中華を漂う雲   作:鎌鼬

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雲と盗賊

 

 

「ーーーーーーーーあぁ、まったくヤな夢見ちまったなぁおい」

 

 

目が覚めて眠気も完全に無くなっていたのでそのまま寝床から出る。首を回し、肩を回し、体の具合を確かめる。うん、悪くは無いな。

 

 

「あれから17年か‥‥‥‥ったく、別に固執してる訳じゃないのにあの時のことを未だに夢見るとか女々しいね。どっかの歪んだ正義の味方じゃないってぇの」

 

 

頭でも心でもあの時のことは仕方がないと割り切っている筈なのに一年置きで未だに夢見るのはどこかで納得していないからだろう。ズルズル引きずるつもりは無いのになぁ。

 

 

窓から外を見れば丁度日が昇り始めたところだった。この世界には時計なんて便利な物は無い。日が昇れば目を覚まして、日が沈めば眠るという分かりやすいサイクルが中心になっている。直に宿屋の人間も店を持っている人間も目を覚まして動き出すだろう。

 

 

「体動かしてスッキリして来るか」

 

 

壁に立て掛けてあった薙刀を手にとって宿屋から出る。こういうスッキリしない時には体を動かすに限る。

 

 

「今年で俺も27‥‥‥‥この世界に来て27年か‥‥‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は極普通の学生だったと覚えている。多いわけではないが友人がいて馬鹿やったり、兄弟はおらず一人っ子、サラリーマンの父とパートで働いている母と一緒に日本で当たり前のように生活していた。

 

 

それがあるとき、気がついたら赤ん坊になっていた。ポルナレフみたいな台詞を吐きかけたが堪えて周りを見渡したら日本の我が家ではなく、平安時代辺りの農民なんか住んでそうな建物になっていた。

 

 

転生ーーーーーーーー俺がなんの脈絡もなく思い付いたのはその言葉だった。元は仏教の言葉だったような気がする。魂は生前の汚れを洗い流されて新しく生まれ変わるとかなんとか。

 

 

どこの二次小説だよと突っ込んだり、夢みたいだな~と思ったりしたが覚めることはなく、今の歳になるまでずっとそのままだった。

 

 

二次小説にあるように神様みたいな存在にあった覚えもないし、死んだ記憶も無い。悪魔召喚もしたことは無いし、怪しげな契約書にサインしたこともない。

 

 

何で俺がと生後一週間までは悩んでいたが、こうなってしまってはしょうがないと割り切ることにした。

 

 

そして10年間その村で過ごして居たが、盗賊に教われて村人全員死亡。この世界での両親が俺のことを穴に埋めてくれたお陰で俺だけが生き残った。

 

 

そこから17年が経って俺は大人になった。

 

 

「は~‥‥‥‥これくらいにしておくか」

 

 

宿屋の後ろにあったスペースで薙刀を振り回し続けること30分、大分スッキリしたのでそこで止めることにした。武に人生を捧げているッ!!!とか言う人ならこれくらいは準備運動にもならないだろうが俺にとってはこれで十分だ。

 

 

俺にとっての朝の運動というのは体に不調が無いかということを調べる行為に近いのだ。ここが動かしにくいとか、ここが痛いとかこの運動で把握しておけばこの後ですることに支障が出にくいから。

 

 

「ーーーーーーーーえぃっ!!」

 

 

後ろから幼い声と共になにかを投げつけられた気配が感じられた。振り替えって薙刀を振ればそこには大根があった。

 

 

「おーすげー!!」

「すごいよ雲雀さん!!」

「さっすがひばりん!!おれたちにできないことをへいぜんとやってのける!!」

「そこにしびれる!!」

「あこがれる!!」

 

 

大根を投げてくれたのはこの宿屋の近所に住んでいるだろう子供たち。何故か俺はこういう子供に懐かれる傾向がある。どうしてだ。

 

 

「ったく、食いもん粗末にするなよな。後ひばりん言うな」

 

