―――ゆっくりと風景が変わって行く。
本能的に、或いは反射的にでもなく、経験則から攻撃が来るであろうと、その精神が敏感に攻撃の切っ先を察知していた。故に思考は二重に加速される。技術として思考を引き延ばす方法、そして能力で思考を加速させる。それによって目は目の前の光景を捉える。女―――神裂火織が長刀を引き抜くそのモーション、手に絡める様に鋼の糸を絡めているのを。月明かりを反射しない様に黒く塗られた鋼糸が道路を砕きながら曲線と直線を描き、交差しつつも接触しない様な、芸術的な軌跡を描いて迫ってくる。
芸術、確かに芸術なのだろう。その力量はそうとしか表現できない。鋼糸なんて操るのが極限的に難しい武装をここまで美しく、偽装しつつ不意打ちで使用できている。魔芸とも表現できるその動きは卓越した技術に、繊細な感覚を必要とするものだ。良くこんなものを抜刀アクションから繰り出せるな、と思いつつ対処法は実に簡単な方法で終わらせる。
「おっと、もう少し文明的に話し合わないか、神裂火織さん。人間、口があって脳があるんだから、手を出す前にコミュニケーションをはかるべきだと思うんだけど?」
「―――」
右手で軽く振り払う。
たったそれだけの動作で火織の攻撃は、無効化された。いや、違う。
正確には巻き戻された、
繰り出す前の状態へと。
”時間歪曲”で行える干渉―――時間の逆行現象。もはや科学もクソもない、と個人で思っている概念的力の行使は、学園都市からすれば科学で解明できる事であり、理論は脳に入っている―――故に出来る。加速を含めた手札の一つ。
ただ、使えるのは五分に一度、しかも0.5秒までしか巻き戻せないというレベル1に相応しい欠陥とオチがついている。”時間歪曲”から来る能力は加速、遅延、停止、そして逆行の四つに分かれる。だがどれも欠陥だらけだ。唯一まともなのが普通に使える加速と遅延、だがどちらも影響力は一割程度、停止は0.1秒しか働かない上に一度使えば十分は使えない。
どれも凄いかもしれないが、武器にも便利にもならないレベル―――所詮低能力者の範囲だ。
しかし、先程の鋼糸の様に芸術の領域に貼った武技ならば、少しだけ話は変わる。
超高速で放たれる攻撃はコンマの領域で操作が行われている。故に0.5秒といえど、発動してしまえば攻撃前のアクションへと巻き戻せる。これが普通の不良の様に攻撃が遅い素人であれば全く意味をなさないが、今の相手、火織の様に技量を鍛え抜いた魔技の持ち主であれば、攻撃から無駄を省き、極限まで効率化させるのが当たり前。
攻撃に一秒なんてかけない。だから通じる。
―――と言っても、五分間はもう使えないんだけどな。
冷や汗をかきながら両腕を組み、視界の端で両脇に落ちているショルダーバッグとギターケースを確認する。今、目の前の相手は自分に対して不安感と、そして警戒を抱いて居る筈だ。それを想定しつつ正面、抜刀のモーションで完全に動きを止めている火織を見る。攻撃は来ない。警戒すべきだと判断したのだろう。いい、それでいい、最低五分時間を引き延ばせば再び手札が一つ、復活する。出来るならばそれまで引き延ばしたいが―――あまり現実的な話ではないだろう。
「と言うわけでこんばんわ神裂火織さん。攻撃したって無駄だって解っただろ? ほらさ」
耳に装着している骨伝送イヤホンをとり、それを軽く持ち上げて振る様に見せる。ついでにポケットに突っ込んでいたミュージックプレイヤーを取り出し、それを火織に見せながらスクリーンを見ずに、曲と音量を変えて行く。
「こういう静かな夜は喧嘩するよりも適当なジャズかクラシックを聴くのが一番よ。それともアレか、趣味はもしかしてロック? 演歌って事はないよな? 流石に演歌はいれてないから―――」
「見え透いた時間稼ぎですね」
