シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜 作:桐生 乱桐(アジフライ)
ストックもこれを合わせて後三つ…
ストックが尽きたら本当に更新速度が落ちます
ほんとに申し訳ないです…
灼熱のバルカローラ 1
ヴァレリア地方北西部に位置するベスティアは、この地方最大の勢力を持つ軍事大国である
だが、帝国軍の侵攻により、国土の大半が戦火に焼かれ、人的被害も多数に上っている
そんな壊滅的な被害を受けたベスティア領内でも、帝国軍に対して、抵抗を続ける勢力があった
領内の情報を集めるべく、戦線は抵抗勢力の拠点に立ち寄り、指揮官との会談に望む
彼の口から語られる、驚くべき情報とは―――
◇◇◇
石窟街ローラン
サクヤたち出迎えてくれたのは、白と黒の翼を持った鳥人[刃九朗]
「よく来て下さった、サクヤ殿。そして皆の衆も。この困難な状況下での援軍は、ありがたい」
「久しぶりね刃九朗。もっと早く来られれば良かったんだけど…。さっそくだけど、状況を聞かせてもらえる?」
サクヤの申し出に刃九朗はうむ、と頷きながら語り出した
「簡単に言えば、ベスティアは今、危機的状況にある。帝国軍の攻撃は、予想以上に苛烈でな。国王ディオクレス陛下は、首都陥落の際に討ち死になされ、歴戦の獣王十二将も、ことごとく生死不明の有り様」
どうやら想像以上に被害は甚大なようだ
「民の犠牲も数知れず、王城の地下深く封印されていたダークドラゴンの体も、敵の手に落ちた」
「やっぱり、ここでも奪われてしまったのか…」
アラタが静かにつぶやく
刃九朗は小さく頷いて
「それに加え、精霊力の低下が原因と思(おぼ)しき干ばつが発生し、そちらの被害も甚大だ」
「大地の精霊力が弱まっている、という事は、この地に棲む炎の精霊王も帝国軍の手にかかった、と見てよさそうですね」
ずい、と龍那が一つ足を進め口を開く
「炎の精霊王の棲みかは、沖合いの火山島、そして精霊王を守るドラゴンは、炎竜ブレイバーンでしたね」
「なら、ともかくそのブレイバーンに会ってみる必要があるな」
龍那の話に式が同意し、言葉を紡ぐ
「と言っても、港と船は帝国軍に押さえられてる。ブレイバーンの棲む火山島には容易に近づく事はできんぞ。しかも、敵将のアルベリッヒとかいう男が、あちこちで生存者を狩り集めていて、そちらへの対応もせねばならん」
アルベリッヒ、という人名に反応したのは一人の男
「…アルベリッヒ?」
リックだ
「今そう言ったか!? どこだ! アルベリッヒはどこにいる!!」
鬼気迫る勢いでリックは刃九郎に歩み寄る
そのリックはこれまで見せたこともない表情を浮かべ刃九郎に詰め寄った
刃九郎はそのリックの勢いに若干たじろぎながらも今ある状況を説明していく
「いや、それが…あのダークエルフの将軍は神出鬼没でな、拙者も動きが掴めず困ってるところなのだ」
「落ち着けよリック。それよりも、先にする事があるだろう?」
たしなめるようにレイジがリックに言うが
「[それよりも]とはなんだ! 俺にとっては、こいつが一番大事な事だ!!」
「黙れ!!」
その言い争いを断ち切ったのはジンの一声だ
その場にいる全員が息を飲む音が聞こえるような錯覚さえ覚えるほどに
「…それ以上無駄な言い争いを続けるなら、今すぐ僕が斬って捨てるぞ」
ギラリ、とジンの目が光った
確実に今、ジンは本気の目をしてた
「…気持ちはよくわかるわ。でも、もう少しだけ待って、リック」
静かにサクヤがそう諭す
どこか納得いかないような表情だけだったが、やがて下を向いて
「…はい」
静かになったのを見計らってリンリンが話を続ける
「…話を戻しましょう。アルベリッヒが、生存者を生け捕りにして、何を企んでるのか。それを探るのが先決ね」
「その人らが無事なら、どこかに集められてるハズ…。刃九朗さん、そう言った場所に見覚えは」
リンリンの言葉を自分なりに解釈し、簡単な推理を述べたアラタは刃九朗にそう問いかける
「ある程度は。だが、当然そこは敵陣の更に後方でな。情報収集も思うように任せん」
「そういう事なら、俺たちが波状攻撃を掛けて、敵の注意を逸らす。その間にそっちは敵陣に潜り込んで、情報を集めてくれ」
