シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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最新話です
相変わらずです

今回は仲良しな三人が集結しますよ



第六章
輝ける光のシンフォニー 1


シルディアの付近にあるとある丘

高低差が多く、高台が多く設置されているその丘はかつてヴァレリア解放戦線が、スルトと戦いを繰り広げた場所である

 

見渡す限り人の遺体と壊れた馬車

わかりやすく言えば残骸しかなかった

 

「…はぁ…えげつない事やってんだねぇ、ドラなんとかってところは」

 

そんな場所に立つ一人の少年

彼は一人の吸血鬼の女の子によりこの世界エンディアスにやってきたのだが、この世界の事がまだわかっていない、だがしかし

 

「ドラなんとかを殴んないといけないのはわかった」

 

実際の惨劇を目の当たりにしてはいないが、この惨状を見てそれだけはわかる

 

「おい、ここにも生き残りがいたぞ」

 

「…ん」

 

ふと背後に現れる数人の人影

数は数えて四人ほど

その内の一人は手に小さいランプみたいなのを持っている

その中にふよふよとなんか人魂みたいなのが浮いている

それもいくつものだ

 

「殺せ。ダークドラゴン様復活のためには恐怖に引きつった人間の魂が不可欠」

「わかってますよ。…さぁって…どうやって殺しますか?」

 

どうやらダークドラゴンの復活には洗練された人間の魂が必要らしい

それも恐怖に染まった、魂

 

「にしても最近殺した女はやけにうるさかったですね」

「あぁ。口を開くたんびにお父さんだの叫んでうるさくてかなわなかった。…だがああいう恐怖に染まった顔こそ最高の材料…しかし、こいつにそれは期待するだけ無駄かな」

 

そう言って一人の兵士が彼を一瞥し、フンと鼻で笑った

 

…だいたいのあらましがわかった

こいつらは様々な場所を歩きわたり魂かなんかを回収する部隊なのだろう

それで、たまに目撃した人間を殺す―――

 

…屑だなぁ

 

思わず直球にそんなことを思ってしまった

どんなにポジティブに見てもこいつらには同情できない

というか同情したくない

頼まれたってするものか

 

奴らが嬉々として反吐が出るほどにイライラするトークをしている中、彼はバッと腰の前に手を持っていきかざす

すると体の内側から顕現するように銀色のベルトが現れた

そして右手を左斜め方向にに突き出し、左手をベルトの右側に持っていく

ゆっくりと右手を左側に、左手を右側に移動させていく

 

 

 

「変身」

 

 

 

呟くと同時右側斜めに動かした手をベルト左側に移動させ、スイッチを押した

 

<ギィン>

 

そんな音がした後に彼の体に変化が現れる

徐々に黒の素体に肩、胴体等にアーマーが出現し次第に顔を仮面が包む

赤い複眼に特徴的な二本の角

 

「…おい」

 

未だにトークしている集団に近づいて適当に、かつそれでいて思い切りぶんなぐる

 

「へきょ!?」

 

そんな変な声を上げ兵士Aは地面に転がり何回か回ると動かなくなった

 

「てめぇ!?」

「てか誰だ貴様!! まさかヴァレリアの新兵器―――」

 

彼はそいつらの言葉を最後まで聞かずに拳を振るう

漫画かなんかで、死んでいい人間なんかいないって見たことがある

彼もそれには同感である

けど、けれどだ

命をモノみたいに扱うこんな奴らは、消えてもいいと思うのだ

 

◇◇◇

 

シルディアから戻ったヴァレリア解放戦線を迎えたのは、遠く離れたリーベリア地方から駆け付けてくれた心強い援軍だった

 

その援軍を率いるのは聖フィリアス王国の姫騎士〝クララクラン王女〟

 

リーベリア諸国はヴァレリアの危機の知らせを受け、彼女を指揮官として遠征部隊を派遣したのである

 

ドラゴニアが引き起こした戦いはこうして大陸全てを巻き込んでいく―――

 

◇◇◇

 

「以上が聖フィリアス国より預かってまいりました戦力の内訳です。派遣隊についてはこちらの書類を」

 

アルゴ砦の会議室にて

リーベリアから援軍を率いていたクララクランが簡単な報告をしていた

その一挙一動にはどことなく気品が感じられる

 

「了解ですクララ姫。貴国を始め、リーベリア地方からの多大なる支援に感謝します」

 

サクヤがそう返すとクララクランはいえいえ、と述べながら

 

