とある修羅の時間歪曲   作:てんぞー

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九月二十日-Ⅳ

 学園都市の空を光が満たす。

 

 一つは白と青が混じった雷光だ。ミサカネットワーク経由で感染し、干渉され、完全に暴走に陥った御坂美琴。その姿は雷鳴をまるで皮膚の様に纏い、姿を人ならざる、天使の様な姿へと変化させていた。その体から発光する様に放たれる白青の雷撃はあらゆる物質を貫通し、同時に蒸発させながら無差別に破壊を巻き起こす。本来制御する筈である役割の木原幻生、そして彼の協力者が存在するが、外装代脳が自壊するのと同時に制御は完全に放置されている。しかし、力の流入だけは止まらぬ様に細工されており、破壊を生み出しながら雷光の天使と化した美琴は毎秒ごとに力を増していた。

 

 何かをするわけでもなく、そこで漂うだけ。それだけで完全な破壊と破滅を生み出していた。ある意味で性質が悪い。悪意や意識という領域を超えて、破壊というインプットしか成されていない。故に止まる事はなく、無限にレベル6を目指しながらひたすら意識する事もなく破壊を生み出し続ける醜悪な怪物として完成を進めていた。レベル4では抵抗できない。レベル5でさえ戦闘力が低いものであれば問答無用で死ねる。そういう破壊の権化が存在していた。

 

 ―――それが暴走している御坂美琴の存在だった。

 

 明確に意思を持って破壊を始めれば間違いなく学園都市が消し飛ぶ化け物。倒さなければ手遅れになってしまう怪物。

 

 それが降臨したのが大覇星祭中である事が、おそらく最大の不幸だった。

 

 大覇星祭という凄まじい量の外部入場客を入れている状態で、能力者でさえ赤子の如く殺してしまう怪物が降臨する。端的に言って、その存在は絶望的だった。悪意も敵意もない、ただの暴力の塊が降臨したのだから。明確な意思がないだけにそれは際限なく、周囲への被害を生み出し続ける―――それが意思がないという事なのだから。故にそれは出現と同時に被害を生み出し、そして死人を、

 

「―――ぜぁっ!」

 

 生み出せない。

 

 轟音共に発生する打撃が空間を震動させながら一直線に暴走している御坂美琴へと向かって放たれる。体から溢れ出す雷鳴を殴り払い、そして途中に入ってくる電磁波と磁力によって浮かび上がる金属の壁、それを拳の衝撃波で粉砕しながら一撃が軽く、雷天使に命中する。それは傷一つさえ存在しない、弱い一撃だったが、目的としては十分すぎる者だった。

 

 その攻撃によって雷撃が散らされた瞬間、空から頭にハチマキを巻いた少年が落ちてくる。

 

 大地を粉砕する様に両足で着地した少年が視線を持ち上げ、視線を雷天使へと向けた瞬間、雷天使が少年を敵対存在として認識する。それは勿論御坂美琴の意思と全く関係なく、自分を害する存在を排除しようとする人間の本能と本質、そして力という存在の性質から発生する自動的な行動に過ぎない。だがその反応は素早く、雷速と呼べる領域に突っ込んでいる。普通の人間であれば間違いなく反応できない。反応する前に死を理解する。

 

 故に次の瞬間には赤い色が―――咲かない。

 

「超凄いパンチ……!」

 

 名前そのものはふざけた様にしか思えないが、少年が”気合”と”根性”を込めて繰り出した拳は雷速に反応し、それを迎撃する様に更に強い衝撃を持って繰り出されていた。足を大地に完全に固定させて繰り出す拳は雷撃と接触すると雷撃を吹っ飛ば士、一撃目同様凄まじい拳圧を衝撃波という形で生み出す。理屈が全く意味不明の打撃攻撃。

 

 ―――削板軍覇ここにあり。

 

