GOD EATER 防衛班 キャラクターエピソード+ 作:アマゾナイト
遅すぎて本当にごめんなさい。
今回はライトな会話劇です。
アニメやリザレクションの内容も盛っています。
では、どうぞ
「あら、私が最後かしら」
部屋に凛とした声が響く。
時刻は宵の口を過ぎた頃、アナグラが昼間の喧騒を忘れ、静まり返る中、とある一室に三人の女性が集まっていた。
「こんばんは。いらっしゃい、ジーナさん」
「こんばんは。私も今来たところですよ」
隅のテーブルに神機の図面を広げて座っている二人の女性――部屋の主のリッカと、その来客であるシエルが挨拶を返す。
二人を見て、ジーナは彼女独特の妖艶な笑みを浮かべる。
「フフ、それではお邪魔するわね」
「どうぞ! あ、飲み物まだだった。シエル、ジーナ、紅茶でいい?」
「いえ、どうぞお構いなく」
「お願いね」
紅茶を用意しようと席を立つリッカに、シエルは思い出したかのように慌てて声をかける。
「あの……もし……、よろしければ、お手伝い致しましょうか?」
「いいって、いいって、シエルちゃんはくつろいでて! すぐ終わるから」
「……すみません……」
そわそわして落ち着かないシエル。ジーナはそんな彼女の様子をしげしげと見つめる。
「あらあら、緊張しているのかしら? そんなに固くならなくてもいいのよ」
「あ……、はい……。お気遣いいただきありがとうございます……」
シエルは両手を膝の上にのせて、さらに肩を小さくしてしまう。
まるで借りてきた猫みたい。ジーナはそう思わずにはいられなかった。
「フフ……、戦場での凛とした貴女とは大違い」
ジーナは席に座り、シエルに向かう。
「そうね……。今回は、参加してくれてありがとうね。わざわざ貴女から声をかけてくれて嬉しかったわ。こうして一人増えると、また違った愉しみが見出せそうだし」
「こちらこそ、混ぜて頂き光栄です。……ええと、……お邪魔にならないよう全力で参加します」
シエルの緊張を解こうと話しかけるも、相変わらずガチガチままの彼女を見て、ジーナはくつくつと愉しそうに笑う。
「私とリッカはもう何年もの付き合いになるわ。だからお互いに遠慮はしてないの。貴女がすぐ私たちに打ち解けるのは難しいかも知れないけど、気楽にして頂戴」
と、そこへ紅茶を淹れたリッカが戻ってくる。
「そうだよ、シエルちゃん。私だって楽しみだったんだから。そんな緊張してたらもったいないよ。はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
シエルは紅茶の入ったカップを受け取り、香りを味わい、ゆっくりと口につける。
「わあ……、いい香りですね。……うん。とても美味しいです」
安心したような声を漏らすシエル。彼女の強張っていた肩も少しは緩まったようだ。
ジーナも眼をつむり、ゆったりとした所作で紅茶を味わう。
「それじゃあ早速、『バレットミーティング』始めよっか!」
リッカの宣言によって、ここに一風変わった夜の女子会? が開幕した。
この会が開催される運びとなったのは、その前日のことである。
場所はアナグラ受付ホール。
緊急の任務はないが、かといってアラガミの討伐がなくなることはなく、ホールはいつも通りの賑わいをみせていた。
そんな中、任務から帰ったばかりのジーナは、フロアの上階でリッカと話していた。
「へえ、また新しいブラッドバレットができたんだ!」
「そう。この間何度かブラッドの隊長さんと戦場に立つ機会があってね。任務中から違和感を感じて調べてみたら、いつの間にかバレットが変異してたわ。……フフ、あれは何度体験しても不思議な感覚ね」
ジーナは普段通りの、淡々とした口調でリッカに報告している。
そんな二人の会話を、やけに気にする者が一人。近くのテーブルで読書をしていたシエルは、ページをめくる手を止めて、ちらりと彼女達を見る。
だが目線が合う前に、すぐ本に視線を戻してしまう。
「うんうん! それで、今度はどんなバレットができたの?」
リッカは技術者としての血が騒ぐのか、いつもより声が高くなっている。
「あれは『結合阻害弾』だったわ。……ああ、早く実戦で試してみたいわ……」
『結合阻害弾』、それはアラガミの弱点部位に何度か命中させることで、一定時間アラガミの全身の防御力を低下させることができるという、有用なバレットである。