「以前リーベリアが危機に陥った際はベスティアから援軍をお送りいただきました。今回はそのお返し、ということですわ」

 

早い話困ったときはお互い様、ということだろうか

そう言った後クララクランの表情は真面目なものへと変わり

 

「それにドラゴニア帝国の拡大は、今やこの大陸全土に広がっています。このまま見過ごすわけにはまいりませんわ」

 

その凛とした瞳には吸い込まれるような魅力がある

さすがは姫騎士と呼ばれるだけはあるということか

 

「けど、いつの間にか大陸全土を巻き込むくらい大きな問題になってたんだな」

「そりゃあね。いつか来るかもとは思ってたけど」

 

そうのんきに呟いたレイジにアラタは同意する

当然ながら想像していなかったわけだはない

しかしいざ目の前にしてみるとそれはそれで実感がわかない

 

「それを言うなら、貴方方は異世界から来てくれたではありませんか。レイジ殿、アラタ殿」

 

不意に姫騎士はこちらに視線を移すと柔和な笑顔を浮かべた

アラタとレイジはお互いに顔を見合わせるとまたクララクランの方に視線を戻す

その後アラタが不思議に思って聞いてみる

 

「…あの自分たちの事を御存じで?」

 

「もちろん。今や知らぬ人などございませんわ。異世界から来られた伝説の剣の使い手、レイジ殿」

 

そして、とクララクランは言葉を続ける

 

「力の暴走により封印されていた剣を引き抜き使いこなした、アラタ殿…」

 

そう語るクララクランの表情は少しだけ明るくなる

というか若干だがテンションが上がってるような気がしている

 

「貴方様方こそ、クラントールの伝説に語り継がれる勇者様なのですね…!」

 

訂正

間違いなく上がっている

 

「え? え?」

「あ…あの…」

 

戸惑う二人を尻目にクララクランはアラタとレイジを交互にみる

 

「なるほど…今までの勇者様とは少し雰囲気が違うようですがそれはそれでまた…」

 

その目つきは真剣そのものだ

悪く言うとマニアみたいな

 

「ちょ、どうしたんだ? 急にそんな目を輝かせて…」

 

レイジにそう指摘されると「あっ」と顔を赤くさせて恥ずかしそうに口元を押さえながら

 

「これは失礼しました…わたくし、勇者様全般に大変興味がございまして…」

 

どんな興味なのだそれは

 

「そ、そうなんだ」と苦い笑いを漏らすレイジと一緒になってアラタも苦笑する

 

こほん、吐息を整えて彼女は続ける

 

「ご挨拶が遅れました。わたくし、聖フィリアス第一王女、クララクランと申します。どうぞお見知りおきを」

 

先ほどとは打って変わって真面目な様子で自己紹介をするクララクラン

その姿は気品溢れる王女である

ただ、ちょっと変わっているのがキズ…いや、それが彼女のいい所なのだろう

 

◇◇◇

 

会議室にてクララクランが挨拶等しているとき

その外ではまた別に再会が描かれていた

 

「あぁ!?」

 

マコトの視線に止まったのは二人の人影

その二人はさっきの大声でマコトに気づいたのか二人は笑顔を浮かべる

忘れもしない親友の顔

嬉しくなってマコトは全力で走って行って

 

「ひっさしぶりぃ!! また会えて嬉しいよノエルん! ツバキぃ!」

 

ガバッ、と二人の間に飛び込むマコト

対してその二人はいつものように、まるで自然な動作でマコトを受け止める

 

「マコト。あんまりはしゃがないの、はしたないわよ」

「けどマコトって感じがするよね」

 

そう言う二人の表情には笑みが見えた

やはり久しぶりに出会った親友に少し緩んでしまうのだろう

 

「二人はどうしてここに? クララさんに呼ばれたの?」

「正解。クララ姫が私たちを呼んでくださったの」

「きっとマコトもいるだろうからって。ね?」

 

ノエルはツバキにそう視線を送る

送られたツバキは「えぇ」と頷いたあとマコトに視線を戻し

 

「それはそうとマコト。戦線の方々に迷惑かけてない? 貴方って昔から―――」

 

う、と心の中でマコトは言葉を詰まらせる

これはツバキのお説教タイムの始まりの合図だ

 

マコトは必死になってノエルに助けてと視線を送るがそのノエルは

 

 

諦めなさい♪

 

 

そんなにこやかな笑顔でも事に返す

あんまりな! と心の中で思いながらしぶしぶマコトはツバキのお小言を聞くのだった

 

