認機を肉眼で視認!!!」

 

「何だと!?!っっあれは!?!?」

 

機長が確認したもの……それはガンダムジェミナス01であった。

 

先程の軍事介入の一件の書類をまとめていたリディに声がかかった。

 

「リディ少佐!!前方にガンダムを肉眼で視認しました!!!」

 

ガタっと立ち上がったリディは、表情を変貌させつつ、機内からガンダムの姿を確認した。

 

「いよいよ………ゼクス特佐だけじゃなくこちらにもその運が回ってきたみたいだな………!!!」

 

「リディ少佐!!?」

 

リディは、遂に遭遇したガンダムに闘争心を隠せなかった。

 

直ぐにユニコーンのコックピットに乗り込み、素早い操作でディスプレイや、モニターを起動させていく。

 

「全天モニター、ディスプレイ、各部表示問題なし!!」

 

「リディ少佐、単独は危険です!!」

 

「一対一で渡り合えなければ意味がない!!!手出し無用だ………そう、ゼクス特佐のように騎士道の精神でな!!!とは言え俺はライフルも使うが………リディ・マーセナス、ユニコーン……出るっ!!!」

 

不敵に笑ったリディは、ユニコーンを輸送機から出撃させた。

 

しなやかな動きでユニコーンは体勢を整え加速。

 

ビームマグナムをスタンバイしながら突き進む。

 

モニターにはハッキリと迫るガンダムジェミナス01が映し出されていた。

 

「いよいよだな!!!反乱ガンダム!!!?」

 

リディはこれまでの同胞達の犠牲と無念をビームマグナムに託すように、コントロールグリップを力強く何度も握り締めた。

 

無論アディンも気づかないわけがない。

 

異常な速さで迫る敵影にアクセラレートライフルを突き出してユニコーンをロック・オンした。

 

「単独出撃?上等だ!!!俺がキメるぜっ!!!」

 

互いに銃口を向け合いながら対峙する2機。

 

次の瞬間、アクセラレートライフルとビームマグナムのビームが同時に撃ち放たれた。

 

 

 

ヴゥィィィ………ヴヴァダァアアアアアアア!!!

 

ヴィシュヴゥゥゥウウウウウウンッッ!!!

 

 

 

そして二つのビームは激突し合い、激しい爆発光を放ち打ち消しあった。

 

 

 

その一方、ガンダムの経路を捕捉したゼクス達も、ガンダムとの激突の瞬間が迫る。

 

「先程撃墜されてしまったステルス機には感謝しなければな………ミスズ、無茶はしないつもりだ。安心してくれ!!」

 

「でなければ困る。死なれるわけにはいかんからな。ようやく対峙したガンダム………やはり私は出撃する!!!もどかしくてたまらない!!!」

 

ミスズは感情に任せて出撃しようとするが、ゼクスはそれを言葉で制止させる。

 

「ならん!!!!今の感情のミスズでは危険過ぎる!!!!機内に居てくれ……解っているさ、必ず仕止めよう」

 

「ちっっ………頼む!!」

 

「では、2機ということだ。行けるか?トラント特尉」

 

ミスズの無念の気持ちを承ったゼクスは、部下のトラントに呼び掛けた。

 

トラントも相当な自信があるらしく、ガンダムを前にしても不敵に笑う。

 

「は!!ゼクス特佐、いつでもいいですよ」

 

「ふっ………では、参る!!!!」

 

ソニックトランスポーターより、トールギスとオーバーエアリーズが出撃していく。

 

加速するトールギスのコックピット内のモニターに、ウィングガンダムと、ガンダムデスサイズの機影を捉えていた。

 

「この高揚感………!!!ようやく対峙することができたな!!トラント特尉、死神のようなタイプのガンダムを頼む!!!」

 

「了解!!!」

 

トールギスとオーバーエアリーズの2機は恐れることなく突き進む。

 

「さぁ!!!!反乱のガンダムよ!!!!私にその力を見せたまえっっ!!!」

 

ヒイロとデュオもまた、迫るトールギスとオーバーエアリーズを迎え撃って出る。

 

ウィングガンダムとガンダムデスサイズのコックピットモニターには迫る2機が映る。

 

「データ照合………1機はカスタムエアリーズ、もう1機が……トールギスか!!」

 

「さぁ………てストーカーを斬り飛ばしたら、メインゲストの登場ってか!!初めてだな、先手打たれたのは!!」

 

「先手だろうと後手だろうと、破壊するだけだ。行くぞ!!!」

 

「オーライ!!!」

 

ウィングバインダーを展開させて加速するウィングガンダムと、ブースターからGNDエネルギーを噴射して突き進むガンダムデスサイズ。

遂にGマイスター達とOZ・連邦のエース達の運命の邂逅が果たされた。

 

戦士達は各々の信念を賭して激突しようとしていた。

 

 

 

 

To Be Next Episode

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。