拉致られて今日から女子校ライフを送る事になったんだが…   作:タンホイザ◎

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第5話を投下します。

今回はまた新キャラ登場です。

タイトルは間違いではありません。

またまた恵美ちゃんと司ちゃんが卑猥な漫談を展開します。

お詫び 予告にあった新キャラの一人は止むを得えない事情で、今回は出せませんでした。申し訳ありません。

ではどうぞ。




第5話 ツンデレラと気弱なお姫様

「えっと、天河先輩。すこし、い、いいですか?」

「ん?誰?」

「あっ…やっぱり無理かも!ご、ごめんなさい!許してください!ふぇぇぇん!」

 

僕は呼び止められたから、普通に振り返っただけなんだ。なのに、いきなり泣き出されてしまった。さて、どうしたものか。これでは僕が何かしたみたいじゃないか。

 

「ちょ、ちょっとあんた!なんで朱鷺を泣かせてんのよ?」

 

見てみろ。早速、金髪ツインテールの女の子が僕に文句を言って来たぞ。怒っているせいか顔が赤い。左手を腰に当て、右手で僕を指差して。まるで、何処ぞの名探偵が犯人はお前だ!と指摘する時の決めポーズだね。その姿が可愛くて、つい、頭を撫でてあげたくなったよ。

 

「うーん。僕は特に何もしてないかな?」

 

泣きたいのはこっちの方だからね。僕の顔を見るなり、やっぱり無理かもって言われたんだぞ。かなり凹んでますよ。

 

「じゃ、じゃあ、なんで朱鷺は泣いてんのよ?」

「なんでだろうね?」

 

理由が知りたいのは僕の方だ。それでやっぱり顔が無理でしたって言われたら、立ち直れそうにないけどね。

 

「来夢ちゃん、天河先輩は悪くないよ」

 

僕を先輩と呼ぶところをみると、彼女達は1年生だね。二人とも初々しくて可愛いよ。来夢ちゃんの方は若干生意気そうだけど。

 

「大丈夫なの、朱鷺?」

「うん。もう大丈夫だから。心配してくれてありがとう」

 

どうやら朱鷺ちゃんも落ち着いたみたいだ。よかったよ。このままじゃ騒ぎを聞きつけて、小田切先生辺りが駆けつけて来そうだったからね。

 

「天河先輩にもご迷惑をおかけしました」

「僕は構わないけど、突然どうしたの?」

「うぅっ、それは、その…」

僕の質問に朱鷺ちゃんは言い淀む。やっぱり顔だったのか?なんか落ち込んできたぞ。

 

「なによ朱鷺、はっきり言いなさいよ」

 

焦れた来夢ちゃんが朱鷺ちゃんを急かしてくる。

 

「え、えっとね…あの、天河先輩とお話しがしたかったんですけど、いざとなったら怖くなって」

「えっ?」

「な!」

 

朱鷺ちゃんの意外な言葉に驚いたけど、なんで来夢ちゃんまで驚くの?

 

「ちょ、ちょっと朱鷺、どういう事よ?」

「ごめんね。来夢ちゃん」

「……ずるいわよ、朱鷺」

 

なんか二人でごちゃごちゃ言ってるみたい。来夢ちゃんが少し落ち込んでいるみたいだが、どうしたんだろ?

 

「話くらいなら別に構わないよ」

「本当ですか!」

 

朱鷺ちゃんがすごく喜んでるよ。僕とお話し出来るのがそんなに嬉しいのかな?

 

「食堂でいいかな?」

「はい!」

「わ、私も行くわ!いいわね!」

 

仲間外れが嫌なのか、来夢ちゃんが言い出した。顔を真っ赤にして怒ってるよ。そんなに怒らなくても、仲間外れにはしないのにね。

 

「こ、こいつと二人きりにしたら、朱鷺が何されるかわからないでしょ?」

 

先輩をこいつ呼ばわりとは。まあ、いいけど。先輩風は吹かせたくないしね。それと食堂で二人きりで果たして何が出来るのか?