◇◇◇

 

「今しがた、リーベリア地方からの援軍が到着したとの報告があったぞ!」

 

ところ変わってドラゴニア帝国居城

報告を受けたバルドルは苛立っていた

 

「ただでさえ負けが続いて、せっかく占領した領土を取り返されているというに…!! これ以上勢いに乗せては、本当に取り返しのつかぬ状況に追い込まれかねん…」

 

バルドルは振り返って声を荒げる

 

「おぬしたち!! 何かこの状況を打破する良い考えはないのか!?」

 

だったらお前が考えりゃいいのに…

そう思わずにはいられないラグナは心の中でそう言った

 

「貴公が作戦に口出ししなければいい。それだけだ。素人が戦に口をはさむな」

 

一番最初に口を開いたにはスレイプニルだ

発言の節々には見えない怒りが込められている

 

「こちらの行動に干渉したうえ、伯爵などという男や無愛想な竜騎士風情を重用するとは…」

 

そう言ってスレイプニルはじろりと首だけを動かしラグナの隣に佇むファフナーを睨むように見た

ファフナーはその視線に動じず、ただ黙ったままだ

 

「貴公の傍若無人な振る舞いが我らの相次ぐ敗退につながっている…そうは思わぬか?」

 

「ったくよう…黒龍教団だか何だかしらねぇがお前らの都合だけで戦えるかってんだ」

 

それに軽く同意しているのは獣人スルトだ

スルトはけっ、と短く息を吐きながら

 

「だいたいダークドラゴンの体は全部集めただけじゃねぇか。お前はそっちの再生に専念してりゃいい」

 

「お、お主たちは私に向かって…なんたる…!! よいかおぬしたち! 私に逆らうということはダークドラゴン様に逆らうということなのだぞ!! わかっておるのか!!」

 

ガッ、と勢いよく声を荒げるバルドル

その声を聞いて下を向きやれやれとうなるスレイプニルとスルト

その二人を代表してかアルベリッヒが口を開いた

 

「…ダークドラゴン様に逆らう気はない。その復活こそ我らの創意。…しかし、能無しばかりのこのありさまでそれが果たせるかどうかすらわからなくなってきたな」

 

しかしいった発言は場を引っ掻き回す発言だった

 

「んだてめぇ! こっちにケンカ売ってんのか!? 上等だ! いつでも買ってやらぁ!!」

 

案外放っておいても自爆すんじゃないのか

そうとすら思えてしまうほどの連帯感のなさ

しかしその空気をなだめようと、伯爵が口を開く

 

「苛立つ気持ちは理解できますがここは冷静になるとき。こんなところでもめていて無意味ですよ」

 

その一言に主導権は伯爵へと移り変わる

 

「確かに我々は敵軍に手を焼いている。逆に敵は援軍を加えてその勢いを増しつつあります。〝シャイニング・ブレイド〟の使い手などと呼ばれるものもいるようですが」

 

コツコツと歩きながら伯爵は続ける

 

「私が見たところこの者は全く未熟。刀の復活さえ封じれば恐るるに足りないでしょう」

 

「ほう」とアルベリッヒが相槌を打つ

 

「そして敵全体を見ても急激に陣容が大きくなったところから内部統制に難航している様子。逆に今こそが奴らを叩く絶好の機会。拠点であるシルディアを落とし、敵の勢いを削ぐのです」

 

伯爵の言葉にハザマは内心で舌を打つ

悔しいが奴の言っていることは事実だ

 

「…ですが、我々の戦力は大きく被害を受けています。攻勢に出る余力などさすがにないと思いますが…」

 

反撃とばかりにハザマがそう言った

しかし心配はいりません、と伯爵はハザマに返す

 

「こんなこともあろうかと、皆様には十分な数の補充兵をご用意してあります。まだいるならば更なる補充、強力な部隊を用意できます。存分にご活用を」

 

「…いつの間に」

 

バルドルの呟きは最もだ

バルドルはおろかいろいろと探っているハザマでさえそのことは知らなかった

 

「…気に入らねぇ、がくれるってもんを断る理由もねぇ。利用させてもらうぜ」

 

「ええ…それとバルドル殿」

 

不意に伯爵はバルドルへと視線を移す

バルドルは若干戸惑ったがすぐに真面目な顔つきになり伯爵に聞き返す

 

「なんだ伯爵」

 

「いえ。そろそろ例の人物を戦いに加えさせた方がいいかと」

 