しかし、アラガミによっては弱点部位がかなり限定されていることや、そもそも銃貫通に対する弱点がないアラガミもいる。故に、このバレットを扱うゴッドイーターには、それなりの技量と知識が必要となる。
「なーるほどー……、やっぱり、ブラッドバレットもブラッドアーツと同じで、神機使いそれぞれの戦闘スタイルの延長に進化していくものなのかな?」
リッカは腕を組んで分析を始める。
「ジーナが果敢にアラガミの弱点を狙っていく『意志』を持ち、尚且つ的確に当て『達成』する。そのサイクル何度も繰り返されて、ブラッド隊長の『喚起』の力と同調し、覚醒へと繋がる……」
ジーナは思考を始める彼女を見て、薄く妖艶に笑う。
そしてやはり二人の会話が気になるのか、シエルはもう一度顔を向ける。しかし、何かを切り出そうと顔を上げたリッカに反応して、慌てて本に視線を戻してしまう。
「んー、悪いんだけどさ、ジーナの神機調べさせて! 明日は神機使えなくなるから暇になっちゃうかもだけど……、一日だけでいいから、お願い!」
ジーナはブラッドバレットをリッカに話した時点でこうなることが分かっていたのだろう。別に戸惑うことなく頷く。
「別に構わないわ。まあ、戦場に出られないのは残念だけど、試してみたかったエディットもあったから。代わりにベーススナイパーの貸し出しをお願いするわね」
「うん! わかった。ありがとう! そうすると……、明日の夜には調査結果もまとまると思うから、じゃあ、いつも通り、私の部屋に来れる?」
「フフ……、久々の『バレットミーティング』ね。楽しみだわ」
二人の会話が続く中、シエルは何度も見つめ、そして目をそらすことを繰り返す。
やがて本を閉じ、机の上に置き、ゆっくりと深呼吸する。
そして意を決したように立ち上がり、てくてくと二人に近づいて言った。
「あの……!」
少し上擦ったシエルの声がホールに響いた。
現在。
このようにして、ジーナとリッカが定期的に開催していた『バレッドミーティング』に、シエルも加わることとなった。
そもそも『バレッドミーティング』とは、技術オタクとも言うべきリッカと、戦場をこよなく愛するジーナが、公的な立場で意見交換をするうちに、次第に意気投合し、それぞれの研究の成果を互いに持ち寄って報告し合う場を設けたのが始まりである。
二人が楽しそうに語り合っているのを、シエルは何度か見かけたが、自分も混ざろうとはしてこなかった。
これまで彼女はブラッド隊のメンバー以外と、ほとんど打ち解けた会話をしない。
自分のそばで談笑する人達に気づいても、あえて背を向け、本を読むなどして自分から声をかけることはなかった。
ブラッドバレットの最初の発見者として、事務的な会話に応じることはあっても、それ以上どう話せば良いのかわからなかった。
最終的に、なんとかリッカとジーナに話しかけることに成功したシエルだが、そこに至るまでに幾度の葛藤があったのかは、彼女しか知らない。
読んでいた本に、他の人の家へ招かれた際には、菓子折りを持っていくことが礼儀だと書いてあったため、テーブルの上にはシエルが持ってきた手作りショコラが並んでいる。
リッカは、テーブルの空いたスペースに神機の図面を広げてブラットバレットの解説をする。
「――実を言うと、スナイパーの『結合阻害弾』や『遠距離補正弾』、その他にもブラストの『抗重力弾』や『充填弾』のバレットは、ブラッドの隊長さんがここに来る前から確認されていたんだ」
「え!? それは……、どういう……」
シエルは驚く。
あくまで、最初にブラッドバレットを観測したのは偶然であった。
しかし彼女にとっては、ブラッドバレットが生まれ、さらにエディットまで成功して、隊長と喜びあった瞬間は、それまでの人生では感じたことのない、充実した何かを掴んだ気がしていた。
ブラッド隊副隊長という、戦場での自分の居場所も、ブラッドバレットの発見という貴重な功績の上に成り立っていると考えていた。
しかし、もし、ブラッドバレットが以前から存在した、ありふれたものだとするのなら……、
恥ずかしいような、少し寂しいような気持ちがこみ上げてきて、彼女はあからさまに顔を暗くする。
落ち込むシエルをなだめるようにしてリッカは言う。
「ううん。これまではその特殊なバレッドのことを『変異バレッド』なんて呼んでいたんだけれども、ブラッドバレットほど強力でもなかったし、特定の弾種でしかエディット出来なかった」
「例えば、3年前のとある大規模な作戦で、『充填弾』と『抗重力弾』を組み合わせた『メテオライト』なんてバレットも使われたけど、ブラッドバレットほど燃費も汎用性も高くなくて、一度きりの使い捨てのバレッドだったんだ」
