シャイニングブレイド 〜蒼の魔導書を持つ男〜   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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大変お待たせしました

約二か月ぶりです
こんなモノではありますがお気に入り登録まことにありがとうございます

次回で多分七章は終了です

クライマックスが近づいてきました


混沌のセレナーデ 6

トウカがその力を感じる場所一帯を捜索中な一行

 

「どうだ。何か手がかりになりそうなのは見つかったか?」

 

何かないか、と思いながらも一行は周囲を見渡し、くまなく探しては見てみる

が、

 

「ダメだよフェンリルさーん…砂ばっかりでぇ…うえっぷ!? 口に入った!?」

 

むせるマコトの声を聞きながらフェンリルは苦笑いを零す

そんな彼女を尻目にアラタもどこか揺らぎはないか、と探してみる

特に現れたビル辺りを重点的に探しては見るが、やっぱり何も見つからない

 

「レイジ! あんたちゃんと探したんでしょうね? 私が目を離すとすぐサボんだから!」

「ちょ! サボってなんかねぇって! 俺目を皿のようにしながら探したんだぜ!?」

「レイジの目は皿なの?」

「や、そういう意味じゃなくって…!」

 

そんな傍らでレイジとカノン、アインを交えた三人が漫才みたいなやり取りを始めた

すかさず近くにいたトウカがアインにフォローし説明する

その説明を受けてアインはなるほど、と納得した

 

「…息ぴったりだな」

 

元の世界でのチームワーク(?)がいかんなく発揮されている

そんな関係を少し羨ましく思ってしまう

 

「トウカさん、精霊王の気配、どうですか?」

 

頃合いを見てアラタはトウカに問いかけた

トウカは顔を少し俯かせ

 

「ううん。今はもう何も感じないの。…もしかしたら、ほかの場所なのかしら…」

 

「そうですか…」

 

そういう事なら仕方がない

太陽を見てみるとだいぶ沈みかけている

今回はこの辺で切り上げて撤退した方がいいだろう

 

「ごねんね、アラタさん…」

 

申し訳なさそうに呟くトウカを見てアラタは

 

「大丈夫ですよ、根気よくいきましょう」

 

そう言って笑みを作りながら励ます

トウカはその笑みを受けて小さくえぇ、と頷いた

 

 

ローランへと戻ってきて一夜が経った

目覚めると相変わらずハクメンはどこほっつき歩いてるのか分からないというのがレンからの情報である

 

「てゆうかフリーダムすぎるわあいつ」

 

それが現在のレンの評価である

 

クウガもそれには多少同意するが彼にもきっと考えがあっての行動だと思いたい

…うん、きっとそうだ

 

そんな噂が仲間内で立っていると知ってか知らずか、ハクメンは一人の少女と邂逅していた

その少女とは

 

「…元の世界では、六英雄と謳われているハクメンさんじゃない」

「私を知っているか。どの世界でも傍観者なのは変わらぬのだな、貴様は」

 

ハクメンは、確かにレイチェル=アルカードを知っている

しかし目の前にいるこの少女ではない、また別の彼女の姿を、だ

 

「…いろいろ言いたい事はあるだろうけど、ここでは全部割愛するわ。答えも貴方の予想通りだし」

「だろうな。もとよりあまり期待などしておらぬ」

 

そう短く切り捨ててハクメンは踵を返した

その背中にレイチェルは呼びかける

 

「元の世界に戻ったら、その世界の私にヨロシクとでも言っておいて」

「断る、と言いたいがまぁよかろう。その程度ならいくらでも伝えてやる」

 

 

「お前さ」

「ん?」

 

ローランを歩く道すがら

特にやることもなかったアラタ(クウガ)は式に誘われ散歩に付き合っていた

そんな時に彼女はクウガにこんな事を問いかけた

 

「ところでさ、お前あのビリビリの嬢ちゃんには告白したのかよ」

 

「ファ!?」

 

急に何言いだすんだこの赤い革ジャン和服美人

式は別段気にするでもなく普通に言葉を紡いでいく

ちなみにそのビリビリ嬢ちゃんとは自分本来の世界にいる御坂美琴の事である

 

「いや、あの都市でお前ら見てるとヤキモキさせられてな。ならとっとと告白でもすればいいじゃんかと」

「べ、別に式にそんな事心配してもらう必要なんかないっての!」

 

クウガはそう言うがそれははっきり言って強がりである

自分が想いを伝えないのは単に自分が臆病だから

伝えたことで今の関係が崩れてしまったら

そう考えるとどうにも踏み出せない

 

