I EVIL   作:008

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2.家族として

 

 現魔王の妹である彼女、リアス・グレモリーからすればこの来訪は到底予期せぬことだった、と確信持って言える。自身の幼き頃にトラウマを植え付けた本人が、突然自分の目の前に現れれば、誰だって驚きや怒りを通り越して無貌をしばらく続けてしまう筈だ。

 

 あの時のように、ニコニコと見ているこちらが辛くなるような作り笑顔は、忘れるわけもなくリアスの心拍数を上げた。私を案内してくれた眷属の二人は、こちらに向けるリアスの呆然とした顔に戸惑い、私とリアスを交互に見た。

 

「どうして………ッ、貴方がここにッ!」

 

 いや、ちょっとは期待していた。

 実は彼女が年々成長していくうちに真実に気付き、私に感謝感激雨あられの羨望の瞳を向けてくることもワンチャンあるかもしれないですよね! なんて思ってたりもした。

 

 だが、それはやはり夢物語なだけであって、呆然とした顔はすぐさま母ヴィネラナや義姉グレイフィアに似た苛烈な怒り顔へと変貌した。

 

「義姉上に呼ばれてね、詳しくは私も知らないよ。君の兵士君が一番知ってるはずさ」

 

 私のその言葉に、リアスは兵士君に鋭い目線を向けて説明を無言で促した。

 

「あ、あのですね部長! グレイフィアさんがサーゼクス様からアクスレアさんをここに案内しなさい、って俺に昨日言われたんです」

「………お兄様が」

 

 思案顔になりつつも、彼女の怒りはまだ収まっていなかった。

 

「………………来るのであればそれなりの準備があったのに、お兄様のバカ」

 

 ボソっと何かを呟いた彼女は、兵士君に向けていた目を私に向き直し、この学校の制服だと思われる服のスカートの左右両方の裾を軽く持ち上げ、頭を下げた。

 

「お久しぶりです、アクスレア様。突然の来訪に、戸惑いを隠せず失礼を致しました。皆、彼は私のもう一人の兄にして、サーゼクスお兄様の秘書アクスレア・グレモリーよ、粗相の無いように振る舞いなさい」

「いやいや、そんな、いいさ。私はそんなに大した者ではない、兄上の秘書も、元であるしね。今ははぐれ悪魔さ」

「アクスレア様、はぐれ、などと」

「本当のことさ、リアス。それに私はもう『グレモリー』では無いしね、そこらのはぐれ悪魔と同等に扱ってもらって構わないよ、ははは」

 

 アクスレア様、という呼名で呼ばれる事は少なくなかった。

 はぐれに身を落とす前、より前のディゴニアに行くまでは私の悪魔としての地位は最上位に近いものであったし。しかしそれを妹に使われるというのはなんとも言えない気持ちである。

 

「主リアス・グレモリー様の女王を務めております姫島朱乃ですわ。貴方のお話はよく聞いております、お会いになれて光栄ですわ」

「ちょ、ちょっと、別にあなたに話してなんかないわよ!? 誤解を招く発言はやめて頂戴朱乃!」

「うふふ、ごめんなさいですわ」

 

 女王との関係は良好なようだ、まだ幼いながらもよくやっている。

 

「あの……」

「ん?」

 

 背に小声で声をかけてきたのは白い髪に、10代前後の容姿をした少女だった。隠しているのかは分からないが、日本特有の化物である『妖怪』の持つ妖力を微かに感じたため、おそらく人型妖怪少女だろう。

 

「塔城小猫、です。戦車、やってます」

「よろしく、アクスレアだ。好きなように呼んでくれて構わないよ」

「では、アクスレアさん、と。 突然ですがお聞きしたいことがあるのですが」

「なにかな?」

 

 真剣な眼差しで彼女は問うた。

 

「魔力の扱いに長けている、という事は冥界の書物で存じています。ですからわたしの力も、理解していると思います」

「ふむ」

 

 小声で聞くあたり、知られたくない話なのだろう。

 リアスと姫島君は話しているが、他の眷属達の目もある。

 

「それで………」

「後で、話を聞こう。君も、あまり悟られたくない話っぽいしね」

「分かりました、ありがとう、です」

 

