シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜 作:桐生 乱桐(アジフライ)
案外早くできてしまいました
相変わらずですけどね
今回だいぶオリジナルな感じです
特にエルミナが
ではどうぞ
今日も今日とて、木刀同士がぶつかり合う音が砦の中で響きあう
相も変わらず式は顔色変えずエルミナの攻撃を捌きながらその彼女はまたその鋭い一撃を叩き込む
「…、」
そんな二人の稽古の様子をレイジはただ眺めていた
絶望的なこんな状況だからこそ、何かしていなければ気がまぎれないのだろう
実際、ここに戻ってきた当初のエルミナはひどく憔悴していた
だが今のエルミナはとても活動的で、積極的になったとさえ思える
レイジも軽く手合せを頼まれて戦ったがその後に式との模擬戦を見るとその厳しさがわかる
「…彼女の指導は厳しいな」
ぼそりと呟いたユキヒメの一言にレイジもうなずく
その言葉通りに数日前に比べるとエルミナの動きがけた違いによくなっている
継続は力なり、ということか
「レイジも式に教えてもらうか?」
「やめてくれ。いくらなんでもあんな稽古やったら死んじまうよ」
苦笑いと共にユキヒメに返す
あれほど激しい稽古を連日続けていたらいくらなんでも身が持たない
「どうやら、エルミナも前を向けるようになったみたいだな」
そんなことを言いながらこちらに歩いてきたのはジン・キサラギだ
あまり寝ていないのか、若干目の下に隈がある
しかしよほど注意深く見なければそれは特に気づくようなものではない
「キサラギさん」
「フ…あんなところ、アイラが見たら仰天しそうだな」
「はは…そうですね…」
今現在行方不明であるアイラがここにいなくてよかったと思う
正直彼女がいたらえらいことになりそうな予感がする
「…しかし、ドラゴニアの連中、面白がってるんですかねぇ…」
「可能性は高いな。じっくりといたぶって、俺たちを恐怖させようとしているのだろう」
包囲されて約一週間ほど経つ
その気になればいつでも殲滅出来るのにそれを実行しないのはおそらくこの状況を楽しんでいるのだ
ダークドラゴンを復活させるのは上質な恐怖に満ちた魂なのだから
「…くそっ…ドラゴニアめ…! アラタの為にも、絶対に諦めぇぞ…!」
ギリ、と固く拳を握りしめる
あいつは今でも行方知れずのままだ
一体どこで何をしているのか、まだ分かってはいない
もしかしたらもう彼は―――
思いそうになったその考えを振り払い一つ息を吐く
「くよくよしても仕方ない! キサラギさん、酒場に行って戦況を聞きましょう!」
「ふふ、気合入ってるなレイジ。わかった、行こう。おい、二人とも! いったんそこでストップだ」
ジンの声がかかると同時、式とエルミナが稽古をやめてこちらに走ってくる
こちらの方まで来ると式が
「酒場に行くのか」
ぜぇ、ぜぇ、と息を切らすエルミナの背中をさすりながら聞いてくる
息を整えるエルミナに多少心配しながらもジンはそれに頷いた
「あぁ。情報は大事だからな」
「わかった。…エルミナ、大丈夫か?」
「は…はい…、らい、じょうぶです…」
正直あまり大丈夫そうではなかった
ふぅ、と短く息を吐いた後式はジンに
「少し遅れる。先に行っててくれ」
「わかった」
なんだか式も師匠っぽさが板についてきたような気がする
その光景ははたから見ると姉と妹
背中をさする式とけほけほと可愛い咳をして息を整えエルミナ
こんな状況の中でも微笑ましくなる光景だった
◇
「…あ、レイジにジンさん…これから酒場に?」
酒場へと行く道すがらアルティナと合流した
その手には報告書のような紙の束がある
「あぁ。アルティナも行くのか?」
「えぇ。フェンリルさんに報告に行かないと。…悪い知らせばかりだから、気が重いけど…」
そう言ってアルティナは少しだけ俯いた