 

「ら、来夢ちゃん、先輩に失礼だよ」

「ふ、ふん!」

 

朱鷺ちゃんの注意に来夢ちゃんはそっぽを向く。

 

朱鷺ちゃんはいい子だね。それに引き換え、来夢ちゃんは素直じゃない。

 

「来夢ちゃん。そんなんじゃ、先輩に嫌われるよ」

「そ、そんな事……か、関係ないじゃない」

「大丈夫だよ。こんな子も嫌いじゃないから」

「だって。よかったね来夢ちゃん」

「な、なによ!へ、変な事いわないでよね」

そう言いながらも、来夢ちゃんの顔はにやけていたな。

 

「よし、朱鷺ちゃんにジュースを奢ってあげよう」

「えっ?」

「いいんですか?」

 

来夢ちゃんは俺の言葉に驚いたみたいで、少し悔しそうな顔をした。仲間外れにする気はないからね。朱鷺ちゃんは素直に喜んでるよ。

 

「さっき泣かしてしまったお詫びと言う事で」

「ありがとうございます」

「もちろん来夢ちゃんにもね」

「ま、紛らわしい言い方しないでよね!」

 

来夢ちゃんは安心したのか、そう言うと先に食堂に向かって歩き始めた。僕は朱鷺ちゃんと顔を見合わせて笑った。

 

「じゃあ、行きますか」

 

朱鷺ちゃんを引き連れて、来夢ちゃんの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う事がありまして…」

「それで?」

 

おはようございます。今、教室の隅で正座をさせられている天河隼です。

1年生との楽しい会話を終えて、教室に戻ってみると、速攻でエーミに確保され、有無を言わさず引きずられるように部屋の隅に連れて行かれ、エーミの他に玉姫、西条姉妹、司に取り囲まれて、事情聴取を受けている最中である。囲みの中心にいるのは、もちろんエーミだ。それにしても迫力が凄い。食堂で三人が談笑しているのを目撃した人がいて、エーミ達にご注進申し上げたらしい。一体誰だよ?

 

「それで?とおっしゃいますと?」

「隼君が何をしたか聞いとるんや」

 

声のトーンが低くなってるのは気のせいか?

 

「普通に奢ってあげただけですが?」

「ジュースをか?」

「えっと…ゴージャスゴールドパフェ?」

「あほかぁぁぁぁ!」

 

エーミに怒鳴られました。なぜ?

 

ゴージャスゴールドパフェは学食の隠れた人気メニュー。ダブルプリンにメロンをたっぷり使ったかなり贅沢なパフェです。もちろんチョコもたっぷり。そしてお値段もそれなりに贅沢なんですよ。

 

「なんで隼君はそんなもんを奢ってしまうん?ジュースで十分やんか。うちもあんまり食べた事ないのに…」

 

なんだ食べたかったのか。

 

「今度、エーミにも奢ってあげるよ」

「えっ?ほんまに?隼君、約束やで」

「おい恵美。今はそんな約束はどうでもよかろう」

 

エーミには喜んでもらえたが、まだ玉姫達は納得出来てないみたいだ。

 

「そうやった。あのな隼君、今はそんな約束どうでもええねん」

「どうでもいいのか。じゃあ、パフェはいらないね」

「うぐっ!パ、パフェは奢ってもらうとしてやな」

 

どうやらパフェを奢る事が確定したようだ。

 

「問題は、見ず知らずの相手に、何でそんな高価なもんを奢らなあかんのかって事や」

「だから、お詫びのつもりだったんだよ」

「聞いてる限り、隼君には非はないやんか」

 

まあ普通に振り返っただけだからね。

 

「仮にお詫びだとしても、ジュースで十分じゃないかしら?」

「司ちゃんの言う通りや。なんで、ゴージャスゴールドパフェなん?」

「僕が食べたかったから?」

学食のサンプルケースに展示されてたパフェのサンプルを見て、食べたいって思っちゃったんだよね。いやぁ、日本の食品サンプルは偉大だ。

 

「一人で食べたらええやんか」

「いや、まあ、一人で食べるのも悪いかなって思って」

「どうせ隼の事だ。大方、1年生が食品サンプルを見て、食べたそうにしていたのであろう。それでつい奢ってしまったと言うところだ」

 

さすが玉姫、さすが理事長。よく僕の事をご存知で。

 

「玉姫様はねぇ…」

「そうだよね。クマのぬいぐるみ…」

「そ、そこの二人、余計な事を言わんでよい」

 

西条姉妹が何か言おうとしたが、慌てて玉姫が止めに入った。

 

「隼君?さっき、たまちゃんが言うてた事ほんまなん?」

「…その通りでございます」

 