 学園都市レベル5序列第七位削板軍覇。最大級の原石、判明されない能力。一体何をやっているのかさえ分からない。しかしそれを軍覇は信頼し、打撃を繰り出す。結果は劇的であり、あらゆる障害を粉砕しながら雷天使の眼前へと迫り、

 

 軽く振るわれる腕によって数倍に収束された雷撃が迫ってくる。

 

「根性―――!」

 

 反応しながら軍覇が反応して前に出る。振るう拳は迫ってくる収束雷撃を打ち破りながら、横へと飛んで行く。同時に流星群の様に降り注いでくる看板や鉄骨、磁力操作によって生み出された弾丸の回避に製鋼する。その動作から一切拳を緩める事無く、前方の大地を砕きながら踏み込み、

 

「もっかいグレートハイパースペシャルマクシマムすごいパンチ!」

 

 大地を割き、金属を粉々に吹き飛ばし、電磁波や磁力を吹き飛ばす極悪の拳撃を繰り出す。軍覇に降り注いでいた攻撃はその一撃で全て吹き飛ばされながら破壊され、そして真っ直ぐ、一切の威力を落とす事無く雷天使と化した美琴へと向かい。

 

【―――■■■■(フェイズ5.3)

 

 人類には聞こえない、認識できない音で更なる変化を果たす。人の形から少しずつ離れながら、異界の法則が流入し始める。瞬間前までは脅威だった軍覇の一撃が届く前に磁力によって学園都市全体から集められた砂鉄によって圧壊される。幾何学模様を描きながら回転する砂鉄の合間を抜ける様に、十数の雷槍が軍覇の認識を抜けて、その体を吹き飛ばす。

 

 額と腕から血を流しつつ、軍覇が死ななかったのはただ単にそれが”軍覇”という存在であるからに過ぎない。他の存在であれば間違いなく百回以上は殺しても余裕の威力だった。間違いなく軍覇の知覚を超える攻撃に軍覇は数歩後ろへとよろめく様に動作を取り、そして前へと一歩、体を固定する様に踏み出す。

 

「こりゃぁ根性いれなきゃやべぇけど―――下がるわけにはいかねぇんだよなぁ!」

 

 吠える様に軍覇が拳を握り、大地へと叩きつける。それで発生する地割れ、そして大地の隆起に雷天使をその足元から吹き飛ばす様に攻撃を飛ばす。これ自体にはそこまで威力はないのを軍覇は本能的に理解し、直感している。それは次の攻撃へと繋げる動作だ。

 

「ここで下がると―――」

 

 巻き込まれる人々がいる。なら正義の味方としてそれは看破出来ない。

 

 その程度の理由で、軍覇が死闘を演じるには十分すぎた。あらゆるしがらみを投げ捨ててまで参上した。

 

 故に隆起した大地によって雷天使が上へと飛ばされ、堕ちてくる様に繰り出した拳は、一切攻撃を気にする事無く攻撃へと入った雷天使によって虚しく散る。軍覇の知覚を超える攻撃が繰り出され、軍覇が攻撃を繰り出すその瞬間に妨害する様に割り込む。そのまま体に雷槍を突き刺し、感電させて体の自由を奪って行く。

 

「根性ォ!」

 

 それを根性の一言で振り払って軍覇の拳が唸る。

 

 大気そのものが悲鳴を上げる拳の圧力に、砂鉄が防御に入る。全ての貫通は成功せず、軍覇の拳は届かない。故にこれは無意味。一切の無駄な行動でしかない。軍覇の努力は届かない―――一人だけなら。

 

「にゃろぉっ!」

 

 雷天使の放つ攻撃を予め理解していたかのように、上条当麻が軍覇の前に入り込む。その右手は、幻想殺し(イマジンブレイカー)が雷天使より紡がれた幻想を一瞬で死滅させる。それは当麻の戦闘経験から来る勘であり、そして同時に”不幸”という性質から来る予測でもある。不幸は当麻に向けられるものであり、攻撃先を限定させれば間違いなく此方へ来る。そういう確信が当麻には存在する。