 とことこと猫のように無音でソファに戻り、洋菓子を食べ始める姿に実家で昔飼っていた草食竜を思い出した。確か名前は、ファストラファンクスだったっけ。名前に特に理由はない。

 そういえば、この部屋に入ってからリアスの魔力の他に興味深い力を感じていた。兵士君と同い年ぐらいの金髪の美少年からそれは感じていた。

 

「君、面白い物持ってるね」

「あ、はい。木場祐斗です、面白いもの、ですか?」

 

 自分の姿や持ち物を確認して、首を傾げる木場君。

 

「神器、だよ」

 

 そう言われ、驚いた顔をする木場君に使ってみて、とお願いしてみる。

 

「主よ、自身の力というのは例え味方であろうと無闇に見せるものでは無いです。ご自重ください」

「ははは、そうだったね。だがディランも感じるだろう? この混沌を。少なくともこの力は私が生まれてから初めてなものだ」

「何分私にはわかりませぬな、主のように全ての魔力を把握しているわけではありません。主の示した痕跡を追うのが精々ですな」

「嫌味かい?」

「はい」

 

 正直な下僕だよ。

 

「さ、流石『神話級の悪魔(ジャヴァロス・バシレウス)』に名を連ねるだけはありますね、驚きました。完全に力を抑えている自身があったのですが」

「君がまだその力を、『聖魔』の力を制御できていない、ということだね。難しそうな力だよ、扱うのに苦労するね」

「いえ、これが仲間を守る剣となるのであれば、使いこなしてみます」

 

 聖魔の力、平静に見えるだろうがこれでも相当驚いている。元来聖と魔というのは決して相容れぬ事象、光と闇が溶け込む事がない様に、完全に分離し、磁石の同極が反発するのと同じ様に、決して混ざり合うことはない、筈なのだ。この少年はそれを持っている、異端であるその力を。

 

「アクスレア様、もう一人眷属はいるのですが現在封印中ですので、申し訳ありませんが」

「いいさ、全然ね」

 

 ほう、もう一人いるのか。

 封印というからには、おそらく身近な場所、この建物の中が可能性としては高い。それを私に悟らせないレベルの封印魔法………おそらく、アジュカによるものか。術式構築のスペシャリストである彼は魔力操作は私に負ける分、繊密な封印術や結界術に関しては異常なレベルだ。

 

 そして、そこまでの封印術式を要するほどの力を持つ眷属、リアスは何者なんだろうか。老婆心ながら背中に汗をかく。

 

 その時、時空移動の魔法を察知する。魔力解析、冥界からの接続を確認する。数秒で魔力による転移術式によってこの部屋にゲートが現れ、開門した。ゲートを構成している魔法陣の紋様はルシファーとグレモリーのものが刻まれている。

 

 転移してきたのは、10年ぶりの兄とグレイフィアだった。

 

「やあアクスレア。元気にしてたかい?」

「おかげ様で、義姉上のご助力も在ったおかげで、思っていたより快適な10年でした」

「当然のことをしたまでです。それとアクスレア、今回は私用で来ました、言葉遣いも昔のようにしてください」

「ははは、わかったよ」

 

 そんな軽い会話を交わす私達を若干恨めし目に見るリアスが兄に詰め寄る。

 

「一体、これはどういうことですかお兄様!?」

 

 私をちらっと傍目でみて必死の形相で兄に迫るリアス。

 

「良い機会じゃないか、リアス」

「はい!?」

「大好きなお兄ちゃんが二人揃ったんだ、不可能なことは何もない、何でも言いなさい」

「………お義姉様」

「少し、落ち着いて下さいサーゼクス」

 

 自分の夫をアイアンクローをする美人妻の光景が目の前で繰り広げられている。リアスの眷属たちも、信じられないような目でそれを片膝をつきながら眺めている。

 

「私は、別にっ」

「リアス、意地を張るのはもう………」

「………っ」

 

 グレイフィアの穏やかでありつつも、厳しい言葉にあの時のように悲痛な表情を作るリアスは、それを私が見ている事に気付き私に背を向けて部屋を早足で出て行く。

 

「あの子も、色々考えているのだよ。あの日の事を彼女は相当悔いている。だが、素直になれないのは、彼女自身の正義感の現れ、アクス、辛いだろうが」

「いえ、これでもすごく嬉しいんですよ」

 