サンプルケースのパフェのサンプル見ながら、ため息ついてたんだよ。つい、ほっとけなくてね。高くついたけど、二人の笑顔が見れたからいいかな。

エーミが大きなため息をついた。

 

「まったく、隼君らしいと言えば隼君らしいけど、アホやな」

「諦めろ。隼のお人好し加減は底抜けなのだ」

「天河様はお優しい方なのですね。天井しらずなのでしょう」

「天河さんは単純なんだよね」

「呆れたわね。あなたらしいけど」

 

酷い言われ様である。まあ、皆さんの言葉を否定する材料は、持ち合わせていないから反論できない。

「他になんか変な事してへんやろな?」

 

来夢ちゃんも言ってたけど、逆に、食堂で出来る変な事を教えてほしい。実行はしないけどね。

 

「変な事なんて……あっ!」

「な、なんや、心当たりあるんか?」

 

僕の言葉にエーミが肩を掴んで聞いてくる。

 

「変な事かどうかわからないけど…」

「お、おい隼、何をやったんだ?」

 

玉姫が心配そうに聞いてくる。みんな僕の答えを固唾を飲んで待っているようだ。僕の肩を掴むエーミの力も強くなる。

 

「別に大した事じゃないけど、来夢ちゃん、金髪ツインテールの女の子がスプーンを落としたんで…」

「なるほど。つまり、あーんをしてあげたわけね」

「………はい」

 

司の言葉に、エーミの顔が引き攣る。玉姫、西条姉妹は目を丸くして固まった。

 

「アアアァァァァ!何しとるの?隼君、自分が何したか分かっとるん?」

 

エーミが怒鳴りながら僕を激しく揺さぶってきた。やめて!そんなにユサユサしないで。酔う、酔っちゃうから!

 

「なんで見ず知らずの子にあーんってしたん?そんな羨ましい事!うちもまだしてもらってないのに!何で?なんでやの?」

「スプーンがなかったら食べられないじゃないか」

「新しいスプーン、取りに行ったらええやんか!」

はっ!その発想はなかった。

「隼君、狙っとるん?狙ってやっとるんやな。そんなにあちこちフラグ立ててどうする気や?」

「えっと、言ってる意味が分からないんだが?狙うとかフラグとかって何のこと?」

「まさかの無自覚?」

 

エーミが揺さぶる手を止めた。そして何故か、驚愕の表情を浮かべている。

 

「無自覚…だと?」

 

玉姫も同じように驚愕の表情を浮かべている。なんで?

 

「天河様はある意味、一番タチの悪いお方のようですね」

「えっ?」

「天河さん。ある意味怖いです」

「おい!」

 

西条姉妹に聞きたい。ある意味ってどんな意味があるんだよ。それに、タチが悪いとか怖いとか、普通に傷付くんだが。

 

「うち、頭が痛くなってきたわ。隼君は一体どんだけフラグ立てたら気が済むんやろうな?なあ、たまちゃん?」

「な、なぜ、そこであたしに振るんだ?」

「…たまちゃん。うちが気付いてない思ってたら大間違いやで」

「な、な、何のことだ?」

 

なぜかエーミが玉姫をジト目で睨み始めた。珍しく、玉姫が狼狽えているようだが、何かあったのかな?

 

「姉小路さんは、天河君の事を隼と呼ぶようになったのね」

「あ、ああ。それがどうしたのだ?」

 

司の質問に警戒しながら玉姫が答える。

「じゃあ、あなたは天河君に何て呼ばせてるのかしら?」

「た、玉姫と呼ぶように言った」

「それはなぜかしら?」

「そ、それは、ほら、あれだ、友達…そう、友達として付き合うならば、フルネームより、名前の方がよいのではと考えたのだ。いつまでも姉小路さんでは他人行儀ではないか」

「そうね。あなたの話には一理あるわ」

 

司はふむと考えていたが、いきなり、

 

「天河君!」

 

と、エーミを押し退け僕に迫ってきた。無表情だから尚更怖いです。

 

「い、伊集院さん、ど、どうしたの?」

 

司のあまりの剣幕に一瞬ひいた。ってか、顔が近い顔が。

 

「私だけいつまでも伊集院さんは不公平だわ。私の事も今度から司と呼びなさい。いいわね。さあ、今すぐ呼んでみなさい。さあ、さあ、ハリー、ハリー!」

「え、えっと、つ、司ちゃん?」

「ダメよ天河君。ちゃんなんて付けなくていいわ。さんもいらないわ。ましてや君なんて以ての外よ。呼び捨てでいいわよ。さあ、呼んでみなさい。ハリー、ハリー!」

「え、えっと、つ、司?」

「ああ…」

 

僕がそう呼ぶと司は、なぜかガクッと膝をついた。何か間違えたのかな?