 

「大丈夫か―――」

 

 当麻が軍覇と話そうとする瞬間、再び雷撃と金属の流星群が降り注ぐ。瞬時に反応し、否、来ると魂で理解していた当麻が雷撃を右手で殺し、そして軍覇が拳を振り上げる事で雷撃と金属流星の両方が消し去った。その光景を目撃した雷天使が動きを停止させる。それを警戒か、或いは脅威を測っているのか、それを理解する方法が人類にはないが、

 

「俺の右手なら雷や磁力を消せる」

 

「だったら根性入れろよ―――俺が物理的なのは全部ぶっ飛ばしてやるから」

 

 二人の間で交わされた言葉はそれだけで、信頼するには十分すぎた。当麻と軍覇のタッグが結成されるのと同時に、あらゆる電磁波の干渉を無視し、当麻のポケットの中から音声が響く。

 

『おい、聞こえるか? 馬鹿を見つけた―――もうすぐそちらにも見える筈だ』

 

 当麻に渡された通信符を通して響くステイルの声、それに続く土御門元春の声が警告を促す。

 

『―――覚悟しろよ、今日はハードっぽいぜ』

 

 声が響いた瞬間、雷天使の放つ青白い雷光とは別種の閃光が空を満たした。もっと禍々しい、赤色の光は斬撃の様な鋭さを持って十数と重ねて、空その物を断裂させながら飛翔し、一直線に頭上を越えて学園都市―――そこに存在する白い窓のないビルへと衝突する。濃密な死の気配を撒き散らした一撃は衝突と同時に破裂する様に霧散し、死の気配を周辺へと無差別に降り注ぐ。攻撃もそうだが、その気配自体が一般人に対して致命の毒となる。振れてしまえば抵抗もなく瞬間的に死ぬ、

 

 死という概念。それは勿論相手を選ばない。故に学園都市に降り注ぎ、そして当麻や軍覇にも襲い掛かる。雷天使はそれを砂鉄で振り払い、すかさず戻った当麻が幻想殺しで無力化する。軍覇も本能的に察知し、触れない様に拳圧で散らせる。そうやって死の気配を撒き散らしながら参上したのは、

 

■■■■(アレイスタァァァ)―――!!」

 

 血涙を流し、空に立って吠える信綱―――クロノスの姿だった。血の涙を流しながら吠えるその碧眼は輝きを失いながら輝いている。髪の色は侵食されるかの如く赤く錆びた色を見せ始める。その明らかに正気ではない表情は理性は感じさせても、極大の憤怒と殺意と敵意と、そして哀しみを見せていた。見てしまえば人の言葉は届かない。それが目に見えて理解できる様子であり、

 

■■■■(アレイスター)! ■■■■(許さない)! ■■■■(許さねぇぇ)! ■■■■■■(オォォォォ)!!」

 

 慟哭を響かせながら本来は持たぬ終焉の属性を―――隻眼の魔神が持つ色―――で腕を振るう。その動作から発生するのは大気の泣く音であり、空気が死に絶えながら風となって、死を響かせる。一直線に向けられたのは窓のないビル―――即ちアレイスターの居城であり、それを破壊して本人を引きずりだそうとする意思が見える。しかしまるでそれ自体がアレイスターの肌である様に死は触れる事を許されずに、

 

 その周囲に被害だけが及ぼされ、無関係の人間が死ぬ。

 

「やめろ馬鹿野郎ォ―――!!」

 

 叫ぶ当麻の声は響かない。唯一声を届けられる食蜂操祈は既に脳を焦がされて死んでいる。

 

 魔人になってクロノスからは時を巻き戻す力が消えている。

 

 極限に時間を遅延できても、停滞は出来ない。

 

