ちなみにナトちゃんはここでは終わりません。
私は立っていた。
この場所に立っていた。
呆然と、漠然と立っていたのだ、周りには到底信じられないような数の花々が
雲の上に所狭しと咲き誇っていた。
雲がふかふかしていて気持ちよさそうだ
足場があり、花を踏むなんてことは無かったけれど…
そこには誰もいなかった。
私以外の誰もいなかった。
毎日の様に話しかけてくれたあの野球少年君も
_______大好きだった、ヘタレゲーマーなあいつも。
そこに存在なんてしなかった。
孤独感しかなくて、寂しさしかなかった。
とにかく一歩踏み出した。
私が踏み出したところに、足場が出来た。
私の進んだ場所には足場が、道が出来た。
この花々の果てまで歩いてみたかった
この世界の終末はどこなのだろう。
気になったから歩いてみたかったんだ。
どんどん歩き出す。
時間はたっぷりあるんだ、この場所の果てを見ようじゃないか。
そう思っていた。
するとだいぶ歩いた所に雲と雲の切れ目が現れた。
ここが果てなのかと思ったが違うようだ。
疲れたのでそこに座り込んだ。
すると、その切れ目の間に何かが映ったのだった。
「な、に…?」
映ったのは、あの2人だった。
「……っ!!
カナギ!!!ショウ!!!」
とっさに手を伸ばしてしまった
身体がガクンッと下へと落ち始める
「あっ…!?」
恐怖のあまり目をつぶってしまう
だが、私の身体は下へと落下する事はなかった
何かに体や額を押される感覚がした。
目を開けると花々の中に仰向けに寝転がっていた。
目をパチパチとさせる。
身体をムクリと起き上がらせると
私の周りには
大好きなあの2人の特徴を切って張り付けたようなぬいぐるみがそこにはいた
私を見上げている。
目はボタンだし、口元は刺繍だから表情は変わらないけれど、
そのぬいぐるみは確かに、泣いていたのだ
ポロポロと、ボタンの瞳から涙を落としていた。
「……君ら…悲しいの…?」
2人のぬいぐるみはコクコクと頷く。
「君ら…2人にそっくりだねぇ…」
手を少しだけ伸ばす。
避けられてもよかった、どうしても触れたかった。
その気持ちがわかったのかわからないけれど
そのぬいぐるみは擦り寄ってきた。
2人に似ているそのぬいぐるみは抱きついてきた。
私の服に小さな顔を埋める。
その小さな涙は私の服を濡らした。
なんでだろう。
さっき泣いたはずなのに、
自分まで涙が出てきた。
ぬいぐるみを抱きしめる。
彼等に温もりなんて無いはずだけれど、なぜか温かく感じた。
目から涙が次々と溢れ出た。
声を出して泣いた、泣きじゃくった。
すると、カナギに似ているぬいぐるみが、するりと腕から抜けた。
ぽふぽふという可愛い足音と共にどこかへと走っていった。
しばらくすると彼はどこかから花を摘んできた
彼の両腕には大事に2本ほど青薔薇が抱えられていた。
「あ、お…ばらっ……。」
その中の1本を前に差し出してきてくれたので、そっと受け取る
私は青薔薇の花言葉を知っていた。
【奇跡】そして【不可能】
そのぬいぐるみは、青薔薇を先ほどの雲と雲の切れ目へと投げ込んだ。
その花は…パッっと光ったと思うと、花びらとなって落ちていった。
彼らに奇跡を_____
そして、
こちらへと来ることを…
___不可能にしたい
その思いを込めて、自分自身もその青薔薇を投げ込んだ。
同じようにパッと光りを放ち、花弁へと変わり、
ゆらゆらと揺れながら落ちていった
それを見届けると、パフっと花畑に倒れ込んだ
ぬいぐるみも一緒に倒れ込む。
このたっぷりある時間を楽しもう。
時々、ああやって花をあの2人にあげよう、
だって今の私にはそれしかできないから
はい、というわけでナトちゃんはカナギの事が好きだった。
でも、伝えられずに終わるというあるある的なやつですね、
ちなみに投げ込んだ花の行方は…