「…………」
シエルは片手で、もう片方の自分の腕を掴んだ不安定な体勢で、心もとない表情を浮かべている。
それまでは一人静かに紅茶を嗜んでいたジーナが目を細める。
「懐かしいわね、それ。私も撃たせてもらったけど、あまり優雅とは言えないバレットだったわ。たった一発の弾丸で数百体のアラガミが溶けていく様は壮観だったけれど、あれじゃあ、とても命のやりとりをしているようには思えなかったわ」
リッカが苦笑いする。
「あはは……、あれは半分悪乗りというか……、『最強のバレッド』なんてものをサカキ博士と共同で開発してたら、あんなのが出来上がっちゃって……、うん。まさか実戦投入されるとは思ってもいなかったよ」
するとジーナは改めてシエルに目を向ける。
「そう。貴女の発見のお陰で、使いにくかったエディットの小回りが効くようになった。そして種類も増えた。その進歩は大いに誇っていいんじゃないかしら?」
そう言われて、シエルの顔が少し明るくなる。
リッカも続ける。
「発現の機構も根本から違っていたよ。私は今回ブラッドバレットと変異バレッドとの発生の違いを調べてみたんだけど、変異バレッドでは、神機が打ち出す『弾』そのものに変異が生じていただけだった。それに対して、ブラッドバレットは『弾』だけではなく、『弾』を打ち出すモジュール単位で変異が生じていたことが再確認できたんだ」
神機の仕組みについてはあまり詳しくないジーナは、やや専門的な話に首をかしげる。
シエルは彼女を見て、脚のホルスターから、常に身につけている拳銃を取り出す。
「例えば、この拳銃で説明するとですね――」
リリースレバーを引き、弾倉を露わにする。
「――変異バレッド場合、この一つ一つの薬莢の中の『弾』に変異が生じます。一方、ブラッドバレットでは、薬莢と、弾を打ち出す役割のレボルバーにまで変異が生じていたというわけです」
「へえ……、神機の中身の変化もこんなに違っていたのね」
「はい!」
シエルはやっと柔らかな笑顔を浮かべる。
ジーナは彼女をじっと見つめ、悪戯っぽく笑う。
「フフ……、本当に貴女は表情がころころ変わるのね」
「え……、そんなに変わっていたでしょうか……」
シエルは自分の顔をぺたぺた触る。
ジーナが言う。
「可愛くっていいじゃない。初めて極東支部に来た頃の、無表情な貴女よりもずっと素敵だわ」
突然に可愛いなど言われて、シエルはほんのり顔を赤くする。
「シエルちゃん、わかりやすい解説ありがとうね!」
リッカは二人のやりとりを見てニコニコする。
「ということで、ブラッドバレットは変異バレッドとは発現の機構も異なり、どちらかというとブラッドアーツの成長と近いことを確認できた。これが今回の私の研究報告だね。じゃあ、次は誰にする?」
「私が」
ジーナが言う。
「今度はどんな表情を見せてくれるかしら」
ジーナは持参した用紙を広げる。
そこには、バレッドの設計図が書いてあった。
「ベーススナイパーでやれることは限られていたから、以前から考えていた、それぞれのアラガミの系統に合わせたバレッドを考えてみたの」
「わあ、凄い!」
「おおー!」
リッカとシエルは驚く。
これはサリエル種やシユウ種に対するバレッドだろうか。空中高くに装飾弾が飛び、瞬時にアラガミを索敵、追尾し、命中する。これなら容易に頭上が狙えそうだ。しかもOP消費は少ない。
こちらはヴァジュラ種に有効な連続弾丸バレッドを、スナーパー用に最適化してある。
要検討中と記載されたものには、ブラッドバレットとの組み合わせを見据えた設計がなされており、上手くいけば、途轍もない威力を発揮しそうだ。
どれもこれも今まで見たことがない工夫がこなされていて、すぐに実戦で試したくなるような代物ばかりだ。
いくつか無駄な装飾も入っているバレッドもある気もするが……、どれもジーナらしい独創が入った見事なバレッドである。
シエルがため息をつく。
「こんなバレッドの使い方があったなんて……ここ最近はブラッドバレットばかり研究していたので、既存のバレッドの活用を軽視していたかもしれません。視野が狭くなっていた自分に気が付かされます」
「枯れかけの花の散り際の美しさのようなものよ。旧型ができることなんてこれぐらいしかないから」
ジーナは謙遜しつつも、うっすらと満足げな表情を浮かべる。
「気に入ってくれたかしら」
