目が覚めたらもやしになってた。
「…………えっ?」
訂正する。紫もやしになってた。
「…………どういう事?」
でっかいベッドに横になってたので起き上がった。紫色の髪の毛と洋服。胸はそこそこ、いやかなり大きい。ナイトキャップみたいのも被ってた。
「これ……パチュリー?」
姿見で見てみたらまんまパチュリーだった。これが世に聞く転生といわれるものか。
「記憶には一切ないけど」
不思議な事に記憶がぽっかり抜け落ちたような感覚だった。今目覚める前の出来事を思い出せない。
「てか、ここ何処……」
パチュリーに転生したなら場所は紅魔館の筈だが、本は周りにはないし、部屋も紅くはない。
「……いきなり知らない場所に転生とか、人生ハードモードすぎる」
とにかく情報を得るために部屋から出た。出た先は普通の一軒家のようなリビングだった。強いて言うならちょっと古臭い。家具が、とかじゃなくて時代が一個前みたいな感じがする。
「今時、完全な木製テーブルとか見ないし……」
何か塗られているわけでもなく切り出して表面を磨いただけのただの材木でできた家具がそこいらに点在していた。
「外はどうなんだ……」
扉を開けると、地下道のような場所だった。さすがにこれは驚く。どうりで部屋の中に窓がなかったわけだ。そのまま道なりに進んでいくと下水道のような場所にたどり着いた。
「まさかだけど……ホームレス何て言わないよね」
それは勘弁願いたい。現代っ子がいきなりホームレス生活なぞ出来る筈もない。幸い、すぐ近くに地上に出る穴があったのでそこから出た。
「…………なんか、中世の街並みっぽい気がする」
レンガ屋根の家が並び、石畳の道が伸びていた。車や自転車はなく馬が馬車を引いていた。
「明らかに時代が違うみたいだし……ただ転生しただけじゃなさそうだ」
しばらく街の中を歩いてると、通りの人がこそこそ話していた。始めは俺の事を噂してるのかと思ったけど違うらしい。
「離しなさい!」
なんか女の子が捕まってた。ていうかレミリアだった。
「うるさい!悪魔め、生きて帰れると思うなよ!」
「そうだそうだ!お前らのせいで俺の家族は殺されたんだ!」
うわー、あれやばそう。このままじゃ確実に殺られるよね。ここは助けるべきだよね。でもどうやって?
「魔法は……いけるか?」
正直、魔法なんて言われてもわからん。あんなの感覚でやってるような感じだし、言われてすぐ出来んなら誰でも魔法使いだわ。
「やるだけやってみるか……えいっ」
とりあえず適当に炎でも出すイメージをした。
「……出たよ」
マッチみたいなのを想像してただけに蛇みたいにうねってる炎が出てきて驚いた。けど今はこれでいいや。炎の蛇をレミリアのもとに向かわせる。案の定見た事もない変なのが近づいてきたため人々は逃げ始めた。
「逃げろ、悪魔の罠だ!」
そのまま逃げてくれー、もう来るなよー。レミリアにつけられてる手枷みたいなのを外したらバックステップで距離取られた。え、地味に凹むんですけど。
「貴方……何が目的なのかしら」
「えっと…………」
やべえ、まともに人と話さなかった弊害(コミュ障)がまさか転生しても引き継がれてるとは思わなかった。、てか引き継がなくていいから。
「あの……その」
「イマイチ要領を得ないわね。もっとはっきり喋りなさいよ」
それができたら苦労しない。俺の口からは小さく「すいません……」としか出て来ない。恨むぞ、もっと喋れよ俺。
「助けてくれたのは感謝するわ。でも素性も分からないし迂闊に信用は出来ないの」
「……はい、分かりました」
分かりましたじゃないよ、もっと他に喋れよ。そう思ったところで口がもごもご動くだけ。こりゃ本格的にコミュ障発揮か……泣けてくる。結局レミリアと会えたのに状況説明してもらうタイミングを逃した俺だった。