 

薙刀で真っ二つになった大根に着いている土を適当に払い除けてかじる。溢れる水とシャキシャキとした歯ごたえからこの大根の良さが分かる。少し砂が口の中に入るがそんなことを気にしていたら生きていけなかったんで気にならない。

 

 

「雲雀さん雲雀さん!遊んで!!」

「あっ悪い、これから用事があるんで今日は無理だ」

「え~!!」

「明日なら遊んでやれるから我慢しなって」

 

 

残念がっている子供の頭を撫でて遊ぶことを約束してやると「ホント!?じゃあ明日ね~!!」と元気に走り去って行った。あの純粋さが大人になると眩しくってしょうがない。これも心が汚れているからだろうか?

 

 

「‥‥‥‥そういや何で大根持ってきたんだ?餌付けか?まぁいいや、朝飯代浮いたし」

 

 

子供から投げられた大根を葉の部分まで残さずに完食して、側にあった井戸で顔を洗う。

 

 

水面に映るのは色素が無くなってしまって白くなった髪と少しキツい目付きの男の顔。これが今の俺の顔だ。髪は元は茶色だったが思っていたよりもあの事が堪えていたらしくてしばらくしたら白くなっていた。強すぎるショックを受けると髪が白くなると前の世界では聞いたことがあるし、恐らくその類いなのだろう。

 

 

「ま、白は嫌いじゃないから良いんだけどね」

 

 

それよりも髭だ。髭が生えるのが遅いし薄い、てかまったく生えない。大人になったら無精髭とかダンディーな髭に密かに憧れていたというのにそれが叶いそうにも無いじゃないか。

 

 

この日も念入りに顔を触って確かめてみたが髭は生えてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿屋から必要最低限の物ーーーーーーーー薙刀と幾つかの隠し武器ーーーーーーーーを持って町の外に出る。そして思いっきり指笛を鳴らす。

 

 

「さて、どこから来る‥‥‥‥!!」

 

 

身構えて待っていると前から何かがこちらにやって来るのが見えた。

 

 

「前か!!距離も余裕があるしこれなぶぇ!?」

 

 

前から来るのばかりに注意が向いていたからか、横から来るのに気がつかずに押し倒されてしまった。ちらほらと見えていた商人の何人かが何事かとこちらを見ていたり、憲兵を呼ぼうとしていたがそれを抑える。

 

 

「あーごめんごめん。こいつら俺が飼ってる奴だから。な、雅?」

「ガウ♪」

 

 

横から飛びかかってきたのは全長3mはある巨体の虎だった。名前は雅。無事に生き延びることができてぶらぶらしていた頃に拾った虎だ。出会った頃は手乗りタイガーと言って良いほど小さくて可愛かったのだがスクスクと大きくなってくれました。ちなみにメスである。

 

 

「ん、待てよ。横から雅が来たってことは前のは‥‥‥‥」

「ガオ~♪」

「待て待て待って!!神楽さん!!今動けないから来られたぶぇ!?」

 

 

雅に捕まって逃げられないところに前から来た虎にのし掛かられた。めっちゃ重い。

 

 

前から来た虎は雅とほぼ同じくらいの体格の持ち主で名前は神楽。こいつも雅と一緒に拾ったので兄弟じゃないかと睨んでいるが真実は誰にも分からない。ちなみにオスである。

 

 

この二匹とは長い付き合いなので家族とも言えなくは無いが、流石に町に泊まるときには町の外で待ってもらっている。あと一人仲間がいるんだが‥‥‥‥まぁそいつの紹介はまたの機会にさせてもらおう。

 

 

「よしよし。雅、神楽、腹減ったか?今から鱈腹喰わせてやるから楽しみにしてろよ?」

「ガウ♪」

「ガオ~♪」

 

 

