シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今回でストック分は使い切りました
次回から本当に更新速度が落ちます

ご容赦を…

※最後に若干修正入れました


灼熱のバルカローラ 3

アラタの斬撃がボーンアーチャーを捉える

 

現在、敵の民間人収容所

 

まばらではあるものの、敵は相当数いるようだ

 

レイジとリックは大丈夫だろうか

 

…いや、二人の心配はきっと無用だろう

 

「アラタ! うえ!」

 

ニューの声

 

振り向くよりも先にアラタは狼奈を上に突き出す

 

ドカッ! と言う音と共に奇襲を掛けようとしていたボーンファイターを貫いた

 

「ありがとう、ニュー!」

 

「えへへ…。ぶいっ」

 

はにかみながら指でブイサインをするニュー

 

その表情に一瞬和んでしまうが、ここは敵の中枢、しかも現在は民間人救出中だ

 

「<アラタ様、私も戦います! 戦力はやっぱり、多い方がいいと思うんです!>」

 

「え、そりゃそうだけど…!?」

 

「<大丈夫です! アラタ様の足は引っ張りませんっ!>」

 

言葉と共に狼奈が輝く

 

カッ! と光ったと思ったら人間体のローナが隣に佇んでいた

 

「アラタ様、これを!」

 

いそいそとスカートの中から一振りの日本刀を取り、アラタに渡す

 

「どこに忍ばせてんだ!」

 

「アラタ様、女の子のスカートの中はいろいろと秘密が溢れてるのです。そんなわけで、背中は守ります!」

 

どんなワケだ、というツッコミを余所にチャキ! と小太刀を構え、アラタの背に自分の背を預ける

 

「まぁ…、任すぞ!」

 

「はい!」

 

力いっぱい頷くローナの声を聞きながら、お互いに敵を斬りつける

 

◇◇◇

 

ローナの動きはとても素早く、まるで忍者のそれのようだ

 

素早い動きで相手を翻弄し、出来た一瞬の隙を突いて急所を斬り砕く

 

その手際の良さはさながら仕事人

 

時に身をひねり、時に相手の体を盾にする

 

地形や相手を利用した戦い方にはアラタが見習うべきところも多々あった

 

「てやぁぁぁっ!」

 

叫び声をあげて小太刀を振り抜ける

 

ザン、と斬り裂かれたボーンファイターは魚を捌くみたいに分割された

 

「ふふふ…! さぁ! 次に捌かれたいのは誰!?」

 

…あれ、キャラ変わってない?

 

◇◇◇

 

だいたいモンスターを斬りつけてきた

 

「アラタ!」

 

右の広間からレイジが走ってきていた

 

「レイジ! 無事だったか!」

 

「ああ、そろそろ皆も逃げ切ったはずだ。そろそろオレたちも逃げよう!」

 

レイジの提案にアラタは頷いて付近で戦闘をしているリックに声をかける

 

「リック! 退き際だ、そろそろ―――」

 

「いちいち指図するな! 言われなくてもわかっている!」

 

近くのボーンファイターを斬り伏せてリックはこちらに走ってくる

 

「ニュー! 君も早く来い! 行くぞ!」

 

「うんっ!」

 

アラタの叫びに呼応してニュー、そしてリックとレイジは出口に向かって駆け出した

 

◇◇◇

 

「…行ったか。まあ良かろう。

ネズミはさっさと追い出すに限る」

 

一人、アルベリッヒの冷笑が映える

 

「これ以上うろちょろされては、迷惑この上ないからな…」

 

◇◇◇

 

あの施設から全力で逃げてきて、ようやく足が止まる

 

あたりは岩肌に囲まれ、合流場所にちょうど良かった

 

「サクヤさん…、ただいま…」

 

肩で息をしながら代表してアラタがサクヤに報告する

 

ちなみにリックとレイジは地べたに座って体力回復に務めていた

 

また、ニューは何故だか全く息が切れていない

 

「お帰りなさい。皆無事ね?」

 

サクヤがリックに視線をやると息も絶え絶えに「はい…師匠…」と小さく呟いた

その様子をサクヤの隣で見ていたジンが苦笑いを浮かべながら

 

「ご苦労だった、三人共。三人のおかげで捕らえられた人たちは皆無事だ。三人に感謝していたぞ」

 

「いや、感謝だなんて…。参ったな、どうも」

 

ジンからそのような言葉を聞くとレイジは照れたように返答した

 

「いやはや、すごいなレイジにアラタは。二人の腕と度胸に適う奴はいないんじゃないか?」

 

ジンの隣にいた義勇兵の一人が口を開く

 

少々唐突で驚いたがどうやらジンに何らかの報告をしにきたようだ

 

「…それからリック。俺は、あんたに言わないといけない事がある」

 

不意に義勇兵はリックに向き直り視線を合わせる

 

「? …なんだ?」

 

「俺は今まで、あんたの噂の事を鵜呑みにしてた。あんたが仲間を見殺しにしてたんじゃないかって」

 

