GOD EATER 防衛班 キャラクターエピソード+ 作:アマゾナイト
GODEATERが好き過ぎて、小説を書くまで至ってしまいました。
時系列としては、『防衛班の帰還』終了後の、大規模防衛戦終了後のパーティをした後からの内容です。
先ずはブレンダンから、どうぞ
防衛戦の成功を祝したパーティが佳境にさしかかった頃、サカキ博士から通達があった。
その内容は、新たなサテライト拠点の建設が進行する中、防衛班一人一人がサテライト拠点をそれぞれ受け持ち、そこの隊長となるものだった。
パーティが終わり、ブラッドの隊長と防衛班の面々がラウンジから出ていった後、一人そのまま残っていたブレンダンは悩んでいた。
(隊長…俺に務まるのだろうか?)
3年前のことになる。前支部長、ヨハネス・フォン・シックザールが計画したアーク計画は、来たる終末捕食を人為的に引き起こし、一部の選ばれた人類だけを宇宙船に乗せ、終末捕食の済んだ次世代の地球に送る計画だった。その時、ブレンダンは自分が生き延びなければならないという使命感の下、方舟に乗れない人を見捨てることを承知で計画に乗った。しかし、当時の第一部隊の抵抗によりアーク計画は失敗に終わり、ブレンダンが乗った宇宙船は打ち上がることなく終わった。
この事件の後、ブレンダンは自分が考えた使命のために他人の命を蔑ろにした事を酷く後悔した。それ以来彼は最後まで諦めず、双方が助かる道を模索することを決意したのだった。
しかし、防衛戦とは救うべき命と自分の命、この二つが天秤にかけられるもの。
これまでも、守ろうとしても守り切れずに散らしてしまった命は幾つもある。紙一重の命のやり取りが行われる戦場において、その責任を負う立場になることに、彼がプレッシャーを感じない訳はなかった。
そんな風に、ソファに座って考え事をしていたブレンダンであったが、毅然とした歩みで、近づいてくる男がいた。
「どうかしたのかね? 君」
声をかけてきたのはエミールだった。
「パーティが終わったあとだというのに君は浮かない顔をしている。任務中に失敗したこともあったのかね? しかし結果として、君は大規模な防衛戦に勝ち残ったのだ。これはとても喜ばしいことだぞ! ………先程はカレル君やシュン君が怖くてパーティ中は声をかけられなかったが、さあ、今こそ大勝を祝そうではないか!」
防衛戦とは全く関わりのなかったエミールであったが、祝勝会と聞いて駆けつけずにいられなかったのだろう。そんな彼に対し、ブレンダンは苦笑交じり応えた。
「ああ。パーティの終わりに、サカキ博士からサテライト拠点の防衛班の隊長に就くよう通達があってな……、俺でも務まるのか、と少しプレッシャーを感じていたんだ」
「ほう、君が隊長に! だがそれは悩むことではないだろう? これまでと同じように、より多くの人を守ることがゴッドイーターの務めなのでは?」
「そうだな。だが、隊長になるということは命のやり取りが行われる戦場での責任者となるわけだ。まだ俺にはその覚悟が足りていない。それに、教官先生やタツミのような立ち回りが今の俺にできるとは言い切れないからな……」
「なるほど……、隊長としての責任か……、かくいう僕も隊長に選ばれる日も遠くはないのだろう―――」
コウタやエリナが聞いたら呆れられるであろう台詞を言うエミールであったが、素直にブレンダンは頷く。
「―――そう考えると、君の心配も些かわからなくもないのだが……、フン……、つまり君は今の自分の強さに自信がないのだな?」
天秤にかけられた二つの命を片方だけ見捨てることはせずに、双方が助かる道を貫く、そのためには強さが必要だ、とブレンダン考える。
「そういうことだな」
と返事をしたところで、エミールは天を仰ぐように両腕をめいいっぱいに拡げ、声高々に宣言した。
「ならば君は我が同士だ!!!」
そして、今度は恥じるように手で顔を覆い、目を閉じた。
「………実を言うと先日のミッション中に我がポラーシュターンが動かなくなってしまった事があったのだ……、僕は隠れ、アラガミに囲まれてエリナに護ってもらいながら、助けを待つ状況に陥った時、ふと動かなくなったポラーシュターンを見て思ったのだ。……人々のポラーシュターンになろうと誓った僕が、いつの間にかポラーシュターンに頼ってしまっていたことをね……」