そう伯爵に言われバルドルの顔がより真剣なものになる

 

「…そうか。ならば次の戦いにそいつを呼べ。しっかり働いてもらわねばな…」

 

そう言ってバルドルは気味悪い笑みを浮かべる

その笑みをハザマとラグナはそれぞれの場で眺めていた―――

 

◇◇◇

 

あくる日の事だった

朝起きて顔を洗い朝の鍛錬をしたあとに朝ごはんの準備も終えて朝食も食べ終わったそんな時

アラタは今日は特にやることもないしローナと特訓か、ニューに付き合って遊んであげようかなー、と模索していた時だった

 

「アラタ! よかったわ! 丁度貴方を探していたの」

 

何やらサクヤが血相を変えた様子でこちらに向かって小走りで駆け寄って来ていた

サクヤはアラタの目の前で止まると少し息を整えて改めてアラタを見る

だが血相を変えるほどだ

何かあったのだろうか?

 

「サクヤさん? 俺を探してって…」

「ええ。準備を整えてすぐに来て頂戴、町はずれの遺跡に不審な動きがあるの。調査に向かうわよ!」

「不審な…わかりました、すぐに支度します!!」

 

アラタは短くサクヤにそう伝えると準備をを整えるべく一度自分の部屋に走っていく

…しかしサクヤが血相を変えるほどって何なのだろう

普段冷静なサクヤが少し焦っているように思えたが、そんな考えを振り払う

今は早く準備をしてサクヤと合流しよう

 

◇◇◇

 

サクヤと一緒にやってきたそこは何の変哲もない遺跡だった

この世界に考古学者でもいたなら歓喜すること請け合いの見た目なその遺跡の入り口付近に、何かがいる

見た目的には卵を反対にして前後左右に変な突起がついていた

 

「…なんですあれ? 妙な機械がいますね」

 

「……」

 

だがサクヤはただその機械を見つめたまま黙っている

その視線にはなぜだかその機械に対する敵意があった

 

「…サクヤさん?」

 

アラタが呼びかけるが反応はない

しばらくアラタも黙ったままその機械を見つめるがやがてサクヤが

 

「まさか…伯爵…!?」

 

「え? 伯爵?」

 

聞きなれないことを口にした

伯爵? なんなんだろうかそれは

 

「あいつらは危険よ! 今すぐに倒さないと大変なことになるわ!」

 

「え? 大変な事って…?」

 

唐突すぎてわけがわからない

見たところ奴らに敵意があるとは思えない…と、言っても味方とは思えない

何よりサクヤがああ言うのだ

事情は分からないが恐らく何らかの平気なのだろう

 

「話は後! とにかく奴らを倒すわよ!!」

「了解!」

 

 

その変な機械は正直言ってあまり手強くはなかった

攻撃は単調なレーザーみたいなものを放ってくるだけだし、たまにその体自体を回転させて突撃してくるだけだ

 

「…っと」

 

放たれるレーザーを避けながら機械を斬りつける

斬りつけられた機械は音もなく崩れ落ち動かなくなる

 

「…あまり脅威になるとはおもえないだよなぁ」

「<アラタ様、油断は禁物ですよ>」

 

ふと呟いたその時に相棒のローナに咎められる

少し新鮮な気分だ

 

「はは…ごめんごめん」

 

背後に気配を感じ取り、振り向きながら両断する

ザン、と両断された機械はごとり、と上半分を落としその機能を停止させる

 

「しかしこいつら、いったい何者なんだろうな」

 

「<それは流石に…。だけどあのサクヤさんが血相を変えるほどですから…大きな戦いの前兆なのかもしれません…」

 

「…もう十分大きな戦いは始まってるけどな」

 

ダークドラゴンとか

 

「…さて、雑談はおしまいだ。残りを片付けるぞローナ」

「<仰せのままに>」

 

◇◇◇

 

最後の一機を破壊して辺りを見回す

どうやらこれが最後だったようだ

 

「…これで最後か。サクヤさん、終わりまし―――」

 

報告をするべくサクヤに視線を向けるのだが、一方のサクヤはとある一点を見つめたまま黙っている

いや、見つめるというよりは睨んでいる、と言った方が適格かもしれない

アラタもつられてサクヤが睨む方向を見る

そこには

 

 

「…やれやれ。苦労して目覚めさせた古代兵器をまた眠らせてしまうとは」

 

貴族みたいな服を着た左目に眼帯をしている男が立っていた

その風貌は見るからに悪人のソレである

 

「伯爵…!」

 