フェンリルがそう作戦を提案した
実に的をえた作戦だ
「いい作戦だと思うわ。それじゃあ皆、さっそく取りかかって」
皆が解散し、散っていく中、リックは一人、苦い表情を浮かべていた
◇◇◇
準備を進めてはいるが、まだ決行には至らない
暇になった両儀式はローランの街並みを歩いていた
「…ん」
視界の先にはフェンリルがいた
珍しく天井をぼう、と眺めている
「どうした、ほけっとしてさ」
「ああ…、両儀か」
フェンリルは式に気づくと天井から視線を戻す
「実はな、ちょっと昔の事を思い出していたんだ」
「昔の、事?」
「ああ、そうだ」
フェンリルは頷くと静かに語り出した
「ヴァレリア解放戦線に入るよりも、ずっと前の話だ」
「ここに来る前の話か…。ちょっと興味があるな、良ければ話してくれないか?」
「…そうだな。お前になら、話しても大丈夫だろう」
フェンリルは口元に薄い笑みを浮かべる
「つまらない昔話だが、聞いてくれ」
フェンリルは軽く息を整える
「…スルトの事は知っているな」
「ああ。昔は、お前の同門っていう事もお前から聞いた」
「ああ。その通りだ。俺とスルトは、同じ師匠の下で、暗殺拳の修行に励んでいた。互いに腕を認め、競い合う仲間…」
「…ライバルみたいな関係だったんだな」
ライバル、という単語を聞いた時フェンリルの口元にはまた笑みが見えた
「ライバル、か。そうだな。その言葉が、しっくりくるかもしれん。…俺たちの師匠は、立派な人であったが、その力は無闇に振るってはは良いものではない、としていた」
少しスルトの表情は暗くする
「しかしスルトは、そんな師匠の教えを聞かなくてな。…人の集まる場所へ行き、腕の立ちそうな者を見つけては、戦いをふっかけた。そして、戦った相手を、一人残さず殺してしまった」
スルトは力に溺れてしまった
強くなる自分を試したくて
そしてその力を実感するために、そんなことを繰り返したあげく、戦った相手全てを、殺害してしまった
「任務でもないのに、無闇に力を振るうスルトに、俺や師匠が何度も止めるように注意をしたが、聞き入れることはなかった。…そして、師匠は烈火のごとく怒り、スルトを破門とした」
「…当然だな」
教えに背き、掟を破ったスルトにとってそれは当然の事だ
だが、スルトはそれを良しとしなかった
「スルトはそれに逆上し、師匠に襲いかかった。その時の奴強さは、俺や師匠を、軽く上回っていた」
怒りに身を任すと、時にその力を何倍にも引き上げる
その時のスルトは、まさしくそれだったのだろう
似たような経験が、式にもあった
「止めに入る間もなく、師匠はスルトに…殺された」
フェンリルは顔を俯かせる
その顔には、悔しさが溢れていた
「師匠の返り血を浴びたスルトが、俺を睨みつけた時、俺は動けなかった。…師匠の仇を取らなければならないのに、血の味を覚えた目に睨まれた俺は、その場を一歩も動く事が出来なかった」
「…、」
「そんな俺を鼻で笑い、スルトはどこかへと消えてしまった」
フェンリルは拳を握り締める
「悔しかった…。だから俺は、いつか師匠の仇を取ろうと決意し、一人で更なる修行に打ち込んだ」
しばらく握り締めていた手をフェンリルは緩めて開く
「かつては同じところを目指していたのに、なぜこうなってしまったのか…」
「…、」
対して式は黙ったままだ
「すまない、やはり退屈だったか?」
「そんなワケあるか。…言葉が見つからなかっただけだ」
式は先のフェンリルみたいに天井を仰いで
「オレは、友人もいて、親友もいて、恋人もいる…。裕福な人間だ。師を失った悲しみを持つお前に、なんも言葉もかけられないんだ」
「…そうか。お前は優しいな」
「優しいもんか。オレは…」
「いや、お前は他人の気持ちを思いやる。少なくとも、俺にはない心だ。…やはり、お前にこの話をできて良かった」
フェンリルは純粋な笑みを浮かべて式を見る
「ありがとう式。お前と仲間でいられて、俺は嬉しい。これからもよろしく頼む」
そう言うフェンリルに対し、式も軽く笑みを浮かべ
「ああ、わかってるよ」
そう言葉を返した
少しだが、絆が深くなったような
そんな気がした
◇◇◇
