シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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義勇兵たちのバラッド 6

明くる朝

 

「リック、レイジ。あなた達に、ちょっと話があるの」

 

二人が隊長であるサクヤに呼び止められた

 

「…話? 何か任務ですか?」

 

「まぁ、そんな所ね」

 

任務、と言われたら断れない

 

ついでにサクヤは武器屋のグレゴリを手伝っていたアラタも呼び止め酒場でミーティングを始める

 

「あなた達や他のメンバーのおかげで、砦の周辺と街道沿いでは、少しずつだけど敵の勢力を弱める事に成功しているわ。でも、まだまだ敵の動きも活発だし、味方の戦力だって決して多いわけじゃないわ。もう一押し必要なのよ」

 

サクヤはテーブルに周辺の地図を開き指を指しながら

 

「そこでこの周辺で行動している敵を探し出し、撃退するという役目を誰かに引き受けてもらう必要があるんだけど」

 

そしてリックとレイジを見ながら

 

「あなた達が二人が中心に、アラタがサポートに回って、その役目を果たして欲しいの。いいかしら?」

 

「…レイジと、ですか」

 

[レイジと]の部分だけ強調させ、リックは目を光らせた

 

おそらくリックとしては不本意なのだろう

 

「不満かしら。レイジはどう?」

 

「え、ああ、引き受けますよ、オレは。…サクヤさんの頼みを断る理由もないし」

 

「アラタは?」

 

「俺も全然大丈夫です」

 

二人の肯定を聞いたサクヤは改めてリックを見る

 

「…。俺も、師匠の命令でしたら」

 

ちょっと気になる単語がリックの口から聞こえた

 

「師匠? 今、[師匠]って言った?」

 

「ああ。サクヤさんは俺の剣術の師匠だが。…それがどうした?」

 

さもありなんといった様子でリックが言う

 

「あ、いや、なんでもない。ただ、びっくりしただけだ…」

 

そう言ったあとレイジはむぅ、と言った様子で顔をしかめた

 

「ま、言ってみればあなた達は、兄弟弟子って事よ。組んで戦うには、ちょうどいいでしょ?」

 

サクヤは笑顔で言いながら地図をたたみ

 

「そういうことで、さっそく始めてちょうだい」

 

有無を言わさぬ迫力を持った笑みでそう告げた

 

「わ、わかりました」

 

「…仕事にかかります」

 

そんな中アラタは

 

(…大丈夫かなこの二人)

 

アミルとエアリィに頼まれた事がさっそく降りかかってきた

 

ま、なんとかなるだろう

 

そう思ってアラタは自分の獲物を持ってくるべく部屋へと戻っていった

 

◇◇◇

 

そんなわけで任務は開始された

 

「…なるほど、結構な数だね」

 

軽く見渡すとうじゃうじゃとモンスターがいるのがわかる

 

「おいリック! あっちに敵がいるぞ! まだオレたちには気づいていないようだ。どう攻める?」

 

さっそくコミュニケーションをとろうとレイジはリックに話しかけるが

 

「…好きにしろ。俺は好きでお前と組んでるわけじゃない。俺は一人で戦う。お前はお前でやればいい」

 

相変わらずリックは突き放した態度でレイジに言い放った

 

一方レイジも予想はできていたようで

 

「ああそうですかっと。…そんじゃ、オレのやり方でやらせてもらうぜ!」

 

さっそく二人はそれぞれ別の敵へと突っ込んでいった

 

それぞれの背中を目で追いながらアラタは苦笑いを浮かべる

 

…大丈夫かな

 

「あの二人が中心なんじゃなかったの?」

 

若干不安になってきたアラタを煽るようにアルティナが言葉を紡いだ

 

「言わないで。…まぁ、なんとかなるヨ」

 

「カタコトになってるわよ」

 

「とりあえず攻めよう。後ろお願い、アル」

 

「言われなくても」

 

