シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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めっさ遅れました
申し訳ないです

理由としてはCCCとセブンスドラゴンにかまけてて全然執筆に割く時間がなかったからです

…ほんとごめんなさい

今回は若干のキャラ崩壊があるかもです
特に終盤のローナとサクヤの会話が

ではどうぞ


混沌のセレナーデ 4

翌日の事である

 

つい先日のインデックス大食い事件から一夜明け、アラタが最初に目にしたのはレイジとリックだった

 

「また一人でいんのか? 一緒に戦う仲間なんだからもう少し打ち解けても…」

「大きなお世話だ。俺はお前とは違う、そんなものなくとも問題なく戦える」

 

相変わらずリックのレイジへの態度は変わらない

…潜入して人質を救出したとき少しでも軟化したと思っていたのはやっぱり勘違いだったのだろうか

 

「それに俺には、アミルやエアリィとの固い絆がある。余計なお世話だ」

「…、」

 

レイジは顔には出してはいないものの、とっつきにくそうな表情をしている

この戦いに勝利するにはやはり仲間との絆が必要だ

それはわかっているのだが、当の本人が拒絶してるとなるとどうしようもない

 

「おはよ、レイジ、リック」

「お? おお、おはよアラタ」

「…ふん」

 

レイジは挨拶を返してくれるがリックにはこちらを一瞥したあと小さく鼻で笑われた

…いや、これでもだいぶ打ち解けた方だ

入った当初は鼻で笑いもしなかったのだから

うん、仲良くなっていると信じたい

とアラタがそんな独白しているとき、だ

横合いからアミルとエアリィがこちらに向かって大急ぎで走ってきた

 

「リック!! レイジにアラタも、ちょうどよかった…!」

 

こちらの方で足を止め、肩で息をしながらアミルがそう言った

慌ただしい様子に何かを感じ取ったのかリックは

 

「どうしたんだ? 二人とも。そんなに慌てて…」

 

リックのその問いに先に息が回復したエアリィが声を上げる

 

「大変なの! 近くの村にモンスターが迫ってきてて…! このままじゃ、村が襲われそうで…!」

 

「なんだって!? そいつは一大事だ!」

「あぁ、助けに行かないと!」

 

このままではまた一つ、多くの犠牲が出てしまう

一つの、それでいて大きな目標ができたとき、意見が一致する

 

「あぁ、そうだな!」

 

こういう時のレイジとリックは抜群にコンビネーションがよくなる

…案外絆が深まるのも早いかもしれない

 

 

今回は神速を貴ぶ

あえてメンバーを三人だけに絞り、モンスターが村に到着する前に遭遇する必要があったのだ

 

「よし、何とか間に合ったな…!」

<うん、何とか追いつけたみたい…!>

 

その甲斐あってかモンスターが村を襲撃する前に追いつけたようだ

 

「奴らをこれ以上、近づけさせるわけにはいかない。この場ですべて斬る。…できるか? レイジ、アラタ」

 

そう言ってリックはまっすぐとこちらを見やった

それは純粋に、こちらに同意を求めるかのような、それでいて確かな信頼を感じた気がした

リックの視線にレイジはにっ、と笑って

 

「俺たちがいるなら、何にも問題ないだろ?」

「あぁ。むしろ大船に乗った気でいてくれて構わないさ」

 

そう言ってそれぞれの獲物を構え、モンスターの集団を見据える

そんな二人にふっ、と小さく笑みを浮かべた後に

 

「そうだな…」

 

そう親しみを込めて、呟いたような気がした

恐らく本人も気づいてはいないだろう

 

「レイジ、リック、…敵に気づかれた。けどまぁ、大丈夫だよな?」

 

杞憂ともいえるその疑問を口にした

帰ってきた返事は何とも想像しやすいものだった

 

「あぁ!」「おう!」

 

 

その後の事は想像の通りである

アラタが斬り、レイジが砕き、リックが穿つ

 

三者三様のコンビネーションの前にモンスターの隊群は瞬く間に蹴散らされていった

特にレイジとリックの連携は凄まじいもので戦闘途中だというにも関わらず、見入ってしまったほどだ

以前ならばこういった連携はおろか隣に立つこともなかったであろう二人がこうして背中合わせに戦うという状況こそが、あり得ないことだったろう

とどのつまり、無意識化でリックはレイジの事を認めているのだ…と、そう信じたい

 

「ふぅ…なんとか皆倒せたか…」

 

腕で額を拭う仕草の後、レイジがそんな事を呟いた

 

「うん。よかった…」

 