雅と神楽を引き連れて町から離れた場所にある森にへと向かう。一昨日に酒場でそこには盗賊が住み着いていて、商人が度々被害に合っているという話を聞いたからだ。人数が少人数な事から逃げ足が早く、この町は国境に近いことから異民族の襲撃に備えなければならないという理由で兵が出せず、懸賞金が出てるとのこと。

 

 

「さぁ、盗賊狩り(ワイルドハント)の始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーはぁ、はぁ、くそっ!!」

 

 

斧を手にした体格のいい私が首領です感満載の男が悪態をついた。そりゃあつきたくもなるだろうさ。始めは30はいたお仲間たちが今じゃ5人しか残ってないんだから。

 

 

「お、親分!!」

「黙ってろ!!お前たち離れるなよ!!一人になったら死ぬと思え!!」

 

 

首領です感満載の男の指示に従って盗賊たちが集まる。うん、間違っちゃないね。個々で討たれる危険を集めて回避するのは当たり前の事だ。

 

 

「グルルル」

「ガルルル」

「き、来た!!」

 

 

その盗賊たちの前から雅と神楽が現れる。口の周りにはベッタリと血が着いていて、それが恐怖心を煽らせる。

 

 

盗賊たちが雅と神楽に注意が向いた隙に横から飛び出して、首領です感満載の男を除く盗賊たちの首を薙刀で跳ねる。森の中で隠れるところは沢山、加えて盗賊たちの集まっていたところが開けていた場所だったので奇襲は成功、薙刀を振り抜くのも問題なかった。

 

 

「て、てんめぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

残った男が斧を振りかぶる、が遅すぎる。薙刀を男の頭の上に目掛けて一振り。目的は首ではなく斧を持った腕。遠心力によって威力の増した薙刀の刃は男の筋肉と骨を容易く切り裂く。

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?手!!手!!俺の手!!」

「はーい静かにしようね、盗賊さん?」

「ガフッ!?」

 

 

腕が無くなったことで騒ぎ立てている男の腹を蹴って強制的に黙らせる。体格が良いとは言ったけど筋肉じゃなくて脂肪の方が多い腹だな。

 

 

「君たちが今まで溜め込んだ物を集めてる場所があるだろ?吐け。嘘つくと次無くなるのは足だからな」

「こ、この先にある洞窟だ!!そこに盗って来た物全部集めてある!!だ、だから助けてくれ!!」

「え?ヤだ」

 

 

聞きたいことを聞き終えたので男の首を跳ねる。首を跳ねられたことを理解していないのか、唖然とした男の死に顔は笑いを誘う。

 

 

「自分がやりたいことやって死んだんだ、だったら潔く死ね。それが嫌だったそんな生き方するな。まぁ聞いちゃいないだろうけど。雅、神楽、食べて良いよ」

 

 

雅と神楽が男と盗賊たちの死体を食べ始める。この盗賊狩りの目的は雅と神楽の食料確保である。小さい頃なら良かったがこの大きさになると沢山食べる。だからこの二匹を食わせる為に盗賊を狩っている訳だ。それに序に盗賊の溜め込んでる物をちょろまかさしてもらって俺の飯にもなってもらっている。

 

 

男の首を持ってきていた皮袋の中に入れる。これで町の憲兵に見せればお偉いさんから懸賞金が貰える。

 

 

「雅、神楽、食べ終わったら俺の後追ってこいよ」

 

 

それだけ言い残して男が言っていた盗って来た物を集めているらしい洞窟へと向かう。

 

 

少人数とはいえ、懸賞金がかけられる程の盗賊が集めた物だ。多くはないと思うが気にならないと言えば嘘になる。

 

少しテンションが上がってしまったせいで、スキップをしながら洞窟へと向かってしまった。

 

 

 






主人公の名前が出てきましたがそれは普通の名前で真名じゃないです。真名の方に『雲』が使ってあるのでタイトル詐欺じゃないです。


主人公は強キャラ。盗賊程度なら瞬殺。勝つことを考えなければ体力の続く限り呂布とも打ち合える位です。


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