バラバラなリックとレイジを余所に、アラタとアルティナは抜群のコンビネーションで敵を蹴散らしていく

 

◇◇◇

 

「ガァァァァァッ!!」

 

ウルフの雄叫びが耳に届く

 

そのつんざくような叫びに思わずアラタは耳を塞いでしまった

 

その隙を好機と見たウルフは鋭い前脚の爪でアラタを引き裂こうと飛びかかってきた

 

しかし耳をやられても目はやられていないアラタは左手に握った日本刀の柄尻を突き出してその爪に対抗する

 

「危ないな、その爪…!」

 

だいぶ耳も回復してきたし、反撃するならば、今だ

 

空いた右手で鞘を持ち、投げつける容量で右に凪ぐ

 

前脚が右に逸れた所でアラタは左足でウルフの顔の側面を蹴りつけた

 

蹴りの痛みにウルフが悶え始めた時、アラタは一度後ろに飛び、距離を取る

 

アラタは抜刀の構えを取る

 

痛みが癒え改めてアラタを睨みつけるウルフは再び雄叫びをあげる

 

「二度は、喰らわねぇっ!!」

 

雄叫びをあげるより先にアラタが動いた

 

斬! という音が響き、アラタは刀身にこびりついた血液をヒュン! と振り払う

 

そして刀を鞘に納め、チン! と納刀する

 

「…悪いね。俺も死にたくないんだ」

 

そう呟いた瞬間に、ウルフの身体が四散した

 

◇◇◇

 

リックとレイジの活躍で、ある程度敵を殲滅できたが、まだ敵は残っているようだ

 

「レイジ、勢いがある内にさっさと叩いちゃおう」

 

「おう! わかってるって! 行くぜ、リック」

 

元気にリックに声をかけるが

 

「…、」

 

相変わらずの無視

 

「…あ、お前は一人で戦うんだったか? じゃあまぁ、引き続きこっちも勝手にやるけどさ」

 

<あちらの事は気にするな。こちらはこちらでやればいい!>

 

案の定なやり取りにアラタは冷や汗を噴き出すばかりで

 

だけどよく考えればこれがいい感じに勢いをつけているのかな、と考えるとまあいいかな、思えるようになった

 

◇◇◇

 

モンスターと戦っている中、リックとレイジは遭遇した

 

「お、リック。どうだ調子は!」

 

部活の先輩みたいに話しかけるレイジにリックはさぞ鬱陶しそうに

 

「うるさい! 一人でやれと言ったはずだぞ!」

 

実際、あれは誰でも若干イラッとくる

 

「別に、お前を手伝いにきたわけじゃない! こっちで勝手にやってたらたまたまここに来ちまっただけだ!」

 

勝手にやれ、と言う言葉を逆手にリックに言葉を返すレイジ

 

それならば、別に文句はない

 

「なに…!?」

 

「じゃあな! あっちにも敵がいたから、今度はオレ、あっちに行くわ!」

 

そう言って言った通りあっちに行ったレイジ

 

だが若干視界にリックが見えるような位置だ

 

「…なんなんだあいつは…。俺の周りをちょろちょろと…」

 

本当に、思わず苦笑いを浮かべてしまった

 

◇◇◇

 

そんな出来事があったが、なんだかんだで二人ともやはり実力は高いため、アラタとアルティナは二人が打ちもらしたモンスターを倒していったら自ずと全てが片付いた

 

「…案外呆気なく終わったわね」

 

「ああ。…正直俺もこんなに早く終わるとは思わなかった」

 

好き勝手にやりやがれ作戦が功を成したのかはわからないが、まあ結果的に殲滅には成功したし、良しとしよう

 

「ねぇ、今回アラタはサポートだったんだよね」

 

アルティナが素朴な疑問を口にした

 

「うん。そうなんだけど…」

 

「…サポートってやったかしら」

 

あんまりやってない

 