そんな彼女の感情に呼応してかアルティナ自身の耳も垂れ下がってしまう
「…それでも、行かなければなるまい。行こう、レイジ、アルティナ」
◇
「状況を報告します」
酒場に入りアルティナが報告を始める
その言葉の後アルティナは手に持った報告書に視線をやり
「砦の西側で、守備隊が苦戦中。北側もです。救援を求めていますが、どうしましょう?」
やはりどこもドラゴニアとの戦いは激しいらしい
一度崩されたこの状況をひっくり返すのは難しいようだ
「そうだな…。誰か! 守備隊に伝令を。時間はかかるが必ず助ける。絶対にあきらめずに持ちこたえろってな」
しかしそれで諦めるようなものたちでもない
最後の最後まであがくのが人の個性だ
「気休めにもならん返事じゃな。…まぁ、ほかに答えようがないから、仕方ないが…」
「ついでに言うと、東も西も似たような状況よ。兵力も食料も余裕なし」
ミスティに付け足すようにリンリンが口を開く
言葉だけ聞くなら完全に絶望的である
「…一方的だな。この状況」
そこにエルミナの休憩が終わったのか彼女と共に式が酒場に入ってきた
「…外にはアルベリッヒの奴がいるってのに…俺たちはただここで耐えるしかできないってのか…!」
ガリ、と歯を食いしばりながらリックがつぶやく
その悔しさは砦全員が感じているものだ
このまま何もできずにおわってしまうのか
そうこうしている内に、ローゼリンデもあいつらに利用され続けてしまう
「…どうにかして外と連絡が付ければな」
「はい。それができれば、何とか打開策も考えられるのだしょうが…」
そんなジンと龍那の声にが即座に返した
「いや、それはないな。そんなの出来たらとっくにオレが行ってるさ。けど包囲網は厳重、抜けるなんて無理に近い」
「…そう、ですよね…。あの…包囲網では…」
「…、アイラ様…アラタさん…」
「…ムラサメ…」
その台詞に過剰に反応したのはアルティナとエルミナ、そしてユキヒメである
三人とも涙こそ見せなかったがそれでも辛そうに表情を歪ませた
それに気づいたレイジは慌てた様子で式に近づいて
「オイ式! なんてこと言うんだ」
その言葉を言われて式はハッとなる
それは今行方不明となっているアイラ、ラナ、そしてアラタとローナの生存を否定することと同じだったのだ
今まで生きているはず、ということを信じて疑わなかった三人にとってその発言はあまりにも残酷だった
「…悪い。無神経だった…」
流石に口が過ぎた
少し考えたらわかる事だろうに…!!
「…あれ? みんなどうかした?」
そんな淀んだ空気をぶち壊すように明るい声が響いた
こんな明るく、かつ、人懐っこい声色を出せるのは一人しかいない
「…え!? 姉さん!?」
そして戻ってきたのは彼女だけではなかった
「エルミナ。ごめんなさいね…心配かけて」
「あ…アイラ様!!」
あまりにも唐突に、それでいてフラッと帰ってきたものだから驚いた
おまけに二人とも怪我と言ったものはなくピンピンしている
「…二人とも、どこに行っていたんだ」
酒場を代表しジンが聞いた
「ちょっとね。考えがあってルーンベールまで。それと、ベスティアとフォンティーナとか」
さらっとすごい事を言ってのけた
それ以前にあの包囲網を一体どういって抜けたというのだろうか
そんな疑問を感じ取ったのかラナは笑顔のまま
「どってことないわよ。あたしらそういうの得意だし。あ、そだ。それより聞いてみんな」
思い出したように周囲を見渡しながらその明るい声をみんなにふりまいていく
「ルーンベール、ベスティア、フォンティーナの各拠点はここより包囲が手薄だったの。今はどうにか援軍が出せる状態になってるわ!」
「ただ、今までの混乱で連携がうまくいってなかったからな。私とラナで話をつけてきた」
そう言い終えたラナの表情はまた笑顔だったし、そんなラナを見てアイラは苦笑いを浮かべていた