ポラーシュターンの連呼で、理解が追いつかずにブレンダンは眉間に皺をよせたが、構わずにエミールは続ける。
「その後、ミッションからは無事に帰還でき、ポラーシュターンは修理されたわけだが、自身の非力さを自覚した僕は誓いをたてたんだ。これから僕自身がもっと強くなるために、自らの肉体を鍛えていこう!と」
エミールは目を開け、ブレンダンに手を差し伸べた
「つまり! 我々は強さを目標にする同志であるのだ! そこで君に一つ提案がある。
これからトレーニングルームに行って共に己を鍛えようじゃないか? 私がメニューを考えてきてある」
ブレンダンは日課の筋トレの一環になると思い、誘いに乗ることにした。
「わかった。俺も付き合わせてもらおう。よろしく頼むぞ!」
「フン……、私のトレーニングは過酷だぞ…、ついて来られるかな?」
斯くして、共にトレーニングをすることとなったエミールとブレンダンであった。
二時間後……
「ふごおおおおお!!! 僕は……、はあっ! 屈しない!!」
「998、999、1000……、ふう、やっとこれで全部終わったか」
息も絶え絶えに、何とか曲げた肘を伸ばそうとするエミールに対し、ブレンダンは汗をかきながらも、無難にメニューをやり遂げた。
流石はブレンダン。毎日筋トレを欠かさず、食事のお供に必ずプロテインがつく男だけあって、エミールが用意したメニューは最後までそつなくこなした。しかし、エミール自身には過酷すぎた。
というのも、エミールが用意したメニュー量はブレンダンがいつもこなす量の倍程もあり、さらに、エミールは自主的な筋トレは初である。自らを鍛えると誓ってからはメニューを練りに練るだけで、実行はしてこなかったのだ……
「はあっはあっ! 385、…ふんっ! おおおおお! 386!」
既にクールダウンのストレッチをしていたブレンダンは、息も絶え絶えに、全身汗まみれでありながらも続けようとするエミールを心配して言った。
「おい、あまり無理をするなよ……」
「787! はあっ、決して……、……無理など……、ふんぐっっ!! 788! ………、せっかく僕が誘ったというのに……、最後までこなせないのでは……、騎士の誇りが許さない――!」
「………そうか……」
明らかに回数をサバ読んでいることにブレンダンは気づいていたが、必死になるエミールを見て、黙っておくことにした。
(騎士道……、自らの誇りを貫き人々の光ならんとする道、か……、その道を歩むのは、決して容易ではないのだろう。自分の道を貫くことの困難さは俺自身が今体験していることだ。)
(………エミールは我々は同志だと言ったが……、案外的を射てるかもな……俺たちは――)
ドタン!
突然、訓練室に何かが倒れる音が響いた。
驚いたブレンダンがエミールの方を向くと、彼は仰向けになって倒れていた。
「おい! 大丈夫か! おい! しっかりしろ!」
結局、全メニューをこなせなかったエミールは全てをやりとげた顔で気絶していた。
地下の訓練場から上階の病室へエミールを運ぶ途中、ブレンダンは助力を求めてラウンジに立ち寄り、そこに偶然いたタツミに手伝ってもらった。なんとかエミールをベッドまで運び、ひと段落してから看護師のヤエさんと話した。
「脱水症状ですね。私服のままで過酷な運動をしてしまったのが原因です。軽い症状ですので、暫く安静にして点滴を続ければ治りますから、次からは気をつけて下さいね」
「そうでしたか。迅速な処置に感謝します。以後気をつけます」
未だ眠ったままのエミールに代わり、ブレンダンが注意を受けていた。タツミは病室の中にいては邪魔になるだろうと、廊下で待機していた。
「では私はこれで。エミールをよろしくお願いします」
軽く会釈をしてから病室を後にし、自販機前のベンチに座って待っていたタツミのもとへと向かった
「手伝ってくれて感謝する。喉乾いただろう? ジュースでもおごらせてくれ」
「ああ、有難く頂くわ」
ブレンダンは自分とタツミの分のジュースを買い、タツミに手渡し、隣に座った
「あいつの具合はどうだ?」
「ああ、安静にしていれば大丈夫だそうだ」
そっか、それはよかった、と応えたタツミはジュースのプルタブを空け、喉を潤す。ブレンダンもトレーニング後に水も飲めず運んできたので、一気に飲み干す。