 

「いい、いいわよ。最高の気分よ。いいわね、天河君。今日からあなたは隼よ」

 

いきなり立ち上がったと思ったら、いきなりの宣言だ。

 

司に言われなくても、生まれてからずっと、僕の名前は隼なのだが。

 

「私は今日からあなたの事を隼と呼ぶわ。いいわね?拒否は許さないわよ」

 

そういう事ね。別に、好きに呼んでも構わないから拒否なんてしないよ。

 

「も、もう一度…」

「え?」

 

司にしては珍しく、顔を赤くしてモジモジし始めた。

 

「もう一度、呼んでもらっても構わないかしら?」

「は、はい。司?」

「きたわ。これが至福、これぞ至高なのね。ああ、いいわ。まさにエクスタ……」

 

うん?いきなり黙り込んだと思ったら、司はそそくさと場を離れようとした。

 

「待たんかい!」

 

エーミが司の肩を掴んだ。

 

「司ちゃんはどこに行こうとしとるんや?」

「お花を摘みにいくのよ」

「お花を摘みに行って何をする気や?」

「決まってるわ。今のこの気持ちを身体に染み込ませにイクのよ」

「隼君をオカズにさせへんよ?」

 

僕はオカズなの?大して美味しくないですよ。それにしてもこの二人は教室で何を語っているんだよ。

 

「ましろ、はくろ、ふ、二人は何の話をしておるのだ?身体に染み込ませるとか、隼がオカズとか、意味が分からんぞ」

「た、玉姫様…」

「ど、どうしたましろ?顔が赤いぞ?」

「お嬢様のせいかと…」

「あたしが何をしたと言うのだ?」

西条妹の言うとおり玉姫のせいです。ありがとうございます。それにしても西条姉は話に付いていけるらしい。ウブなくせに意外と耳年増なんだね。

 

「……あ!」

「ど、どうしたん隼君?」

 

この騒ぎもそろそろ終焉を迎える時が来た。僕は鬼を見たのだ。

 

「エーミ、後ろ」

「なんやの?」

 

僕の言葉に訝しながら、エーミは後ろを振り向くと同時に、ハリセンがエーミの頭に振り下ろされた。

 

「あ、痛。げっ、小田切先生?」

 

エーミは見た。このクラスの鬼がハリセン片手に腕を組み、この騒ぎを黙って見ていたのだ。小田切先生の後ろでは、ノエルが顔を引き攣らせ、犀川先生が、ニコニコ笑いながら立っている。

 

「まーた、君達か?この前は卑猥なコントを繰り広げたと思ったら、今度は卑猥な漫談か?私のHRを無視するとはいい度胸だ」

 

小田切先生はそう言うと、玉姫をギロリと睨みつけた。

 

「理事長も何をやっていらっしゃるんですか?このままでは生徒に示しがつかないではありませんか」

「うっ!め、面目ない」

 

さすがの玉姫も、小田切先生に睨まれたらどうしようもないらしい。

「ほら、さっさと自分の席に戻りたまえ」

 

小田切先生は各自に一発ずつ、ハリセンを食らわせると解散を命じた。そして正座をしている僕の目の前に仁王立ちだ。

 

「今回も君が騒ぎの元凶か?」

「いえ、別にそんな訳では」

「そうなんだな!」

「……はい」

 

僕の返事を待たずして、頭にハリセンが振り下ろされた。

小田切先生のハリセンはやっぱり痛い。紙じゃなく別の素材で作っているんじゃないだろうな。

 

「なぜ、君は正座をしているんだ?」

「さ、さあ、よくわかりません」

「そんなに正座が好きなら、HRが終わるまでそのままでいるんだ」

「えーっ!」

 

僕の叫びは無視された。理不尽だ。

 

「それから天河君。放課後、職員室に来るように」

「……わかりました」

 

放課後の呼び出しまで受けてしまった。最悪だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、エーミ達はさっさと荷物を片付けて、僕に挨拶をして、足早に教室を出て行った。

 

だから今、職員室に向かう廊下を歩いているのは僕一人である。呼び出されたのは僕だが、みんな冷たいよね。せめて一緒に行ってくれてもいいのに。すごく心細いよ。

 