その光景に安堵した様子でエアリィが呟いた

しかしその傍らにいたリックはどうも苦い顔をしている

 

「…どうしたんだ? リック」

「…浮かない表情だな?」

 

リックは少しこちらに向かって視線をやったあと、彼は独り言のように呟き始めた

 

「あの時も…こんな風に敵を退けていたら…」

 

リックが言うあの時、とはきっとクラントールでの出来事だろう

その呟きを聞いたと同時、レイジが顔を曇らせた

その中でアラタはただ一人、表情を変えなかった、否、変えられなかった

あの時のクラントールにいなかったアラタには、励ますことも、慰めることも出来はしない

何も知らない自分が安易に口にしたらそれだけで怒りを買うだろう

だからアラタは、そのまま事の成り行きを見守るしかなかった

 

「リック、気にしないで…」

 

そんな沈黙を破ったのはアミルの言葉だ

優しい声色は辺りに巻かれた暗い空気を払拭していく

彼女に続いてエアリィも言葉を紡いでいく

 

「そうだよ。…私たち、今でもこうやって一緒にいられるんだから」

 

「…二人とも」

 

リックの悲しみを理解してやれるのは誰よりも彼の事を理解(わか)っているアミルとエアリィだけなのだ

 

「だから…あんまり自分を責めないで」

「私たちは、今がとっても幸せだから」

 

「…そう言ってくれるのは、すごく嬉しい」

 

「リック…」

 

「だけど…俺はまだ自分を許せない。…許すことができないんだ」

 

しかしリックは彼女たちの言葉をやんわりと否定した

止まったままなのであろう、彼の中での時間は、まだあの時のまま

 

「時間がほしい。…もうしばらくすればきっと…、〝イマ〟を受け入れることが出来ると思う」

 

「リックの…イマ」

 

囁くようにエアリィが呟く

それがいつ来るかなど分かる事ではない

それでも、いつか前みたいに過ごせるのなら、わずかでもそれは彼女たちにとって希望なのだ

 

「…そっか。うん! 待ってるよ、リックが〝イマ〟を受け入れるようになるまで」

 

アミルはそう言ってエアリィと顔を見合わせる

そしてエアリィも笑顔を作ってリックを見つめた

それだけで、リックの心は救われたことだろう

 

「…あぁ、ありがとう、二人とも」

 

そう呟いたリックの表情はどことなく優しいものだった

 

「そろそろ、帰るとするか」

 

「あぁ。皆が待ってる」

「ご飯作るよ。リックは何が良い?」

 

「っ! 二人とも…いたのか」

 

完全に空気になっていましたか我々は

何だかうれしいんだか悲しいんだかわからなくなる

 

「まぁいいさ。リックが元気になったしね」

「あぁ、だな」

 

「うっ! …い、行くぞ」

 

流石に照れが来たのか一方的にそう言うとすたこらさっさと歩いて行ってしまった

その場に残されたのはレイジとアラタ、そしてエアリィとアミルの四人

 

「…っぷ、ははっ! リックったら赤くなってた! 少し可愛いかもっ」

「フフ…そうね」

 

リックの背中を見ながら彼の幼馴染二人がそんな感想をもらす

 

リック=エルウッド

彼の中の時間が動き出すのは、いつになるだろうか―――

 

◇◇◇

 

そんな出来事があった午前中にあった後の午後

 

昼食を食べ終えたアラタはどうしようか、と悩んでいた

ニューと遊ぶのもいいし、それにバレットやノエルたちも交えるのも面白いかもしれない

そんなしょうもないことを考えていた矢先、アルティナが視線に入ってきた

普段ならば軽く挨拶を交わしてそのまま彼女もニューとの遊びに誘っただろう

しかし本日は違った

目尻にうっすらと涙の跡があったのをアラタは見逃さなかった

 

「…アル? 何かあったのか!?」

 

「っ!ア、ラタ…、だ、大丈夫よ、放っておいて」

「今にも泣きそうな仲間を放ってなんかおけるか! ましてそれがアルならなおさらだ!」

 

「け、けど…」

「遠慮しない。とりあえず事情だけでも聞かせてくれ」

 

真っ直ぐな目でアルティナに頼み込む

その思いが伝わったのかしぶしぶと言った様子で快諾してくれた

 

「実は…ケフィアが…ケフィアがいないの! どこかに行っちゃったみたいで…!」

 

「ケフィアが…!? わかった、協力する。一人より二人の方が早いからね」

 

「うん…ありがと…」

 

その言葉は無意識下に吐露した本音なのだろう

その表情に思わずぐらっと来たしまったのは内緒である

 

 