 ほんとに、救われた思いだった。

 

「と、それより兄上。私が呼ばれた理由というのは?」

「そんなことを言って、本当は大体察しが付いているのだろう?」

「堕天使、正体不明の竜、聖魔、それぐらいですがね」

「それで十分理解できているさ。まあ、付け足すとすればその正体不明の竜というのは、そこにいるリアスのお気に入りの少年のこと、というぐらいだよ」

「ほう」

 

 兄が目を向けたのは案内役を務めてくれた少年だった。

 

「彼は赤龍帝の宿し手、なのだよ」

「赤龍帝、二天龍の片翼………通りでどこか私の中で引っかかっていたわけです」

 

 二天龍は悪魔、天使、堕天使によるかつての大戦の真っ最中、種族隔て無く戦場のど真ん中で喧嘩を始めたという強大な力を持つ龍だ。その力はその三竦みの戦争を一時中断させ、三種族が手を取り合って討伐させるほどであった。

 

 赤龍帝、その二龍でも印象は特に大きい。

 なんといったって、我ら三種族に対し「神如きが、魔王如きが俺たちの楽しみの邪魔をするな」とまで豪語したのだから。戦争というモノにい頭に血が上っていた私でもその圧倒的な存在力に背を震わせたものだ。

 

『俺の右翼を引きちぎった野郎だな』

「ははは、覚えていましたか、赤龍」

『当たり前だ、クソ、相棒、コイツはそこらの悪魔とは一線を越した存在だ、俺らが油断していたからとはいえ、白いのと俺の翼片方を持ち魔力で千切捨てた様な奴だぞ』

「それは誇張しすぎですよ」

『黙れ、あまり昔のことは根に持たないようにしているが、お前は気に食わん』

 

 いつの間にか少年の腕には、赤龍帝を思い起こす

 

「ど、ドライグが震えてやがる………」

『相棒、恐れて震えてるんじゃない、怒りだ』

「けど、超強かったお前の翼をだろ!?」

『ふ、不覚を取っただけだ』

 

 随分と、赤龍帝は丸くなったようだね。宿し手の少年が気軽に話しているあたり、対戦時のままというわけではないらしい。

 

「アクス、話を戻す。今回お前を呼んだのは近い日に、三勢力の代表がここに集まる」

「予定では、一週間後を予定しています」

 

 グレイフィアの補足が入る。

 

「その際、邪魔が入るかもしれない。アクスにはその処理を頼みたい」

「私に? バアル大王家がソレを許しますかね」

「アクスの存在は伏せたままだ。それに大王家の方々はあまり人間界に姿を現さない。

今回のことは魔王である僕に一任されている」

 

 三種族の代表の集会、か。

 

 確かにトラブルが1つや2つ起きてしまうだろう。警備が厳重すぎるに越したことはない。私がいれば早々事態が思わぬ方向に向かうことはあろうとも、悪化することは無いはずだ。

 

「それに、旧魔王派の動きが怪しい」

 

 旧魔王派、その言葉に敏感に反応してしまうのはこの10年での結果というべきか。滞在していたラスベガスは、悪魔や強欲な人間が集まるだけでなく『情報』というものも多く集まった。

 人間界では私達悪魔や天使、怪物などの存在は公に認知されている存在ではないが、カジノで多額のカネを落とすような資産家などは、その事実を知っていたりすることが極稀にある。

 天使、悪魔、魔法、魔術、そんな言葉をゲーム中にさり気なく入れて反応を見て、私はそれを見抜いていた。他にも、魔術に通ずる『邪術、精霊術、降霊術、錬金術』などを一般人が使った際に、彼らの心の臓色濃く残る魔力の痕跡で判断するなんて方法もあったが、今はどうでもいい。

 そんな奴らからはぐれ悪魔の情報や、エクソシストの情報を聞く中で怪しげなカルト教団の話がちらほらと聞けた。

 

 その名も――――。

 

「禍の団、ですか」

「そこまで知っていたのか」

「兄上が座っている魔王の座より、私がいた所は情報の規制がありませんでしたからね」

 

 やはり、存在しているのか。

 