式とフェンリル語り合ってる時、アラタも同様に散歩をしていた
ローナはアミルらと一緒にローランのパン屋のお手伝いをしている
ゆえに今はアラタ一人だ
「お、あの人影は」
視界にエルミナが入ってきた
「エルミナ、どうしたんだ」
アラタの存在に気づくとエルミナはわたわたと手を振って取り乱す
「あ! あ、ありゃたしゃんっ! いらしたのですか!? わ、わた、私は、用事があるので、失礼しま―――」
「あぁ! 待って! 出会い頭で逃げられてしまうとやっぱりツラいものがあるんです!」
思わずアラタはその場で手を伸ばす
(…そうよ、エルミナ。逃げてばかりじゃダメ。ちゃんと男性ともお話ができるようにならないと)
立ち止まった後、エルミナはむん、と拳を握る
そしてアラタに向き直って
「え、ええと…。その、アラタさんは、今日もお元気そうですね」
「あ? ああ…、うん。ありがとう」
世間話やらをするのに定番な入りだ
「…それじゃあ、ご機嫌よう」
まさかの会話終了だった
「ちょ、ちょっとちょっと! そ、その…、もう少し何か話しましょうよエルミナさん!」
「そ、そうですか? で、でも…何を話せば…」
オロオロとするエルミナ
(…むー)
彼女の男性恐怖症は一筋縄ではいかなそうだ
「あ、あの…アラタさん、もしかして怒ってらっしゃいますか? と、当然ですよね。私みたいに、ウジウジした態度じゃあ…」
「え? いやいや怒ってないって。気にしすぎだよ」
「そ、そうでしょうか…。け、けど、私、今だってアラタさんに迷惑かけていますし…」
「エルミナ、迷惑ってのは人にかけちゃいけないのかな」
「へ? そ、それは…当然そうだと思います。何らかの支障がでるかもしれないですし…」
「まあ確かに、時と場合によっては迷惑になってしまうかもしれない。だけど、この場では俺に迷惑をかけていいんだよ」
エルミナはキョトンとした目つきでアラタを見る
「当然、男の人は君にとって怖いだろう? 当たり前だよ。…焦んなくていい。エルミナは、エルミナのペースでいいんだ。ちょっとずつ治していけば」
「…アラタ、さん…」
エルミナの表情に自然と笑顔が戻る
「けど、さしあたっては、目標が必要かな」
「目標、ですか?」
「うん。当面はそれを目指して頑張っていこう。そして最終的には―――」
アラタは一拍置いて間を開けて宣言する
「俺と手を繋いでどこかに行く!!」
「…ええぇぇぇ!?」
思わずエルミナが絶叫してしまった
「わ、わたわた、私と、アラタさんがっ! 手をつなぐ!?」
「最終目標はね、で、とりあえずしばらくは…。…エルミナ?」
なんだか真っ赤なままなのですが
「し、…ししっ、失礼しましゅっ!!」
まさかの撤退
「え!? ちょっと!?」
「すみませーんっ!!」
謝りながら帰られた
「…行っちゃった」
「やれやれ。黙って見ていれば」
「お疲れさまだな、アラタ」
物陰からひょっこり現れたのはアイラとジンの二人組だ
「二人共…、見ていたんですか?」
「全く…、お前、今エルミナを誘惑しただろう。[手を繋いで]などと…! 私は認めないぞ! エルミナが欲しいなら―――」
「アイラ。話がおかしな方へ思い切りズレてる」
ジンに言われるとアイラは顔を赤くして押し黙った
「すまないな。エルミナの男性恐怖症を治す手伝いをさせてしまって…」
「いえ、お気になさらないでください。エルミナが望んだ事なんでしょう?」
それを聞くとアイラは驚いたように
「気づいていたのか?」
「目を見ればわかります。エルミナが本気になって克服しようとしてるのに、俺だけ本気で向き合わないってどうします」
その言葉を聞いたジンは軽く笑んで
「…お前なら、エルミナを変えてくれそうだ」
小さくそう言った
「これからも、エルミナをよろしく頼む」
「だがエルミナはやらんからな―――いた! 何をするジン!」
「お前は、エルミナから早く離れる事だ。過保護なのもいい加減にしろ」
「私のどこが過保護だというのだ!」
「無自覚か!」
言い合いをしながらジンとアイラはどこかに歩いていってしまった
「…さて、俺も頑張ろうかな」
果たして、エルミナはアラタと手を繋いでどこかに行く事ができるのか
正直、今は関係ない話ではあるのだが