「いや~ビックリしたよ! 突然ラウンジに汗だくのあんたが、さらに汗だくで顔面蒼白なエミールをおぶって現れたからな。せっかくヒバリちゃんといい雰囲気だったのに台無しになったじゃないか!」
「それはすまなかった。……にしても最近仲がいいな」
「だろ!! 前まではヒバリちゃんから話しかけてくれることなんて滅多に無かったんだけど、最近は話しかけてくれるだけじゃなくてコーヒーも出してくれるんだぜ! ミッションに行けばいつだって支えてくれるし、それに――」
ブレンダンは、タツミにヒバリのことを話題に出すと話が止まらなくなることを忘れていた。これ以上話が膨らまないように、慌ててタツミの話を遮って言った。
「ああ! そういえばさっきはなんであんなに沢山の資料を抱えていたんだ?」
「ん? あれはお前らにも関係する資料なんだけどな。防衛班それぞれが受け持つサテライト拠点の割り振りとか、隊長就任の手続きとかの資料だ。なにせ、俺はサテライト防衛班全隊の隊長を任されたからな。全員分の手続きで忙しいんだぜ」
「っと、丁度いい。ブレンダン、一つ頼みを聞いてくれないか?」
「どうした? 俺にできることなら何でもするぞ」
少し真面目な話をする雰囲気に変わったタツミはジュースを床に置いた。彼にならってブレンダンも少し気を引き締める。
「これから防衛班には一人一つずつサテライト拠点を受け持つだろ。そこでお前にはサテライト拠点『アークト・ディアナ』の隊長となってほしいんだ――」
ブレンダンは驚きのあまり手に持っていたジュースをこぼしそうになった。しかし、彼に構わずタツミは続ける。
「――知っての通り、この拠点はアナグラからは一番離れていて、しかも山や川の地形のせいで物質が届けにくい地域にある。もちろん、アラガミの行動調査から、アラガミの接近は少ない地域だと分かってはいるのだけれども、それでも一番大変な拠点になりそうな所だ」
ブレンダンは戸惑う。ジュースを床に置き、眉間に皺を寄せて言う。
「……、俺がそこを受け持っても大丈夫なのか?」
「そんな心配するなって! 防衛班の中で一番安定した戦闘を行って、耐久力があるのはお前だと思って頼んだわけだ。お前なら大丈夫だろ!」
「……」
ブレンダンは隊長になるだけでもプレッシャーを感じていたのに、さらに、重要な拠点を任されることに困惑してしまった。
いつもながら物事に真面目に……、真面目すぎるほどに悩むブレンダンを見て、苦笑してタツミは言う
「そう、固くなるなって。もちろん、一人で受け持つわけじゃないし、俺だってたまには応援に行けるさ」
「しかし、俺はまだ隊長を受け持てるほど自分の強さに自信がない。今回だって、強さを求めてエミールと鍛えていたんだ。それに、俺は……」
少しためらうように言葉を選びながら、ブレンダンは言った
「……呪われた航海を選んで、多くの人を見捨てようとしたことがある。……そんな俺が、防衛隊の隊長になってもいいのか?」
他の隊長と比べると実力が足りない、まだまだ強さも経験も足りていない、これが隊長を務める不安要素の一つである。だがそれ以上に、過去に多くの人を切り捨てる決断をしてしまった自分の行動が、精神が、隊長に相応しくはないのかと、ブレンダンは一番に思い悩んでいたのだ。
ブレンダンとしては口の重い告白であったのだが、以外にもタツミは
「いいんじゃないか?」
とあっさり答えた
あまりの即答にブレンダンは少し困惑したが、タツミは構わず続ける
「大体、今回の隊長就任は4人も同時に隊長になる特例事項だぜ。……あー、言い方が悪いかもしれないが、これまでの部隊長就任ほど重く受け止めなくていいだろうし、あくまでも各サテライト拠点の防衛隊長となるだけだから……それとな、お前に『アークト・ディアナ』を任せようとした理由はもう一つあるんだよ」
「何だ? それは?」
わからない。ブレンダンには自分が選ばれる心当たりがない。
「お前が三年前の事件の後も、変わらず防衛班を続けてきたことだよ。」
これまた当然のようなタツミ回答に、ブレンダンは驚いた。
「そんな。俺は本来の自分の仕事に戻ったまでだ」
いつも以上に深刻な様子のブレンダンに対して、タツミはあっけらかんとした態度で話す。
「いやいや、なかなかできっこない事だと思うぜ。……確かにお前は多くの人を見捨てようとしたかもしれないが、再び『防衛』という仕事に戻ってきた。……防衛戦はさ、全てを守ろうとしても、何かを捨てなくちゃいけない状況だってあるよな。ところがお前は多くを切り捨てる重圧を知った上で、またこの職場に戻ってきた――」