つまりは、だ
「…まさかフォンティーナとルーンベール両国の女王が包囲を突破し、伝令を…」
ジンの呟きに変わらない笑顔でラナは
「そうよ? 問題かしら?」
「…無謀すぎて言葉が出ねぇよ」
笑いながら式が二人に向けてそう言った
冷静に考えればそんな事あり得ないことである
何とも行動的なのか、それとも本当に阿呆なのか
「…まぁ。うちの姉のすることですから」
「あぁ。納得」
「ちょ、なんかヒドイ!!」
ガーン、となるラナを放置し話を続ける
「で、他国の人らはなんて」
そうジンに聞かれたアイラは「あぁ」返事をしながら
「それぞれの拠点からシルディアに向けて救援隊が出た。夜明け前には砦の外に集結するだろう」
意外にも進軍スピードは速かった
普通なら明日に来ても十分に早いレベルなのだが
「あぁ。あちらこちらでレイジが危機だ、アラタが危ない、と言ったらみんなより気合いを入れてくれてな」
「え…? 俺と、アラタの為に…?」
その力は意外に身近な所にあった
その原動力は今ここにいるレイジと、どこかにいるアラタの存在によるものだったのだ
「どこでもかなりの人気だったぞ?」
「そうそう!! アラタだって今行方不明なんだって話したら、少数精鋭の捜索隊までできたんだから」
「…そう、だったのか。…流石に、その照れるな…」
それに今アラタだって捜索されている
それだけで彼の生存確率が上がったようなものだ
「それとだジン。途中にアイツの部下に会ったから、アイツにも頼んでおいたぞ」
「あいつ…? あ、アイツか…」
よくわからないがジンが少し項垂れる
なにかやな思い出があるのだろうか
そんなジンの俯きを無視しアイラは続ける
「ともかく、増援隊は夜明けと共に一斉に攻撃を始める。その時は砦からも打って出てほしい」
「…。よし。フェンリル」
立ち直ったジンがフェンリルに向かって指示した
「あぁ。各守備隊に連絡、何としても明日まで持ちこたえろ。そして明日、夜明けと共に反撃を開始する!」
ともかくこれで反撃の準備が整った
あとは時が過ぎるのをただ待つのみである
それから、とフェンリルは続け
「レイジ、明日の出撃はお前が指揮を取れ」
「えっ? 指揮を…ですか?」
急に言われて少し戸惑うレイジ
そんなレイジに式は言葉を投げかける
「案外いいんじゃないか? 明日の救助隊、みんなお前やアラタの為にくるんだ。あいつは行方不明で捜索中だけど…。それでもお前がいればみんなのテンションも上がるだろう」
「…そっか…」
そう考えればそれも一理あるかもしれない
みんな自分の為に来てくれるのだから一人だけ後ろにいるわけにはいかない
「わかりました! 明日の反撃、先陣に立ちます!!」
そう元気にレイジは言い、酒場の空気が徐々に上がっていく
これなら、いける
古代兵器だろうが、なんだろうが蹴散らせる気がする―――!
そんな酒場の一角の隅の方に一匹の白い猫がいた
(…なるほど。なら私らも手伝わないとね…)
小さくにゃあ、と鳴いてその白猫はそそくさとその酒場を後にした
◇◇◇
人気の少ない森のなか
そこに二人の人影がいた
一人はクウガ
どこからか調達したのかサングラスをかけている
もう一人はハクメン
彼は一本の木に背中を預け微動だにせず動かない
「…しっかし、レンはどこに行ったのかね」
ボソリとクウガは呟いた
三人目の同行者であるレンは情報を集めてくる、と言って砦に行ったきり戻ってこないのだ
まぁ彼女なら白猫モードになれるので心配はないだろうが
「心配か?」
突如口を開いたハクメンに驚きながらもクウガは返す
というか起きてたのか
完全に寝入っているものと思っていた
「そりゃあね。仲間なんだし、心配はするだろうさ」
むしろあそう考えるのが普通なのではなかろうか
それともハクメンにはそういった仲間はいないのか?
