シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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蒼天に響くアリア 4

紅色がスルトを貫く

 

流石のスルトもその変わりように怯みだし

 

「や、やれぇっ!!」

 

周辺にいた兵士たちに言葉を投げつけ襲いかからせる

 

 

「…デッド、スパイクッ!!」

 

右腕から波動が繰り出される

 

そのたった一回の攻撃で、十数人を一度に吹き飛ばして見せた

 

「怯むんじゃねぇ!

びびったヤツは先に俺がぶっ殺してやる!」

 

それはもはや恐怖による脅しに近かった

 

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

一人の兵士がアラタへと叫びながら向かっていった

 

きっと本人も思っていただろう

 

 

 

勝てない、と

 

 

 

「う、おおおおおっ!!」

 

アラタはその影でできた異形の腕で顔面を掴み上げた

 

「…悪ぃな」

 

ギチ…、と力む音が兵士の耳に聞こえ、同時に戦慄を覚えた

 

「今の俺、手加減出来ない」

 

瞬間彼の地面から漆黒が伸び、その兵士を飲み込んだ

 

悲鳴など出す暇がなかった

 

「な、なんなんだありゃあ…!?」

 

思わずスルトも後退りしてしまう

 

あんなの…、勝てるワケがない…!

 

◇◇◇

 

…なんだ、あの力

 

両儀式は解放するアラタを見ながらただ呆然としていた

 

が、それも束の間

 

「トウコの奴…、また何かしたのか?」

 

正直言ってこんなの慣れっこだ

 

今さら何が来たって驚くものか

 

◇◇◇

 

(覚醒した!?)

 

危険な賭けでしたが、どうやら成功したようですねぇ

 

(だが、あれは未完成です。…が、今回はよしとしますか)

 

ハザマはナイフを仕舞い、スルトのとこへと歩み寄った

 

「スルトさん、今回は少々分が悪いです。ここは撤退しましょう」

 

「そ、そうだな…、フェンリル! 勝負は預けた!!」

 

◇◇◇

 

「フェンリル! 勝負は預けた!!」

 

そう言ってスルトはハザマと共に撤退していった

 

「…、」

 

奴らが撤退したと同時に、アラタが糸切れた人形のようにばったりと倒れ伏してしまった

 

「副隊長! スルトが逃げる!」

 

「ああ、追いかけたいのは山々だが、今はアラタを運ばなければ…」

 

「はい…。ですが、このまま奴らを放っておいたら、オレの友達がどんなヒドい目に合わされてるか…」

 

アラタを介抱しながら、断腸の想いを口にする

 

「そうだ。ネリスだって、もしあいつらに捕まってたら…!!」

 

同じようにリックもその想いを吐露した

 

やはり、心配なのだ

 

あのような惨劇を目の当たりにした事で不安がいっぱいなのだ

 

「レイジ、リック。…俺も同じ気持ちだ。だが必ずチャンスはやってくる。…だから、今は待て」

 

冷静さを取り戻したフェンリルが諭すようにリックとレイジに言い聞かせた

 

「隊長、一度戻りましょう」

 

アラタを抱えフェンリルはサクヤに言った

 

「ええ。…ごめんなさい、フェンリル。貴方だって、スルトを…」

 

「言わないでください隊長。俺だってわかっています、このまま奴らを野放しにしておけばどんな被害がでるか。…しかし、仲間の命には、変えられませんから」

 

「…ありがとう、フェンリル」

 

アラタを抱えたフェンリルは一言二言サクヤと言葉を交えると、一旦戻るべく、クラリアへと歩を進めた

 

◇◇◇

 

「フェンリル」

 

アラタを抱えて歩き出そうとした時、後ろから声が聞こえた

 

「ん? お前は確か…」

 

「式だ。両儀式」

 

「それで、式。どうした?」

 

「いや、ちょっと気になってさ、あの獣みたいなのとの関係」

 

「その事か…」

 

いつもは冷静で厳格なフェンリルの変容

 

それは何か因縁関係があるのでは、と式は考えていた

 

「そうだな。…因縁と言えば因縁だな」

 

「…そいつは、どんなだ?」

 

「…ヤツと俺は、かつて同じ師の下で修行を積み、より強くなろうと誓い合った仲間だ。…親友だったと言ってもいい」

 

「兄弟弟子ってわけか」

 

「ああ。…しかし、あいつは己を磨く事で得られる真っ当な強さだけでは満足できず、さらなる強さを求め、掟を破り…」

 

「…そうか」

 

式がそう聞いた時、フェンリルは苦虫を噛み潰したような顔をして頷いた

 

「…まぁ、そういう事だ。世間にはままあるつまらん話だ」

 

フェンリルは続ける

 

「だが、俺にとっては生涯かけてでも決着つけねばならない因縁なんだ。…師匠のために。そして、一門の掟を、守るためにもな」

 

「…、」

 

そんな過去が隠されていたとは

 

その因縁は、決して半端な決意ではままならない

 

その戦いは、フェンリルが自分で終わらせなければ彼は前に進めない

 

式は先の会話を胸に仕舞い、再び歩き始めた

 

◇◇◇

 

「…知らない天井だ」

 

いいえ、嘘です

 

クレリアの街にある自分の部屋です

 

アラタは額にあった濡れタオルに手をやってそれを取り、上半身だけを起こす

 

「…それはそうと、なんだっけ…。確かハザマに、負けて…、スルトに捕まって、刺されて…」

 

傍らには自分の愛刀がある

 

そして伸ばした膝辺りになにやら暖かい感覚

 

ふとそちらに目を向けると、地べたに膝をついて上半身を乗り出してスヤスヤと寝息を立てて眠っている

 

「アル…?」

よく見ると瞳には若干の涙があった

 

「…アル…」

 