率直に言ってケフィアはすぐに見つかった

見つかったのだが状況がよろしくない

 

「アル、こっちだ」

「? 見つかったの!?」

 

アラタの声にアルティナは彼の近くへじゃ走り寄ってくる

 

「見つけたのは見つけたけど…」

 

そう言いながらアラタはその方向へ視線を送る

そこには「フゥ! フゥーっ!」と言いながら逃げ回るケフィアと、それを追っかけるゴブリンらしきモンスターが

 

「あれは…! ケフィア!?」

「手早く蹴散らして助けよう、行こう、アル」

「えぇ! 待っててケフィア…今行くから!!」

 

気合十分なアルティナの援護を受けてアラタは狼奈を構え突撃する

的確なアルティナの弓矢はいつにもまして鋭く見える

大切な相棒が襲われているのだ、弓にも怒りが現れているのだろう

それを考慮したうえで、アルティナを援護は頼もしかった

〝シャイニング・フォース〟の中ではレイジに次いで交流が深い彼女と共に戦うのはなんとなくだが心が落ち着いた状態で戦える

 

「ずぇいっ!」

 

瞬、と振るわれた一刀はゴブリン達を斬り裂いていく

一体一体の強さは大したことないのだが如何せん数が多くては流石にジリ貧というものだ

 

「シャアァァァッ!」

 

そんな油断からか、ゴブリン数体に背後を取られたしまった

しまった―――! そんな後悔も束の間、一瞬のうちにそのゴブリンたちは矢に射抜かれていた

当然ながら矢を射ったのはアルティナだ

 

「悪い、助かった!」

「気にしないで、貴方の後ろは守るから!」

 

そんな会話を聞きながら刀状態のローナはふむ、と考えていた

 

(アラタ様が背後を取られるなんて。…逆に考えればそれほどまでアルティナさんを信頼しているということ…むむむ、サクヤさんにライバル登場です)

 

そんな考えをしているとはつゆ知らず、アラタは狼奈を振るい続ける

 

 

「…何とか片付いたみたいだな」

 

辺りはすっかり何もない

あとはケフィアを捜すだけなのだが…

 

「ケフィア? ケフィア!! どこなの!? 返事して!」

 

声を荒げて名を呼ぶが一向に返事はない

…もしかして巻き込んでしまったのだろうか

と、いやな考えを払拭すべく首を大きく横に振る

そんなはずはない、あり得ない、と

 

「そんな…さっきまではいたのに…」

 

「…もしかして、さっきの連中に仲間がいて、連れ去られ―――」

 

言いかけて口をつぐむ

こんな所で不安を煽ってどうするんだと自分を叱るが時すでに遅し

 

「そんな…ど、どうすれば…」

 

アルティナの落胆が目に見えてしまった

それ以前にここまで落ち込んだ彼女の事を見るのは初めてだ

それだけ、ケフィアの存在が大きいものだと実感させられる

 

「だ、大丈夫さ! まだそんな遠くまで行ってないハズ…急いで追いかければ…!」

 

「ケフィア…ごめんね…!!」

 

どれだけネガティブなんだケフィア不在時のアルティナはっ!

募る言葉も色々あるが、こうまでぐだっていると少しは文句も言いたくなる

そんな気持ちをこらえて、それでいて奮い立たせるように

 

「しっかりしろアルティナ!! 君がそうやっていたら届く手も届かなくなるぞ!!」

 

「っ…!」

 

「大丈夫だ!ケフィアは君を待ってる。必ず見つかる! だから行こう! アルが納得いくまで付き合うから!!」

 

「…そう、よね。私が行かなきゃ! 助けなきゃ! アラタ、行きましょう!」

 

ようやくいつものアルティナに戻ったようだ

そのことに安堵する

 

「あぁ。…けど、この先分かれてるからなぁ…」

 

一難去ってまた一難

今現在自分たちの前には二手に道が分かれてる

どちらにいたのかが分からなければ進みようがない

 

「…待って」

 

「アル?」

 

アルティナは静かに耳を澄ます

そして

 

「この声は、ケフィア…? 泣いてる?」

 

「付近にいるのか? 残念だけど、俺には分からないけど…」

 

エルフの耳は常人を発達している故、ケフィアの声が聞こえるのだろう

そんな彼女から聞こえた情報はケフィアが泣いているという事だった

 

「そうなの。…だけど、出て来てくれないの」

「…まぁあんなことがあった後だし、怖がって出てこれないのかも」

 

それも一理ある

ついさっきまで襲われていたのだ

普通は怖くて出てこれない

 