タツミと話を聞いている内に、ブレンダンは三年前の自分の心情を思い出していた。方舟から戻ってきた頃は、支部長の計画に乗ったことに対して罵詈雑言を述べる者も少なくなく、自分の居場所がなくなっていたように感じていた。故に、自分を変わらず迎えてくれた防衛班には感謝したし、仲間のためにも防衛班という職に殉じ、何かを切り捨てることはせず必ず守りぬく事を、自分の道と定めたのだった。
タツミは続ける。
「そんでさ、リンドウさんがまだ行方不明の頃に、お前が新人のアネットとカノンとミッションに行って、まだ交戦経験のなかった『ツクヨミ』に遭っちまったことがあったよな。それで、アネットとカノンは帰ってきたけれども、お前はなかなか帰ってこなくて……、リンドウさんのこともあったし流石にあのときは俺でも悪い想像をしちまったもんだぜ。……でも、お前は帰ってきてくれた。結果として誰も欠けることなく。防衛という職務を全うして」
「その時俺はこう思ったんだぜ。『お前なら隊長でも大丈夫だ』とな。もうお前は、勝てなくても負けない戦いができる。何かを守り通せることの誇りを知っている。過去のお前がどうだって構わない。今お前はこの仕事に誇りを持っているだろう? だからお前に『アークト・ディアナ』を任せたいと思ったんだ」
ブレンダンは目を閉じて思い出す。あの時、未知なるアラガミを前にし、仲間を失うかもしれない状況でブレンダンは考えた。自分が囮になれば二人は助かるのではないか、と。過去に人を切り捨てる決断をしてしまった自分の命で、今度こそ守りぬこうと。
そして、アネットを逃がし、カノンを逃がし、たった一人でツクヨミを相手にすることになった。ツクヨミは執拗に迫ってきており、何度も何度も命を落としかなない状況に陥ったが、それでも諦めなかった。そうして何とか隙を見つけて離脱し、何日もかけて極東支部に辿り着いたのだった。
疲労困憊になりながらも、やっとの思いで帰ってきた時、ツバキ教官に叱られながらも、アネットやカノンには何度も何度も感謝された。無事な隊員の顔を見て、無事に生きて帰れたことを実感した時、ふと胸の内が熱くなったのを覚えている。あの時はその感覚の正体がわからなかったが、今ならわかる。あの充実した気持ちは、あの胸の高鳴りは、
「誇り」だったのだ。
隊長という重圧(プレッシャー)を前にして、防衛班が共有する大事な心の持ち様を、いつの間にか忘れてしまっていた気がした。
そして決めた。
「……そうだな」
ブレンダンは目をあけ、真っ直ぐにタツミを見て言った。
「わかった。『アークト・ディアナ』俺に任せてくれ。必ず守り切ってみせよう」
例えどんな理不尽な状況に陥っても、この職場なら最後まで誇りを突き通せると、そうブレンダンは確信した。
「よっし! 任せたぜ! じゃあ、早速手続きするか。ラウンジに資料を置いてきたから、先ずそこに行くぞ」
とタツミは言って、ジュースを飲みきりエレベーターに向かう。その後をブレンダンもついていき、エレベーターのボタンを押したところで、タツミが言った。
「そうだ。なんだったら、最初はエミールと防衛に当たってみるか? 前にフライヤに出向したことあるみたいだし、その時みたいにできないかコウタ隊長と相談してみるか?」
「ああ。それはいい」
「でもあんまりこき使いすぎて今日みたいにダウンさせるなよ」
「わかった。気を付けよう」
タツミの軽口にも、あくまで真面目に答えるブレンダンであった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!
何事も真面目に、真面目すぎるくらいに考えるブレンダンと、誇り高き騎士たらんとするエミールの二人は、自分の道に実直でありながらも不器用で、そんな二人のやり取りを描けたのは楽しかったです。
次の話でもまたタツミさん出てきます。
……もう薄々気づいているとは思いますが、私は小説を書くのは初めてです。文章書くのは本当に本当に苦手で、それを克服したかったのも小説を書き始めた理由です。
ですので、作中のここの表現がおかしい、ここはこうするべきだと思う所がございましたら、是非是非、お教え下さい。
もちろん、内容についての感想もお待ちしております。