強いてサポートと言うなれば、二人が倒し損ねた敵の掃討

 

「…ま、いっか」

 

「…いいんだ」

 

ボソッと言葉を濁すアラタにアルティナは苦笑いを浮かべて呟いた

 

「敵はみんな撃退したな。砦に帰るとすっか」

 

アラタの気苦労を知ってか知らずかそんな言葉をレイジは言った

 

「…、」

 

リックは相変わらずの無言

 

「おうリック。お前も帰るのか?」

 

「レイジ」

 

リックはそこで言葉を区切り後ろを歩くアラタを見て

 

「そしてお前も」

 

「え? 俺か?」

 

突然話を振られたアラタは驚きながらも耳を傾ける

 

「…お前たちは、俺の噂を知ってるはずだよな。なのに…」

 

「…ああ、そんな事か」

 

何気なく言ったアラタの呟きにリックは眉をピクリと動かし

 

「そんな事、だと?」

 

「ああ。俺にとっては、そんな事だよ」

 

深く語らず、アラタはアルティナに「先に行こう、アル」と促して歩き始めた

 

アルティナは最初戸惑っていたが次第にアラタの後ろをついていった

 

残されたリックとレイジ

 

「…ん、なんだ?」

 

状況が飲み込めていないレイジがリックに問いかけた

 

「…いや、いい。忘れろ」

 

「? そ、そうか」

 

気にはなったが本人が忘れろと言っている事を無理に聞くわけにもいかなかった

 

◇◇◇

 

「おっちゃん」

 

「ん、アラタじゃあねぇか」

 

任務から戻って最初にアラタが顔を出したのは武器屋だ

 

店主グレゴリとは馴染みである

 

「任務は終わったのかい?」

 

「うん。とりあえずあとはサクヤさんに報告をすれば一応は」

 

「となると、俺はいつものやればいいわけな」

 

「ああ、頼みますぜ」

 

言ってアラタは左手に持っていた日本刀をグレゴリに差し出す

 

「にしてもこの刀よぉ、誰が打ったんだ?」

 

もう何度聞いたかわからないグレゴリの言葉

 

アラタの刀は銘がないにも関わらずかなり切れ味が鋭く頑丈にできている

 

だがやはり日々使用している事により、どうも消耗しているようでグレゴリに補修してもらっているのだ

 

「じゃあお願いするよおっちゃん」

 

「おお、任せておきな」

 

日本刀の補修をグレゴリに任せ、アラタはサクヤに報告をするべく酒場へと向かった

 

◇◇◇

 

「ご苦労さま。アラタ」

 

酒場に行って最初に迎えてくれたのはサクヤの笑顔

 

「ええ。いろいろと疲れる任務でした…」

 

主に精神的に

 

「あの二人、あなたはどう思う?」

 

「え? どう思うって…」

 

唐突に聞かれた問い

 

リックとレイジ

 

二人の過去に何があったかは気にはなるが興味はない

 

だけど仲良くはなれるとは思っているのだが

 

「打ち解けるのは、まだ時間かかるかもしれないですね」

 

考えた結果、アラタはそんな無難な言葉を口にした

 

「そう…。今日の任務風景は、どうだったかしら」

 

「どうって言われても。…うむむ…、想像通りですかね」

 

「…ええ、なんとなくわかったわ」

 

アラタの表情でだいたい読み取ったサクヤは苦笑いを浮かべて短く息を吐く

 

そして小さく頭を抱えながら

 

「まだまだ先は長そうね…」

 

「仰る通りで…」

 

アラタもそれに小さく同意した

 

◇◇◇

 

その後も敵を倒し続けて、数日経ったある日、サクヤがメンバーに召集をかけた

 

「皆が頑張ってくれたおかげで、どうやら砦の周りと、街道沿いからは、敵勢力を追い払えたようね」

 

報告書を手にサクヤの背後に控えているフェンリルが

 