「バレてたか」
再び鋼糸が道路を粉砕しながら迫る。だがその咆哮へと向かって、相手が攻撃の動作に入るのと同時にミュージックプレイヤーと、そして音量を最大まで引き上げた骨伝導イヤホンを投げ捨てる。破壊の軌跡を描く鋼糸は道路を粉砕し、その直線状にある障害物ごと此方を破壊しようと迫り、
―――イヤホンに近づき、鋼糸全体の動きが鈍る。
「ハイ、倍ドンとはいかないな!」
鋼糸に時の呪縛―――と言っても一割程度の物を与え、動きを鈍らせる。投擲のアクションから入る踏み込みに火織は驚愕を浮かべているが、その動作は止まっていない。素早く鋼糸を手放しながら片手で掴む長刀を一息で抜くのを確認する。だが抜き去り、そのまま迎撃に入るのよりも踏み込みの方が早い。二歩、火織の懐へと入り込む為に必要な歩数。
その間にミュージックプレイヤーが落ち、鋼糸が放棄され、そして長刀が引き抜かれた。
計算上、踏み込みの方が早い筈なのに―――常識外の身体能力と組み合わされた技量で、到達よりも早く火織が長刀を抜き放っていた。
「魔法名の事はもう知っていますよね? 勉強会を開いていたそうですし―――Salvare000」
一閃。
横薙ぎに長刀の一撃が放たれる。この女、頭おかしいんじゃないか、と色んな意味で思いつつも言葉を飲み込み、大地にそのまま高速で倒れ込む事で回避しつつ、蛇の様に地を這う動きで一気に懐へ踏み込む。それは長刀を振り抜いた火織の刃が届かない、内側の領域。
当たり前の様に蹴りを迎撃に持ってくるその姿に対して、
蹴りを受ける。
そして、その足を抱く。腹に突き刺さる爪先の事は無視し、腹と胸に走る痛みも無視し、そして受け止めたジーンズの付いている方の足を、それを両手で掴みながら、引き、
そしてそのまま関節を折る為に一気に歪めて砕く。足という動きの起点さえどうにかしてしまえば、後はどうにでもなる。即行で勝負を終わらせるためにも選んだ選択肢ではあったが、折ろうとする足の感触がおかしい。
―――人にしては硬すぎる。
違う、硬いのではない。肉が強靭過ぎて、男の筋力程度邪どうにもならない領域になっている。
「狙いは悪くはありませんが―――」
これだけの時間があれば対策は簡単に生み出せる。扇風機の様に長刀を回転させて足元の此方を狩りに火織が攻撃する。即座に足を解放しながら後ろへとバク転で後退し、ギターケースの位置まで下がる。シャツの下が冷や汗でびっしょりになっている嫌な感覚、それを自覚しながら息を吐き、痛みを無視する。
―――やばい、こいつ強い。
肉体的に、そして技量的に、そして経験的にも。殺すという動作に対して躊躇がない。奇策を組む此方の動きに対する対処が早い。普通は時間が巻き戻る事を経験すれば多少警戒、或いは動揺を残す者だが、そういうものが一切見られない。”それはそれ”として対処しつつ警戒を動きに見せずに実行している。
化け物か。
額から流れてくる汗を右手の甲で拭うのを火織は見ていたのか、長刀を鞘の中へと戻し、それを腰へと持ってくる。姿は自然体へと戻ってはいるが、それでも警戒も敵意も、そして戦闘状態が解けていないのは明白だった。そんな状態で優位を持っている相手、火織はその余裕をわざと見せる様に口を開く。
「……中々出来るようですが、彼我の実力と戦力差は痛感していると思います。それに此方にはもう一人、ステイルがいます。学園都市の上層部には多少人を消しても問題はないと言われていますが、それでも無駄に戦わないならそれに越したことはないのですが―――」
「つまり当麻を見捨てろって? おいおい、そっちから喧嘩吹っかけておいてそりゃあねーだろ。そんな事を言うんだったら最初からそれを言えよ」
「交渉の基本は威圧と優位から宣言する事ですよ」
―――この女、中々にいい性格してやがるぜ……!