「アンタは違うのか?」
「…どうだかな。私には仲間というものはいない。久しくこういった状況だから、あまりわからなくてな」
そう言ったハクメンの横顔はどことなく物悲しく見えた
横顔をと言っても彼はお面を被って表情がわからないのだがそれだけはなんとなくの雰囲気だけで悟れた
「あら、なんかシリアスね。もうちょっと遅く来た方がよかったかしら?」
木々の間を潜り抜けて件のレンが戻ってきた
案の定怪我なくクウガの心配は杞憂だったようだ
「いや…問題ない」
先はどの話を切り上げるようにハクメンがレンに応答する
そんな反応にレンは少し膨れながら先の砦てで聞いてきた話をクウガとハクメンにし始めた
◇
「ほぉ? 各国の援軍が間に合うのか」
レンの話を聞いたハクメンは手を組みながら大きくうなずいた
「んで、その行動力の源は、勇者さまと…封印された刀を扱う男、と」
結構慕われているんだなぁ、とクウガは思う
自分の分身ながら少し誇らしい
「…なんであなたが若干ドヤ顔してるの?」
「え!? そ、そんなことないぞ」
いつの間にか顔に出ていてしまったらしい
妄想癖だとか言われると死にたくなるので全力でそれを否定する
「ならば我々が動き、その行動をより円滑に進めるが吉、だな」
「確かに。その道に魔物やドラゴニアの先兵がいないとも限らないからな…」
もしかしたらその進行上にドラゴニアが潜んでいるかもしれない
せっかく掴んだ反撃のチャンスだ、そんな事でまた諦めてほしくなんかない
「…なら、如何するの?」
小さい微笑み交じりでレンが聞いてくる
当然ながらその答えは決まっていた
「行くぞ。援軍各国の進行ルートにいるであろうドラゴニアやらを排除する」
「おうよ。誰がどこだ?」
「言うと思った。男って直情的ね。嫌いじゃないけど」
意見合致
そうと決まった彼らは各国の援軍の手助けをするべく動きだす
レンはルーンベール、クウガはベスティア、ハクメンはフォンティーナへと
◇◇◇
「…ところで、だ」
作戦会議も終わり、来るべき早朝へと備えるべきそんな時、アイラがエルミナに向かって口を開いた
その一言にエルミナと式はビクリ、と身体を震わせる
「エルミナ。見たところ痣みたいなのがないか? どこかで転んだとか?」
優しく問いただすアイラの声色
その声色が優しいぶんエルミナは口をもごもごさせる
「え…えっと…その…」
なんて言えばいいのだろう
まさか正直に〝鍛えてます〟なんて言えない
言ったらほぼ確実に式と稽古させてもらえなくなる
「エルミナ」
おどおどしている様子のエルミナに式の声がかけられた
そしてその声色は明らかに稽古をするぞ、的なニュアンスだった
まさか、アイラの前で行うというのか
「…行くぞ。準備しろ」
「準備? おい、いったい何の…」
「アイラ様」
意を決したエルミナはアイラに言う
「…ごめんなさい」
そう短く告げると彼女は木刀を持って今しがた出て行った式の後ろをついていく
そうだ、いくら隠してもこればっかりはいずれ必ず発覚する
ならいっそ同等と行ってやろう
◇
アイラは今目の前で行われている光景に唖然とした
一体何をしているのだろう?
