GOD EATER 防衛班 キャラクターエピソード+ 作:アマゾナイト
防衛戦の祝勝パーティから数日後。
ヒバリは休憩のため、ラウンジへと入っていった。
そこはいつものように賑わっていた。
厨房ではムツミが皿を洗っている。
テーブルではエリナとウララとナナが食事をしている。
ビリヤード台の前ではハルオミがテルオミの首をしめてじゃれ合っており、それをギルバートが見て笑っている。
そして、ソファの片隅では、賑わいをみせる他の人達とは対照的に、難しそうな顔をして座っている者がいた。
(あ、タツミさん……)
彼とはずいぶんと長い付き合いになる。
と言うのも、ずいぶん前にヒバリが受付係に着任したその日から、ヒバリは彼からナンパを受けていたからだ。
彼とは6歳も年が離れていることもあり、本気にしていなかった。というよりあまりにもしつこくて迷惑だった。
そんな日々が何年も続いてきたが、ヒバリにとって、いつの間にかそれが日常の一部となり、いつしか彼を悪く思うことはなくなっていた。
(頑張ってるみたいだし、コーヒーでも淹れてあげようかな)
厨房にいるムツミに声をかけ、自分でブレンドしたコーヒーを淹れ始めたヒバリは、タツミとのこれまでの出来事を思い出していた。
ヒバリが受付業務に就任した頃、受付業務というものは偏食因子への適合率が高いものの、自分に合う神機が見つからなかった者が、神機が見つかるまでの間職として就任するものだった。
しかし、3年ほど前から、通信技術やアラガミ探知技術の発達に伴い、ヒバリには受付業務に加えて戦闘中のオペレーターの仕事も加えられるようになった。
それはヒバリにとって初めて、ゴッドイーター達の戦場を知ることでもあった。
始めのうちは、自分が立っていたかもしれない戦場を思うとひたすら緊張し、アラガミの乱入など、大事な情報を伝え損なうという大きなミスをしたりと、オペレーターとしての仕事を十全にはこなせなかった。
そして、防衛班の中にはヒバリに文句をいう神機使いもいたが、隊長であるタツミには随分と助けられた。
ヒバリのミスで隊員にアラガミの乱入を正確に伝えられなかった時など、即座に隊員の配置と戦略を変更して、乱入するアラガミを的確に捌いてくれた時などは、本当に助かった。
ヒバリにとって普段のタツミは、自分の隊員とどこかズレた会話を繰り広げていたり、何度断っても、何かにつけて食事の誘いをしてきたりと、軽薄な印象しかもっていなかった。
しかし、戦場でのタツミは的確に戦闘の指示を行い、部隊をまとめ、勝つことよりも負けない戦闘スタイルを堅実にこなす。
聞けば、彼は決して神機との適合率が高いというわけではないという。
自分の力量を弁えながらも、自分の戦いを貫く。そんな彼の戦闘スタイルを目標としている者も少なくはないと聞いた。
そして、いつしか毎日続くナンパにうんざりしながらも、彼の事を尊敬する人物として見るようになっていった。
(うん、いい香り)
コーヒーを淹れ終えたヒバリは、タツミが仕事をしているテーブルに向かう。
「お疲れ様です。コーヒー淹れましたよ。良かったらどうぞ」
「え! わわ! ありがとう! ヒバリちゃん! 悪いね!」
突然のことに驚く顔を見て、ヒバリは少しだけ、ほんの少しだけ、いつもは見せないその表情に見入ってしまう。
「あ…………、えと……、……そういえば何だか難しそうな顔をしていましたね。どうかしましたか?」
テーブルにコーヒーを置いて、今自分の中に生まれた感覚に戸惑いながらトレーをギュッと握るヒバリ。
いつもと少し違った態度を彼女がしていても、タツミはそれに気付かず答える。
「いや~、例のサカキ博士に頼まれた、防衛班のメンバーを一人一人サテライト拠点の隊長にするって話なんだけどさ……、どこに誰をどこに配備するか迷っててね……」
「成る程。確かに難しい課題ですね。長期間、極東支部から離れて活動するわけですから滅多に人員のやり取りはできなくなりますし。あとは、各サテライト拠点の地形を考慮して、防衛班の各神機使いの得意分野を活かせば、より戦いを有利に進められそうですし……、考えることは多そうですね」
「そう! 流石ヒバリちゃん、わかってるねえ~」
「これでも3年間オペレーターの仕事してきましたから。ゴッドイーターの戦術も一通り理解しているつもりですよ」