「ええ!」
うんうん、とリッカも頷く。
「さすがだね。相変わらずカッコいいバレッド作るなあ」
「ありがとう。ああ……、貴女達の感想を聞いていたら、なんだかそわそわしてきた……」
ジーナはシエルに熱い視線を送る。
「今度一緒にミッションにいきましょうね。貴女となら、より綺麗な華を咲かせそうだわ」
「はい。喜んで」
後に、ジーナとミッションをこなすこととなったシエルだが、なぜか決して『嘆きの平原』に行くことはなかったという……。
ミーティングが始まってから時間が経ち、夜も深まってきた。
リッカが締めとばかりに言う。
「さて、最後はシエルちゃんの番だけど、何かある?」
「私は、驚きの記録を持ってきました」
リッカとジーナは期待の目を向ける。
二人とも、シエルが幼少の頃から英才教育を受けてきたことは知っている。
彼女の類い稀なる洞察力と見識は、指揮官としての活躍も有望視されている。
そんな彼女から報告される「驚きの記録」とは一体……、
「私は――」
バレッドか、それとも戦術か、
果たして、どのような画期的な技術を発表するのか……。
「――カルビの成長記録を持ってきました」
「……」
「……」
ジーナとリッカは口を開けたまま固まってしまう。
「ラウンジの隅でカピバラを飼っているのはご存知かと思われます。今やゲージを越えるほど大きくなりましたが、拾ってきた頃はこんな風に抱っこできるくらいに小さかったのですよ。フフフ……可愛らしいですよね。そして――」
写真付きで、アルバムのように纏められたカルビの成長録は、なかなか興味深いものではある。
しかし、普段のシエルとのギャップに戸惑わないほうがおかしい。
カルビの体調からエサの管理まで、丁寧に記載されていることや、いつまでも解説を止めないシエルの様子から、カルビがどれだけ大切にされていたかが伺えるが、『バレッドミーティング』の趣旨とは些かずれているような……、
最初は面食らったジーナとリッカだが、機嫌よく語るシエルを、次第に温かい目で見るようになっていた。
「――というわけで、現在は体長192 cm、体重92 kgです。よくここまで成長してくれました。いかがでしたか? 私の報告は」
ジーナは口を手で覆う。
「ン……、……フフッ、貴女って本当に面白いわね。ええ、とても可愛らしいわ」
ジーナは決して馬鹿にしているわけではなく、むしろシエルの愛らしさが堪らなくて、つい、顔がほころんでしまっていた。
リッカも笑みをこぼす。
「あはは! 本当に詳しく書いてあるね。最近は動物なんて滅多に見なくなっちゃたから、もしかしたらこの記録は大切なデータになるかもしれないよ」
二人の反応に、シエルはすっかり満足気である。そして、今日一番の笑顔で言った。
「ありがとうございます。この子が一人ぼっちで寂しそうなときは、どうか、お二人とも可愛がってあげて下さい」
その後は、シエルのショコラを堪能し、バレッドや、それ以外の会話でも盛り上がった。
シエルにとってその夜は、少し特別な夜となった。
これまで、軍事的な教育に浸り続けたたせいか、誰かと穏やかに語り合うことで、こんなにも安らかな気持ちになれることを知らなかった。
規範や規律から解放され、思い切って羽を伸ばす。
それは一見、アラガミと戦う者には、意味のないことのように思える。
しかし、意味がないからといって切り捨てるべきではないのかもしれない。
誰かの言葉に笑い、落ち込み、そして自分の言葉で誰かを動かす。
その何気ないやりとりを繰り返すことで、自分がここにいるという思いを、より確かにすることができるのだから。
「勇気を出して声をかけてよかった……」
今度はブラッドのメンバーともこんな話ができたらと思う。
夜が更ける。
支部は静まりかえる。
けれどその部屋はいつまでも暖かかった。
会話劇にしたかったのに、やや説明が多くなってしまいました。
退屈になってしまったらすみません。少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
リザレクションで変異バレッドという名のブラッドバレットが出てきてしまい(笑)、これじゃ2のシエルのキャラクターエピソード台無しじゃん! と考え、彼女のエピソードを救いたくて、この内容と相成りました。
ジーナさんとシエルのイチャイチャも書きたいです。
アニメのメテオライト編すごかったですね。感動しました。
遠慮のない、感想、評価、お待ちしております。