 禍の団、呼び方はカオス・ブリゲード。

 何のために、何をしようと活動しているのかは不明だが、ここ最近裏の世界での動きが活発になってきているらしい。その存在を知る人間は少なかったが、彼らが再度ベガスを訪れることはなかったために、やはり少し特殊な存在だとは思っていたが。

 

 まあ、禍の団と旧魔王派がつながっているというのは私の完全な勘だったのだけど、どうやら私の勘も未だ捨てたものじゃなかったらしい。

 

「知っているのも名前だけです」

「………そうか」

 

 いつの間にか、グレイフィアとリアスの眷属たちが部屋から出ている。

 

「今から話す話は他言無用だ、リアスがいれば彼女にも話したのだけれど、この際いい。今回集まった主な理由は『三勢力の同盟』が主な理由だ」

「――――はい?」

「悪魔、天使、堕天使による同盟だ。神の子を見張る者の長アザゼルも、アイツの事だ、こちらの考えを察して、法案は通るだろう。死んだ神の代理、ミカエルもおそらく」

「和平が、通ると?」

 

 信じられない。

 

 実際そうだ、これまで悪魔や天使、堕天使が生まれてからというもの(堕天使は元は天使だが)和平という言葉は一度も無かった。いや、二天龍の一件があったか………だがしかし。あり得ない、許すはずもない、それは旧魔王派も絶対に現れるだろう。

 

「僕は確信している」

 

 兄の目に揺らぎはない。

 

「………わかりました。全力で、この和平、通しぬかせてみせましょう」

「アクスがそう言ってくれるのならば安心だ」

 

 そう言って、力が抜けた笑みを浮かべる兄。

 

「私が、拒否するとでも?」

「可能性の1つとしてだよ、魔王なんていう仕事をしているとね、万に一つということがザラにあるのさ、疑い深くなってしまうのさ」

「ですのに、今回は自信がある。ということは私も安心できそうです」

「任せてくれ。………さて、じゃあアクス、リアスの元へ行っておいで。今の彼女なら、お前を見れる筈さ」

「ちょ、兄さ――――」

 

 兄の突然の魔法構築に驚きつつ解析し、害のない転移魔法だと確認し瞬きした瞬間、私は兄によって転移された。おそらく、行き先は、リアスの元だ。

 

 

 

 

 

 

 弟を送った数秒後、ふぅ、と息を吐いた僕は最後の弟の言葉を反復していた。

 

「兄さん、兄さん、か。――――兄さん、と呼ばれたのなんて何百年ぶりだろうね」

 

 嬉しそうに言葉を噛みしめる彼はやはり、悪魔を束ねる魔王であっても弟妹を思うシスコンでブラコンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ♠   ♥   ♠   ♥   ♠   ♥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬きから目を開けると、目の前にいたのはまたもや呆然とした顔のリアスだった。彼女は私の顔を数秒間凝視し続けると、ハッと我に返った。

 

「また、お兄様ですか」

「は、はは。そのようだね」

「………………」

 

 リアスは目線を下にむけて黙りこむ。だが今回は諦めたようで背を向ける気配はなく、ただただ口を噤む。

 

「あの、リアス」

「………はい」

 

 やはり、怖かった。

 

 グレモリー一族というのは家族や眷属に対する寵愛が深い。それはグレモリー悪魔ゆえの特性であり、血による変え難き感情によるものだ。その家族に深く嫌われるというのは、一番身が裂く思いをする事なのだ。

 

「私は、君に深い傷を残してしまった。あの時は、私はあれぐらいしか思いつかなかった、許してくれ」

「………………」

「私が、こんなで、辛かったろう、ごめんね」

 

 彼女の綺麗な紅髪は顔を隠すようにして垂れていた。何も、考えて話せない。自分が十年前にしたことへの後悔と懺悔が口から出るだけだ、そこに誠意というものはおそらく感じられない筈だ。

 淡々とした口調でしか、物を言えない。コミュニケーション障害持ちのように、彼女の前では挙動不審になってしまう。

 

「許して、くれ」

 

 だが、彼女の笑顔は見たかった。

 

 ディゴニアでの面会時に、グレイフィアの見せてくれた写真越しでしか見たことのない彼女の笑顔が、見たかった。かといってユーモアにとんだ話をこの場でするのは阿呆だろうな、どうやったらいいのだろうか、そうただただ悩み続ける。