「…ふーん。まぁ本人が言うならいいんだけどさ。後悔はすんなよ」

 

そう式は告げると少し先を歩きはじめる

その赤い背中をクウガはただ眺めながら後ろついて行った

式の言葉は分かる

彼女もいつか、似た経験をした

大切な人を失う、というような経験を

そんな彼女の言葉が重くのしかかる

 

「…あぁ、わかってるさ」

 

小さく呟きながらクウガは小走りで彼女の背中を追いかけた

 

後悔だけは、絶対しない

 

 

「エルミナ」

 

あくる日

アラタはエルミナを呼び止めた

呼ばれた彼女は僅かに笑みを作ってこちらに走ってくる

 

「アラタさん、なんでしょう?」

「いや、ね。ちょっと手伝ってほしいんだ。実は近隣にモンスターが現れたらしくて、このまま放置しておくと街に被害が出るかもしれない。だから手伝ってほしいんだ。大丈夫かな?」

「は、はいっ! 戦闘であれば私もお手伝いできます、行きましょう!」

 

元気よく返事するエルミナにどこかアラタは苦笑いする

そして心の中でこういった

 

〝ごめんね、エルミナ…〟と

 

 

そして

 

「いた、あれだ。急いで蹴散らそう、エルミナ」

「い、いえありゃたしゃんっ! そ、その…えっと…!?」

 

 

アラタに連れられるままにきたエルミナはガチガチに緊張していた

戦闘に、ではない

状況に、である

 

今現在彼女が置かれている状況を一言で現すなら花盛りの君たちへ状態である

エルミナを除いてその場には男子しかいないのだ

 

上条当麻にクウガ(人間)、レイジ、リック、ディランといった男性しかこの場にいないのだ

 

「大丈夫、君ならいける! 自分を信じて!」

「け、けどっ、アイラ様もいないし、こ、こんな、…はきゅう」

「エルミナー! しっかりするんだ! 自信を持って!」

「は、はいっ! 何とか頑張ってみます!」

 

混乱する状況の中、戦いが始まった

実際混乱しているのはエルミナただ一人だが

 

 

そんな状況の中、クウガは当麻と二人話し込んでいた

 

「…で、俺らはなんで呼ばれたんでせうか」

「エルミナちゃんの男性恐怖症克服のためだってさ」

 

そう、なんで今回こんなに男子率が高いのかという理由についてだ

知っての通りエルミナは男性恐怖症である

そんなエルミナに今回は荒療治を敢行してみようとジンとアイラ、アラタが考え付いたのがこの男性だらけの戦闘である

 

しかし戦いの途中で万が一にkあの序がぶっ倒れてしまったらエライ事になりそうなのだが

 

「けど、相手は今回雑魚ばっかりだし全滅の危険はないけどさ…ちょっと荒過ぎじゃないかねぇ」

「…いえ、ワタシに同意を求められても…。ていうか上条さんはエルミナさんが男性恐怖症だというのは今さっき知ったんですが」

「安心しろ、俺もだ」

 

苦笑いと共に接近してくるどくろの化け物を蹴り砕く

変身したまま戦うと男性と認識してくれなくなるかもしれない、と言われたので今回は生身で戦っているのだが

冷静に考えるとそれはそれでなんか悔しい

 

 

身体が思うように動かない

式の動きにはついていけたのになんでか今日は動きがぎこちない

その理由をエルミナはわかっていた

 

(ぅう…男性ばかりで…はぅ)

 

この状況である

左右を見れば男子、前後を見ればまた男子…

普段ありえないこんな状況にただエルミナは緊張していた

まさに蛇に睨まれたカエル状態

 

そんなエルミナを見てアラタは罪悪感に駆られまくっていた

もっと普通な作戦を思いつかなかったのか、なんでこんな作戦になってしまったのか

彼女をここに連れて行くときの会話だって強引の一言に尽きるではないか

 

「…はぁ」

<…ため息つくならなんで了承したんですか…>

 

ローナの言葉が耳に痛い

しかしその時のアラタは場の空気に流されてしまったのだ

戦闘さえも片手間に、どう謝罪しようかを考えるアラタなのだった

 

 

その後もつつがなく殲滅は終わり、後には男性陣とエルミナが残された

彼女は未だにプルプルと震えておりその姿は小動物を連想させる

 

「…とりあえず、危機は去ったな」

「は、はいっ。…け、けど、やっぱり男性陣が…はふぃ」

 

そう言い残して彼女はぐったりと後ろに―――

 

「わぁ! 気絶した!? ちょ、エルミナ! しっかりしてっ!」

 