事実、ヒバリは始めの頃はオペレーターの仕事に慣れていなかったが、彼女が積み上げた努力と神機使いとの信頼関係は、彼女を極東支部、唯一無二のオペレーターに成長させた。
と、そこでタツミは何かを思いついた様子で、わざとらしい、少しかしこまった雰囲気で尋ねた。
「じゃあさ、今からこの仕事手伝ってくれない? ……、なんなら、食事でもしながら、さ?」
そんな、これまで何度も聞いた誘い文句に呆れながら、ヒバリは答える。
「私はまだこれからも受付がありますので。それに、タツミさんが出した結論でないと皆さん納得しませんよ」
「そっかあ、残念だなあ……、配属が決まる前に一度でも多くヒバリちゃんと食事したかったんだけどなあ」
え? とヒバリは思う。普通に考えれば予想できることだが、そのことを訊かずにはいられなかった。
「…………タツミさんは、また暫く極東支部から離れることになるのでしょうか?」
「うーん、まだ詳しくは判らないけど、知っての通り俺は指揮官に専念するわけじゃなく、現場のゴッドイーターとして戦うことを希望したからさ。ここ最近はずっとサテライトに行ってたように、これからも極東支部に帰ることは少なくなると思うんだ」
「…………」
2年程前から、新たなサテライト拠点の建設が次々に進むのに合わせて、サテライト拠点を迅速に防衛できる必要が生まれた。そのため、一部の防衛班はサテライト拠点に駐在し、アナグラを離れることとなった。
当然タツミも例外ではなく、極東支部を長期間留守にすることも少なくなかった。
ヒバリは思い出す。
就任当初から続いたタツミのナンパが、いざ日常から抜け落ちると、それはそれで何とも言えない戸惑いがあったことを。
「あれ? ヒバリちゃん? どうした? 突然黙っちゃって?」
「あ……、いいえ! 何でもありません!」
ヒバリは想像する。正式に防衛班がサテライト拠点に配属され、そのメンバーが、目の前のタツミさんが、極東支部にずっと帰ってこなくなることを。
それはこれまでよりもずっと寂しいことのように思えた。
「あのっ!」
ヒバリは自分でも少し驚くくらい大きな声を出していた。
「明日の夜は非番ですので……、………その……、一緒に食事でもどうですか?」
トレイをギュッと握ってタツミから視線をそらすヒバリを見て、タツミはキョトンとした顔になった。
「ええと……、ヒバリちゃんから誘ってくれたのは始めてで、嬉しいことで……、それはどういう……」
「か、勘違いしないで下さい! サテライト拠点に防衛班をどう配属するのか、最終決定を知りたいだけですから!」
それは別に明日聞かなくても、オペレーターならいずれわかることである。ヒバリは言ったそばからそんなことに気づいてしまい、さらにトレイをギュッと握って赤面する。
その様子を見てタツミは驚きつつも、とても嬉しそうに言った。
「じゃあ、明日――」
――明日よろしく、そう言おうとしたタツミであったが、その瞬間、ラウンジに大きく息を切らしたブレンダンが入ってきた。
「誰か! タツミ!! 丁度良かった! エミ-ルがトレーニング中に倒れたんだ! 医務室まで運ぶのを手伝ってくれ!」
見ると、ブレンダンは汗だくになりつつ、エミールをおぶっている。スタミナが全快ならば、ブレンダンは一人で医務室まで運べただろう。しかし、ハードなトレーニングの後であるためブレンダンは最後まで運ぶのを諦め、ラウンジにいる誰かに手伝ってもらうことにしたのだった。
「…………わかった。すぐ行こう!」
「…………では、私はヤエさんに連絡してきます。」
あまりにもタイミングが悪いと思いつつ、タツミとヒバリはブレンダンを手伝うことになった。
この後、受付業務に戻ったヒバリはやけに明るく、これ以上にない程機嫌が良かったという。
タツミさん目線の話を書こうとしたらヒバリさん目線になっていました。
つい先日配信されたオペレーター物語でも、ヒバリがフランにそれとなくいじられてましたよね。
現在公式で連載している、タツミが主人公の漫画はまだ読んでいませんので、ずれている点などがあった場合は申し訳ありません。
恋愛チックな内面描写は難しいですね。駄文ですが、いろんな文章にチャレンジしていきたいです。
次回は冒頭に少し出てきた男三人衆のムーブメント(笑)の話を書こうと思っています。