 何も言葉が思い浮かばずに、背を向けて、立ち去ろうとした時、背中のスーツの裾がぎゅっと掴まれた。

 

「待って」

 

 静かで小さいが、リアスの声だ。

 

「私は、十年前のあの時を、よく覚えてるわ。夕食でのこと、私が襲撃者の一人に、手を向けられてる時に、現れた貴方のことも、しっかりと」

 

 言葉言葉噛みしめる様に、なんとか絞りだす様にして話すリアス。

 

「嫌いじゃ、なかったの。けど、怖かった。私も、最初はお兄様のお話とか聞いてたけど、戦争の話を聞くとお父様もお母様も話を逸らしたし、やっぱり本当なんだ、私のお兄ちゃんは悪者なんだ、って思ったの。屋敷に来るよ、ってお父様から伝えられて嬉しかったけど、私自身考えがまとまっていなかったから、すごく怖かった。部屋にこもってたらグレイフィアが来て言ったわ『我侭はやめなさい』って。なおさら、怖くなったの。ちっさい頃の私は自分の我侭で実の兄を蔑視していたのだ、って、変な考えをして。それで、実際会って、無我夢中に、何がなんだかわからないまま、周りの言うお兄ちゃんのイメージとはぜんぜん違って優しそうで、混乱した、だから、おかしいな、って私なんで、って、それで、それで………!」

 

 綺麗な髪の隙間から、部屋の光に反射する雫が光ったのが見えた。

 

「やっちゃった、って。顔を見たら、すごくつらそうで、私のせいで、だから、だから………! 部屋でお母様とグレイフィアに怒られたわ、今も覚えてる。そこからは、凄くあっという間で、襲われて、助けに来てくれて、けど怖くて、何も、言えなかった。いつの間にか気を失ってて、目を開けたらお母様の顔だった。凄く、悲しそうな顔をしてたわ。私がどこにいったの、って聞いたら、遠い所ってお母様は言ったの、会えたの、嬉しかったのに、すぐどっか行っちゃった。そんな声がお母様の表情から見て取れるようで、凄くこ、こ、こ………後悔………したっ………!」

 

 雫が線へと変わって、床に落ちる。

 

「いつか、ごめんなさいしに行こう………って、お母様に誓ったの。それまで、会っても恥ずかしくないように、グレモリー家の淑女として誇り高くいようって。それから5年後ね、お母様とお父様が書斎で話していたのを聞いてしまったわ、もう、グレモリー一族の一人ではないんだ、って。辛かったの、私があの時、こん、ばんわ、お兄ちゃん、って、言えてれば…………!」

 

 崩れそうな彼女の身体を、反射的に抱きしめた。

 

「ごめん、なさい。――――ごめん、なさい………ッ!」

 

 ぎゅっと彼女も私を抱きしめた。

 

「もう一度、やり直せるなら」

 

 そんなことを言うリアスの耳にそっとささやく。

 

 生きるもの全ては一度思った事があるだろう。

 

 あの時、こうしていれば。生物は皆常に後悔しながら生きている。私がこのように、他者から大悪人だと思われ生きていくことになったのも後悔の一つだ。それを撤回してやり直せるならば、そんな風に思うことは常だ。

 

 過去に戻る事は無理だ、誰も、誰にだってそんなことはできない。

 けれど、やり直すことは出来る。

 

 

 

 そう、こんなふうに。

 

 

 

「ただいま、リアス」

 

 涙で顔をいっぱいにしながら、喉の奥から重たいものを持ち上げるかのようにゆっくりと、嗚咽を漏らしながら、リアスはニコリと笑った。

 

「………おかえり、なさいっ! お兄ちゃん………!」

 

 こうして、彼女と私の確執は、一つ大きな壁を乗り越えた。

 

 

 




個人的に推敲は一度だけして、はいおやすみなさい。してるので、割と誤字は多いです、仕方ないね( ゚ ρ ゚ )
決め台詞で誤字ってる時は、この話実はコメディなんで(大嘘)笑いポイントなんだな、って思って下さい()
正直暇つぶしに書いてるんで、誤字多くても許してほすぃ。
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