義勇兵はバツが悪そうに視線を背けて

 

「けど、今回の事でそうじゃない。むしろ逆なんだって、思ったんだ」

 

「…? 何がいいたい」

 

「…君も意外に鈍いね。彼はもう、君を[死神]と呼ばないって言ってるんだ」

 

アラタがそう言うとリックは驚いたように表情を変えた

 

「っ!」

 

「いや、俺だけじゃない。仲間の多くが、同じ気持ちだ。俺は、代表してそれを伝えるためと、詫びを入れるために来た。…すまなかった」

 

そう言って深々とその義勇兵は頭を下げた

 

「…リック、良かったな」

 

レイジがリックに向かって笑みを交えて口を開く

 

「あ、ああ。まぁ…な。…レイジ、ありが―――」

 

とう、と言いそうになって「うっ!」と言葉を止めた

 

「? どうした?」

 

怪訝に思ったレイジがリックに向かって聞き返す

 

「何でもない! こっちを見るな!」

 

顔を赤らめてレイジに言い返す

 

「あははー! かおがあかーい! てれてるんだー!」

 

その様子を眺めてたニューが全力で茶化しにかかる

 

「てっ! 照れてない!」

 

その様子を微笑ましく見守ってたアラタとサクヤは口々に

 

「…素直じゃないわねぇ」

 

「ですねぇ」

 

「し、師匠にアラタ、今何か言いましたか!?」

 

「さぁ、ジン。次の作戦を練りましょう」

 

「ああ、わかった」

 

「あ、でしたら収容所でいくつか資料かっぱらって来ました。お役に立つかわからないですが。…ローナ」

 

「<はい>」

 

言いながらローナは人間体となり、スカートはばさぁ、と広げる

 

直後地面にいくつかまとまった紙の束が地面に―――

 

「だからどこに忍ばせてんだっ!」

 

ひっぱたいてやった

 

どうなっているんだいったい

あのスカートの中は四次元空間にでも繋がっているのだろうか

 

ローナは「あうっ。…うぅ…」と言いながらも自分で束を拾ってサクヤに渡す

 

ちなみにリックがなんか言ってるけど全力で無視した

 

「ありがとう。さて、本格的に練るわよ、ジン」

 

「承知した。副隊長も呼ぼう」

 

応えながらジンとサクヤは踵を返して歩き始めた

 

「ま、待ってください師匠! 今なんて言ったんですか!」

 

その様子を苦笑いしながら義勇兵と一緒に、レイジが眺めていた

 

◇◇◇

 

拗ねたリックがすたこら先に帰ってしまったので、現在はレイジとアラタと二人きり

 

ユキヒメとローナを入れれば四人だが

 

さらに言えば、騒ぎ疲れたニューを入れれば五人だ

 

現在、ニューはアラタにおんぶされてます

 

「…、」

 

歩きながら景色を見て黄昏るなんて器用な事をやってのけるレイジを不思議に思ったアラタが聞いてみる

 

「どうしたのレイジ」

 

「…いや、収容所見てたらさ、ローゼリンデを思い出して。…あいつ、今は帝国の側についてるだろ? …あいつがなんで、あんな酷(むご)い事する連中に味方してんだろって、思ってさ…」

 

レイジの顔は悲しげで、どこか儚かった

 

「そんなことするヤツじゃないんだ。…短い付き合いだけど、それだけはハッキリわかる。ローゼリンデは、たとえ殺されたってあんな奴らに味方しない。きっと、操られてるんだ」

 

「ああ。あの時しか会ってないからよくはわからないが、それは俺も思ってた」

 

明らかに目に生気が抜けていた

 

まるで操り人形のように動きが機械的で、言われた事にしか反応を示さない

 

レイジには悪いが、それが初めて会った時の、アラタから見てのローゼリンデだった

 

「…あの優しいローゼリンデが、そんな目に…。あいつ、今どんな思いでいるんだろう」

 

「…これ以上彼女に悲しい思いをさせてはいられないな…」

 

「ああ。それもある。…けど、ただローゼリンデを助け出すだけじゃダメだ」

 

「? レイジ?」

 

「ローゼリンデを助け出しても、帝国のヤツらがのさばってちゃ、また悲しい思いをする人が出来ちまう。だから、完全に平和にするためには、帝国をぶっ潰さないといけない。オレは、そのためにこの世界に呼ばれたんだ」

 

いつのまにか、頼もしいことを言ってくれた

 

「<レイジ…お前…>」

 

ユキヒメもただ驚きに口を開けている

 

刀形態だからよくわからないけど

 

「だいたい、ローゼリンデだけ助け出しても、他の人たちが苦しいままじゃ、あいつは喜んじゃくれない。あいつは、本当に優しいヤツなんだ」

 

レイジが断言した

 

アラタはまだ本当のローゼリンデと会ったことはない

 

だが、彼がこうも言うのだ

 

本当に優しい人なんだろう

 