「うあっ!?」
式の木刀がエルミナの肩を捉える
しかしエルミナはそれに耐え式の二撃目を防いだ
「…成長したな」
「毎日、やってますから!」
その一言を聞いた式はフッ、と笑みを作る
その表情は稽古であまり見せたことのないニヒルな笑顔
「…あんがい師匠も悪くないな」
そう呟いたあと式は一歩後ろに下がると大きく木刀を上に構えた
これは唐竹割りか、と思ったエルミナはすぐに木刀を横にしてその一撃を防御しようと―――
「うぐっ!?」
しかし痛みを訴えたのは全く予想していなかった場所
それは腹部だ
その痛みが式が放った蹴りだと認識するのに時間がかかった
「刀振りかぶったからって、斬るとは限らないぜ?」
そう言った式の顔はいじらしく笑っていた
その笑みに思わずエルミナも笑って返す
「…なぁ、ジン、エルミナは、なにをやっているんだ?」
「見てわからないか。特訓だ」
「特訓!?」
予想通りの反応が返ってきた
過保護な彼女もこうまで来ると清々しい
「なんでエルミナがそんな事してるんだ! そんな事しなくても私やジンが…!! いや、それ以前にエルミナには私が暇を見て特訓をしてたはずだ!!」
「だがそれは彼女自身は強くはならない。僕たちが来るまでの時間稼ぎになればいいと思っていたらしいが、毎回必ず来るとは限らないだろう?」
そもそも来れるなんて保障なんてどこにもない
アイラの特訓は確かに技術は向上するが、精神面は強くはならないのだ
「で、でもっ!!」
「いい加減にしろアイラッ!!」
ジンに大声にアイラは思わずビクリとした
ジンの表情にはわずかばかりの怒りが見て取れる
「お前は過保護すぎる! エルミナに甘すぎる! そんなことじゃあいつまで経っても彼女が前に進めないだろう!! 彼女の成長をお前が止めてどうするんだっ!!」
グサリ、と心にジンの言葉が突き刺さった
それは今まで散々言われてたことだった
「…そんな事では、ダメなんだ。それにな、アイラ」
言いながらジンは式と稽古をしているエルミナの姿を見る
木刀を振るっている彼女は記憶にあるエルミナの動きより明らかによくなっているのだ
「彼女との訓練は、エルミナ自身が望んだことなんだ」
「…え?」
それは彼女自身の意思
今まで転んだだけ涙を見せていたり、犬に吠えられていただけで泣きそうになっていた彼女からはとてもじゃなかったが想像できなかった
「これでもまだ、お前はエルミナに歩みを止めるなというのか」
「…いや」
言えるわけないじゃいか
今まで自分はエルミナの事を下に見すぎていたのかもしれない
私が守ってあげなければ
何時の間にか出来ていたそんな使命感に囚われて、知らず知らず彼女の前に壁を作っていたのだ
守っている、と言い聞かせてその実彼女を束縛していた
「…エルミナは、一人で歩いていけるのだな」
「…アイラ」
いろいろと吹っ切ったみたいだ
アイラの横顔には、どことなく寂しさがある、しかしその表情は良い笑みがあった
「…よし」
そんなタイミングを見てか式が特訓を切り上げた
エルミナは式に一つ礼をするとアイラの下へ駆けていく
「アイラ様!」
「…エルミナ?」
どうしたのだろう、と思いながらアイラは聞き返す
その後にエルミナは深呼吸をしながら息を整えて
「…私、いつかアイラ様やジンお兄様のお隣に立つにふさわしい人になってみせます! だから…! だから私を、見守っていてください! 絶対に、強くなりますから! アラタさんや、アルティナさんを守れるくらいに、強く!」
そう言ってエルミナはアイラと見た
エルミナのその瞳はまっすぐにアイラを捉える
その瞳に、どこかアイラは引き込まれていた
本当に、強くなった
「…あぁ。期待しているぞ、エルミナ」
だからアイラもそれに答える
もう彼女を止めるようなことはしない
これからは彼女を後押しするために
そう言ってアイラは優しくエルミナの頭に乗せる
乗せられたエルミナは本当に輝いた笑みを浮かべて
「はいっ!」
そう元気よく返事した
◇
「…結果オーライだな」
「あぁ。一時はどうなるかと思ったが」
そんなやり取りを少し離れた位置でジンと式は眺めていた
じゃれあう二人を見てほっとする
その姿は仲睦まじい姉妹のように
「…、」
そう考えると少しだけやきもちに似た感情が湧き上がる
自分には幹也という恋人がいるにも拘らず、だ
「なんだ、妬いているのか?」
そんな式を見てジンはくすくすと笑いながらからかうように呟いた
当たらずとも遠からず、そんな事を言われて思わず
「ば、馬鹿言うな。オレが女に対してそんなの湧くわけないだろう!」
「顔を赤くして言われても説得力ないぞ」
「―――! う、うるさい!!」
これ以上続けてもからかわれるだけだ
「ふんっ」と言いながらそっぽを向く式にジンは思わず笑みを零す
けど式は満更でもない様子で本当に小さく呟いた
「…
そんな言葉が吹き荒れる風にかき消され、地面の砂が空へと舞いあがる
戦いは明日
そんな出来事も思い出にしながら、時間は流れていく―――