 食蜂操祈は絶対に助からない。たとえ神の腕前を保有する、死の否定者であってもそれは不可能。もう、彼女が言葉を話す事はない。それを真実として理解し、自身の手によって発生してしまったことを原因に青年は発狂し、怒りに狂っていた。

 

 ―――無論、それを当麻や軍覇が理解するはずがない。知る筈がない。

 

 ただ現実として、暴走する雷天使と、そして死と時の魔人が存在する。それだけがここにある真実であり、現実であるのだ。明確に脅威であるクロノスを雷天使は睨み、そして排除の為に軍覇や当麻へと向けていた攻撃とは明確に違う格の雷球を生み出す。その大きさは二階建ての家であれば容易に納めてしまう程大きく、一瞬で生成され、生み出された雷球は一直線にクロノスへと向けられる。

 

■■■■(邪魔をするなぁぁ)!!」

 

 両手に出現する長針と短針の処刑刃。それが不変の時と死を重ねて雷球を正面から十時に両断する。それを見越していたのか雷天使が接近する。既にその手は雷によって鋭利な刃に変形しており、正面から刃とぶつかり合う。

 

 人の手が届かない上空で魔人と雷天使がぶつかり合う。その余波間違いなく破滅的なもので、このぶつかり合いだけでも地上は当麻と軍覇を残せば周囲が完全に更地と化していた。当麻が生きていられるのも規格外の軍覇が物理的な事に関しては当麻は対応できない、というのを素早く察知して防御に入っているからだ。

 

 上空で始まる戦いに介入できる手段が普通の人間にはない。故にこれから巻き起こる大戦に対して介入できる方法が当麻にはなく、軍覇一人であれば間違いなく死が待っている。故にこのまま戦いは始まりそうで、

 

 最後の乱入者によって漸く始まる。

 

「―――ごちャごちャうるせェンだよ!! ウチのクソガキが死にそうになってんだよカスがァ!」

 

 雷天使とクロノスの上を取る様に、背中に竜巻を発生させる事で飛び上った白髪の青年―――一方通行(アクセラレーター)が頭上を取るのと同時に、そこから収束させた風と、雷と、そして土砂や鉄骨、それを能力任せに叩きつけ、二人の高度を僅かに下げる。

 

「っぁ!」

 

 それに合わせる様に軍覇が拳を繰り出し、

 

 そして反撃に繰り出される攻撃を当麻が消し殺した。

 

 言葉は必要がない。否、言葉を話す余裕がない。その時間すら惜しんで連携をしないと、それで引きはがされる。強調したのであれば味方、その認識で戦わないと到底敵わない相手が揃っていた。故に三者は自動的に、まるで昔から互いを良く知っているかのように連携して動いた。本来は訓練が必要であるその一連の流れをさも当然の様に発生させていた。

 

 雷天使は僅かながら周囲への脅威の評価を上げ、

 

 そして攻撃を受け、干渉され、男の絶叫する声が響く。

 

■■■■(邪魔を)■■■■(するなぁ)! ■■■■(アレはぁ)■■■■(殺さなくちゃならないんだよ)! ■■■■(生かしておけない)! ■■■■(殺すんだ)■■■■(殺すんだよォ)! ■■■■(アレイスター)■■■■(アレイスタアァ)■■■■(アレイスタァァァ)!!」

 

 一方通行を、当麻を、軍覇を、正しくそれとして認識できていない。正気が存在しない。心が憎しみと怒りに染まって、頭がアレイスターを殺す事で満ちている。それを愛おしそうに別の場で隻眼の魔神が眺め、手伝っている。そもそも理性というものが存在しない雷天使。

 

 科学側の超特化戦力が揃い、敵が揃い、

 

 漸く、学園都市を舞台とした決戦が開かれようとしていた。




 暴走びりびり
  vs
 暴走のぶ
  vs
 軍覇・当麻・一方(ステイル&土御門バック)

 果たして人類に明日は来るのか。次回はなんかすごそうなBGM聞きながらでも
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