サクヤがそう呟いた

なるほど、あいつが伯爵…

悔しいが確かに伯爵みたいな感じを漂わせている

マッドサイエンティスト、と言ったほうがいいか

 

「まあ構わない。これはテストに過ぎない。この世界で再構築するための道具は整備次第で機能できる。それだけでも十分な収穫だ」

 

「伯爵! 貴方、いったい何を…!?」

 

「…何を、だと? サクヤ、君にはわかっていると思うのだが。まぁ今日のところはいいだろう。いずれまた会う。その時にまた話をしよう。…それでは」

 

言いたいことだけ言ってしまうと伯爵と呼ばれた男は踵を返し歩き去っていく

 

「…なんなんだあいつは…」

 

アラタのその呟きは誰も拾うことなく、ただその場にサクヤとアラタだけが取り残された

その場の空気には、疑問と沈黙のみが漂っていく

 

◇◇◇

 

「あの…サクヤさん」

 

先ほどの男、伯爵について尋ねようとアラタはサクヤに声をかける

しかしサクヤは

 

「…」

 

心ここにあらず

一言で言い表すならそうだった

暗い顔のまま俯いて黙ったまま

明らかにいつもと違う

 

「…サクヤさん?」

 

「…」

 

アラタの呼びかけも意味をなさない

どういうわけか俯いたままなのだ

先ほどの伯爵とのやり取りが原因なのは明白なのだが…

しばらく考えて「よしっ」と意を決し

 

「…サクヤさん!」

 

少し大きな声と共にアラタはサクヤの正面に立って肩を掴み軽く揺すった

軽く荒療治である

 

「…。え? あ。アラタ…」

 

彼の呼びかけにようやく彼女はこちらに戻ってきた

サクヤの表情はきょとん、とした顔でほんのちょっとだけ幼く見えた

 

「よかった…やっと届いたみたいですね。…凛とした貴女が戻ってこないかと思って心配しましたよ」

 

肩に置かれたその手にサクヤは思わず触れてみる

ほんのりと手袋越しに彼の暖かさと自分を気遣う優しさが伝わってくる

その優しさにまた感謝しながら、サクヤは

 

「…えぇ。ありがとう」

 

そう短く言葉を述べた

その言葉を聞いて安心したのかアラタは肩からその手を放す

彼の手の感触が少し名残惜しくなるのを堪えながらサクヤは先ほどの機械について説明を始めた

 

「今戦ったのは、遠い昔に作られた、古代兵器」

 

「古代兵器?」

 

サクヤは頷いて

 

「かつてこの場所には高度に発展した文明が存在していたの。さっきの機械(あれ)、当時の物…」

 

「…まさかその伯爵ってのがその兵器を? …だとしたら奴はいったい…」

 

アラタは腕を組みながら考える

そんな時だ

 

 

 

「…あぁ。どうしよう…」

 

 

 

普段のサクヤからは考えられない言葉を聞いた気がする

 

「え?」

 

「あの古代兵器を放置しておいたら、いずれとんでもないことになる。人々を襲い、大惨事が…」

 

まるで遠い何かを見つめるように空を見ながら

 

「私には、見過ごすことなんてできなかった。古きものを悪用するなんて、許すわけにはいかない」

 

その語り口はまるで昔話をしているよう

 

「古きものの眠る場所はここだけじゃない…まだたくさんの古きもの、悪しきものたちが世界のあちこちに眠っているはず…」

 

その言葉は独り言のように

 

「…私が…私がどうにかしなければ…」

 

確実に背負っている

なにかはわからないが、彼女は背負っているのだ

たった一人で

 

「…ごめんなさい。本当は無関係な貴方まで巻き込んでしまって。…行きましょう、もうこの場所にはいたくないわ」

 

サクヤはそう言うとアラタの隣を通り過ぎて砦の方へ戻っていく

彼女の後姿は儚げで、どこか寂しく見えた

 

「…サクヤさん…」

 

自分が未熟なのは百も承知

彼女の力に正直対してなれないことだってわかっている

だけどこのまま行かせてしまったら後悔するような気がしてならなかった

だから―――

 

「サクヤさん!」

 

大声で彼女を呼び止める

その声を怪訝に思ったサクヤは頭に疑問符を浮かべながら振り返った

 

「…俺は頭が悪いんで、難しいことはわかんないです」

 

振り返るのに合わせてアラタ自身もサクヤの方に向き直り、彼女の方に歩み寄る

表情に小さい微笑みを浮かべながら

 