正座のせいもあるが、気持ち的な部分で重い足を引きずるように、職員室に向かって歩いていると、背後から声をかけられた。

 

「ちょ、ちょっとあんた。ま、待ちなさいよ」

 

この声は?振り返ると、金髪ツインテールの来夢ちゃんこと、真嶋来夢ちゃんが、犯人はお前だ!ポーズで立っていた。その横には、ショートボブの黒髪に赤いカチューシャをつけた朱鷺ちゃんこと、月島朱鷺ちゃんが立っている。

 

「こんにちは先輩」

 

朱鷺ちゃんが頭を下げて挨拶をしてくれた。朱鷺ちゃんは本当にいい子だね。

 

「あれ?二人ともどうしたの?」

「あ、あんたはど、どうせ一人で寂しく帰るんでしょ?だ、だったら私達が一緒に帰ってあげるわよ」

素直になれない女の子の精一杯のお誘い。普段なら断れないんだろうけど、今日は重要な用事があるからね。断腸の思いで断るしかない。

 

「ごめんね。今日は無理なんだ」

「えっ?」

「な、なんでよ?」

 

二人とも寂しそうな顔をしないでほしい。僕も一緒に帰りたいけど、そんな事すると命に関わるからね。

 

「今日は今から職員室に行かないといけないんだよ。呼び出し受けたしね」

「あ、あんた、何をしたのよ?」

「まあ、いろいろあるんだよ」

 

まさか元の原因が二人だとは、口が裂けても言えないからね。

 

「……じゃあ、ま、待ってる」

「えっ?」

「職員室の外で待ってるから、さ、さっさと用事済ませなさいよね!朱鷺もいいわね?」

「うん。先輩、私も待ってますね」

 

なんていい子達なんでしょ。三人で職員室に向かう事になったのだが、さっきまでの心細さが嘘のように消えていた。足取りも心なしか軽くなった気がする。朱鷺ちゃんと来夢ちゃん、二人には感謝だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて職員室の前まで来たんだが、いざ入るとなると、かなりの度胸がいるようだ。授業で顔を合わせる先生なら問題ないが、ほとんどの教師とは初対面に近いわけだ。当然、好奇な目に晒される事になる。その視線に耐えきれるかどうか。

 

一人なら躊躇したかもしれないが、今は二人、それも下級生の女の子だ。カッコ悪い所は見せられないよね。

 

「それじゃ、行ってくるね」

「頑張ってください」

「な、なるべく早く終わらせなさいよ!」

 

二人の声援を背中に受けて、職員室のドアを開ける。

 

「し、失礼します」

 

僕が職員室に入った瞬間、教師の目が一斉に僕に集まる。

思わずたじろぐが、負けてられない。僕は小田切先生の姿を探した。

 

「あら〜、天河君、来たのね」

 

思わぬ救世主が現れた。犀川先生だ。

 

「小田切先生はあっちよ」

 

犀川先生の教えてくれた方を見ると、小田切先生が書類に目を通していた。隣の席のノエルが僕の姿に気付くと、軽く頷いた。

 

「ありがとうございます。犀川先生」

「いいのよ。私はあなたの味方だからね」

 

犀川先生にお礼を言うと、先生は軽くウインクをしてくれた。本当に優しい先生だと思う。先生の一言で、気持ちが軽くなった。

 

僕が小田切先生の机の側に行くと、小田切先生は顔を上げて僕を見た。

 

「天河君、呼び出してすまなかったな」

「……いえ」

 

やっぱりこの先生の前に立つと緊張するな。

 

「そう緊張するな。別に取って食おうって訳じゃない」

「はぁ」

「どうだ。学園やクラスには慣れたか?」

「少しずつですが…」

「そうか」

 

僕の返事に小田切先生は満足そうに笑った。休み時間の廊下の人垣にはなれないけどね。

 

「焦らなくていい、自分のペースで慣れてくれ。でもクラスには馴染んでいるんじゃないのか?白鷺君はともかく、理事長や西条君姉妹、伊集院君まで君とよく連んでいるじゃないか?」

「まあ、エーミ…白鷺さんはともかく、理事長や西条姉妹は、僕に気遣ってくれているだけだろうし、伊集院さんは、姉貴の指示を受けているだけですから」

「う〜ん、君は自分に自信がないのかな?」

 

自分に自信ね。ある訳がない。僕には何の取り柄もないんだから。

 

「私は君に感謝しているんだぞ」

「は?」

 

予想外の台詞に思わず間抜けな声が出た。なんで先生が僕に感謝を?逆じゃないの?