何とか倒れる直前に支えることが出来たが、彼女は目を回したまま気を失ってしまった

やはり無理をさせてしまったのだろうか…

 

・・・

 

「う、うぅ…あ、れ…アラタさん…私…」

 

ほどなくしてエルミナが目を覚ました

 

「…ごめんなエルミナ。この作戦は、ちょっと刺激がありすぎた」

 

何やら不穏な単語が聞こえた

気になった彼女は彼に向かって問いかけてみる

 

「…アラタさん、作戦ってどういうことですか?」

 

問われたアラタは包み隠さず全部話した

今回の戦いは治療の一環だった、男性恐怖症を治させるためにジンとアイラとで考えた荒療治なんだ、と

 

「えぇ!? そんなぁ…。騙したんですか!?」

 

「うん。…そう言われても仕方ないし、怒られても仕方ない事をしちゃったからね…本当にごめん。君の意思を無視したヒドイ事をしでかして…」

 

「そ、そう畏まらないでください。確かにむってなりましたけど…私の為を思ってくれてのことですし…」

 

そんな二人を見つめている二人の人影

それは共犯者のアイラとジンである

彼女は二人の姿を見つけると「あっ」と声を上げる

 

「ジンお兄様にアイラ様…!? お二人もいらしてたんですか!? あ、けどお二人も私を騙していたんですよね? ならこれはお二人にだって責任が―――」

 

「それよりエルミナ。お前、アラタと普通に話せてるじゃないか」

 

ジンの発言に彼女はふぇ、と声を上げながらアラタを見やる

 

「…言われてみれば、アラタさんと会話できてます…緊張もぜんぜんしてないし…」

「荒療治が功をなしたのかな? いずれにせよ、治ってよかったよ…」

 

アラタがそう言うとエルミナはとても嬉しそうな笑顔を浮かべて

 

「はい! もしかしたら、先ほどの荒療治が効いたのかもしれません! アラタさん…アイラ様…ジンお兄様…。どうお礼をすればいいか…」

 

少し彼女は考える

むむむ、とすこし唸った後彼女はぱぁ、と再び笑顔になり

 

「大したお礼は出来ないですけど、せめてお三方の為に、歌を捧げたいです。…聞いて、いただけますか?」

 

三人は彼女の言葉に笑顔を作って頷いた

 

◇◇◇

 

両手を握りエルミナは歌を歌い始める

 

それはふだん物静かな彼女からは予想できない少しアップテンポな曲調…分かり易く言うなればジェイポップといったところか

 

誰かの笑顔の為に奮闘する彼女の姿がありありと浮かんでくる、聞いていて元気になる歌だった

 

「…すごいな、心にグッとくるものがあるよ」

「あぁ。普段隠れがちだけど、彼女結構いい声だな」

 

いつの間にかアラタの隣にいたクウガも腕を組んでうんうんと頷いている

 

 

彼女の歌声に引き寄せられたクウガだけではない

いつの間にかシャイニング・フォースのメンバ―が続々と集まってきたのだ

 

「すっごい落ち着く歌だー…いつまでも聞いていたいよぉー」

「そうねぇ…。エルミナさんの意外な一面を見た感じがするわ」

「うん。荒んだ心が洗われるみたいな…。あれ、二人ともその視線何? べっ! 別に私荒んでないよ!?」

 

向こうでそんなやり取りをする三人娘を尻目にアラタは彼女の歌に聞き入っていた

彼女の詩をゆっくり聞きながら料理とかでも作れたらそれはきっと最高な時間になるだろう

 

「流石エルミナ。…素晴らしい歌だ」

「そうだな。見ろジン、いつしか周りに仲間が集まってきている。これも、エルミナの歌の力か」

 

そう言いながら頷くのはジンとアイラの二人

この二人からそんな評価を貰えたのなら彼女もきっと嬉しいだろう

気持ちよく歌を歌う彼女にうっかりフェンリルが接近していく

 

「お。なんだか心地いい歌が聞こえてくるかと思ったらエルミナだったのか。いやぁ、大したものだな!」

 

本人としては悪気はなかったのだろうがなぜだかエルミナはビクゥ、と身体を震わせた

 

「ひゃあ!? ふぇ、フェンリルしゃんっ!? そ、そそその、あんまり近づかないで…はふぅ」

 

その言葉を最後にエルミナは再び目を回したように気を失ってしまった

何とか倒れる前に支えることが出来たがアラタの頭は未だに混乱していた

 

「…あれ、男性恐怖症は治ったんじゃぁ…!?」

「…え? 俺を見て気絶したのか? …そんなに俺って怖かったのか…?」

 