不思議とそう実感できた

 

曖昧ではなく、確実に

 

「ああ。そうだな…」

 

レイジには、明確な戦う理由がある

 

(…戦う…、理由)

 

 

 

俺に、戦う理由ってあるのかな―――

 

 

 

◇◇◇

 

一方歩くジンとサクヤ

 

「施設全体の大まかな図面に、設置された装置の使い方が書かれてるようだな…」

 

ローナから渡された資料を見ながらジンが言っていく

 

「こっちは、施設建設の命令書みたいだな。指揮官のサインもある」

 

「このサインね? アルベリッヒと…、なるほど…、あの男が…」

 

アルベリッヒの隣に書かれた名前にやはり、という表情をするサクヤ

 

「なんとなくやな予感はしてたけど、伯爵が糸を引いてるとはね」

 

「伯爵? 誰だそいつは」

 

「いえ、こっちの話。気にしないで」

 

「…そうか。お前が言うなら、まあいいだろう」

 

「…ありがとう」

 

ジンの気遣いに感謝しつつ、サクヤは短く言葉を述べた

 

「とにかく、次の行動に移る前に、この辺りの敵を一掃する必要があるわね。一度拠点に戻ってから、掃討作戦を始めましょう」

 

「ああ」

 

その後、掃討作戦が執り行われ、一帯の帝国軍の殲滅に成功した

 

次の目的は火山島のドラゴンだ

 

◇◇◇

 

明くる日の夜中

 

ローランの一角にある生活用水が貯蓄されている場所にアラタはポツンと座っていた

 

戦う理由

 

ハッキリとしてるのはドラゴニア帝国を倒す事

 

戦う理由と言えばそれが該当するだろう

 

戦う理由はそれでいい

 

じゃあこの世界に来た理由とはなんだろう

 

リックは元からここにいたし、レイジはローゼリンデに喚ばれた

 

だが自分はどうだろう

 

フォンティーナの砂浜に倒れてたとアルティナは言ってたが、自分には全く記憶がない

 

それ以前にどういうわけか拾われる前の記憶さえ曖昧だ

 

自分はどこから来て、何者なのか

 

それすらも、曖昧だ

 

「珍しく黄昏てるわね」

 

ざり、ざりと土を踏む足音

 

振り向くとヴァレリア解放戦線隊長、サクヤが自分の後ろに立っていた

 

「どうしたの? 何か悩み事かしら」

 

サクヤはゆっくりとアラタの隣に腰掛けて一つ問いかけた

 

「悩み事…、と言われれば…悩み事です」

 

サクヤに尋ねられてアラタは先ほどまでのことヲかいつまんで話し始めた

 

「レイジは自分の世界からここに来たじゃないですか。…そうなると…俺はどこからここに来たんだろうって思ってしまいまして」

 

「…自分の世界…」

 

サクヤは考えるようなそぶりを見せて少し押し黙った

やがて彼女は口を開き

 

「もしも…貴方の世界がなかったら、どうするの?」

 

「…そうですね。なら綺麗さっぱり諦めて、この世界で生きてこうと思います」

 

「…やけに呆気ないわね。本気なの?」

 

「本気です。自分の世界はわかんないですけど、ここはとても楽しいから」

 

アラタはゆっくりと天井を見上げ

 

「エルミナと料理して、レイジと特訓して、アルと一緒に歌ったり…」

 

そこまで言ってアラタは黙る

 

なんだ? と思って橙子はアラタを覗き込んでみると、自嘲気味のアラタの笑顔があった

 

「アラタ…」

 

「いま考えればこんなに楽しいのに、わかりもしない過去を気にする自分が、馬鹿みたいに見えて」

 

そう言ってスックと立ち上がった

 

「過去より未来(あした)、くよくよするより前を向いて進まないと」

 

それに、とアラタは付け足して

 

「サクヤさんのおかげでもありますし」

 

「え…私?」

 

ええ、とアラタはうなずいて

 

「困ったときは力になってくれるって。今まさに力になってくれてます」

 

「べ、別に私は何もしてないわよ…。ただ相談に乗ってあげただけだし…」

 

「それでもですよ。…いつもありがとうございます」

 

そう一言感謝を述べて一度アラタ礼をして頭を下げた

 

顔を上げた時には先ほどの悩みなど吹き飛んだかのような清々しい微笑みを浮かべて

 

「じゃあ俺戻ります。サクヤさんもあまり無理しないでくださいね」

 

そう言ってアラタは自分の部屋へと足を運んで行った

 

その場にはサクヤが一人、佇んでいる

 

「…アラタ…」

 

そんな優しい言葉を投げかけられたら…いらぬ幻想を抱いてしまうじゃないか

 

ここにきてかつてレイチェルに言われたことが頭の中でめまぐるしく駆け巡った

 

「…ばか」

 

その小さすぎるつぶやきを本人以外に聞き取れるものはいなかった

 

 




ちょっと無理やり感…

しかし後悔はしていない
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