濡れタオルをどこに置こうか、とキョロキョロしていると自分の部屋のドアが開かれた

 

「あ、アラタさん…!」

 

バケツを持ったエルミナが姿を現した

 

濡れタオルに浸ける水を換えに行っていたのだろう

 

「アラタさん…! 気がついたんですね…」

 

うるうると瞳を潤ませる

 

今にも泣きそうなその姿に慌ててアラタは彼女を宥める

 

「わわわ、泣かないでエルミナ。俺は元気だからっ」

 

「うぅ…、ずみまぜん…、二日間寝ていらしていたから…、嬉しくて…!」

 

「…二日も寝てたの?」

 

「はい…、まるで死んでいるかのように眠っておられて…、本当に…心配で…! うっ…えぐっ…!」

 

「え…エルミナ、落ち着いてってば…!」

 

「そいつは難しいぜ」

 

また別の声

 

入り口あたりには式が立っていた

 

「エルミナとアルティナは、付きっきりでお前の事を看病してたんだぞ」

 

「し、式…」

 

必死に宥めようとしてたその時、そんな言葉を式が投げかけてきた

 

「…そうだったのか…」

 

言われて見るとエルミナの目の下に若干の隈が見えた

 

恐らく寝ずに看病してくれていたのだろう

 

「…ありがとう、エルミナ」

 

ぐすぐすと涙を流すエルミナを見ながら静かに呟く

 

そして今度は上半身を乗り出してスヤスヤと眠っているアルティナの頭を撫でながら

 

「ありがとう、アル…」

 

そう静かに感謝を述べた

 

初めて触れたアルティナの髪はサラサラで

 

「…、」

 

なんだか恥ずかしい気持ちになった

 

◇◇◇

 

泣きつかれたエルミナを寝かせて自分は再び寝ようとして

 

「…、」

 

地べたに膝をつけてベッドに上半身乗り出して眠っているアルティナに、それは申し訳ない気がした

 

「よいしょ…」

 

なのでゆっくりと彼女を起こさないようにアルティナを抱え、先ほどまで寝ていたベッドにアルティナを寝かす

 

そしてかけ布団を一枚取ると、椅子に座って眠ってるエルミナにそれをかける

 

「…これでよし」

 

後は彼女たちを起こさないようにリハビリを兼ねてクレリアの街を歩いて行こう

 

そう思い立ったアラタは起こさないようゆっくりと扉を開けて外に出た

 

◇◇◇

 

「大丈夫なのか? お前」

 

街並みを歩く傍ら、式がアラタに声をかけた

 

「大丈夫って、なにがさ」

 

「体調だ。…二日も寝てて、その…上手く言えないんだけど」

 

早い話心配しているのだ

 

「ありがとよ、でも大丈夫。まだ少し本調子じゃないけど、ゆっくりと治してくさ」

 

「…なら、いいけど」

 

アラタは道を行く子供の頭を撫でたりしながら返答した

 

式はアラタの肩を軽く叩くとさっさとどこかに歩いていった

 

おそらく照れくさくなったのだろう

 

「アラタ…! もう大丈夫なの!?」

 

三人目の子供の頭を撫でたとき、サクヤの声が聞こえた

 

「サクヤさん。…ご迷惑かけて申し訳ありません」

 

「迷惑だなんて思ってないわ。…ただ、本当に心配したのよ?」

 

安堵のため息を漏らすサクヤの表情に思わずドキッとしてしまった

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「いい? 今後は無茶したら私も許さないから」

 

ずいっと指を顔に向けられてアラタを覗き込むその視線にまやドキリとする

 

その照れを隠すべく頬を軽くポリポリとかきながら目を逸らす

 

「今日起きたばかりでしょう? とりあえず今日はもう戻って休みなさい」

 

「はい…、とりあえず戻ります」

 

仮にも病み上がりなこの体では、まだ寒さには耐えられない

 

サクヤの進言に従って、アラタは再び自室へと戻るべく、歩を進めた

 

◇◇◇

 

目が覚めた

 

アルティナが最初に視界に入ってきたのは天井―――天井?

 

自分はアラタの看病してて床に膝をついて体を乗り出して寝ていたはず…

 

そう思ってアルティナは体を起こす

 

「起こす?」

 

今気づく

 

自分がアラタのベッドに寝ていた事に

 

「…な、なんで私が寝てるの!?」

 

アルティナはベッドから降りてパパッと布団を整える

 

そして椅子でスヤスヤと寝息を立てるエルミナを起こそうとするが

 

「…エルミナだって疲れてるし…、寝かせてあげましょう」

 

軽く頬を撫で、アルティナはアラタを捜すべく、かつエルミナを起こさないように静かに部屋を出た

部屋を出た瞬間だった

 

「のわ!?」

 

「きゃ!?」

 

タイミング良く人とぶつかってしまった

 

「ご、ごめんなさい! 急いでいたもの、で…」

 

アルティナはその人物を良く知っていた

 

何故ならその人物は自分が付きっきりで看病していた人物だったから

 

「あ、アラタ…?」

 

「アル…?」

 

なんでこの男性(ヒト)は病み上がりなのにフラフラと街を歩いてるだろう

 

「え…えと…、だいぶ体調が整ったから…リハビリも、兼ねて…」

 

助けられなかったとき自分がどれだけ後悔したか

 

看病をしていたとき自分がどれほど心配したか…

 

「あ、アル…?」

 

「…った…」

 

「…え?」

 

アラタがそう聞き返したとき、ぽふ、とアルティナの頭がアラタはの胸元に当たった

 

そして自分の服にしがみつく彼女の手―――

 

「良かった…!」

 

声を押し殺し、涙を流すその姿に戸惑いながら、アラタはしばらく棒立ちだった

 

「…ごめんな、アル」

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