同様にフェンリルもまさか自分を見て気を失うとは思わなかったのか軽い自問自答を繰り返している

 

そんな彼らを見たジンとアイラは僅かばかりに笑みを浮かべる

 

「…なるほど。どうやら彼女の男性恐怖症克服対象は、今のところアラタだけ見たいだな」

「そのようね。…けど、今はそれで良しとしましょうか」

 

木陰に運ばれていく彼女を見ながら二人は互いを見て笑みをまた浮かべあった

どことなくその理由に、二人は気づいていたのだ

そのことを彼女が自覚する日はくるのだろうか

 

◇◇◇

 

「いた、トウカ先輩っ! 姉ちゃんもいたのか」

 

数日

精霊王の卵の情報を入手したアラタとレイジはトウカの下へと歩み寄った

 

「あらレイジ。アラタくんも」

 

「お二人がそろってるなら好都合です。トウカさん、フェンリルさんが精霊王の卵の情報を掴んだそうです」

 

「ホント? 卵が見つかったの?」

 

トウカの問いにアラタはふむ、と考えて

 

「正確にはファンロンという竜の情報ですけどね。けど、そのドラゴンがいる所に多分卵があるはずです。今までの経験から考えて、ですけど」

 

そのままアラタは話を続けていく

フェンリルから聞いた情報によるとファンロンと呼ばれる竜は依然捜索したところより少し先に進んだところにいるらしい

カオスゲートの歪みにより現れたビルの間に住処を作っている、というような光景を兵士が見たらしい

 

「そんなわけだからトウカ先輩、姉ちゃん! 急いで現場に向かおう!」

「あ、けどドラゴンとの戦いは避けられませんから、しっかり準備しておいてください」

 

準備、というような単語を聞いたカノンは首をかしげながら

 

「戦う? 卵を貰うんじゃないの? なんでドラゴンと戦うの?」

「そうなんだ。多々じゃくれないんだよあいつら…まぁ事情があるから仕方ないとはいえんだけどさ」

 

そんな説明でいいのか、と内心アラタは苦笑いした

しかしカノンにはそれで大体伝わったらしくあー、と言いながら彼女はポン、と手を叩いて

 

「なるほどね。おっけー、わかった。そういうことならやってやろうじゃない!」

 

「<…なんなのだこの似た者姉弟…>」

 

ユキヒメがぼそりと呟く

単純というか分かり易いと言うか、やっぱり姉弟みたいだ

 

「よし、ファンロンの試練をクリアして、精霊王の卵を拝見だ!」

「おー!」

 

元気に拳を叩きつけるレイジとカノンをトウカと二人して苦笑いを浮かべながら眺める

姉弟仲は、やっぱり良好なようだ

 

 

「…ドラゴン」

 

「あぁ、ついさっきリーダーと俺から聞かされた情報だ。そう言えばこの世界にはドラゴンがいるんだったな」

 

一方ローランの酒場にて

同様の情報を聞いたクウガはそれを当麻に報告していた

クウガも言われて理解したが、ここは割とファンタジーな世界だという事を忘れていた

 

「な、なるほど…ドラゴンか…! ゲームとかアニメとかだとよく見るそんな生き物と会えるわけか…! そう考えるとちょっとワクワクするっていうか…」

「…お前な、戦いに行くんだぜ? もちょっと緊張感持てよな」

 

そう言われて当麻はハッとした様子で咳払いする

そして自分の右手を徐に握ったり開いたりしながらふとこんなことを聞いてきた

 

「…そう言えば、ドラゴンのブレスとかってさ、俺の右手通じるのかな」

 

「…、」

 

そう言われふむ、と考える

…どうなんだろうか

今現在自分の右手は当麻の力と似たような義手だし、試したこともないのでよくわからない

 

「…なんで黙ってるのさ? なんか言ってクダサイヨアラタサン」

「いや、何とかなるさ」

「…失敗したら?」

「上手に焼かれるだけだな」

 

何気なく言ったその一言に当麻から汗がだらだらと流れる

ほどなくして顔を振った当麻は

 

「今更退いていられるか! こうなりゃ当たって砕けてやる!」

「無茶すんなよ? お前はいつもそうやって怪我して、インデックスにかじられてるんだから」

 

もはやそれが恒例となっているほどだ

そんな無茶をさせないように、自分も奮闘しよう

 

「よし、当麻。準備しようぜ、戦いのな」

「あぁ。俺たちは、俺たちに出来る事をやろうぜ」

 

当麻と頷きあい、二人は酒場を後にする

 

自分たちの行動が、未来を開くことを信じて

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