「ケフィア! もう怖くないから! 出てきてちょうだ~いっ!」

 

・・・

 

反応はなかった

 

「…ダメみたい。…どうすれば…」

 

うるうると瞳を潤ませこちらを見るアルティナ

ふむぅ、とアラタは腕を組んで考える

どうすればケフィアは出て来てくれるだろう

ケフィアが怖くて出てこれないのならその怖さを打ち消すような楽しい事があれば…

 

「…そうだアル! 歌だ! 歌だよ!」

 

「え?」

 

「いつだったか、君の歌は精霊たちが寄って来てたじゃないか! だから、歌えばきっとケフィアも出て来てくれる! きっと届くはずだ!」

 

アラタにそう言われ自信を取り戻したのか、笑顔を浮かべて

 

「…わかった。歌ってみる」

 

アルティナは一度目を閉じ、大きく息を吸う

そして―――

 

 

彼女の歌声は森の中全体に響く

その音はとても楽しく、陽気な色

聞いているだけで釣られてこちらも明るい気分になり、暗い暗雲など一度で吹き飛ばすかのような―――

かつて歌姫としての歌も素晴らしかったがアルティナとしてもこの歌も大変心が温かくなる

 

何時しか彼女の周りにはホタルのような光が集い始めていた

それがすべて精霊なんだと知るに時間はかからなかった

 

 

「フゥ! フフゥッー!!」

 

そんな精霊たちに紛れてケフィアもいつの間にかアルティナの前にふわりと飛んできていた

とても楽しそうに彼女の周りをくるくると回っている

 

「ケフィアっ! よかったぁ…無事で…もう怖くないよ、大丈夫だからね?」

 

アルティナはケフィアを優しく抱きかかえ頭をなでる

撫でられるたびに「フゥ♪」と嬉しそうに鳴く姿が大変可愛らしい

 

「よかったな。…本当に一時はどうなるかと思ったけど…」

 

「うん…! アラタのおかげ…! 迷惑かけてごめん、だけど…ありがとう…」

 

ぎゅ、とケフィアを嬉しそうに抱きかかえるアルティナは少し顔を赤くしながらそう感謝の言葉を述べてくれた

いざ改まってそう言われるとさすがに照れる

それと同時に確信する

 

「ど、どういたしまして。…うん、やっぱりそうだよ」

 

「へ? 何が?」

 

「心を開いてしっかり目を見て話し合えばだれとでも分かり合える。仲良くなれるんだ、俺とアルが仲良くみたいに、素直になれるんだ」

 

「…素直、か」

 

「あぁ。それと、俺たちは仲間以前にもう友達だ。これからも、困ったことがあったら、何でも言ってくれ。力になる」

 

真っ直ぐとこちらを見るアラタにアルティナはどこか恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに眼を逸らす

 

「…うん。頼りに、してるから」

 

そう呟いたとき、ふわりと風が吹きすさんだ

その風は心なしか、暖かった気がした―――

 

 

 

 

◇◇◇

 

「サクヤさんは押しが足りませんっ」

 

晩御飯が終わり、食器洗いをしている途中に言われたのはそんな一言だった

 

「えっと…ローナ? 言っている意味がわからないんだけど…」

 

「言葉通りの意味ですよ。サクヤさんは押しが足りません」

 

…何を言っているのだろうこのキツネ耳は

思わずそんな呟きを心中でしてしまうとは思わなかった

 

「それに押しが足らないって言われても…その、異性に好意を抱いたことなんて初めてだし、そもそもなんて言ったらいいか分からないんだもの…」

 

かちゃり、とお皿を置いた後サクヤは開いた両手を弄び始めた

その仕草はまさしく恋する乙女そのもので、普段の凛々しい姿とのギャップが凄まじかった

 

「…そう言われると私も強く言えませんが…。けどいいんですか? …私が言うのもなんですけど。このままじゃアラタさん他の人に盗られちゃいますよ?」

 

「それは…やだ」

 

そう言ってサクヤは少しだけ、ほんの少しだけ頬を膨らませた

ギャップありすぎだろう、と突っ込みたくなる気持ちを抑え、ローナは少し笑む

なんだかんだでサクヤも女の子なのだな、と

 

「陰ながら応援してますから。…こんなことしか言えませんけど…頑張ってください!」

 

「…ありがとう。ローナ」

 

そう言って笑顔向けるサクヤ

いつかその想いが届けばいいな、と心からローナは願う

…ずっと一人で戦ってきたのだから、これくらいは叶ってもいいんじゃないかな

 

色々と謎が多い彼女ではあるが、彼女だって、女の子なのだから―――

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