軽く笑いながらも、少しだけ息を吐き―――笑いながら中指を向ける。
「答えはオンリーワン、Fuck youだ! お前が家に帰ってクソして寝ろ! 勝ったら俺のいう事を聞けよテメェ!」
「残念です、なるべくなら殺したくはなかったんですけどねッ!」
火織が踏み込んだ。その声の残念そうな色は本物だ。敵意と戦意は向けているが、本気で殺すという事に対して哀しみを感じている。真正の阿呆でキチガイ女だ、と認定しておきつつ、火織の踏み込みと抜刀、そのツーアクションに対して速度で劣る此方が取れる選択肢はワンアクションのみ。思考する時間はない。だが体は既に最適解を理解している為、言葉や思考が何かを生み出せる前に、何よりも早く動作を生み出している。
ギターケースを障害物として蹴り上げた。
火織の居合が放たれる。鋼さえもあっさりと両断しそうなその破壊力は―――完全にギターケースによって吸収され、無効化されていた。その瞬間、一瞬だけ火織の動きが止まる。ギターケースはその後はいる力によって押され気味ではあるが、一瞬の隙を突き、ギターケースを背後から抑え、盾の様にバッシュで火織の体を後ろへ返す。火織の動きが緩み、後ろへと下がる瞬間にギターケース背部のスイッチを入れる。火織の居合がギターケースを弾くも、その動作中に思惑は達成される。
ギターケースが吹き飛ばされながら横がスライドする様に開き、剣が一本、飛び出てくる。赤いグリップに、大きく反りのある西洋剣は黒い刀身に金色の装飾が施され、時計の短針を思わせる刃だ。飛んでくるそれを右手の逆手で掴む。
その間にギターケースが完全に手の届く範囲から逃れる。まだ中には銃等をしまっておいてあったが、これ以上武装を確保する為の動きを火織が許すと思わない。
だったら持ちうる技術、そしてこの剣で勝負を一気につけるしかない。
相手がこっちよりも身体能力が高い分。即座に勝負に出てケリを付けないとすり潰される。
「考えている事は解ります―――ですがこの距離は私の距離ですよ」
居合の一戦が振るわれる。距離にして火織は五歩程離れている。長刀を抜いて真っ直ぐ向けたとしても二歩程しか距離は埋まらない。だが、最初の様な偽装はない。純粋な抜刀からの斬撃、それが道路を粉砕しながら此方へと恐ろしい速度で迫ってくる。それを横へ跳んで回避するのと同時に、火織は鞘を手放しながら口を聞き取れないほどの高速で動かし、何らかの言語を紡ぐ。演算を、状況の把握を続ける脳が言葉を拾い、そして解析しようとする。
―――ノイズが脳内を響く。
「切り払う……!」
気づいた瞬間には対処していた。
壁とも表現できる炎、それが一瞬にして生まれていた。だがノイズを振り払った瞬間には体が対処を終えて、逆手に握った処刑剣で炎を切り払っていた。最善手だ。自分の技量であればこの程度は出来る。しかしそれはあくまでも攻撃が炎であると認識した場合に限ってだ。
攻撃が発生する前に、何故、炎だと解ったのだろうか―――?
それを考える暇はない。炎を横へ切り裂くのと同時に火織が接近してくる。早く、そして深い踏み込みはない。リーチを守りつつ、複雑な動きを混ぜない真っ直ぐな横薙ぎの切り払いを繰り出す。合わせる様に袈裟切りを繰り出して火織の長刀の一撃を筋力ではなく技術で受け流す。おそらく魔術による身体能力の強化が施されている。故に力での動きは意味がない。後出し相手の攻撃を捌かなくてはいけない、という制限が発生する。
「良い太刀筋です。こんな状況出なければもっと楽しめたと思うんですけど」
「だったらやめろよ。怪我したらどうするんだよ」
素早く、ステップを刻みながら動き、有利な立ち位置を探そうとする。しかし、火織の動きはそれに追従し、そして基礎の身体能力で此方を大きく上回っている為、後出しで行動しても十分、余裕で動きに追いつく。
そうなると、後は剣技の相性と技術による勝負になる。
切り払いに対しては袈裟切りで受け流し、
振り下ろしは切り払いで軌道を変え、