 

「担任としてわかるが、君のおかげでクラスの雰囲気が良い方に変わっているのが分かる。それに理事長があんなに楽しそうにしているのは初めてみたぞ。伊集院君も楽しそうじゃないか?」

「そう…でしょうか?」

「西条君姉妹だってそうだ。君に対する警戒がまるでない。こんな事は初めてだ。君はさっき言ったが、決して、気遣ったり、指示されたから一緒にいる訳じゃない。君といるのが楽しいから一緒にいるんだ。だから君は自信をもってもいいんじゃないか?と言っても、すぐには無理かもしれんがな。とにかく、忘れないでくれ。私は君がこのクラスに来てくれた事を感謝しているんだ。それを伝えたかっただけだ。私や犀川先生やノエルは間違いなく君の味方だ」

ノエルが隣りでコクコク頷いている。その仕草が可愛いと思った自分が悔しい。

 

でも小田切先生の言葉は嬉しかった。もしかして僕はクラスに恵まれていたのかも。小田切先生が担任で、ノエル、犀川先生が副担任で、エーミがいて、玉姫がいて、西条姉妹がいて、司がいる。やばい。泣きそうになってしまった。

 

「以上だ。悪かったな。もう帰っていいぞ」

「小田切先生、あ、ありがとうございました」

「それからだ。あんまり騒ぎを起こしてくれるなよ。怒る方も意外に疲れるんだからな」

「は、はい。なんかすみません」

 

最後に釘を刺すのを忘れない、小田切先生はマジ教師です。

 

 

 

 

 

職員室を出ると、朱鷺ちゃんと来夢ちゃんが待っていたのだが、何故かエーミや玉姫、西条姉妹や司の姿もあった。エーミと来夢ちゃんは、なんか睨みあってるし。何があったの?

 

「あんたやな。隼君にあーんして貰ったんは」

「……なによ、悔しかったら、あんたもして貰えばいいでしょ?」

「クーッ!それが簡単に出来へんから悩んどるんや」

「……知らないわよ、そんな事」

 

どうやら僕が来夢ちゃんに、あーんをした事をエーミは根に持っているようだ。

 

「はい。喧嘩しない喧嘩しない。エーミには今度、あーんをしてあげるから」

「ほんまやね、隼君。約束やで」

僕の言葉にエーミは一転、上機嫌になる。本当に現金な奴だよね。

 

「な!ちょ、ちょっと待ちなさいよ!わ、私もまた、あーんさせてあげるわよ」

「えっ?来夢ちゃん?」

「ずるいよ、来夢ちゃん。先輩、私にも、あーんしてくれますか?」

 

まさかの朱鷺ちゃんの参戦。この流れはマズイ。なんとか流れを変えないと。

 

「え、えっと」

「ふむ。あたしにもあーんをしてもらうか」

「まあ、玉姫様。では天河様、わたくしにもあーんをしてもらいとうございます」

「私も天河さんにあーんしてもらいたい」

「そうね。隼にあーんしてもらうのもいいものね。考えただけでエクス…」

「司ちゃん、それ以上はあかんで」

 

遅かった。流れを変えるどころか、悪化してしまった。………でも、彼女達の笑顔が見れるなら、それでもいいかな。僕と一緒にいてくれる事に感謝しなくては。

 

「降参だ。こうなりゃヤケだ!まとめて面倒みてやりますか?」

「どないしたん、隼君?」

「なにが?」

「な、なんか、笑顔がキモいんだけど」

 

エーミと来夢ちゃんが訝しがる。

 

僕は今、幸せを感じての最高の笑顔なんだよ。

 





今回の登場人物の簡単な説明と次回予告

◎ 天河隼 本編主人公。普通の高校生。聖クロビス学園の唯一の男子生徒。恵美の幼馴染。自己評価がかなり低く、自分に自信がない。自分がもてないと信じており、それ故に無自覚にフラグを立てまくり、恵美を悩ませている。恵美曰く、エッチ君。学園長曰く、少しアレ。西条姉妹曰く、ある意味タチが悪く怖い。