「はい、隊長。神殿の手前までは完全にこちらの勢力圏内です。丸腰でも安心して歩けるくらいですよ」

 

フェンリルの言葉にサクヤは頷いて、リックとレイジ、そしてアラタをそれぞれ見て

 

「特に、三人はよくやってくれたわ。お疲れ様」

 

「三人とも、さすがですね…」

 

サクヤに便乗し、エルミナが素直な感想を述べる

 

「そんな。俺は特に何にもやってないよ」

 

アラタはエルミナに苦笑いを浮かべながらそう返す

 

「そんな。謙遜はなさらなくても…」

 

「全部リックとレイジのおかげだよ。なあレイジ?」

 

「え? あ、あぁ。いやぁ…。対したことねぇよ、あれは」

 

そんなレイジの発言はサクヤの耳にがっつり届いていたようで

 

「そう? じゃあ、さっそく次の仕事についてもらおうかしら」

 

『え?』

 

全く予想外の言葉にアラタとレイジはハモってそんなアホな声を出してしまった

 

「ヴァレリア解放戦線は、これより白竜教団の神殿に向け出撃、神殿周辺の敵勢力を排除します!」

 

そんなアホな状態も一瞬で吹き飛ぶ緊張がその場の空気を包み込む

 

「レイジ、リック、アラタ。あなたたちが先鋒よ。急いで準備にかかってちょうだい」

 

「了解! 行くぜ、レイジ」

 

「あ、あぁ!」

 

「アラタさん、レイジさん! 頑張りましょうね!」

 

すでにエルミナもやる気十分

 

反撃の時は今だ

 

「さぁ皆! 巫女たちを迎えに行くわよ!」

 

◇◇◇

 

「あんちゃんっ!」

 

「っと! 武器屋のおっちゃん!」

 

準備に取りかかる中、不意に武器屋グレゴリに呼び止められた

 

「頼まれた刀の補修! 終わったぜ!」

 

そう言いながらグレゴリはアラタに向かって刀を投げ渡した

 

アラタはそれをバシッと右手で受け取って左手に持ち直すと

 

「ありがとうおっちゃん!」

 

礼を言って再び駆け出そうとした時

 

「あ、待てあんちゃん!」

 

また呼び止められた

 

「ついでに、これも受けとりゃあなっ!!」

 

ヒュン!! と投げ渡されたものは

 

「…銃?」

 

渡されたのは一丁のハンドガン

 

誰から渡されたのだこんな物騒なものを

 

しかしせっかくくれると言うのだ

 

貰えるものは貰っておこう

 

「頑張んなよ! あんちゃん!」

 

「おうよ! また頼むぜおっちゃん!」

 

その後グレゴリと別れ、準備を済まし、サクヤのところへ戻る

 

揃ったのを確認し、サクヤの号令のもと、ヴァレリア解放戦線は白竜教団の神殿へと出発した―――

 

 

 

 

 

 

 

とある場所、あるお城にて

 

「どこからあんなハンドガン持ち出したの」

 

レイチェルが橙子に問うた

 

橙子は相変わらずタバコを吹かしながらレイチェルを見て

 

「いずれ彼に渡すつもりだったからな。それが早まっただけだ」

 

「あら、用意周到ね、トウコ」

 

「君にだけは言われたくないな。レイチェル=アルカード」

 

「蒼崎様。紅茶のおかわりはいかがいたしましょう」

 

「ああ、すまないヴァルケンハイン殿。貰おう」

 

テーブルに置かれたカップを差し出し、ヴァルケンハインが持つ容器から注がれる紅茶を貰う

 

「…で、お前はいつ行くんだ」

 

「まだその時ではないからね。貴女はどうなの?」

 

「君が入るのなら、私も入らねばなるまい。傍観者も飽きてきたからな」

 

そう呟いた橙子の目をレイチェルは見据え

 

「本音が出たわね? トウコ」

 

「君もだろう。レイチェル=アルカード」

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