袈裟切りは振り下ろしで叩き落とす。
突きは予備動作が一番はっきりしている為、迎撃をせずに横へと体を滑らせて回避しつつ、そこから発生する追撃に警戒をする。
剣技、剣術、剣道は極めれば基本動作へと行きつく。攻撃力が上昇すればするほど、致死性が上がれば上がるほど、動作は基本を忠実にし、それで相手をいかに上回るかが重要になってくる。一撃必殺の剣を持っていても、それが命中しないのであれば意味はない、腐らせているだけだ。故に動きの相性をしっかり把握し、そこにクセや虚偽を織り交ぜ、自分の”味”を生み出して行く。
そうやって相手の技術を上回り、千の牽制から隙を生み出して一の必殺を叩き込む。
この流れこそが剣術の奥義だと断言しても良い。
ただ、それでも、
―――身体能力の差はどうしても覆せない。
純粋な技術で火織の剣術を上回る。火織の呼吸を覚え、太刀筋を認識し、そしてその動きのクセを解析し、理解する。動作に入る瞬間を見切って、先手を取るように攻撃を発生させる。しかし、それに対して火織が選ぶ行動はシンプルに身体能力による圧殺。
切り払いに対して袈裟切りで受け流すのであれば、筋力で耐えてしまえばいい。
シンプル、しかし純粋でどうしようもない武器、それを利用した丁寧なゴリ押しとも言える行動はしかし、シンプル故に覆す事が出来ない。技術で上回ろうとも、開けたはずの差が強引に覆されて行く。ステップを刻み、有利な位置へと追い込もうとし、少しずつ削られて行くのが解る。
最初は完全に受け流せていた火織の刃も、少しずつ体に届く様になってくる。最初は二の腕、次は頬、太もも、脇腹、と喰らう場所がドンドン増える上に傷口も増えて行く。
そして、ついに、
アドバンテージを奪われる。
踏み込もうとし、刃を振るい、それが火織の刃によって切り上げられる。本来であればそのまま即座に手を戻し次の動作に繋げる所、右手首から痺れが即座に戻す事が不可能であると悟らせる。馬鹿みたいな筋力の相手との勝負を続けた結果、精神力の前に体の方に限界が来ている。
その証明だった。
「っ―――」
眼を見開きながら言葉にならない叫びを飲み込み、強引に手を引きずり落とし、火織の刃を渾身の力で弾く。しかしそれは悪手、火織の刃が弾かれ、後ろへと下がり―――構える時間を与えてしまう。
素早く納刀した火織が呼吸をコンマ以下の時間で整えるのが見える。それが必殺の構えであり、一撃で勝負を終わらせるために入るのが見える。火織の体内を”ナニカ”が駆け巡っている。力が膨れ上がる。万全の相手に対し、此方の体力が限界に来ている。動くのが少し、辛い。
―――ノイズが走る。
少し辛い。その程度だ。だが、それが致命的な差に繋がるのが熟練者の戦いであり、
「唯―――」
「―――時よ止まれ、お前は美しい」
賭けに勝利した。
火織の時間が停止する。しかしその時間は自分の能力通りであれば0.1秒程度。役に全く立たないレベル。
だけど、この刹那が明暗を分ける。
刃を手放しながら脳にかけられた、人体のリミッターを意図的に外す。説明は操祈から何度も聞いているから良く知っている。やっぱり勝因は彼女による説明されたことから愛の力は偉大だな、と思いながらノータイムで、
身体駆動の限界突破を行う。
体を守るためにかけられたリミッターを外した結果、疲労とは関係なく体が動く。筋肉が悲鳴を上げながら千切れる、血管が切れて内出血が始まる。皮膚が切れながらも肌が剥がれる。それが一番最初に発生するのは足だ。一瞬で接近する為に、文字通り全力で血を蹴り、
時の止まった火織に、その束縛が消える前に到達する。
移動した軌跡に血の真っ赤な線を残しつつ、火織に接近するのと同時に束縛が消える。その抜刀術、奥義、必殺、そう思える動きに割り込む様に、
「パァーイ! キャァーッチ!」
火織の胸を右手で掴んだ。軽く揉んでみる。心の中でナイスおっぱいとサムズアップを向けてくる。
「―――」
―――火織が完全に動きを停止させた。
……リアクションが処女臭い……!