◎ 白鷺恵美 隼の幼馴染。6年ぶりに再会して、すぐに愛の告白をする。隼絡みとなるとたまに大暴走する癖がある。隼の事は何があっても愛してる。エセ関西弁で話す。隼が無自覚にフラグを立てまくる事が頭痛のタネになっている。

◎ 姉小路玉姫 聖クロビス学園の理事長兼学生。名門 姉小路家のご令嬢。隼のクラスメート。隼の事を認めており、隼が学園で過ごしやすいように、あれこれ世話を焼く。隼の優しさに絆されて、好意を持つようになるが、気持ちを巧みにごまかしているつもりでも、周りにはあっさりと気付かれている模様。

◎西条ましろ はくろの双子の姉。玉姫のメイド兼ボディーガード。柔術の達人。近寄りがたい気品を醸し出す、神秘的な美人で巨n。意外とウブで、強すぎる刺激を受けると目が虚ろになり、譫言を繰り返すようになる。だが、耳年増でもあり、エッチな話題にも付いていける。最近は、玉姫をからかったり、隼に毒を吐いたりしている。

◎ 西条はくろ ましろの双子の妹。玉姫のメイド兼ボディーガード。ムエタイを学ぶ。姉とは対照的に、フランクで親近感を抱かせる雰囲気を醸し出している。神秘的な美人で巨n。開放的な性格で、エッチな話題に興味津々なお年頃。

◎ 伊集院司 黒髪ポニーテールに縁なし眼鏡がトレードマークのクール系美少女。隼の姉、茜音と親交があり、隼の事を頼まれたようだが、隼には好意があるようだ。自称、監視役兼ボディーガード。常に無表情でいるために、周りからはクールと思われているが、実は変態気質で、かなりぶっ飛んだ性格をしている。演歌が上手く、脱衣麻雀にはまっている。

◎ 真嶋来夢 今回の新キャラ。聖クロビス学園の1年生。金髪ツインテールがトレードマーク。一人称はあたし。隼に対してはあんた呼び。常にツンツンした性格で、誰に対しても尖っているが、隼に対しては言葉はツンツンしていても実はデレている。隼からも素直じゃない子との評価をもらう。犯人はお前だ!ポーズが得意。

◎ 月島朱鷺 今回の新キャラ。読み方はつきしまとき。一人称は私。隼に対しては先輩。ショートボブの黒髪にカチューシャが特徴。来夢の親友でありストッパーでもある。礼儀正しくいい子なのだが、気が弱く、隼との初対面で泣き出した。

◎ 小田切なつめ 聖クロビス学園の教師で、隼のクラスの担任。寮長も勤めている。生徒に対しては基本君付けで呼ぶ。クラスの鬼と呼ばれているが、生徒には並々ならぬ愛情を注いでいる。隼の事を目にかけて、いつも心配している。最近は卑猥なコントや漫談を繰り広げる生徒に頭を悩ましている。武器はハリセン。素材は不明。

◎ 北沢ノエル 今回は教室で顔を引き攣らせていたのと、職員室でコクコク頷くだけだった。コミュ障気味の副担任。胸が小さいのが悩み。スタンガン大好き。

◎ 犀川美星 久々に登場したセクシーな副担任。全身から溢れるセクシーさがやばい。胸はとてつもない凶器のようだ。隼の拉致に関与した一人。優しく、いつもニコニコしている。



次回予告

小田切「君達ももう高校2年生だ。将来の事をしっかり考えるんだ」
隼 「将来…か?」

エーミ「隼君、修学旅行はどこ行きたいん?」
隼 「僕、行かないよ?」


隼の目の前に突如出現した、将来という壁。果たして、隼はこの壁をどう乗り越えるのか?そして、その先に待ち受けているものは?

しゅん「壁…か?」
たまき「隼、何をする気だ」
小田切「無茶はよすんだ」
しゅん「その程度か?」
つかさ「いけないわ隼!」
しゅん「なに足止めする時間を稼ぐだけだ。小田切先生は皆を連れて逃げてくれ」
小田切「君はどうする気だ?」
しゅん「なあ……倒してしまっても構わんのだろう?」
エーミ「あかんで!それ一見カッコええ台詞やけど死亡フラグやで!」


次回 壁は殴って壊したらええんちゃうん!

小田切「色んな台詞パクリおって」

こ、乞うご期待!

当然、予告タイトルは嘘です。

更新は不定期です。

次回もよろしくお願いします。

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