「…だけど、これだけは胸を張って言えます」

 

ずいとサクヤの目の前にきて彼は言葉を続ける

 

「俺は、何があってもサクヤさんの味方です」

 

「…アラタ…」

 

「話さなくても結構です。…だけど、その…愚痴とか言いたくなったらいつでも読んでくださいね。もちろんそれ以外の用事でも大丈夫ですけど」

 

そのうち言っているのが少々気恥ずかしくなったのか、彼はうっすらと頬を赤くしながら頭を掻き始めた

 

「…そ、その…先戻って紅茶用意してきますね」

 

恥ずかしさがピークになったのかアラタはそう告げると足早に砦の方へ戻っていく

その後ろ姿を眺めながらサクヤは苦笑いが零れた

励まそうとしてくれる彼の優しさは素直に嬉しかったし、詮索しないでいてくれる気遣いも有難かった

 

「…だけど」

 

これは自分の使命なのだ

これ以上無関係のアラタを巻き込むわけには―――

 

「まだ片意地を張るつもりかしら」

 

後方から聞きなれた声

その声の主はサクヤは知っている

 

「レイチェル=アルカード…」

 

黒いドレスを身に纏ってナゴが変化した傘を差しその付近にはギィという生き物が飛んでいる

 

「…何の用かしら」

 

「気づいているくせに。はぐらかす気かしら」

 

レイチェルはくるくると回しながらサクヤに歩み寄る

 

「貴女だってわかっているはずよ。その問題は貴女一人でどうにかなるものじゃ―――」

 

「わかっているわ。…だけど甘えるわけにはいかないの」

 

正直言ってわかりきっていた

サクヤは言い出したら聞かない人だ

本当に…無茶をする

 

「…そう」

 

レイチェルは短くそう言うと薔薇と共にその場から消える

辺りに巻き散る薔薇の花弁

その一枚を手に取り、彼女はじっとその花弁を見つめた

 

「…わかっているのよ」

 

誰もいないその場所で彼女は改めて呟いた

まるで自分に言い聞かせるように

 

◇◇◇

 

「元ある世界におかえり」

 

男の手に持ったランタンを破壊し中に浮遊している魂みたいなのを解放する

彼の周囲にはぐったりと倒れ伏したドラ何とかの兵士と思わしき人物たち

 

「…さて。こっからどうするかねぇ」

 

無駄に清々しい青空を仰ぎ見ながら彼は一人考える

それと同時に変身を解除しまた人間の姿に戻る

だが考えるのはいいがどうも何にも浮かばない

 

「…ほぉ。まさか斯様な場所で私と似たような境遇の者と会えるとは」

 

後ろに人の気配がした

振り向くと白いドレスの幼女と全身白い姿に面を被った異様な男が立っていた

 

「…コスプレかなんかか」

「そう面と向かって言われるとムカつくわね」

 

白い男の隣にいた幼女がそう言った

瞳が赤く、整った顔立ち

間違いなく美少女、いや美幼女か

 

「一つ聞こう。貴公はどこに向かっている?」

 

不意に白い男がそんなことを聞いてきた

怪訝に思って彼は

 

「なんでそんな事を聞くんだ?」

「いや、少しこの物の怪との二人旅にも刺激がほしくなってな」

 

白い男は幼女に視線のようなものを送りながら仮面の中で笑みを作ったような気がした

幼女はフン、とそっぽを向いて拗ねる

 

「…まぁ目的はないよ。ちょっとヴァレリアなんとかってとこに行ってみようかな、とは思っていたけどさ」

 

「ほぅ。奇しくも目的は似たようなものか。貴殿さえよければともに行かぬか? 無論、よければだが」

 

そう言われて彼は考える

よく考えれば彼はこの地についてあまり詳しくはない

なら先にこの世界に来ていそうな二人に案内してもらった方がいいのではないか、と考えた彼は快くそれを承諾する

 

「ならば名を名乗ろう。私はハクメン…まぁ、この物の怪がつけた名だがそう呼んでくれ」

「私はレン。よろしく。…それにしても貴方、あの人に似てるわね…」

 

二人の自己紹介を聞きながらやっぱり名乗った方がいいのだろうな、とまた考える

しかし本名などを名乗ってはなんだか混乱させてしまうのではないか、と考えた彼は―――

 

 

 

「俺は…クウガ。クウガとでも呼んでくれ」

 

 

 

 




今後ともよろしくお願いします

…アークはまだ先になるかな
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