そう思いつつ指をシャツ、そしてその下のブラジャーに深く食い込ませ、引き千切る。
「しま―――」
そこで漸く、初めて、火織が此方の目的を看破する。
「銀髪貧乳ロリシスターに聞いたぜ。お前ら魔術師って恰好や道具が魔術を行使するのに重要なんだってな?」
服が千切れた。その向こう側にある胸を火織は反射的に隠そうとする。女を捨てきれていなかったのが敗因だな、と心の中で評価しつつ、
身体の限界突破駆動を行う。
開いている左拳で全力で火織の顎を殴る。相手の顎の前に此方の拳が砕ける感触がする。不思議な力はその体から感じないのに、素でこれだけ硬いのか、と軽く戦慄しながらも、
流血しながら引き裂かれる両腕で拳を火織に叩き込んで行く。
顎から右拳で首を、次に左拳で肩甲骨を、右と左拳で交互に、素早く、限界を超えた身体能力で、全力を超えた全力で容赦なく拳をめり込ませる。胸を隠そうとする腕の手首、容赦なく砕こうと砕けた拳で殴りながら逆の拳で更に顔面を殴り、血で目つぶしをする。
与えるダメージよりも自爆ダメージの方が高い。それでもチャンスはこの瞬間のみ。攻撃は止められない。
腹を殴る。逆側の肩甲骨を殴る。二の腕を殴る。首を三度殴ってから顎をもう一回殴る。それから心臓を狙って胸を殴り、踏み込み、足を軋ませながら火織の膝を砕く様に蹴りを叩き込み、吹き飛ばす様にアッパーを叩き込む。
流血する火織の姿が吹き飛ぶ。
吹き飛び、道路に転がって倒れる火織の姿を確認しながら両膝を道路につけ、口の中に溜まった血を横へ吐き捨てる。転がっている火織から自分の拳へと視線を向けると、折れた骨が拳から突き出ている。こんなもんで殴ったらそりゃあ痛いわ、とどこか思いながら、
「いてぇ、超いてぇ。クッソいてぇ。もうマジ無理。戦えない。これ以上は無理」
立ってくれるなよ、と思いながら視線を火織へと向けると、
予想通り、折れた膝で立ち上がる姿がそこにあった。
拳のラッシュを喰らっている間でも絶対に手放す事がなかったその長刀を支えにする様に立ち上がった火織は此方へと視線を向ける。まだいけるかぁ、と思いつつ、
ボロボロで血だらけの体に鞭を討たせるように、両足で立ち上がる。
「―――いいでしょうか」
そう、火織が口を開く。
「んだよ」
「上条当麻と貴方が友人関係であるのは解ります。ですがそれは命を賭けて戦う程のものですか?」
「逆に聞くけどよ、ダチの為に命を賭けない理由があるのかよ。友達が困ってる、なら助ける。当たり前の話だろお前。それ以上に理由はいらないんだよ」
その言葉に火織は一旦俯き、考える様に黙り込む。その間に次、どうやって動くべきかを頭の中で纏めておく。このまま戦ったとして、当麻が戦ったという摂氏三〇〇〇度の炎を使う神父が混ざってきたら比喩でもなんでもく、ガチで詰みになる。ギターケースには一応手榴弾や閃光弾も積んであるのだが、それだけではどうにもならなそうな気もする。
そんな事を思っていると、火織が顔を持ち上げる。
「私の……負けですね」
「ふざけんなよ。どう考えても俺の負けだろこれ。今なら小指で倒される自信があるぞ!」
いえ、と火織が頭を横に振る。
「貴方の言葉の正しい、そう思ってしまったからですよ。……それにまさかここまでダメージを喰らうとは思っていませんからね。数日は休まないと治らないでしょう」
―――そのダメージが数日で抜けるとか本当に化け物だなぁ!
ちょっとだけ羨ましいと思っていると、ふとした疑問を口にする。
「神父はどこなんだよ」
「彼なら見張りですよ、どちらかが常に監視していませんと」
「それもそうだ」
良く考えればそれぐらい解っただろうに―――予想外に焦っていたかもしれない。こんな醜態、先輩達に知られればキレられてもしょうがない。それよりも今はこの状態をどうやって操祈に説明すればいいのか、そちらの方が非常に恐ろしいのだが。操祈の事だから慈愛の精神で許してくれたらいいなぁ、とありえない事を祈っておく。
そこまで考えて、口を開く。
「なぁ、そろそろ立ってるというか意識を保つのも辛いから勝者特権として一つだけお願いいい?」
「……で、できれば体は勘弁して―――」
「ちげぇよ! こんな時にボケんなよ! ツッコミさせるなよ! 体力消耗してるんだよ! 喋る度に意識が朦朧としてるんだよ!」
荒く息を吐きながら、ブラックアウトしそうな思考を何とか整え、言葉を吐きだす。
「……少しだけでいいから、当麻の事を、信じてくれ」
「解りました」
火織の返答に笑みを浮かべ、心の中で操祈への謝罪をしながら、
あとは当麻が何とかしてくれるだろう、という安心感と共に、後ろ向きに意識を手放しながら倒れる。
―――あとは全て、ヒーローの活躍に任せよう。
というわけでねーちん戦はあっさり終了。久しぶりにネットリ戦闘描写出来て楽しかった。
ねーちん書いててアホタル思い出したわ。
そして悲報、状況と環境と支払の都合上クラファンに参加できない事実が発覚。クレジットに名前残したかった(リアル涙